折れても再び立ち上がる   作:Seasoned Seaweed

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サブタイトルいいのが思いつかなかった......


彼女が転校した理由を私は確信する

「実は、相談があってさ〜」

 

教室に戻ると武部が西住に話しかけた。どうせ、いつものあれだろう。

 

「ちょっと悩んでで。私罪な女でさ〜」

「また、その話ですか」

「最近色んな男の人から声かけられまくりで。どうしたらいいかな?

「色んな?」

「いや、近所の人たちなんだけどね、毎朝「おはよう」とか「今日も元気だね」とか」

「ですから、それはただの挨拶では?」

 

五十鈴の言う通りただの挨拶だ。武部が声をかけられる所何度か見たことがあるが、その人たちは、散歩中のおじいさんだったり、八百屋のおじさんとかで、そこそこ年をとってる人で、決して若いとは言えない。若い男の人にモテなくて、ついにそこまで勘違いしてしまうとは。

 

「武部さん、明るくて親しみやすいもんね。だからみんな友達になりたくなるんじゃないかな?」

「武部に声かけてるの散歩中のおじいさんとか八百屋のおじさんだよ」

 

そう言うと、西住の顔が少し引き攣ったが、凹んでいる武部を見てすぐさまフォローを入れていた。

 

少し廊下が騒がしいから、チラッと見てみると、生徒会が歩いてくるのが見えたから、このまま居ると面倒なことになることを確信した私はトイレに行くと言って教室を出て、生徒会にバレないように隠れた。

 

生徒会が教室に入った後、すぐに生徒会と西住が出てきた。バレないように遠くから見ているから、詳しくはわからないが、どうやら私の時とは違って脅しているというよりも、「先輩が命令してるんだからやるよな」みたいな圧力をかけているように見えた。生徒会が去ると、西住の目は死んでいた。

 

西住の反応を見るに、私の推測はどうやら正しいようだ。少しに気になるし、次の授業は面倒だから自主休講して、調べることにした。

 

私が、授業をサボる時はいつも屋上に行く。そしてその屋上には大抵、あいつがいる。

 

「よ!冷泉。またサボり?」

「そっちこそサボってるだろ」

 

冷泉は私のサボり仲間で、学年首席の天才だ。ただ、遅刻が多すぎて単位が足りなくなるかもしれないらしい。

 

冷泉のことは、ひとまず置いておいて、早速私は、ベンチに座ってノートパソコン開き、黒森峰のことを調べた。そしてすぐに、西住が大洗に来た理由がわかった。

 

『黒森峰10連覇ならず。』

 

その記事の内容は、大雨の中、山の中を走っていた黒森峰チームの車両が増水した川に転落し、それを助けるために、フラッグ車車長の西住が戦車から降り、その結果フラッグ車を撃破され、10連覇を逃した。その転落した車両の隊員は全員無事だったそうだ。

 

西住の行動を賞賛する声もある一方、フラッグ車の車長が行くべきではないとか、増水した川に飛び込むのは、その車長にとっても危険な行為で最悪車長も死んでいたかもしれないという指摘もあった。

 

私としてはそういう批判に関しては同意するし、間違っていないと思うが、やはり勝利より人命を優先したことは素晴らしいと思う。しかし、西住の家ではそうはいかないだろう。

 

西住流はいわば勝利至上主義の流派であり、犠牲なくして勝利を得ることはできない、と考えている。だから、そういった流派の家元の子が、勝利よりも人命を優先したことは到底許すことはできない行動で、しかも10連覇がかかっていたとなると、家元にきつく叱責されたはずだ。さらに、他の隊員からも白い目で見られたり、責める声もあったはずだ。

 

西住が大洗に来た理由はこのことが原因で、家元に勘当されたか、もしくは......。もしそうなら、少しだけ腹立たしくなった。自分だって同じなのに。

 

授業のチャイムがなり、ホームルームが始まるから教室に戻ろうとすると、生徒会が全校生徒に体育館に来るように放送したため、体育館に向かった。

 

生徒会が呼び出した理由は選択必修科目のオリエンテーションらしい。すると体育館が暗くなり、動画が始まった。内容はいかに戦車道が、素晴らしいものかをPRするもので、最早、宗教の勧誘のようにも見えた。

 

動画が終わった後、戦車道の世界大会が開催されること、そのため戦車道を復活させることが伝えられ、戦車道の成績優秀者には、食堂の食券100枚、遅刻見逃し200日、通常の3倍の単位が与えるとのことだ。

 

事情を知っている者としては、ここまで必死だと逆に笑いそうになった。これなら、少しは履修する生徒はいるだろう。

 

西住達と教室に戻ろうとすると、会長に呼び出されたため先に戻ってもらうことにして、生徒会に向かった。

 

「いや〜どうだった?さっきの動画」

「まあ、いいんじゃないですかね。あれだけ特典がつけば、少しは集まると思いますし。でも、3倍の単位を与えるのは少々やり過ぎだと思いますよ」

「やり過ぎたのはわかってるよ〜。でも、こうでもしないとみんな履修しないでしょ?」

 

それに関しては首肯せざるを得ない。戦車道は危ないし、お金がかかるため、競技人口はあまり多いとは言えない。しかし、これだけ特典があるなら、多少のことは目を瞑る生徒もいるだろう。

 

その後少し話した後、ホームルームに向かった。

 

次の日、西住の選択必修科目の用紙には香道に丸がされていた。どうしても、戦車道をとりたくないとはっきりと言った。私は確認ために、昨日調べた事を言ってみた。

 

「西住が戦車道とらない理由って去年の決勝のことだよね?」

 

その瞬間西住は肩をビクッとさせた。やはり、図星だったみたいだ。

 

「え?どういうこと?」

「人のいないところで話す。あまり人に聞かせたくないしね」

 

と言って人気のない所へ向かった。

 

 

 

この時私は静かに怒っていた。自分のことを棚に上げて。

 

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