ダリアの歌わない魔法   作:あんぬ

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収まりが悪かったので、前話に2000字ほど付け足しました。すみません。


クィディッチ・ワールドカップ③

 クィディッチ・ワールドカップには、世界の国それぞれから代表チームが参加している。

 大体は自分たちが住んでいる地域の代表チームを応援するもので、ホグワーツの生徒達も当然、ほとんどがイングランド・ナショナルチームのサポーターだった。

 

 しかし今回、イングランドは既にトランシルバニア相手に390対10の大差で敗れている。イングランドのサポーターであるエイモスとセドリックが試合結果をみて意気消沈していたため、ダリアもそれくらいは知っていた。

 

 イングランドがダメなら、同じイギリス国内のウェールズやスコットランドの応援を、と思ってみても、2チームとも同じように決勝に勝ち進むことなく既に敗退してしまっている。そのため、今回の決勝戦ではどのチームを応援すべきか、という問題が持ち上がっていた。

 

「やっぱりクラムだよ。」

 

 ドラコが目を輝かせて一人の選手の名前を上げた。その名前はダリアも聞いたことがあった。

 

「クラムって、ブルガリアのシーカーでしょ?セドリックがよく『彼は素晴らしい』って熱く語ってるわ。」

 

「ああ、その通りだ。準決勝でのスーパーダイブを見たかい?彼が現時点で最高のクィディッチ選手だという事は明らかだよ。セオもそう思うだろう?」

 

「まぁ、それは否定しない。クラムは天才だよ。それはこれまでの試合っぷりから考えても確実だ。」

 

 ドラコもノットも、今回はブルガリアを応援するらしい。横でパンジーもコクコクと頷いて同意している。彼女はクラムのファンなのだ。

 

「じゃああなた達はブルガリアを応援するのね。――――――でも私は、今回はアイルランドを応援するつもりよ。イギリスのチームが出場できないなら、せめてお隣の国のチームを応援したいもの。」

 

「私も。それにクラムは確かに最高の選手だけど、アイルランドも中々根性ある奴が揃ってるしね。それにチームワークなら断然アイルランドの方が上だよ。」

 

 ダフネとミリセントはアイルランドを応援するらしい。既にアイルランドのマークであるシャムロックを胸に指していた。

 

 ダリアはというと、特にご贔屓のチームも選手も居ないので、どこを応援するかという事は全く考えていなかった。一緒に観戦するエイモスとセドリックも、今回はただ単に試合を楽しむ目的で観戦するらしい。

 

 

 

 

 そのままドラコの部屋でクィディッチ決勝の結果について予想し合っているうちに、いつの間にかかなりの時間が経過していた。ドラコが時計を見てその事に気付いた。

 

「外がだいぶ薄暗くなってきたな―――――――そろそろ屋台が出始める頃だろう。見に行くかい?」

 

「いいわね!一応、応援グッズは家から持ってきては居るのだけれど、屋台を見て回るのも乙なものよ。」

 

「私も、パンフレット買おうと思ってたんだったわ。」

 

 ダリアが窓の外を覗き込むと、薄暗くなったキャンプ場は昼間より随分と人通りが増えている。所々で魔法の光なども打ち上げられ、祭り前の興奮が伺えた。

 夜になると試合が始まってしまう。それまでにはディゴリー家のテントに戻らなければならない。

 

「私、そろそろ帰らなきゃ。あんまり遅くならないようにっておじさんに言われたのよね。」

 

「じゃあ、一緒に屋台を回ってから戻りましょうよ。私もそろそろテントに戻らなきゃいけない時間だし。」

 

「じゃあそうするか。ついでにテントまで送ってやるよ。」

 

 全員屋台を見て回るつもりだったらしい。マルフォイ夫妻に挨拶すると、6人はテントを出て賑やかになり始めたキャンプ場を歩き始めた。

 

 すっかり日も落ちて夜のとばりがキャンプ場を覆うと、キャンプ場はもはやお祭り騒ぎだった。「マグルに見つからないように」というお達しは何処へやら、宙に浮かぶランタンや大声で国歌をがなり立てるポスター、魔法の花火などが次々に出現し始める。

 最初の内はせわしなく対応していたスタッフも、お手上げだとばかりに放置を決めこんだらしい。あちこちで手持無沙汰と言った様子でぶらつく姿を見かけた。

 

 屋台で甘いものを買ってつまみながら歩いていると、ダリア達もなんとなく楽しくなってきた。

 全員それなりに育ちが良いので、買い食いなどほとんどしたことが無い。自分で選んでその場で食べるというのもなんだか悪い事をしている気になる。スリザリン生は非日常を楽しんでいた。

 

「いよいよって感じね!ああ、ワクワクして来た。早く選手たちの血が見たくてしょうがないわ!」

 

 高揚したミリセントが、頬を染めながらコブシをパンパン鳴らし始めた。

 ミリセントは選手同士のぶつかり合いを楽しみにクィディッチを観戦している。魔法ですぐに怪我を治療することが出来るため、そんな過激なところを愛好する者も魔法界には結構多いのだ。

 

「まぁ、楽しみ方は人それぞれだし、あんまりとやかくは言わないけど、もうちょっと怖くない言い方無いのかしら――――――――って、あら?あそこに居るのってクラッブとゴイルじゃないかしら。」

 

「ん?―――――――――あ!あいつらいつまでたってもこないと思ったらあんなところに!」

 

 ドラコが目を吊り上げて叫んだ。

 視線の先では、クラッブとゴイルが両手に食べ物を抱えながら、また更に何か食べ物を注文しようとしている所だった。二人はドラコの声に振り返ると、ぽかんとした表情をして顔を見合わせた。

 

「おい、お前たち!今日は僕の家のテントに来ると約束しただろう、一体今まで何をしていたんだ!?―――――――いや、何をしていたのかは見れば分かるんだが、まさか今までずっと食べていたというのか!?」

 

「ごめんよドラコ。忘れてた。」

 

 クラッブがフランクフルトのようなものを頬張りながらドラコに謝った。

 

「ついさっき、小腹を満たそうと思って屋台に来たばっかりなんだけどな。」

 

「うん。いつの間にこんなに暗くなっちまったんだろうな。」

 

「お前たち――――――――まず口に物を入れるのを止めろ!」

 

 ゴイルまでもが甘いタルトのようなものにかぶりつきながら謝るので、ドラコの怒りはますます激化した。

 ガミガミと二人を叱るドラコを見て、ダリアは「ドラコもああ見えて案外面倒見がいいんだよなぁ。」とぼんやり思っていた。いつもクラッブとゴイルを偉そうに従えてはいるが、その実二人に振り回されている場面の方をよく見る気がする。

 

『あ、ダリア、いたいた。探したんだよぉ。』

 

「あれ?トゥリリじゃない。どうしたの?」

 

 散歩に出かけたはずのトゥリリだ。足元でニャアニャア鳴くので抱き上げてやると、肩によじ登ってゴロゴロし始めた。

 

『色々見て回ってたんだ。すっごくたくさんの国から人が集まってきてるんだねぇ。南極から来たっていう魔法使いのペットのペンギンと話をしたよ。』

 

 ペンギンってペットにできるんだ、とダリアは思った。きっとその国にはその国独自のルールがあるのだろう。

 

『あ、それでさ。あっちの方にセドリックが居たよ。ダニーやロミーリアと屋台を見て回ってるみたい。』

 

「え、どこどこ?」

 

 トゥリリが示す方を探すと、確かにセドリック達が居た。

 ダリアは大声で呼びかけそうになったが、すんでの所で思いとどまった。スリザリン生の前でマグル出身者(という事になっている)ロミーリアに声を掛けるのは、色々と気を遣ってしまう。

 

「ノット、やっぱりテントまで送らなくっていいよ。セドリック達見つけたから、一緒に帰ることにする。」

 

「は?――――――ああ、そういうこと。」

 

 ノットにこっそり耳打ちすると、彼はすぐさま事情を察した。ダリアとロミーリアがよく人目を忍んで会っているという事を知っていたのだ。

 

「じゃあ、そういうことだから、私セドリックの所に行くね!ばいばーい!」

 

「あっ、ちょっ、お前待っ――――――――」

 

 ノットの静止も耳に入らず、友人たちに軽く手を振ると、ダリアは意気揚々とセドリック達の所へ駆けて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ダリアをスリザリンの友人たちに引き渡したセドリックは、親友ダニーと合流すべくキャンプ場をあてどなく彷徨っていた。

 

 数か月ぶりに親友に会おうというにもかかわらず、その足取りは非情に重い。彼の表情を曇らせる専らの悩みのタネは、二つ年下の居候の少女だった。

 

「――――――――――はぁ。」

 

 セドリックが今日何度目かになるため息をつくと、暢気にピースサインを作る黒髪の少女が脳裏にボヤンボヤンと現れた。想像の中でさえあまりに能天気なので、セドリックは余計に頭が痛くなってきた。

 

 紆余曲折あってディゴリー家に居座ることになった家出少女、ダリア・モンターナ。

 ダリアが現れた当初、危険人物として彼女を警戒していたセドリックだが、3年間の内にその警戒はすっかり解け、今では手のかかる妹の如く思うまでになっていた。

 

 手のかかる妹―――――――――そう。本当に、手がかかるのだ。

 

 出会って2年間ほどは彼女を恐れて関わらないようにしていたため、「あれ?」と思いながらも気付かないふりをしていた。

 しかし今ならはっきり言える。ダリアは溢れんばかりの魔法の才能を持っている反面、かなりのポンコツだった。

 

 成績は抜群でスリザリンらしい機転の良さも備えているのだが、中身に関しては微妙に残念な面が目立つ。

 人付き合いや運動が苦手で引きこもりがち。臆病な割に妙に思い切りが良く、にもかかわらず詰めが甘い。そのくせ自尊心は人一倍なので、よくトラブルにも巻き込まれる。

 

 その上調子に乗りやすい。すっかりディゴリー家に馴染み、居間のソファでダラダラしてサラに叱られたり、休みの日にどこかへ遊びに行きたいとねだってエイモスを困らせたりと好き勝手に振舞うダリアを見て、セドリックはダリアの更生を決意した。このまま放っておけば碌な大人にならない。

 

 根気強く、そしてしつこく言い聞かせた成果だろうか、ダリアはこの一年で随分と変わった。

 無理やりジョギングと称して外に引きずり出したおかげか、以前より少し活動の幅が広がり、嫌っていたクィディッチの試合にも興味を持てるようになってきた。

 

 下手くそながらも人を慰めようとする気遣いを見せた時など、セドリックは感動のあまり泣きそうになってしまった。

 

 このように人間的成長を見せ始めたダリアなのだが、克服の兆しを見せない部分が未だある。セドリックはまたため息をついて呟いた。

 

「―――――――どうしてあんなに抜けてるんだろうなぁ。」

 

 それこそがまさに、セドリックの頭を悩ませている原因だった。

 基本的にダリアは、彼女が使う「特殊な」魔法の優位性を疑っていない。それ故どんな危機的状況でも楽観視する傾向がある。

 

 実際その楽観視のせいで度々トラブル(石化事件などまさに最たるもの)に巻き込まれているのだが、やはりどうにも危機意識が薄いのだ。

 今回の拉致未遂事件を受け、セドリックとエイモスが血相を変えてあたふたする中でも、当事者のダリアは他人事のような態度を取っていた。

 

 いつも抜け目なく小ずるい事を考えているくせに、何故時々驚くほど鈍くなるのだろう。魔法の才能と自尊心の高さと詰めの甘さが最悪のマッチングをしているとしか思えない。

 このままではいつか、その隙を突かれてとんでもない事になってしまう気がする。人の良いセドリックは、ダリアの将来を本気で心配していた。

 

 セドリックが暗い表情でキャンプ場を練り歩いていると、背後から大声で名前を呼ばれた。良く知った声に振り向くと、ダニーが大きく手を振っている。

 

「おーいセド!こんな最高の日に、どうしてそんな最悪の顔してるんだ?何かあったのかー?」

 

「やあ、ダニー。―――――――ああ、ジャネットも来てたんだね。久しぶり。」

 

「ハイ、セドリック。」

 

 ジャネットが綺麗な金髪を振って微笑む。マグル出身である彼女が居るのは予想外だった。

 おそらくダニーの家族と一緒に遊びに来たのだろう。ワールドカップのチケットは大変貴重で、魔法界の事情に明るくなければ入手が難しい。恋人同士になるまで随分時間がかかった二人だが、軌道に乗ってからは上手い事やっているらしい。

 

「それで、お前なんでそんな眉間に皺寄せて歩いてるんだ?さっきも言ったけど、今日はクィディッチ・ワールドカップの決勝戦だぞ?あと数時間で試合開始だってのに。」

 

「今朝までは本当に心の底から最高の気分だったよ。実は、こんなことがあってさ――――――――――。」

 

 かくかくしかじか、セドリックは声を潜めて今朝の拉致未遂事件を二人に打ち明けた。

 

 

 

 

 

 

 

「―――――それガチの奴じゃねぇか。日刊預言者新聞の記事ってマジだったわけ?14歳のガキもいけるとか、あの人守備範囲広すぎだろ・・・・。」

 

「てっきりいつもの捏造記事だと思っていたのだけれど――――――まさか、ポートキーから強引に引きはがすだなんて。」

 

 二人は顔を引き攣らせて事のあらましを聞いた。今までリータ・スキータの記事に対しては半信半疑だったが、そんなことがあったと聞いてしまうと疑惑が現実味を帯びてしまう。

 

「本人が危機感を持っていないのが、僕としては一番心配なんだよね。―――――今回は何事も無かったけど、同じことがまたあったら今度は無事で済むかどうか。」

 

「まぁあいつ、黙ってたらカワイイもんな。」

 

 セドリックは力なく頷いた。

 色々と難ありの性格のダリアだが、ダニーの言う通り、見た目だけは本当に可愛らしい少女なのだ。イタリア人とのハーフらしくはっきりした顔立ちで、特にラテン系の血を感じさせるぱっちりとした目が、英国では一段と目を引く。

 

 奇行が目立つせいだろうか。表立って持て囃されることは少ないのだが、それでも「湖のそばの芝生の上で大の字になって寝ている所を見たが、びっくりするほど美少女だった。」などの目撃情報がセドリックの耳まで入って来ることが度々あった。

 

「外に出るようになったのは良いんだけど、普通屋外で爆睡するかな。誰が通るとも知れないのに――――――――いつイタズラされてもおかしくないだろう!?」

 

「ああ、まぁ―――――」

 

「止めた方がいいのは確かね。」

 

 険を帯びたセドリックの言葉に、二人は曖昧に同意した。ダリアの奇行も大概だが、セドリックの心配ぶりも少々大げさだった。

 そんな中、空気を読まない楽し気な声が3人の耳に飛び込んできた。

 

「――――――おーい、セドリックー!」

 

 ダリアがブンブン手を振り回しながら走ってくる。まさか自分が話題の中心となっているとは思いもよらないのだろう、顔いっぱいに無邪気な笑みを浮かべている。

 大変可愛らしいのだが、いつになくその笑顔が能天気に見える。3人はダリアの顔を見た後、揃って大きなため息をついた。

 

「えっなに――――――なんでそんな目で私を見るの?私、何かした?」

 

「――――――――それよりダリア、友達は一緒じゃないのかい?ノットに一人にしないよう頼んだはずなんだけど。」

 

「あっちに居るよ。―――――――――いてっ!」

 

「あっちに居るよ、じゃないだろ。お前人の話くらいちゃんと聞けよ。」

 

 すぐ後ろに居たノットに頭をはたかれ、ダリアは驚いて振り返った。いつの間について来ていたのだろうか、全く気付かなかった。

 

「あれっ?ノットなんでついてきたの?」

 

「お前なぁ――――――あんなことがあった後でそれは無いだろ。もっと周囲を警戒しろよ。引き渡すまでが俺の仕事だって。」

 

 ノットは呆れた口調で言うとセドリックに向き直り、潜めた声で報告した。

 

「一応、何事も無かった。ずっとドラコの家のテントに居たからな。―――――――――こいつの場合、周りがいくら気を使っても効果が無いと思うんだが。こいつ自身に危機感を持たせなければ意味が無いんじゃないか?」

 

「――――――僕もそう思うよ。ありがとう、ノット。」

 

「――――――じゃあ、俺はこれで。」

 

 ノットは軽く頭を下げると、さっさと向こうへ戻って行った。暢気に手を振って見送っているダリアを捕まえると、セドリックは早速説教を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 たった数十メートルの距離くらい別にいいじゃん、というのがダリアの主張だった。実際そういうイタズラ目的では無かったという事は知っているし、そういう輩は撃退できるという自負があったダリアは、セドリックの小言を受けてぶー垂れていた。

 

「流石にちょっと過保護だと思う。私、もう14歳なんだよ?小さい子どもじゃないんだから。」

 

「そうそう。過保護が過ぎたら嫌がられるぞ、セド。……まあこいつがチビなのは確かだけどな。」

 

「ダニーは黙ってて!―――――――――――まあ、セドリックが過保護かもってことは否定しないけど、ダリアの事を心配してるからよ。ワールドカップの間くらいは大人しくしていたら?」

 

 別に騒がしくしているつもりも無かったダリアは、ロミーリアの言葉に憮然とした。まるでダリアがいつも何かしらトラブルを巻き起こしているかのような言い方だ。

 反論しようとしたダリアを、セドリックがピシャリと静止した。

 

「実際トラブルには巻き込まれてるだろ。僕らが言いたいのは、危機感を持てってことだよ。―――――――――――さぁ、そろそろテントに戻って父さんと合流しよう。もうすぐ入場ゲートが開く時間だよ。」

 

 熱気は最高潮に達していた。もう既にちらほらとスタジアムの方に向かう魔法使いの姿も見られる。いよいよワールドカップの決勝戦が始まるのだ。

 ダニーとロミーリアに別れを告げると、ダリアとセドリックは急いで自分たちのテントへ走った。

 

 

 

 

 

 テントの前ではエイモスが、今か今かと二人の帰りを待ちわびていた。

 

「二人とも、やっと帰って来たか!すぐに準備をしてスタジアムに向かおう、応援グッズを忘れるんじゃないぞ。」

 

「ごめん、父さん。すぐに支度するよ。」

 

 セドリックはテントの中へ入って自分の荷物に飛びつくと、慌てて家から持ってきた万眼鏡やロゼットを引っ張り出した。ダリアもダフネから貰った万眼鏡をポケットに入れると、リュックサックの中から小さめのカバンを取り出して口を開ける。

 

「はい、トゥリリはこの中だよ。防護魔法かけてるから、外がうるさくっても大丈夫だと思う。」

 

『わぁい、ありがと。テントで待つのもつまんないけど、クィディッチでうるさいのも嫌だったんだよね。』

 

 トゥリリがいそいそと鞄の中に入ると、ダリアの準備はすっかり完了した。セドリックもバルーンやマフラータオルなどの応援グッズを身に着けている。

 

「これでよし、と。――――――ダリア、準備はいいかい?戸締りするからすぐに出よう。」

 

「はーい。」

 

 ダリアとセドリックは急いでテントの外へ出た。勿論チケットがあるので席が無くなることは無いのだが、開始時間ギリギリに向かうと、人込みで混雑してしまう。

 エイモスがテントに施錠呪文を掛けると、3人は早速森のはずれにあるスタジアムへと向かった。

 

 

 


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