この堅物どうやって落とす   作:へか帝

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なんかこの作品のずっとランキングの真ん中辺りににねっちょりへばりついてて草。
更新してないのに上下しててもっと草。
みんなあとがき怪文書読みすぎてびびる。あれ一応1000文字あるんですけど

ところで不死院のデーモンをね、エスト未所持状態で素手で倒すと武器もらえるんですよ
そういうことしてたら遅れました。




新しい扉

 今日は珍しく執務室の椅子に指揮官の姿が無かった。指揮官が就任以来初めての休暇申請をしたからだ。執務席には代わりに、ぐったりと身を預けて背もたれに寄り掛かった加賀の姿がある。もはや微動だにせず、まるで魂でも抜けたかのような有様だ。

 

「ツェッペリン。うちの妹に何があったの? もうずっとこのままなのだけど」

 

 一航戦の赤城が我に問うた。その表情は真摯に妹を気遣う姉そのもの。本当によくできた姉だ。事の顛末に関しては特段隠し立てするものでもあるまい。困るのはそこの加賀くらいのものだが、まあ自業自得だろう。

 

「この阿呆は前後不覚に陥って指揮官に襲い掛かったのだ。まったく、私の警告も無意味だったな。今は大方自己嫌悪に苛まれているのだろう」

「加賀、あなたなんて軽率な……」

 

 不安そうな顔をしていた赤城が、一転して眉を顰めて責めるような目になった。指揮官の事となると恐ろしいまでに手のひらを返すのが早いな。

 

 「姉さま……」

 

 棘のある姉の言葉を受け、ついに沈黙を保っていた加賀が口を開いた。

 まったく、こいつら本当に姉妹なのか?

 

「録画はしてある」

「大丈夫よ加賀、心配することなんてなにもないわ」

「指揮官が関わると本当に変わり身が早いな!」

 

 訂正、姉妹で間違いない。

 しかし転んでも只では起きぬとはこのことだな。我が駆けつけたときには指揮官も加賀も双方まったく余裕がないように見えたか、強かなことだ。

 

「浮かれているところに水を差すようで悪いが、失ったものは大きいぞ」

「う゛っ。私がツェッペリンの警告を忘れずに姉さまに教えを乞うていればこんな醜態を晒さずに済んだのだろうか……」

 

 物憂げな表情のまま、後悔を滲ませる声色で加賀が呟いた。一応あの行動がよろしくないものだという自覚はあるのか。

 

「我としては遅かれ早かれこうなるとは思っていたが」

「誰か昨日の私を殺してくれ……」

「重症ね」

「うう……流石の私もああも露骨に指揮官に避けられるのは堪える。私の純愛ラブストーリー計画『指揮官と一緒~来世も出待ち~』全500話がこんなところで頓挫するなんて……。あとの495時間は一体何をどうすればいいんだ……」

「安心なさい加賀、その495時間分はこの赤城が主演となってすべて引き継いでさしあげますわ。あなたの名前はエンドロールのスペシャルサンクスにちょっとだけ名前を──」

「そんなんで納得いくかあぁぁぁ!」

「……なんだかんだ元気ではないか」

 

 先ほどまでの灰のような姿はなんだったの「私が上手くいけば姉さまは指揮官が義弟(おとうと)になるんだぞ!」 うるさ……。

「し、指揮官様が義弟(おとうと)ですって!? と、ということは必然的に指揮官様は私をお、お、お姉ちゃんと呼ぶということになるわね……?」

 

 いやならんだろう。なにが必然的なんだ。赤城は妄想の世界に旅立ってしまったのか、両肩を抱いてくねくねしている。うまい具合に着物がはだけて中々に艶めかしい姿になっているが、肝心の指揮官はここにいない。 

 しかも赤城のみならず、自分で言いだしておきながら想像してしまったのか加賀まで身もだえしている。本当に愉快な姉妹だ。

 

「いいえ正気に戻るのよ赤城! だいたいあんな愚行を晒して今更指揮官様とらぶらぶちゅっちゅできるわけないでしょう!」

「ぐふっ」

 

 

 加賀が血を吐いた。いや流石にダメージ大きすぎないか。というからぶらぶちゅっちゅって……。赤城、お前の言葉選びのセンスはどうなんだ。衝撃を受けている加賀も加賀だ。まったく、加賀もようやく自分の立場を思い出したようだな。今更指揮官との仲を取り戻すのは至難、ここはひとつ潔く諦めるのも──

 

「くそう、私に残ったのは恐怖に引き攣りながら逃れようとする指揮官の映像だけだ……」

「「……」」

 

 ──気になる。あの時は指揮官を獲られてなるものかという一心だったが、加賀の視点では一体どんな指揮官が映っているのか。きっと嗜虐心を溢れんばかりに煽られる極上の顔が映っているに違いない。 

 ──生唾を飲み込む音がした。我のではない。ちらと隣を見れば、深紅の瞳に危うい光を秘めた、息の荒い赤城がいた。自覚こそないが、きっと我も同じような顔をしているのだろう。

 

「な、なんだお前ら。この映像は私のものだぞ。私は指揮官からの信頼を代償にこれを手に入れたんだからな!ええい寄るな寄るなっ!」

「さ、さわりの部分だけでも見せる訳にはいかないのか?」

「ダメだ! これは私が秘匿するんだ! 無闇にバラまいて指揮官に罵られたら立ち直れなくなる!」

「加賀。それはひょっとして可愛い指揮官の映像を入手した上に指揮官から罵ってもらえるって事かしら……?」

「指揮官から罵られる……だと?」

 

 つい妄想する。無様に這いつくばって指揮官を見上げる自分と、そしてそんな自分を心底蔑むような眼で足蹴にしている指揮官。指揮官の瞳には我に対する興味も関心もなく、ただそこにある肉袋をなんとなくで痛めつけているというだけ。まるで雌豚のように、声にならない悲鳴と嗚咽を上げながら、じっと耐え続ける。

 ふつふつと湧き上がってくるのは煮えたぎるような屈辱と、情けなさと、痛み。

 そして──とろけるような快感。

 じんじんと痺れるような痛みが体に火をつける。一方的に踏みつけてくる指揮官に、我は一切の抵抗ができないと思うと、それがなぜだか一層のうずきをもたらす。

 ああ、なんて甘美な。これは──

 

「「「いける……」」」

 

 この場にいる三人の意識が、完全に一致した瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

「ハァ……」

 

思わずため息が漏れた。

 

「なんだよ、お前がシケた面するなんてよっぽどだな」

「いや、泊地の事を考えるとな。流石に疲れた」

 

客の少ない居酒屋。僕はかなり久々に休みを取って昼間から酒を飲みに来ていた。

 カウンターテーブルの隣に座るのは、やせこけた頬や伸びっぱなしの無精ひげ。生気を感じさせない酷くやつれた男だった。およそ橋の下にダンボールでも敷いて寝そべっているの方がよっぽど似合いそうな男だが、そんな彼は僕の同期だった。

 それもただの同期じゃない。常に最前線を走る超がつくほどのエリートだった。

 そう、過去形だ。何がきっかけか、ある時期を境にぽっきりと志が折れてしまったらしく以来ずっと無気力のまま過ごしている。

 堕ちた英雄、過去の遺物、残り火。彼を示す二つ名はどれも散々なものだが、一応、指揮官としての業務はそれなりにはこなしているらしい。

 彼と僕とは古い付き合いだ。しかしそれでも何があったのかは、頑なに話そうとしない。僕にも話していないところから見るに、他の誰にも離さずにずっと抱え込んでいるようだ。その見るに堪えない熟練の無宿者のような恰好も、その頃から始まった。

 彼は、この戦いの向こう側に何を垣間見たのだろうか。

 

 心折れた彼に残ったのは、もはやなんの意味もなさない最終元帥の肩書と、彼の下に集った桁違いの練度を誇る艦隊。

 部下は落ちぶれた彼の姿を見てなお見限ることなく、忠を尽くし続けているという。聞けば未だ彼の傘下を離れたものはいないそうだ。それだけ往時の彼の人望の厚さが窺い知れるだろう。

 が、忠を尽くすというのも所詮は言葉の綾、果たしてその実態はひそかに想いを寄せていた艦娘たちが弱りやさぐれた指揮官の姿を見て、抑えていた母性を爆発させてしまったということらしい。前に本人が焦燥しきった顔で言っていた。

 

「で、何があったんだよ。聞いてやる」

 

 カウンターに肘を乗せてにやりと笑みを浮かべた。この妙に頼りがいのある所は、ずっと変わらない。

 

「信頼してた部下が豹変して僕を深淵の穴(愛の巣)に引きずり込もうとした」

 

 しかし、流石の彼も僕の発言にはすぐ対応できなかった。

 

「色々聞きたいがまず深淵の穴(愛の巣)ってなんだ」

「僕にもよくわからないが、きっと落ちたら抜け出せないところだ」

「お前の泊地は何がどうなってるんだよ」

 

 僕が聞きたいくらいだ。ずっと昔からあんな風だから違和感が麻痺していたが、冷静になると執務室の床下や天井裏から誰かが現れるのは絶対におかしい。

 

「全身に金平糖を纏った状態でアリのコロニーに投げ出されたような感覚に近い」

 

 あの時はもうダメかと思った。加賀の深淵に飲み込まれる寸前のところで、グラーフ・ツェッペリンが救援に駆けつけてくれたのだ。聞けばアークロイヤルが不在の間の代役を通りすがりに頼まれたのだという。

 いやあ、あれほどまでに焦燥したツェッペリンはもう二度と見れないだろうな。もちろんあの場で最も焦燥していたのは間違いなく僕だが。カウンターにアークロイヤルの姿が見えなかったときは絶望だったが、しかしこういう周到さやアフターケアが頼りになるからやはり適任だったのだ。

 そもそも席を外すなという話だが、アークロイヤルが駆逐艦を察知して大人しくしていられるわけがない。いやほんとに絶望したぞあの瞬間は。

 もう最近はツェッペリンがいないところで加賀と面会するのが怖くて仕方がない。

 あの時に履いていたズボンは結局、ツェッペリンが引き剥がしても最後まで加賀は離さなかったせいでちぎられて持っていかれた。未曾有の恐怖というのはああいうのを言うのだろう。

 

「お、おう……? 例えはよくわからんがお前んとこも大概みたいでちょっと安心したぞ」

「そういう君の所はどうなっている? 近況を聞かせてくれ」

「……」

 

 苦虫を噛みつぶしたような顔で押し黙ってしまった。彼がこういう顔をするのは珍しい。

 

「うん? なんだ、とうとう愛想を尽かされて皆出ていったか?」

「あー……逆だよ。その方が百倍マシだ。『指揮官様は何もしなくてよいのです』つって全力で甘やかしてくる。マジで全力だ。ロドニーは手錠持って恍惚としてたし、愛宕に至っては何でかおしゃぶりとガラガラを用意してた」

「手錠……おしゃぶりとガラガラ……」

 

 彼女らの意図は掴めないが、それでもヤバイのだけはわかる。それを使っていったい僕の友人に何をさせるつもりなのか。考えるだけでもおぞましい。密かに僕の所はまだマシなのだと安心した。

 

「やつら、俺を極限まで堕落させて依存させようって魂胆らしいが、まっぴら御免だね。いくら心が折れたからって、越えちゃいけねぇ一線くらいは分かってらぁ。俺はあんな連中になんか絶対負けない!」

 

 胸元でぐっと握りこぶしを作って彼が言う。強い意志が込められた言葉だ。でもどうしてだろう。彼はもうダメな気がする。

 

「その一線の向こう側から手招きされているようだが」

「手招きで済んでねえよ。こないだはイラストリアスが寮に鋼鉄の牢を手配してたのを目撃しちまった。今日だって連中の目を盗んでここにいるんだぜ」

「おい、君の部下がよくそんな不衛生な格好を許すものだと不思議に思っていたが、まさか」

「ああ、ずっとあそこにゃ帰ってねぇ。マジで野宿続きだぜ」

 

 自暴自棄になってその姿になったのではなく、身だしなみを整える環境がなかったのか。ということはかなり長い期間、担当の泊地を開けていることになるが。

 

「向こうは問題ないのか」

「昔っから俺がいつ死んでもいいように連中にゃ教育はしてあった。俺がいなくとも当分は問題ないさ。それに俺には特別な伝手があってな。向こうの状況も掴めてるし、有事の際にゃ急ぎの連絡手段も持ってる」

「凄いな。流石の周到さだ。こうなることを見越してたのか?」

 

 彼だったらありえるのが恐ろしい。本当に何でもできるやつだったから。だが彼はかぶりを振って言う。

 

「だったらもっと上手くやらぁ。何が悲しくてこんな脱走劇しなくちゃならんんのだ」

「じゃあ、今日も大丈夫なのか」

「こちとら主席卒業だぜ。こんな平和な場所のサバイバルなんざヌルゲーよ」

「いや、そっちじゃない」

「じゃあなんだよ」

「え、気づいていないのか? 今日ずっとだぞ? とっくに気づいてるものかと思っていたんだけど」

「まだるっこしいな、早く言え」

 

「ほら、君の後ろの格子窓だよ。

 

 

 

 ──ローンが君を見てる」

 

 





ローンはこういうの似合うなぁ(白目)

これ言うとみんな鼻で笑うんですけど私別にギャク作品書いてるつもりは全くないんですよ
ネタを挟まないとしんじゃう病とかいいますけどね、私くらいになるとネタの方から挟まりに来る。
いや来るなよ。

全500話のあらすじ? 前話あとがきの怪文書でいいんじゃないですかね(てきとう)
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