この堅物どうやって落とす   作:へか帝

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ええ、怪文書の書き方?キーボード叩きゃいいんだよ(暴論)


ここまで計画通り

 

 勇ましく踏み込んだティルピッツを、メイドは無感動に一瞥し、流暢なロイヤルの言語でぼそりと呟いた。

 

Sigh.....Do you wish to die so soon?(はあ、どうしてそう死に急ぐのかしら?)

 

 

 

「退けティルピッツ!!!」

 

 言い切るよりも早くエンタープライズがティルピッツごと突き飛ばすようなタックルで飛び退く。

 

──刹那、轟く爆音。

 先ほどまでティルピッツが立っていた場所は、エディンバラが目にもとまらぬ速さで撃ち込んだ魚雷によっておぞましい黒煙が立ち昇っていた。

 

「LuckyEが無ければ、即死だった……!」

 

 ティルピッツを庇ったエンタープライズはどうあがいても直撃を免れぬ位置にあったが、しかし咄嗟に航載機を放って"当たり"を引いた。

 

 【LuckyE】。自身の航空攻撃時に、70%の確率で自身に8秒間の完全ステルス状態をもたらし与えるダメージを二倍にする。

 空母というカテゴリ全体で見ても、他に類を見ない屈指の強力さを発揮する能力。唯一弱点があるとするならば、70%という確率の壁だが、当のエンタープライズは幸運を由来とするスキルを、更なる幸運によって引き当てる。多少のムラはあろうと、"ここぞ"を絶対に外さないのはエンタープライズならではだった。

 

「だが、一矢報いたぞ。指揮官の託してくれたバラクーダの限界強化だ、しばらくは──」

「あらら、避けられちゃった。あなた、ずいぶん目が利くのね? それとも運がいいのかな?」

「!!」

 

 無傷。

 いや、身に纏ったメイド服の端々に僅かばかりの焦げが見える。が、それだけだ。それが、エンタープライズの与えたダメージの全てだった。

 当の本人は、まるで反撃など元よりなかったかのような泰然とした振る舞いのまま。

 

「ありえない、直撃だぞ……?」

「あのメイド、いったい何でできてるのよ……!」

「……一応聞いておく。ティルピッツ、お前、ひょっとして知らずにエディンバラに立ち向かっていたのか?」

「ただの冴えないメイドじゃないのは分かるけど……あなたは何者か知っているの?」

 

 距離を離しつつ、小さな声でやりとりする。

 エディンバラに動きは無い。

 

「The-Killing-Dollという異名を聞いたことは無いか? かつて、まだ何もなかったこの辺境で、指揮官と共にこの泊地を興した始まりの数隻の一人。多くの封鎖海域を切り開いた生ける伝説だよ。私もお目にかかるのは初めてだが、それがよりにもよって敵としてだとはな。ああ、私にしては珍しく運がない……!」

「このメイドが、あの夜霧の幻影殺人鬼……! 敵うの? 私たちだけで……? でも、こいつをどうにかしないと指揮官が」

「そう慌てるな。ベルファストの動向を窺っていたのが私だけとは考えにくい。身動きを取れないのは奴も同じ、今頃一航戦あたりがアクションを起こしているはず」

 

 と、ここでついにエディンバラが行動を起こした。

 だらりと脱力しきっていた右腕を水平に持ち上げて、自身の真横を指差す。

 エンタープライズとティルピッツは警戒しつつも、その指が指し示すものを確かめるため、学園と寮舎を繋ぐ道の脇に視線を移すと──

 

「悪い夢……そう、これは悪い夢よ……」

 

 

 植えられた並木と茂みの向こうには、数十人の艦船が寝かされていた。

 赤城や加賀をはじめとした、指揮官対策会議の常連メンバーのほとんどが山積みになって伸びている。流石に大きな怪我をしている者はいないようだが、みな一様に意識を失っていた。

 

 メイドは無慈悲に告げる。

 

「言ったでしょ?

 

 ──お前で28人目」

 

 

 

 

「あ、誰かきますよ? なんだか浮いてるように見えます。わたしの気のせいですか?」

 

 ベルファストとともに歩いていると、前方から青白いスパークを発しながらふよふよと漂う幼女がやってきた。もうそれだけで誰なのか判別できる。

 

 「あれはエルドリッジだな」

 

 エルドリッジ以外に不可解な反重力挙動で彷徨う駆逐艦はいない。お前は一体なぜ浮いているのか。これがわからない。

 エルドリッジは何か引力にでも引き寄せられるように接近してくるかと思えば、会話に相応しい距離まで来ると音もなく止まった。

 

「……指揮官……エルドリッジ……気づいたことがある……」

「気づいた?……一体何に?」

 

 エルドリッジは口数の少ないタイプで、言葉の意図が読みにくく、その上発言が突拍子もない。だが意味のないことは言わないし、時折確信を突いた意見を言うこともある。だから僕は、エルドリッジが何かを言おうとしているときには、彼女が口を開くまで待つし小さな声を聞き逃さないように真剣に耳を傾けている。

 

 どうやらエルドリッジは珍しく言葉に詰まっているようだった。静止した状態から無作為に回転しつつ、無抵抗で風に流されては木にぶつかり、反射してまた木にぶつかり……を繰り返してる。まるで一人だけ無重力空間にでもいるかのようだ。上にはねたらどうなってしまうのだろうか。あまり屋外には出ないほうが良いのではないかと心配になる。

 ベルファストはまだエルドリッジ独自の挙動になれないのか、ピンボールのごとく弾んでいるエルドリッチを、目を瞬かせながら視線で追っている。

 

「……指揮官を…………ずっとビリビリさせたら……」

 

 エルドリッチが囁くように小さな声で話し始めた。縦にぐるんぐるん回転しつつこちらに接近しながら。

 とりあえず受けとめる準備をする。

 

「…もう……指揮官は……エルドリッチから……逃げられな……ぁぁぁ.ぉぉぉ..とばされるぅぅぅぅ......」

 

 何かを言いかけたエルドリッチは、僕の前に立ちふさがってどこからともなく扇風機を取り出したベルファストによって明後日の方向へ出荷されてしまった。 扇風機を構えたまま険しい声でベルファストは言う。

 

「あぶないところでしたね、ご主人様」

「今僕はあぶないところだったのか……?」

 

 エルドリッチが僕に何かをしようとしていたのを、ベルファストは未然に防いだようだ。あのまま接近するエルドリッジを抱き留めたら僕はどうなっていたのだろう。多少ビリビリするだけでは済まされないのだろうか?

 

 と、流されていくエルドリッジを見送りながらぼんやり考えていると、断続的に唸るような爆音が聞こえた。

 

「……何の音だ?」

 

 こういった爆音はあまり珍しい事ではないのだが、今日は随分とペースが激しい。なにか異常があったか? いや、だとしたらこれほど静かなはずがないのだが……。

 

「きっとまた、赤城さんとエンタープライズさんがけんかしているですよ?」

「……ふむ。それもそうか。まあ、大ごとになる前に高雄が止めてくれるだろう」

「あのお二人にもこまったものですね」

「最近は出撃が減った分、二人が泊地で顔を合わせる機会も増えたからな」

 

 ああ見えて二人は犬猿の仲というわけでもないらしい。ただどうにも話が合いすぎるあまりヒートアップしたあげく、互いに譲れないものの為に戦わざるを得なくなってしまうらしい。この間ツェッペリンがそう教えてくれた。

 一体あの二人はどんな話をして、何のために戦いを始めるのか。あまり知りたくはない部類の情報である。

 

「いろんなひとをみかけるです」

「思えばこの泊地も大所帯になったものだ」

 

 はじめは寄せ集めたダンボール箱の即興テーブル一つを囲めば全員揃うほど小さな組織だったというのに、今では専用の大きな会議室を設ける必要があるほどの大所帯だ。あそこも使用に制限せず貸出自由で開け放っているが、艦の皆が自主的に定例会議を開いているらしい。みな意識が高く、指揮官の僕も鼻が高い。

 実をいうと定例会議の事を知ったのもまたつい最近の事だ。なんと50回近くも既に行っているらしい。結構な回数を執り行っているようだが、回を跨ぐたびに出席者が増え、討論も白熱の一途を辿っているらしい。まったく皆も人が悪い、何もそう隠すことないじゃないか。次の会議には僕も出席してみようと企んでいる。

 

『ダメだ一旦退くぞ!』

『食堂に逃げ込みましょう!』

 

 これは……エンタープライズとティルピッツの声か? 何か切羽詰まっているようだが。

 しかしティルピッツとエンタープライズとは、珍しい組み合わせだな。一体どういう状況で一緒にいるのだろうか。まあ、声しか聞こえない状況では知りようもないか。

 

『と、見せかけて……終わりだッ!』

『チェックメイトよ!』

 

 

 ちゅどーん。ずがががが。ピーピーピーボボボボ。。次々とあまり聞きたくない類の物音が耳に入る。 

 本当に一体どういう状況なんだ。

 

「なんだか騒がしいですね」

「ここまでのは流石に珍しいな。様子を見ておかないとまずいかな」

「……危ないですよ?」

「そんなことはないさ」

 

 不安そうにベルファストが僕を見上げるが、安心させるように力強く断言した。内心では根拠はないが。ベルファストの不安を振り切るように、あえてそう言った。

 

『やったか!?』

『さすがに今のは耐えられまい!』

『インディちゃん可愛い』

『誰だ今の』

『ダメだ全然効いてないわ!』

『おでんください』

『……びりびり……きもちいいのに……』

『うわあエルドリッチが飛んできたぞ!?』

 

 二人が食堂に駆け込んだからだろうか、一声の数が増えた。向こうには飛んで行ったエルドリッチも合流したらしい。恐らく扉を開けたまま閉めなかったからだろう。というかここまで響く爆音からして、相当ドンパチやっているはずなのだが誰も意に介した様子がないぞ。みんな一体どういう肝の据わり方をしているんだ。

 

「……ほんとうに危ないですよ?」

「一言注意するだけだし、なんてことはないと思う。そう剣呑な声が聞こえるわけでも……」

 

『──参る』

『げぇ高雄っ!?』

『総員退避ーッ!』

『ネギかってきたぞー』

『身体に力の起こりなし。我が剣生において無二の、自然無想による一の太刀』

 

 聞こえるわけでも……

 

 

『高雄ねえさんカッコイイー!』

『インディちゃんさえいればもう何もいらない』

『麻婆の豆腐は木綿にしろとあれほど……!』

『文句があるなら食わねばよかろう!』

『煮込んでいる、すべてを』

 

 

 

「よしベルファスト、危ないから部屋に戻るか」

「はいですっ!」

 

 




エディンバラがターミーネーチャンになってしまったのは、彼女が私のアズールレーンダウンロード初日に来た人だからなのです。ポートランドも初日に来た姉ですね。
他にも高雄やグリッドレイが初日組です。

エンプラさん? 高雄さんのディフェンスの甲斐あって相当後ですけど?
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