ダリアの歌わない魔法   作:あんぬ

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二年目の終わり

 無事蘇生することができたダリアだったが、まずはその報告で困ったことになっていた。

 

 セドリックは宣言通り、ダリアが目覚めた事をマダム・ポンフリーに報告した。

 すると、スネイプたちから「呪い破りが到着するまで安置」という指示を受けていたマダムは、仰天して職員室まで連絡してしまったのだ。

 

 そして今ダリアとセドリックは、校長室にてダンブルドアから尋問を受けていた。

 

 

 

 

「まずはダリア、無事目覚めたようで何よりじゃ。友人たちも喜んでおることじゃろう。」

 

「はぁ。―――――――――あ、ありがとうございます。」

 

 ダンブルドアの言葉に、ダリアは気の無い返事をしたが、隣のセドリックから鋭い視線を受け慌てて頭を下げた。

 

 ダリアは頭を下げたまま、こっそりダンブルドアを盗み見た。彼と直接会話をするのは初めてだ。穏やかな表情で微笑んではいるが、真意の見えない、どこか捉えにくい雰囲気の老人だった。

 

 眼鏡の奥のキラキラした瞳と目が合い、ダリアは居心地が悪くなった。

 オリバンダーの時にも思ったが、やはりこの類の目は苦手だ。まるで後見人に見られているような気になってしまう。

 

「さて、目覚めたばかりの君には悪いのじゃが、いくつか聞かなければならんことがあっての。まずは、君にかけられていた魔法のことじゃが。」

 

「―――――ええと、誰かから聞いてるかもしれませんけど。普通の護りの呪文ですよ。特に説明することは何もないんですけど。」

 

「モンターナ、大人が数人がかりで取り掛かっても解呪できない魔法は、普通とは言えん。校長は、あのような強力な魔法をどこで知ったのかということを聞いているのだ。」

 

 難しい顔で立っていたスネイプ教授が口を挟んだ。どうやらダリアの呪文を解こうと試行錯誤した教員の一人らしい。

 自分が作った呪文がそう簡単に破れるはずはない。ダリアは胸を張って答えた。

 

「別に誰に教えてもらったわけでもないです。私が作った呪文ですから。」

 

「――――君が作ったというのかね?あの、ピラミッドに掛けられていてもおかしくない程強力な呪文を?」

 

「私、そういうの得意なので。」

 

 威張って言うダリアを、スネイプは複雑な表情で見ていた。

 類まれな才能を持ちながらも、どこか子供っぽいこの生徒は、自分がとんでもないことをしでかしている自覚が無いらしい。

 

 呪文の開発自体はそう珍しい事ではない。スネイプ自身、学生時代にいくつか考案した呪文がある。

 しかし、彼女が作ったという呪文は規模が違った。解呪しようとした感触では、どれほど強い魔法をぶつけられてもびくともしない強度を持っていたように感じられた。

 例え死の呪文だったとしても、呪文で護られた者は何の干渉も受けることは無いだろうことが容易に想像できた。

 

 死の呪文に反対呪文は存在しない。それを受けて生きているのはハリー・ポッターただ一人だった。

 ダリアが作ったという呪文の効果が実証されれば、それこそ魔法界を揺るがす一大事になるはずだ。

 

 喜ばしいニュースのはずだが、そうとも言えない事情が存在した。

 

「なるほど、ミス・モンターナは呪文作りに関する素晴らしい才能を持っておるようじゃ。――――――さて、ここからが本題じゃ。その強固な護りの呪文のため、君はマンドレイクの薬の効果を受け付けることが出来ず蘇生できなかったのじゃが、いったいどうやって目覚めることができたのかね?」

 

 ダンブルドアのキラキラした目が、心なしか鋭くなった気がした。

 

「どうって――――――呪文の効果が切れただけですよ。永遠に発動し続けるタイプの呪文じゃなかったので。」

 

 ダリアは前もって考えておいた言い訳を口にした。オリジナルの呪文なので、どんな風に説明しようが、嘘がばれることは無いはずだ。

 しかし、ダンブルドアは納得しなかったらしい。

 

「ふむ―――――ところで、数時間前、ホグワーツに前代未聞の事態が起きたのじゃが、それも君の耳に入れておかねばなるまい。知っての通り、ホグワーツにはいくつもの強力な護りの魔法がかけられておる。侵入者を排除する魔法がほとんどなのじゃが、その魔法が一瞬、根こそぎ破られてしまったのじゃ。」

 

 ダリアとセドリックは絶句した。心当たりがあったからだ。

 

「何か心当たりがあるかね?」

 

 口をぽかんと開けた二人にダンブルドアは問いかけたが、ダリアは慌てて首をブンブン横に振った。そんな疑いまでかけられてしまってはたまらない。

 ダリアは頭の中でキャットをしこたま罵っていた。

 

「今知ったばかりなんです。全然心当たりはありません。ね、セドリック!」

「は、はい。僕たちずっと医務室に居たので・・・」

 

 嘘を言い慣れていないセドリックがぎこちなく否定した。明らかに「心当たりがあります。」というような顔をしていたので、ダリアは思わず魔法で表情を作り変えてしまった。

 途端にセドリックの顔が真剣な表情になったが、ダリアはセドリックがとても怒っている気配を感じた。後で叱られるかもしれない。

 

 叱られるついでに、ダリアはもう少しセドリックを操ってしまった。

 

「すみません、もういいでしょうか。ダリアは目覚めたばかりですし、僕も両親に彼女が蘇生したことをふくろうで伝えなければいけないので・・・」

 

「おお!なんとこんなに時間がたってしまっておったとは―――――――ふたりともご苦労じゃった、行ってよろしい。」

 

 

 

 校長室から飛び出したダリアは、まず人目のないところへ向かっていった。セドリックがひしひしと怒りを募らせていることを感じていたからだ。

 空き教室を見つけると中へ入り、防音と人避けの呪文をかけると、観念してセドリックを操っていた魔法を解いた。

 

「ダリア!!あれほど人に魔法をかけるなって言ったのに!」

 

「はい――――――――」

 

 体が自由になった途端叱り飛ばしてくるセドリックに、ダリアは項垂れた。悪いと思う気持ちはあった。

 

「――――――でも、今回はセドリックもちょっと悪いと思うよ。だって嘘下手すぎなんだもん。あれじゃ疑ってくださいって言ってるようなものだよ。」

 

 あれ以上ぼろを出さないために、校長室を出て行かざるを得なかったのだ。

 セドリックも多少自覚があったのか、一瞬罰が悪そうな顔をしたが、すぐに「言い訳しない!」とまた怒った。

 

「確かに僕は嘘をついたことがあまりないから、下手かもしれないけど。それでもいきなり魔法をかけて操ることは無いだろう!君、人に魔法をかけるのが癖になってないか?」

 

「はい、気を付けます!」

 

 癖どころか、かつては日常茶飯事だったわけだが、それは黙っておいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 二人が出て行った後の校長室、ダンブルドアとスネイプはお互い難しい顔で話込んでいた。

 

「――――――結局何も語らず、か。セブルスよ、セドリックの方はどうじゃった?」

 

「モンターナは規格外としても、ディゴリーは優秀とはいえ一般の枠を逸脱しない生徒です。私の開心術に対抗する術は持っていないと考えるのが妥当でしょう。」

 

 事実、先ほど秘かに開心術を仕掛けた際、モンターナの頭の中は全く覗くことが出来なかったが、ディゴリーの脳内は覗くことが出来た。

 開心術をかけていることに気付かれないよう大まかな心情しか読むことは出来なかったが、それでも彼が純粋に驚いていることは分かった。どうやらホグワーツの護りの魔法が破られたことは寝耳に水のようだった。

 何らかの関係があることは否定できそうにないが、少なくとも意識的に魔法を破ったというわけではないらしい。

 

「モンターナの蘇生時に居合わせたはずのディゴリーが何も知らないのです。心当たりがありそうな顔はしておりましたが、悪意がある様子ではありませんでしたぞ。」

 

「――――――――。」

 

 スネイプはダンブルドアに進言してみたが、ダンブルドアは考え込むように組んだ両手を見つめている。

 疑いは未だ晴れていないらしい。ダンブルドアは重々しく口を開いた。

 

「セブルス、ハリーから聞いた事を覚えているかね?ヴォルデモートはやはり、スリザリン生を襲うつもりは無かったらしい。トムも戸惑っていたと言っておったな。」

 

「―――そのようですな。」

 

「あのように強力な護りの魔法を使いこなす魔女が、幽体離脱した先でバジリスクの視線を浴びて石化してしまうようなミスを犯すとおもうかね?」

 

「――――何らかの方法で結界を破るという目的のため、わざと石化して注意を逸らしたとでも?」

 

 スネイプは「モンターナならうっかりミスもありえそうだ。」と考えていたので、ダンブルドアの考えに驚かされてしまった。

 

「考えすぎでしょう。あれで居てモンターナは、抜けの多い生徒です。そのような場合もあり得るかと。」

 

 ダンブルドアはまたしばらく考え込んだ末、長く重い息を吐いた。

 ホグワーツに帰ってきて早々、結界が破られたのだ。破損はすぐに自動的に修復されたが、一瞬破られただけでもホグワーツの長い歴史の中で前代未聞の大事件だった。

 城の中に侵入者が居ないことは確認したものの、気をもんでしまうのも無理はない。

 

「疑心暗鬼になっているのは、分かっておるのじゃ。しかしのう、セブルス。あまりにタイミングが悪すぎた。もちろん、別の何者かが偶然ホグワーツに侵入してきた可能性もないではないが――――わしは彼女を見ていると、どうしてもかつてのトムを思い出してしまうのじゃ。」

 

「学生時代のあの人を?そんな馬鹿な―――――」

 

「スリザリンの生徒というだけで疑ってかかっておるというのは百も承知じゃ。しかし、トムも彼女と同じように両親を亡くしており、今までにないほど優秀で、他寮の生徒に友人がいるほど人当たりがよい。―――――似ているとおもわんかね?」

 

「考えすぎだと思いますが・・・」

 

 決して「人当たりが良い」とはいえないダリアを思い浮かべたスネイプは、複雑な表情でダンブルドアに向き合っていた。

 

 

 

 

 

 ひとしきりセドリックに叱られたあと、ようやくスリザリンの寮へ帰ってきたダリアを待っていたのは、またもや説教だった。

 

 ノットから報告が行っていたのだろう。入り口を抜けるとすぐ、ダリアは談話室で待ち構えていたダフネ達に組み付かれた。

 

「ぐふぅ。」

 

「ダリアのバカーーーーーーー!!!ドジ!!マヌケ!!!なんでこんな危ない事をしたの!」

 

「しかも自分の魔法のせいで目覚められないって、馬鹿じゃん!!」

 

「どれだけ私たちが心配したか分かってるの!?」

 

 泣きながら抱きしめてくる3人の下敷きになり、ノックアウトしてしまう寸前、見かねたノットとドラコによってダリアは救出された。

 しかしそのままソファに場所が移されただけで、説教は終わらなかった。

 最初は「心配かけて悪かったな。」と思っていたダリアだったが、あまりにも詰られ続けた結果、説教が終わるころにはすっかりふてくされてしまっていた。

 

 

「ふん、どうせ私はマヌケなお調子者よ。石にされて当然なんだわ。ほっといてよ。」

 

「あんたねぇ―――――ったく、一度石になったくらいじゃ、性格は変わらないのねぇ。」

 

「落ち着いたら部屋に上がってきなさいよね。あんたが石になってた間のノートやレポート、しっかりとってて上げたんだからね。」

 

 ソファにふんぞり返ってぶつぶつ言う相変わらずのダリアに、ミリセント達は少し安心したように呆れて寝室へ戻って行った。

 ドラコも同じように静かに去って行ったので、ダリアは首を傾げた。いつもなら去り際に何かしら嫌みを言いそうなものだが。

 そういえば、今日はずっと口数も少なく、大人しめだった気がする。

 

「ねぇノット、ドラコどうしたの?なんだか、うーん―――――萎んでない?」

 

「萎んでって、お前なぁ。」

 

 ノットは呆れたように言うと、周囲を憚るように辺りを見渡し、身を寄せてきた。

 あまり人には聞かれたくない話のようだ。

 

「実は今回の騒動、マルフォイ氏が裏で糸を引いてたみたいでさ。それがバレて理事を辞めさせられたことがショックだったらしい。――――あと、お前が巻き込まれて石になったことも、あいつなりに気まずいと思ってるんだ。」

 

「え、その話本当だったんだ。ドラコのいつもの知ったかぶりだと思ってたけど。」

 

 そういえば騒動の始め、さも知った風にドラコがスリザリンの継承者について語っていたのを思い出した。

 父親からは詳しい話を聞いてない様子だったので、まさか本当にルシウス氏が騒動の原因だったとは思わなかった。

 

「私のことは別に気にしなくていいんだけど。ドラコが悪いわけじゃないんだし。」

 

「いい薬になるからしばらく放っておいてくれ。――――ところでモンターナ、お前、ディゴリーとは話できたのか?」

 

 ノットが唐突に振ってきた話題に、ダリアはぎょっとした。

 ノットには、ダリアがセドリックの家に人には言えないような手段を使って潜り込んでいることを言ってはいない。

 しかし今回の騒動でダリアが家出娘だということを知り、自分で何か勘付いたのかもしれない。

 

「あんたって時々、自分を切っちゃうくらい頭が切れるわよね。まぁ、私には負けるけど――――セドリックとは話をして、和解したわよ。それがなに?」

 

「―――――ふうん。いや、なんでもないさ。気になっただけだ。」

 

 ノットはすぐに話題を切り替えた。聞いてみただけだったらしい。

 

 

 

 

 

 夏学期の残りの日々は瞬きする間に過ぎて行った。ダリアが石になっていた間のノートを写したり、未開封だったクリスマスプレゼントを開封したりしているうちに、あっという間にホグワーツ特急に乗って学校を去る日がやって来た。

 

「ダリア、準備はできた?もうそろそろ出発するわよ。」

 

「うん。あとちょっとだから先に行っててよ。すぐ行くからさ。」

 

「そう?じゃあ談話室に荷物を下ろしてくるわね。」

 

 ダフネはそう言って、大きなトランクを魔法で浮かせながら階段を降りていった。ダフネはおしゃれにこだわりがあるので、持ってきている私服がとても多い。魔法で拡張してあるとはいえ、トランクの大きさはかなりのものだった。

 

 ダフネが出て行ったのを確認したダリアは自分の机の引き出しを開け、あるものを取り出した。

 

『あ、ジニー・ウィーズリーが持ってた日記のページじゃん。忘れてたよ。』

 

 ダリアの意識が消えたあの日、トゥリリに持ち帰らせた日記の欠片だった。くしゃくしゃに丸められてはいるものの、トゥリリの魔力でしっかりコーティングされ、保存状態は良さそうだった。

 ダリアはトゥリリの魔力の上からしっかり呪文をかけて紙片を封印し、トランクの一番奥に厳重に詰め込んだ。

 この紙切れが見た目通りのただの紙でないことを、ダリアはもう身を持って知っていた。

 

『一体なんなんだろうね、この日記――――の欠片。』

 

「さあね。まぁ、大体の予想はついてるけど―――――帰ってじっくり調べましょ。こいつには聞きたいことがたっくさんあるんだから。」

 

 ダリアはトランクの鍵を閉めると、階段を降りて談話室へ急いだ。

 

 

 

 

 ホグズミードからホグワーツ特急へ乗ると、女の子達は一つのコンパートメントを占領して、夏休みの予定についての話し合いを始めた。

 

「今年こそみんなでどこか旅行に行きたいわよねー。」

 

「そうね、どこがいいかしら。今年はアステリアの入学準備もあって忙しいから、出来るだけ近場がいいんだけど。」

 

「あ、じゃあ海行かない?ギリシア辺りとかさ!」

 

「全然近場じゃないじゃん―――――――それに泳ぐのは絶対イヤ。」

 

 ダリアは去年の夏休みを思い出し、眉を顰めた。泳ぎはもうたくさんだった。

 結局、ダフネの近場でという希望を汲んで、フランスにショッピングへ行こうという話になった。

 近場とはいえ、パリは流行の発信地だ。お気に入りのブランドの話で随分盛り上がった。

 

 ロンドンが近づいてきた時、ダリアはふとディゴリー夫妻から送られてきた手紙の内容を思い出した。

 

「そうだ、私、セドリックと一緒に居なきゃいけないんだった。どこにいるか探しに行かなきゃ。」

 

 蘇生したダリアの元には、ディゴリー夫妻から毎日手紙が届いていた。

 無事を喜ぶ内容ばかりだったが、ダリアがまた危ない事に巻き込まれないか不安でしょうがないらしい。帰りは絶対セドリックから離れるな、と念押しされていた。

 

 しかしダリアがセドリックの名前を出した瞬間、ダフネ達は顔をしかめた。

 彼女たちは、ダリアの石化の原因をセドリックの疑いだと断定してしまっているので、セドリックの好感度はスリザリン女子の一部の間で異様に低くなっているのだ。

 

「なによ、結局仲直りしたの?あんたそれでいいわけ?」

 

「うん、まあとりあえず一応ね。」

 

「ふーん。あんたがいいなら、私らは何もいわないけどさ。」

 

「やっぱりちょっと気に入らないわ。」

 

 不満たらたらの表情に、ダリアは思わず笑ってしまった。女の子に悪く言われるセドリックなんて、そうそう見れるものじゃないと思えば面白かった。

 

 

 

 

 女の子達に一足先に別れの挨拶をすると、ダリアはセドリックの居るコンパートメントを魔法で探し、そこへ向かった。

 軽くノックをしてドアを開けると、そこにはセドリックと、見知らぬ男子生徒が座って談笑しているところだった。

 

「ああダリア、待ってたよ。父さんから話は聞いてるから。」

 

 セドリックが合点がいったように話しかけてきたが、ダリアは知らない男子生徒の方を見たまま、コックリ頷いた。どこかで見たことがある気がするのだが、思い出せない。

 ダリアは男子生徒の方を見つめながら、しっかりセドリックの横にくっついて座った。

 

「誰?」

 

「――――あ、なんだ。警戒してたのか。じっと見つめられたから何かと思ったよ。俺はダニエル・マクニッシュ。セドリックの友人だよ。よろしくな、従妹ちゃん。」

 

 思い出した。去年、夏休み明けの特急でダリアが眠りこけているとき、コンパートメントを尋ねてきた男子生徒だった。

 無事思い出すことができて少しスッキリしたダリアは、小さな声で返事をした。

 

「ダリア・モンターナ。よろしく。」

 

 こちらを伺ったまま小さく頭を下げるダリアに、ダニエルは思わず笑ってしまった。

 セドリックの様子から仲があまりよろしくない従妹だとばかり思っていたのだが、今のダリアの様子を見ると、そうでもないらしい。

 

「なんだよセド、しっかり従妹ちゃんに懐かれてるじゃないか。」

 

「ダニー、色々あったんだよ――――――」

 

 セドリックは横にダリアを引っ付けたまま苦笑した。

 ダリアは人見知りの気があるらしく、初対面の人間相手だと今のようにジロジロと顔を見るくせがあるようだ。

 去年の夏休み、ダリアがハリーやハグリッドの顔を無遠慮に眺めていたことを思い出したセドリックは、失礼な態度だからやめさせなければ、と秘かに決意した。

 

 最初の内は比較的猫を被っていたダリアだったが、すぐにダニエルに慣れて生意気な口を利きだした。

 セドリックは友人が気を悪くしないかヒヤヒヤしていたが、妹が居るダニーは偉そうな態度のダリアに腹を立てることもなく、割と気に入った様子だったので安心した。

 

 

 

 

 

 ホグワーツ特急がキングズクロス駅に到着する頃には、もう辺りは薄暗くなるような時間帯だった。

 

「じゃあな、セド。今度は俺の家で会おうぜ。チビもまたな。」

 

「おじさんおばさんによろしく言っといてくれ。それじゃダニー、楽しい夏休みを。」

 

「チビじゃないもん・・・」

 

 ほとんど眠りかけていたダリアだったが、セドリックに引っ張られ、かろうじて立っていた。

 どうやらセドリックは夏休みの間、ダニーの家へ遊びに行くらしい。軽く打ち合わせをした後、ダニエルは手を振りながら去って行った。

 

 

「さてと、僕らも父さん達を探さなきゃ―――――ダリア、寝ないでトランクをちゃんと持ってくれ。」

 

「うん――――――」

 

 ダリアは閉じそうな瞼を必死でこすりながら、人込みの中でディゴリー夫妻を探した。

 ホームは家族でごった返していたため、人探しは困難を極めたが、ディゴリー家の人々は背が高いため、すぐに見つけることができた。

 

「セド――――――ダリア!!」

 

 まずサラが駆け寄ってきて、ほとんど悲鳴のような声を上げてダリアをぎゅうぎゅう抱きしめた。すぐにエイモスも子供たちに気付き、足早に駆けつけてきた。

 

「よかった、本当に無事でよかった―――!!あなたが石になったと聞いて、本当に毎日生きた心地がしなかったのよ!姉さんに引き続きあなたまでいなくなるなんて、耐えられないわ―――――!!」

「まったくだ!どうしてあんな危険な状況の学校に残ろうと思ったんだ?今度からクリスマス休暇には何があっても家に帰ってくると約束してくれ!」

 

 ダリアはもみくちゃにされながら、セドリックに言われた言葉を思い出していた。

 

 自分の魔法の責任を取る。

 魔法を解く気が無いのなら、せめて彼らが安心できるように気を配ってほしい。

 

 この人たちは、ダリアがかけた魔法によってダリアを親戚だと思い込んで、こんなにダリアの事を心配してくれている。

 いつかこの人たちに掛けた魔法を解く日が来るのだろうか。その時この優しい人たちは、ダリアの事をどう思うのだろう。

 

 ダリアはそう思いながら「心配かけてごめんなさい。」と言い、そしてちょっとだけ泣いた。

 

 色々な問題を抱えつつも、一年ぶりの長い夏季休暇がまた始まった。

 

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