折れても再び立ち上がる 作:Seasoned Seaweed
放課後、秋山に寄り道しませんかと誘われて、戦車倶楽部に入った。
私は戦車道をやめて以来、戦車関連の店に入っていなかったから少し懐かしい気分になった。1人でぶらぶらと店内を歩いていると昔かなりやり込んだ戦車のゲームがあったので久しぶりにやってみることにした。
少し腕が鈍っていたけど、この店の最高得点を超えたところで秋山達が集まってきた
「夏樹殿、すごいうまいですね!こんなにスコアの高い人初めて見ました!」
「アクティブで楽しそうです」
「このゲーム昔かなりやり込んだからね。腕が鈍ってて前よりスコア低いんだよね」
ゲームの話で盛り上がっていると店内のモニターで戦車のニュースが流れた。そこにはみほの姉、西住まほのインタビュー映像だった。
「戦車道の勝利の秘訣とはなんですか?」
「諦めないこと、そして、どんな状況でも逃げ出さないことです」
この言葉はみほだけでなく、みほから逃げて大洗に来た私にも響いた。戦車道をやめるようなその程度の人間に勝利などないと言われているように感じて、嫌な気分になった。
私とみほの様子を見て、武部がみほの家でご飯にしようと提案した。こうやって気分を変えてくれるのはすごくありがたいと思った。さすがオカン武部。
食事会は普通に盛り上がって楽しかったし、秋山はいつでも野営できるように飯盒を常備していることや、五十鈴が料理できないことや逆に武部がめっちゃ料理がうまいなど新たな発見もあった。
次の日、みほが遅刻してきた。どうやら寝過ごしたらしい。私も時々やるから仕方ないと思う。朝が来るのが悪い。
この日は、戦車道の教官が来ることになっていて、会長に騙された?武部はうきうきしながら待っていた。戦車道の教官ならほぼ間違いなく女性なのにね...
しばらく待っていると輸送機が飛んで来て、駐車場に10式戦車を放り投げて飛び去っていった。その際に学園長の車を吹き飛ばし、さらにバックして踏み潰した。私は、チラッと学園長室の方を見ると学園長が涙目でこちらを見ていた。ドンマイです。
そして、10式戦車から女性の教官が降りてきた。武部は「騙された...」と不満を口にしていたけどこの人すごい人なんだよね。高校時代に全国大会で単騎で敵戦車十五輌抜き、十二時間に渡る激闘の一騎打ちなどの数々の伝説を残している名選手だ。実際の試合映像を見たときの衝撃は凄かった。
「特別講師の戦車教導隊、蝶野亜美一尉だ」
「よろしくね。戦車道は初めての人が多いと聞いていますが、いっしょに頑張りましょう。あれ?西住師範のお嬢様じゃありません?師範にはお世話になってます。お姉様もお元気?」
「あ...はい...」
西住は物凄く気まずそうな顔で答えたので蝶野さんはきょとんとした顔で西住を見た後、私と目が合ってこちらに近づいてきた。
「それに貴方、夏樹涼さんですよね?高校では戦車道を辞めたと聞いていたけど、また始めたのね。嬉しいわ。貴方の試合では毎回驚かされたから凄く印象に残っているわ」
「...蝶野さんに覚えていただいて光栄です」
「西住師範って?」
「有名なの?」
「西住流って言うのはね、戦車道の流派の中でも最も由緒ある流派なの」
「教官!教官はやっぱりモテるんですか?」
おい、武部。蝶野さんになんて質問をしてるんだよ。せっかく戦車道の教官が来てくれたんだから、戦車道に関する質問をしてよ。蝶野さんも困ってるじゃん
「モテるというより、狙った的を外したことは無いわ。撃破率は120%よ!」
いや、普通に答えないでくださいよ。あと、狙った的って絶対敵戦車ですよね。
秋山が蝶野さんに今日の訓練は何かと尋ねると、なんといきなり試合形式で行うことになった。その時の蝶野さんの説明は擬音語しかない大雑把な説明だったのでみんなは一瞬戸惑ったが、やる気は十分だった。
「会長、ポジションどうしますか?私は砲手がしたいです」
「とりあえず夏樹ちゃんが車長は決まりでしょ。後はかーしまが砲手で小山が操縦手かな。私は干し芋係で」
「会長は装填手してください」
各チームポジションを決め、初期位置へと向かって前進した。全車両初期位置に着いた後教官から通信が入った。
「みんなスタート地点に着いたようね。ルールは簡単、全ての車両を動けなくするだけ。つまり、ガンガン前進してバンバン撃ってやっつければいいだけ。わかった?戦車道は礼に始まって礼に終わるの。一同、礼」
「「「よろしくお願いします」」」
「それでは試合開始」
訓練が始まってすぐに砲声が聞こえた。方向的にAチームがいる方だ。この砲声は恐らく八九式だから、早速交戦が始まったようだ。
「多分AチームとBチームが交戦してます。BチームはAチームに倒してもらいましょう。私達はAチームを倒します」
「りょうかーい」
戦車道を再開していきなりみほにリベンジする機会があるとは思わなかった。私はこの機会を逃したくなかった。だから絶対に勝ちたい。
会長達には申し訳ないけど、私のリベンジに協力してください、と誰にも聞こえないように呟いて、Aチームのいる方に戦車を前進させた。