ダリアの歌わない魔法   作:あんぬ

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ジャネット・チャント

 ダリアが新学期前に危惧していた闇の魔術に対する防衛術の授業だが、予想通り――――いや、予想以上にひどいものになった。

 

「ダリア、気持ちは分かるけど、ちょっとは抑えなさいよ。気持ちは分かるけどね。」

 

 むっつりと不機嫌そうな顔でのしのし歩くダリアに、ダフネが力なく声をかけた。ミリセントとパンジーも、明らかに疲れたような顔をしている。

 

 ロックハートの初授業はひどいものだった。

 まず「ロックハートのプロフィールに関する小テスト」が配られた時点で、ダリアは人生で初めてテストの放棄を決意した。

 ダリア以外のスリザリンの生徒達も概ね引いたようで、小テストの解答率は全体的に高くなかった。

 

 それが不満だったロックハートが、これ見よがしにため息をついて「チッチッチッ――――スリザリンの生徒は教科書の予習をしてこなかったのですか?グリフィンドールのミス・グレンジャーを見習うといい。彼女はなんと、このテストで100点を取りました!」と言ったのも、スリザリン生のイライラに油を注ぐ結果となっていた。

 

 ダリアはこの台詞を聞いた時、怒りを覚えるより先に「こんなテストで100点を取れるなんてすごい生徒が居たものだ。」と驚愕し、ミス・グレンジャーの名前をしっかりと脳裏に刻み込んでいた。

 

 

 

 

 その後の授業でも、ロックハートは自分の活躍を称える寸劇を(生徒に敵役を強制しながら)演じるだけで、「防衛術の授業」といえるようなものでは全くなかった。

 

 ドラコを狼男の役に指名した時など、あまりに怖いもの知らずな態度にスリザリン一同逆に感心したほどだった。ある意味公平と言えるかもしれないが、保護者からクレームが来るとは露ほども思っていないらしい。

 

 ロックハート(の顔面)に憧れていたパンジーは、その分ダメージが大きかったようで、ずっと俯き加減で落ち込んでいた。

 

「まあそんなに落ち込むことないじゃん。変なのにハマる前に、相手がヤバいことに気付いたんだからさ。」

「―――――ちがうの。ロックハートがあんなのだなんて考えもせずに、顔だけでファンになってた自分に嫌気がさしたの。過去の自分を殺してやりたいわ―――」

 

 パンジーは珍しく本気で落ち込んでいるようだった。自分の面食いを真剣に反省しているようで、彼女がドラコの事以外でこんなに落ち込んでいるのを見るのは割と珍しい。

 

 

 

 

 

 ダフネ達はパンジーの気分を変えるため、クィディッチの練習を見に行こう、と提案した。

 パンジーが(ロックハート以上に)熱を上げているドラコが、今年からスリザリンのシーカーになっていたからだ。

 

「ダリアも行くのよ。いつまでも不機嫌なままじゃ、こっちの気まで滅入っちゃうでしょ。」

「ええー・・・・」

 

 怪しい雲行きを感じたので徐々に一行から離れようとしていたダリアだったが、ダフネに見つかりしっかりと襟首を掴まれて捕獲されてしまった。

 

「―――だって、この前も練習を見に行ったばかりじゃない。何回見に行ったって、ドラコはまだ下手なままだと思うんだけど。」

「バカ!もっとオブラートに包んで言ってよ!」

「―――――――ドラコはまだ地道に努力を積み重ねてる最中だから、成果が出てから見に行った方がいいと思う。」

 

 ミリセントに怒られたダリアは、言葉を変えてもう一度言った。要するに、こんな頻繁にクィディッチの練習なんか見に行きたくないと言いたいらしい。

 

 スリザリンは新人シーカーの育成のためと言って、ここ何週間かの間で何回も練習を繰り返していた。

 つまり、パンジーがドラコの練習を見学しに行くのに付き合うのも、もう何度目かだった。ダリアは、もういい加減飽きてきていたが、(ダリアから見て)クィディッチ狂の3人はそうではないようで、何回見学しても楽しめるらしい。

 

「ドラコはクィディッチのチームに参加するのは初めてなんだから、まだ他の選手に比べて上手くないのは当然よ!だから私たちが応援して、励ましてあげなくっちゃ!」

 

「やはり私にはドラコしかいない!」と再確認したパンジーが熱く語り、結局4人で競技場へ行くことになってしまった。

 

 ダリアは競技場へ向かう道すがら、ずっと「今回が最後よ――――今度私を誘ってみなさい、あんたたち全員蛙に変えて大好きなクィディッチの競技場に放り込んでやるんだから――――」とぶつぶつ言っていた。

 

 

 

 

 

 

 競技場に出てきたダリアは、スリザリンチームの(ドラコ以外は)屈強な面々が睨みあっている面々を見て、うめき声を上げた。最悪のタイミングだ。

 

 スリザリンチームは手当たり次第に競技場の使用許可をスネイプ教授に出してもらったため、他の寮のチームと練習時間が重なり、こうした小競り合いが起こることがあった。

 

 前回は宿敵グリフィンドールと使用時間が重なり、一触即発の空気になり―――というか喧嘩が発生してしまい、なんだかんだでグリフィンドールチームの応援にかけつけていたウィーズリーがナメクジを吐く羽目になっていた。

 

 正直ダリアはその場面を見た時爆笑してしまっていたのだが(いつもわけもなく喧嘩腰のウィーズリーが間抜けな目にあっていい気味だと思ったし、良く分からないクィディッチを見るよりよっぽど面白かった)、今回ダリアは全く笑えそうになかった。

 

「――――――やだ。私帰る。ハッフルパフチームが居るじゃない。」

 

 鉢合わせてしまっていたのはハッフルパフチームのメンバー達だった。チーム全員がスリザリンと向き合って、戸惑ったような表情をしている。

 ハッフルパフ生は温厚な生徒が多いので、前回のグリフィンドールチームのように喧嘩腰になってはいないが、明らかに納得していないという雰囲気である。

 

 ダリアはその中にセドリックが居るのをしっかり視認した。

 

 ダリアがセドリックに「何か思う所」があることに気付いていたダフネ達は、ちょっとニヤニヤして揉め事の中に近づいていくことをやめた。

 

「そうね、できるだけ嫌な印象与えたくないものね。」

「そういうのじゃないし。」

「何言ってんのよ。顔合わせそうになったらいっつも慌てて私らの陰に隠れるくせしてさ。」

「いやほんとそういうのじゃないから。」

「恥ずかしがらなくっていいわよ。私も色々協力してあげるから!」

「だから違うっていってるのにぃっ!!」

 

 揶揄われたダリアは、最終的にいつもの癇癪を起した。顔を真っ赤にして小さい子供みたいに足をバタバタ踏み鳴らすダリアに、3人は笑い声を上げた。

 自分の子供っぽい様子がこの人たちを面白がらせているということに一応気付いていたダリアは、ムカムカをぐっとこらえてむっつり黙り込んだ。

 

 

 

 

 そんな風に観覧席できゃいきゃい騒いでいたスリザリンの女の子たちを、ひそひそと指さしている集団が居た。ハッフルパフチームの応援をしに来ていたハッフルパフの女子生徒達だ。

 遠くに座っているので何を話しているのか聞こえないが、明らかにこっちを指さして嫌な顔をしている。

 

 その事に目ざとく気付いた気の強いパンジーは、「売られた喧嘩は買う」とばかりに、その集団にズンズン近づいて行った。

 相手は明らかに年上だったが、彼女はそんなことは気にした風もなく、いかにも偉そうにツンと上を向いて冷たい感じで歩いていくので、相手のハッフルパフ生はたちまちたじろいだ様子で身構えた。

 

 大体のハッフルパフ生は、スリザリン生に意地悪をされた経験があるので、緑のネクタイを見るだけで体が拒否反応を示してしまうらしい。

 こういうことをする人がたくさんいるものだから、スリザリンが嫌われるのはある程度しょうがないかもなぁ、とダリアは思う。

 

 

 

 堂々とゆっくり歩いて行ったパンジーが、顎を上に向けたまま威圧的な口調で訪ねた。

 

「あら!私たちに何かお話があるみたいだったから、わざわざ来てみたのだけれど―――――気のせいだったようね。用もないのに人を指さす礼儀知らずの集まりだったみたい。」

「おおー・・・・」

 

 素晴らしく嫌みな言い方だ、とダリアは感心してしまった。薄い笑いを浮かべて嘲るパンジーに、ハッフルパフの女子生徒達はすっかり怯えてしまっている。

 ダリアはパンジーの嫌な表情と一緒に今の台詞を心のメモ帳にしっかり記録した。今度嫌いな奴に出会った時には私も使ってやろうっと――――――。

 

 それでも勇気を振りしぼったハッフルパフ生の一人が、震える声でパンジーに立ち向かった。

 

「れ、礼儀知らずはあんた達のほうじゃない、スリザリン!この時間はもともとハッフルパフチームが予約していたのよ!そ、それを後から割り込んで私たちに出ていけだなんて、ずるいじゃない!」

 

 

 ダリアは「まあそう思うのも仕方ないけど、無視してどっか行けばよかったのに。」と内心秘かに相手に同情した。

 相手に反撃されたパンジーが、更に嬉々として口撃を上乗せしようとしていたからだ。パンジーは相手の生きが良ければ良いほどぶちのめしがいがあると感じる類の性格だった。

 

「おかしなこと言うのね、どの時間にどのチームが競技場を予約しているかなんて、知るわけないじゃない!スリザリンチームはスネイプ先生に『できる限り予約を入れて欲しい』って頼んだだけよ。その結果チームが被ることだって、今までもあったことでしょ。一緒に練習すればいいじゃない!」

 

「他のチームと一緒に練習すると作戦が漏れちゃうから、出来るだけ避けたいと思うのは当たり前よ!特にあなた達はどんな手を使ってくるか分からないし――――。」

 

「あんたたちの作戦がばれるなら、こっちの作戦がばれるのも一緒じゃない。そっちだってスリザリンの作戦を盗めばいいのよ。」

 

「そんなのフェアじゃないわ!」

 

「フェアなんて知らないわよ!スリザリンがどんな手を使っても勝利にこだわるチームだってこと、ご存知なかったかしら?」

 

 一つ言えば十帰ってくるパンジーに、相手はもう既に半泣きになっていた。それでも相手はもう引っ込みがつかないらしく、口論は止まらない。

 

 段々白熱しヒートアップするパンジーと女子生徒の言い争いは選手たちにも届いていたようだ。怪訝そうにこちらを見ている。

 

 あまりそちらに見つかりたくなかったダリアは、言い争いには加わらず遠巻きに騒ぎを見ているダフネやミリセントの近くに行き、上手く隠れようとした。

 

 そのままやり過ごそうとしていたダリアだったが、同じように離れたところからパンジーと言い争っている友人を見守るハッフルパフ生達の中に、信じられない顔を発見してしまった。

 

「うそでしょ!!!???」

「ちょ、ちょっとダリア?どうしたの!」

 

 ダリアはあまりに信じられなかったので、目立たないようにしていたことも忘れ大きな声で叫ぶと、その顔の持ち主を確かめようと弾丸のように駆け出した。

 

 普段積極的に他寮の生徒に絡んでいくことのないダリアの行動に、スリザリン生はもちろん、ハッフルパフ生も驚いている。

 嬉々として相手をいたぶっていたパンジーも、目を丸くしてダリアを見ていた。

 

 

 

 今までにない速さで競技場を駆け抜けたダリアは、その女生徒の目の前に来ると、相手の顔を嘗め回すようにじっくり視線を走らせた。

 金髪の巻き毛に、すらっとした体。

 大きな青い瞳は、理由もなくじろじろねめつけられることに明らかに困惑の表情を浮かべている。

 びっくりするほど綺麗な顔は、やはり見間違いなどではなく、ダリアの知っている少女のものだった。

 

「あんた――――――ジャネット!ジャネット・チャントでしょ!どうしてこんなところにいるのよ!」

 

 ダリアが見つけてしまった相手は、もとの世界で一緒のお城に暮らしていた、ジャネット・チャントという少女と全く同じ顔をしていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 ダリアに突然名前を呼ばれた少女は、明らかに戸惑っている様子だった。

 

「た――――――確かに、私はジャネット・チャントだけど――――――」

「ほらやっぱり!いいから聞いたことに答えてよ、あんたどうしてこんなところにいるの!」

 

 ダリアは常にない攻撃性を見せてジャネットを怒鳴りつけた。完全に我を失っている様子だ。―――――ダリアは突然の予想だにしなかった邂逅に驚き、ついにあの人が自分の居場所に気付いたのかもしれない、と思い込んで錯乱しかけていた。

 

 明らかに尋常ではない彼女の様子に、不安げな様子でローブの裾を引っ張るダフネやミリセントにも気づかず、ダリアはイライラとしてジャネットを睨みつけた。

 

「ど、どうしてって―――――ハッフルパフチームの応援に来たのよ。それ以外に特に理由は無いわ。」

「そんなこと言ってるんじゃないって分かるでしょ!――――私は!あんたがどうしてホグワーツに居るのかって聞いてんの!だってあんた、魔力全然なかったはずじゃない!」

 

 

 ダリアが吐き捨てた言葉に、ジャネットは顔を凍らせた。明らかに聞かれたくないことを聞かれて焦っている表情だった。

 

「魔力が全然なかったあんたがホグワーツに来れるわけないでしょ!だったらどう考えても、あんたがここに居るのはあの人の差し金―――――――」

「ちょっと、さっきから聞いていれば――――――ジャネットのことで今更とやかく言うのはやめなさいよ、スリザリン!」

 

 ダリアの烈火のごとき怒りにあっけに取られていたハッフルパフ生達だったが、最初に我に返った女生徒が、ダリアを鋭く睨みつけて言った。

 

「ジャネットが突然魔力に目覚めて、一昨年編入してきたのは知ってるでしょ!あの時この子のことをおぞましい言葉でさんざん侮辱しておいて、また今になって蒸し返そうだなんて、絶対に許さないわよ!」

「魔力に目覚めるぅ!?」

 

 基本的に他寮の出来事には全く興味がなかったダリアは、もちろんそんなことは全く知らなかったので、純粋に驚いた。

 ―――――というか、彼女が「魔力に目覚める」なんてあるはずがない。ダリアが見た時のジャネットは全く魔力のカケラも持っておらず、この先目覚めるなんて可能性は全くありそうに無かったからだ。

 

 しかし――――ダリアは再びジャネットを今度は少し冷静になって観察した。確かに、今このジャネットには、魔力が確かに備わっているようだ。

 あのグウェンドリンのように大きな魔力ではないが、誰かに与えられたものではない、自前の魔力と見受けられる。

 

 幾分か落ち着いたダリアは、もう一度ジャネットを見てみた。

 先ほどから「まるでダリアのことなど知らない」といった態度で居るのは、もしかすると演技ではないのかもしれない。

 

「あんた、ほんとにジャネットなの?私の事分からないの?」

「え、えっと、その――――――」

 

 ジャネット(仮)は即答できず、明らかに先ほどより追い詰められた顔をしてしどろもどろになっている。どう答えたものか、本当に分からず困っている様子だった。

 

 

 それにどうやら、本当にダリアの顔に見覚えが無いらしかった。

 このことが分かると、ダリアはやっと完全に冷静になって考えることが出来るようになっってきた。

 

 どうやら彼女は、本当にダリアの知っているジャネットではないらしい。――――――だとすれば、彼女の正体は一つしかなかった。

 

 

「わかったわ。あなた、ジャネットの代わりにこっちに来た人でしょ。確か、名前は、えーと―――――ロー、ロミーリア」

「やめて!!!!!」

 

 突然の大声にダリアはびっくりしてしまい、目をまん丸くして彼女を見つめた。

 今度こそ彼女ははっきりと怯えた顔になっていた。ダリアが口にした言葉を耳にした途端、頭を抱えてしゃがみ込んでしまっている。

 あまりの怯えように、今度はダリアが戸惑うことになってしまった。

 

「な、なによ急に大声出して。名前呼んだだけじゃない――――」

「違うの!私は知らない!そんな人知らないの!私はジャネット・チャントよ!」

 

 ダリアが何か声をかけようとすると、彼女は聞きたくない、とばかりに髪を振り乱して叫ぶ。彼女の友人たちが戸惑った様子で声をかけても、全く耳に入っていない様子だ。

 

 ダリアが「なんだか大変なことになってしまった・・・」と立ちすくんでいると、最悪のタイミングで、最悪の人物が駆けつけてしまった。

 

 

「一体何をしているんだ!!!!」

 

 ダリアは一気に青くなった。反対に、ハッフルパフ生達はホッとした顔で駆けつけてきた人物を見た。

 声の持ち主は、彼にしては珍しく本気で怒っているらしかった。

 

「セドリック!ああ、よかった。ジャネットの様子がおかしくなってしまって。」

「ああ、向こうからも見えたから分かるよ。さあ、ジャネット、大丈夫かい?」

 

 セドリックは泣きじゃくるジャネットの肩を優しくたたくと、ダリアの方を鋭く睨みつけた。

 

 睨みつけられたダリアは、気まずく視線を逸らした。

 流石のダリアも、この状況を見たら誰もが「ダリアがジャネットを泣かせた」と思うだろう、と言うことは理解できた。

 そして理由は分からないが、実際ジャネットはダリアの言葉で「こう」なっているようだということもなんとなく分かった。

 

「―――――――それで、一体何がどうしてこうなったんだい?」

 

 セドリックがダリアを睨んだまま、静かにハッフルパフの生徒に尋ねた。

 いつも穏やかなセドリックが、どうやら本気で怒っているらしいことを察したその生徒が、戸惑いながら答えた。今日は予想外のことが起こりすぎて、全員が嫌と言うほど混乱していた。

 

「良く分からないの。その子がジャネットに名前を訪ねて、ジャネットの様子が段々おかしくなってきて。そしたらいつの間にかジャネットが泣き出してて。」

「―――――知らないわよ。その子が勝手に泣き出したんじゃない。私はその子の名前呼んだだけだもん。」

「――――――ダリア。」

 

 ダリアがふてくされたように口を挟んだのを、セドリックが固い声で遮った。

 にじみ出る怒りを感じ取り、ダリアは口を噤んだ。

 

「―――――――去年、最初に誓っただろう。学校の生徒に怪しげな呪文をかけないって。」

「―――――――――。」

 

 別にかけてないし。とか言い出せる雰囲気では全くなかった。

 

 完全にセドリックは、「ダリアが気に入らない生徒に呪文をかけておかしくさせてしまった」と思い込んでいるようだった。

 状況とセドリックの経験的に、そう考えてしまうのも無理はない、とダリアの冷静な部分は考えている。

 今どんな釈明をしても、セドリックには言い訳としか聞こえないということも分かってしまった。

 

 そっぽを向いて口を噤んだままのダリアをじっと見つめ、セドリックは最後に低い声で吐き捨てた。

 

 

「―――――二度と、僕の友人に近づかないでくれ。」

 

 そのままセドリックはしゃくりあげるジャネットを気遣いながら、校舎へ戻って行ってしまった。

 

 誰もが声を発することのできない中、ダリアはあまりの急展開にどうしてこんなことになってしまったのかをぐるぐる考えていた。

 


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