折れても再び立ち上がる 作:Seasoned Seaweed
「普通I科1年A組、
唐突に、私は生徒会室に呼ばれた。うちの生徒会は、面倒くさいやつがいるから、普段から目をつけられないように大人しく生活していた私は、何故、生徒会に呼ばれるのか分からなかった。
行かなければ面倒くさい事になるのは、目に見えていたため、足早に生徒会室に向かった。
コンコンコン
「どうぞ〜」
「失礼します。普通I科1年、夏樹涼です。生徒会が私に何の御用でしょうか?」
「来年度より、我が大洗女子学園で戦車道の授業を復活させることになった。そこで、戦車道経験者のお前に戦車道を受講してもらう」
「お断りします。私は戦車道を辞めたくてわざわざ大洗に来たんです。それに、選択必修科目は自由に決められるはずです」
私は、失礼しますと言って生徒会室から出ようとしたが、広報の河島さんがドアの前に立っていて、逃げることは出来なかった。
「まだ何か?話しは終わりましたよね?そこを退いてください」
「お前に戦車道を受講してもらわないと困る」
「そうなんだよね〜。もし取ってくれなかったら、この学校にいられなくしちゃうよ〜」
生徒会はどうしても私に戦車道を受講して欲しいようで、権力による脅迫までしてきた。実際に、この会長なら一生徒を学校にいられなくすることは容易だ。普通の生徒なら、この脅迫に屈してしまうだろう。しかし、私は違う。
「別に構いせんよ。この学校は戦車道がないってだけで入学しただけなんで、特に思い入れもないです。だから、転校することになんの躊躇いもありません」
私がそう言うと、河島さんは驚いた表情、小山さんは少し哀しそうな表情、会長は心底困ったような表情を見せた。生徒会は自分達が切れる最強の切り札が通じなかったから、かなり困惑しているようだ。この状況から察するに戦車道経験者を受講させなければならない理由があるようだ。
「何故ここまでして、私に戦車道を受講させようとしたのですか?」
「それはね〜、経験者がいたら他の生徒の見本になって、より戦車道が理解できるし、上達するからだよ」
会長の言った事は事実だろうが、そんなものは上辺だけのものにすぎないだろう。そんな薄っぺらい理由のためにわざわざ脅してまで受講させるとは思えない。
「会長、そんな上辺だけの事はいいので、本当の理由を話してください。脅迫してくるあたり、かなり切羽詰まった状況なのではないのですか?」
「……わかった。本当の事を話そう」
「会長!あれを言ってしまってもいいのですか!?」
「協力してもらうためには、言わないといけないからね」
そう言うと、会長は真面目な表情になり、深呼吸をした。
「我が大洗女子学園は今年度をもって廃校することが決まった。私達はもちろん抗議をしたが、年々、入学者が減少し、特に目立った成績がないからと廃校にすると言われてしまった。だから、20年前まで我が校で盛んだった戦車道を復活し、全国大会で優勝すれば廃校を撤回してもらうことに頼んできた。私達は、この学校が好きだから、なんとしてもこの学校を守りたいんだ。夏樹ちゃんがこの学校に思い入れがないのはわかってるし、協力してくれたとしても、夏樹ちゃんにメリットがないと思う。それに、初心者ばかりの急造チームで優勝しようだなんて無謀な事だってわかってる。それでも、私はこの学校を守るために、僅かな希望にかけたいんだ。どうか私達に協力してくれないか?」
そう言うと、会長は頭を下げ、それに倣って2人も頭を下げた。もし、私がここで断っても、会長は他の手使ってなんとかするだろう。しかし、私は会長の覚悟にとても感銘を受けた。廃校を阻止するために、政府の役人に立ち向かって、なんとか手に入れた最後のチャンスを逃さないために尽力する姿や絶対に廃校させないという覚悟は尊敬に価すると感じた。
「頭をあげてください。わかりました。会長の努力を無下にすることはできません。私も微力ながら協力しましょう」
「ありがとう!これで学校を守れるかも!」
こうして来年度の私の選択必修科目は戦車道に決まった。
4月、新学期が始まり私は2年生になった。だからといって何かが変わるわけでもなく、普段通りに登校して、クラス分けを確認した。そして、私は驚愕した。何故あなたの名前があるのかと。
掲示板に貼られた2年A組のクラス名簿、その中に夏樹涼の名前が書いてあった。そして、その下には去年まで黒森峰女学園に在籍していたはずの西住みほの名前があった。