ダリアの歌わない魔法   作:あんぬ

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禁じられた森

 まさか意識を通してバジリスクの目を見ただけで、肉体が石化してしまうとは、予想外もいいところだ。

 

 調査の最中置いていくことになる体は、いつものように護りの呪文をたっぷりとかけて保護していた。誰かが保護されたダリアの体を利用しようとしたり傷付けようとしたりしても、それこそバジリスクだってかすり傷一つ負わせることは出来ないはずだった。

 

 しかしダリアは、意識の方の保護は全く考慮していなかった。

「意識」と言うものの、要はただ自分の視界をその場に飛ばすだけだ。実態があるわけでもないただの意識を察知できる者など居るはずもないので、保護する必要性も感じていなかったのだ。

 

 今回に限っては、相手が「目があっただけで殺す」というバジリスクなので、直接対峙する際には何らかの対策が必要だということを考えてはいたものの、まさか潜伏場所を調べる段階で鉢合わせしてしまうとは予想もしていなかった。

 

 まさかバジリスク自身も、知らぬ間にスリザリンの生徒を一人石にしていたとは夢にも思うまい。

 どう考えても、ダリアが勝手に自滅しただけだった。

 

 

 

『だからいつも言ってるでしょ、考えが甘いって!結局なんだか変なことになっちゃったし。ダリア、ちゃんと戻れるの?』

 

 ―――わかんないよ!こんな状態になったことないもん。でも体の中にはどうしてか戻れないし、そもそも体は石になっちゃってるし。どうしよう。

 

 バジリスクと視線が(一方的に)合って体が石化し、意識だけの状態で帰るに帰れず途方に暮れていたダリアだったが、体の周りを漂っているところをトゥリリに発見された。

 

 意識だけの状態のダリアはやはり他の誰にも気づかれることが無かったのだが、幸いなことに神殿のネコの血を引くトゥリリにだけはダリアの存在を感じることが出来るらしかった。

 

『それでもほんとにうっすらとしかわかんないよ。ダリアの姿がはっきり分かるわけでもないし、何となく声が聞こえただけだもん。ダリアが自分の体の周りでぐすぐす泣いてなきゃ気付かなかったよ。』

 

 ―――――泣いてないもん・・・。ああ、やっぱり魔法も魔術もなーんにも使えない!のどが無いから呪文も唱えられないし、そもそも考える脳みそが無いんだもの!むしろどうして私は今こんな考えていられるの?

 

『残留思念ってやつじゃないの?よく分かんないけど。・・・ねぇ、どうにかして元に戻れないよね?』

 

 ―――――適当言わないでよ!こーんなに可愛い女の子を悪霊みたいに!あ、でも私、今顔も無いんだった・・・。

 

 トゥリリは時々鋭いことも言うが、とんでもなく適当なことを言う場合もある。今の『残留思念じゃない?』はその中でもとびきり適当なあしらい方だった。

 しかし、脳みそも無いのに思考する存在など、残留思念としか呼びようが無いのもまた事実だった。

 

 それからというものの、どうにかして体の中に戻ろうと試行錯誤するものの、どうにもうまくいかない。

 体の中に戻ってしまえば、石化状態も解除できると思うのだが、今は文字通り手も足も出ない状態のダリアは途方に暮れてしまった。

 

 これは石化が解除するまでは、何もできないかもしれない。

 ダリアはそう思い至り、気が遠くなってしまった。マンドレイクが収穫されるまで、あとどれくらいかかるのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 クリスマス休暇が終わり、ホグワーツに帰ってきた生徒達は、クリスマス休暇中にスリザリンの生徒までが襲われたと聞き、更に動揺した。

 

 知らせを聞いてすぐに駆けつけてくれた同級生たちは、目を見開いた表情のままベッドに横たわったダリア(ダリアは自分のこの表情を見るたび、なんて間抜けな顔なんだろうと恥ずかしく思っていた。もっときりっとした表情で固まりたかった)を見て泣き崩れた。

 

 

 

「そんな――――ダリア!だから危ないって言ったのに!クリスマスには手紙の返事をくれたのよ?その後でこんなことになるなんて!」

 

「見てよこのびっくりしたような顔――――――この子どんくさいから、自分でもこんなことになるなんて思ってもなかったんだわ――――――やっぱり無理やりにでも連れて帰っておけばよかったのよ・・・・。」

 

「ダリアの馬鹿!あんたは自分が思ってる以上に抜けてるのよっていつも言ってたのに!――――――どうしてこんな無茶したのよ!」

 

 

 ダリアの体にすがりついてさめざめと泣く3人に、ダリアは申し訳なく思った。一言二言余計な事を言っている気もするが、自分の間抜けな失敗のせいで本当に悲しんでいるらしい。

 もう少し慎重に行動すればよかったかもしれない。焦るあまり、いつものやり方で大丈夫だろうと高をくくってしまっていた。

 

 

 

 

 

 現場の状況やドラコの証言から、「ダリアはスリザリンの怪物を捜索しようと、『幽体離脱(スネイプにそんな風に説明していた)』をしている最中に襲撃された」という判断が下された。

 

 もちろん「意識だけで学校中を徘徊していた末にバジリスクの視線を浴びてしまい、遠く離れた場所の体が石化してしまった」ということなど分かるはずもなく、ダリアの噂が広まるにつれ、寮の中でも安全ではないということを理解した生徒達は、気の休まる場所が無くなってしまった。

 

 以降、生徒達は教室移動の際だけでなく、寮内ですら固まって行動し、決して一人にならないよう厳命された。

 

『一人だろうと三人だろうと、バジリスクにとっては何も変わらないと思うけどなぁ。ねぇ、ダリア―――――ダリア?』

 

 ――――もういや、恥ずかしくてお外歩けない。怪物を捕まえようとして返り討ちにあったなんて噂がこんなに広がってる!これじゃあ私、ただの思いあがった間抜けじゃない!

 

『思いあがったマヌケはまぁ、間違ってないんじゃないかなぁ。散々注意したのにこれなんだもん――――――おっと、ふふーん!今のダリアがなーんにもできないっていうのは知ってるもんね!じたばたしたって痛くも痒くもないよぉ。』

 

 ―――――戻ったら覚えてなさい!一日3回シャンプーしてすみずみまで洗いつくしてやるんだから!泣いて嫌がってもやめない!

 

 ダリアはミリセントが用意してくれたキャットフードを悠々と食べるトゥリリを見て、忌々しそうに見えない足を踏み鳴らした。ダリアの入院中は、ミリセントが自分の飼い猫と一緒にトゥリリの面倒を見てくれるらしい。

 

 トゥリリは自分の忠告を聞かずに危ない事をしたダリアに、少なからず怒っているようだった。

 ダリアも自分が「思いあがったマヌケ」ということは今回のことではっきり思い知ってしまったが、それでも他人に言われるのは頭にくる。

 他にも自分の悪口を言っている生徒(主にグリフィンドール生だった)を見つけると、ダリアは心のメモ帳に相手の名前をしっかり記録しておいた。ダリアは根に持つタイプだった。

 

 

 

 

 

 しかし、石になって悪かったことばかりではない。というか良かったことでも探さなければやっていられない。

 

 まず、スリザリン生のダリアが襲われたことで、他寮の生徒からの風当たりが幾分か弱まった。

 スリザリン生を見ただけで逃げる生徒や、ミリセントに喧嘩を吹っ掛ける生徒が減ったのだ。―――――ダリアはこうなって初めて、「校舎裏に来いや。」の場面を目撃してしまった。相手は上級生だったにもかかわらず、ミリセントは相手が杖を抜く前にコブシで沈めてしまっていた。コブシってすごい。

 

 

 

 もう一つ、セドリックのダリアへの疑いが解けた(かもしれない)ということだ。

 ダリアはまだ見たことが無いのだが、お見舞いに来てくれるダフネ達曰く、何度かダリアの様子を見に来た(らしい)セドリックを手ひどく追い返したことがあるらしい。

 

『なーにが「見たことが無い」だよ。ほんとかどうか確かめるの怖くて、見ないように逃げただけでしょ。』

 

 ――――――――。

 

 彼女らはダリアが、セドリックに疑われているのを気に病んでいたのを知っていたので、それでダリアがこんな危険な真似をしたと考えているらしかった。

 そしてダリアがこんなことになってしまったのは、セドリックのせいだと恨んでもいた。

 

 確かにセドリックに疑われて焦っていたのは事実なのだが、疑いの理由も知っているダリアからすれば、少々心苦しくはあった。

 同時に少しばかりセドリックの思い込みの激しさに腹が立ってもいたので、「もっとやれ」と思う自分も居たのだが。

 

 

 

 

 

 

 とりあえずダリアは当面の方針として、日中は意識だけでも授業を受け、放課後は禁じられた森に入り、マンドレイクを探すことにした。

 可能性はとてつもなく低いが、野生のマンドレイクが生えているかもしれない。

 

『なにもこんなになってまで授業受けなくてもいいんじゃないの?』

 

 ――――――だって勉強遅れたくないもん。分からないことがあるのイヤだし。

 

 マンドレイクが生えているかもしれない草むらを覗き込みながら、トゥリリと共に禁じられた森を散策していく。

 意識だけのダリアはマンドレイクを見つけても触れることが出来ないので、万が一見つけたら、トゥリリに引っこ抜いてもらう必要があるからだ。

 神殿の猫はもともととんでもなく強い魔力を持っているので、マンドレイクの悲鳴を聞いても影響を受けない。

 

 

『それにしても。』トゥリリが周りをキョロキョロ見渡しながら言った。『禁じられた森って初めて入ったけど、たっくさん魔法生物がいるんだねぇ。こんなに賑やかだなんて思ってなかったよ。』

 

 トゥリリの言う通り、思った以上の種類や数の魔法生物が生息している気配を感じた。

 ここに来るまでの間だけでも、ヒンキーパンクやボウトラックル、レッドキャップなどの魔法生物がうじゃうじゃ居るのを目撃している。

 

 ―――――というか、なんでレッドキャップが禁じられた森に居るの?古戦場とかに住んでるんじゃなかった?

 

『そうなの?よく分かんないけど、ここ古戦場じゃないでしょ。迷い込んだだけじゃあんな増えないと思うし―――――――――ダリア、何か聞こえるよ!』

 

 耳のいいトゥリリが突然立ち止まった。前方を鋭く睨みつけている。これまでにないほどの警戒態勢だ。

 

 ――――――危険な生き物?まさかバジリスク?

 

『分からない。でもすっごくやばい感じがするよ。ダリアも意識だけとはいえ、注意した方がいいかも。』

 

 トゥリリが猫らしく音もなく森の奥へ進んでいく。しばらく歩くと、ダリアの耳にも不可思議な物音が聞こえてきた。

 

 ――――――これ、歌?嘘、こんなところに人が居るの?

 

 聞こえてきたのは、明らかに生物の鳴き声では無く、人の歌声だった。歌詞は聞き取れないが、なんとももの悲しい印象の音色だ。

 

 しかしここは森の入り口から大夫進んだ場所である。生徒はおろか、ハグリッドでさえ足を踏み入れることをためらうようなけもの道を進んだその先だ。

 

 返事をすることもなく歌の聞こえる方角へ進んだトゥリリの毛皮が、一瞬でぶわ、と逆立った。

 同時に木立の隙間から見えたのは、目を覆いたくなるようなおぞましい光景だった。

 

 

 

 

 

 ―――――――――そんな、ありえない。マンティコアだなんて。

 

 マンティコアとは頭は人間、胴体はライオン、尾はサソリの形をした、ギリシアやインドなどの地域に生息する魔法生物だ。サソリの尾には、刺されると即死してしまうほどの強い毒性があるらしい。

 皮膚は丈夫でほとんどの呪文を通さないといい、バジリスクと同じ危険度に分類されるほどの危険性を持っている。

 

 ―――――――――しかし、本来ならイギリスに生息しているはずの無い生物だった。

 

 

 

 マンティコアは食事の最中だった。

 仔馬だろうか。既に息絶えた哀れな獲物の腹を、人間に似た口元を真っ赤に染めて引き裂いていた。

 

 獲物を咀嚼する口元から、低い歌声が響いている。このおぞましい生き物は、食事の際嘆きの歌を口ずさむという。

 

 ―――――トゥリリ、逃げよう。マンティコアが食事に夢中になってる隙に。

 

 いくらトゥリリが神殿の猫だとは言え、鉢合わせて無傷で済む保証はどこにもない。

 ダリアが帰還を促すが、トゥリリは目を見開いたまま動かない。瞳孔を大きく開き、マンティコアが貪っている仔馬をじっと見つめている。

 

 ―――――トゥリリ!

 

『―――――!!』

 

 ダリアの叫びに、トゥリリはハッとしたように後ずさった。

 しかしその際、わずかながら物音を立ててしまっていた。

 

 マンティコアの目が、ぐるりとこちらを向いた。

 

 

 

 

 次の瞬間、トゥリリとダリアは一目散に来た道を引き返していた。背後では、新たな獲物に気が付いたマンティコアが、人のような顔に笑みらしき表情を浮かべて追ってきている。

 

 ―――――トゥリリの馬鹿!私のこと言えないじゃない、どうしてあそこで音立てちゃうの!

 

『ごめん!でもあいつの食べてるものが気になって――――くそ、速すぎる!このままじゃ森の入り口までに撒けないよぉ!』

 

 それは大変まずい事態だ。マンティコアは人を好んで食べる。そんなものをホグワーツに解き放てば、被害はバジリスクの比ではなくなってしまう。

 危険を承知でもう一度森の奥へ逃げ込もうかと考えていた矢先、突然トゥリリの足元に矢が突き立った。

 

「こっちだ!」

 

 木立の奥から、今度こそ人らしき声がした。トゥリリ達は考える余裕もなく、そちらへ飛び出した。

 

 

 

 

 ―――――――追ってこない?うそ、気付かなかったはずないのに。

 

 マンティコアは獲物が目の前で道を逸れたにもかかわらず、追ってこなかった。

 どころか、急に不自然な方向転換をし、元居た森の奥へ戻っていく。

 トゥリリは地面の辺りをフンフン嗅いでいたが、ハッと魔法の痕跡に気が付いた。

 

『ダリア――――――これ、迷いの魔法だ。来たときは気付かなかったけど、中からは魔法生物が出れないように、外からは人間が入れないような魔法がすごく上手に隠されてる。』

 

「―――――その通りだ、異界の猫よ。彼らは森の奥から決して出ることは出来ない。」

 

『あんたは――――――』

 

 木立の奥から、ふたりを救った声の主がゆっくりと現れた。予想よりもずっと大きな影である。

 それもそのはずだった。声の持ち主は、正確には人間ではなかった。

 

『ケンタウルスだったんだ。――――――助けてくれてありがとう。礼を言っとくよ。』

 

「いや――――礼には及ばぬ。我々は仔馬が傷つくことを望まない。」

 

 弓矢を手にゆっくりと現れたのは、栗毛のケンタウルスだった。静かな目でトゥリリを見つめている。

 ケンタウルスを初めて見たダリアは、思わず感嘆のため息をついた。なんてすばらしい毛並みなんだろう。

 馬には乗れないが馬が好きだったダリアは、うっとりと彼の艶やかな胴体を眺めた。

 どうせあちらからは見えないはずなので、遠慮は一切しなかった。

 

『仔馬っていうか、猫なんだけどな―――――って、そんなのはどうでもいいや。ちょっと聞きたいことがあるんだ。この魔法についてなんだけど。』

 

 トゥリリはケンタウルスに迷いの魔法について尋ねようとしたが、彼は悲し気に首を振ると、くるりとこちらに背を向けた。

 

「すまないが、我々はそれについて語る言葉を持たない。我らの詠みはそれについて何の答えももたらさなかった。―――――もう行かねば。今宵は幼き星が一つ潰えた。」

 

 そのままケンタウルスは振り返ることなく森の奥へ消えていった。

 ダリアは名残惜しそうにその背中を見送っていたが、姿が見えなくなると、彼の言葉を反芻し見えない首を傾げた。ケンタウルスの言葉は詩的すぎて理解に苦しむ。

 

 ――――――つまり、何が言いたかったの?あの人。もしくは馬。

 

『――――言えることは何もないってさ。あと、今から仲間の弔いをするんだと思う。―――――さっきマンティコアが食べていたの、きっとケンタウルスの子供だ。上半身はすっかり食べられてしまっていたけど。』

 

 ―――――――!!

 

 ダリアは先ほどのおぞましい食事の風景を思い出した。確かにあの仔馬は、体の半分をすっかり食べられてしまっていた。そこにケンタウルスの上半身が付いていたのだとしたら。

 

 ダリアは無いはずの胃がむかむかしてきた。

 

『この魔法は外から人間を入れることを拒んで、中から魔法生物を出すのを拒む。つまり、人間以外の魔法生物が入ってしまえば、決して出ることができない造りになってるんだ。きっとあの仔馬は魔法の中に迷い込んで、そのまま――――』

 

 ――――つまり、この結界を張った奴は、あのマンティコアをここで飼ってるってこと?マンティコアが逃げないようにした上に人間に見つからないよう隠して、でもエサは勝手に入ってくるようにして。――――まさか、これもスリザリンの継承者の仕業なの?

 

 ダリアはよく考えてみたが、その可能性を否定することは出来なかった。バジリスクの保険に用意してあるのか、はたまたマンティコアが成長しきったら満を持して解き放つつもりなのか。――――――しかしケンタウルスの思わせぶりな言い方も気になってしまう。

 

 ―――――ああダメ!脳みそが無い状態で考えても何にも思いつかないわ!どっちにしろ一刻も早く元に戻った方がいいってことしかわかんない!今はとにかくマンドレイクを探すのよ!

 

『そうだねぇ。出来るだけ早い方がいいかな。じゃないとマンティコアどうこうの前に、バジリスクがホグワーツを壊滅させちゃうよ。』

 

 

 その後も結界に気を付けながら、マンドレイクを探して回ったふたりだったが、結局季節外れのマンドレイクを見つけることは出来なかった。

 

 

 

 

 意気消沈したダリアは、とぼとぼと自分の体が寝かされている医務室に戻って行った。

 別に自分の体の近くに居る必要は無いのだが、他に行くところも無かったためだ。

 寮の部屋では、ダフネ達が未だに辛気臭そうな顔をしていたので、かなり気まずかった。

 

 しかし医務室も暇なので、ダリアは入院している患者を覗き見したり観察したりしながら過ごしていた。

 石化の患者以外は、大体は怪我や病気で寝込んでいる場合がほとんどなのだが、中には誰も来ないと思ってとんでもないことをしている生徒達も居た。

 トゥリリは医務室に基本入ってこれないので、ダリアは誰にも邪魔されることなくじっくり鑑賞していたが、そういう生徒達はすぐにマダム・ポンフリーにすぐに見つかり、即つまみ出されていた。

 

 

 

 変わり種の入院患者も居た。グリフィンドールのグレンジャーだ。あのロックハートのミニテストで100点をとったという彼女を、ダリアはよく覚えていた。

 

 グレンジャーは何故か顔全体に毛が生え、猫の耳がついて、―――要するに顔が猫になってしまっていたのだが、ダリアはその猫の顔に見覚えがあった。

 

 ――――――ミリセントの猫だわ。ははぁん、ポリジュース薬で失敗したのね。この前ポッターが盗んでたのはその材料だったんだ。

 

 以前のポッターの大それた犯行の理由が分かり、スッキリして自分の体があるベッドに戻ったダリアだったが、ベッドを囲う衝立の前にある人物が立っていることに気が付き、飛び上がるほど動揺した。

 なので慌てて大声で、医務室のすぐ外で寝ているトゥリリに向かって助けを求めることになった。

 

 

 ――――――トゥリリきて!!今すぐきて!!どうしても今来て!!

 

 ――――んえ、ええ、なんでさぁ。こんな夜中に。何があったわけ?

 

 壁越しに、トゥリリの寝ぼけ声が小さく聞こえる。しかしダリアは構うことなく、悲鳴のような声で叫んだ。

 

 

 ――――――セドリックが居る!なんでこんな夜中に居るの!?ああもう、なんでもいいから早く来てよぉ!

 

 ダリアは思わぬ時間の思わぬ来客に、完全に取り乱してしまった。

 

 

 

 

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