警告: このお話の作成にあたって参考にしたヴァリアントは3つ。
overhaul
mmahack
そしてplusです。plusはelonaじゃなく別ゲーといって許容できない方はブラウザバックを推奨いたします。
作者はelona歴5年の新参者です。ですので初代の設定などの旧設定はわからないのでそこは目を瞑っていただければ幸いです。尚、文書の書き方は某このすば虹を参考にしておりますが文章力の差からまったく及んでいません。
この部屋は時の流れが不安定だ。
ーーあなたは今日も冒険をする。
日の上る時間が遅くなる季節。冬が今年もこのイルヴァにやってきた。あなたは寒さで縮こまりながらも暖房をつける為に布団から這い出る。
やっとの想いで暖房をつけたあなたはふたたび至福の時間を楽しもうと布団へと戻ろうとした。
なにかがはみ出ている。
ふと貴方が窓の外へ向けた時、我が家の給料箱から1枚の紙片がはみ出しているのが見えた。一瞬、例のアレが届いたのかと思い嫌な気分になったが即座に持ち直すことに成功した。
一度気にしてしまっては気持ちよく眠れない。そう考えたあなたはさっそくその手紙を受け取り封を開けてみた。
どうやら呪われた類のものではないらしく、なにも起きない。
そのことに安堵するとともに少し残念に思うの職業病のようなものだろうか。
そんな考えに苦笑しながら手紙に目を通すと面白いことが記されていた。
『悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。その才能を試すことを望むならば、己の家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨て、我らの"箱庭"に来られたし』
実に奇妙な内容だ。あなたは興味を惹かれた。
しかしその内容は少々あなたにそぐわない。
まず【悩み多し異才を持つ】とあるが、そもそもあなたにはそんな特異な才はない。ごく普通のノースティリスの冒険者の1人である。それ故に技能の習得を求められることもあったがいかんせんそれはある程度の経験をした冒険者であれば大抵は持ち得るものである。特異というには些か不相応だ。
次に目に付いたのは【少年少女】という言葉。送り主はどうやらあなたの外見だけで判断したらしい。
あなたは見た目だけなら18程度の青少年で通る。髭も生えて無ければ、頭皮も薄くない。老化もなければ極めて健康体である。
だが残念ながらそれは見た目だけの話だ。
あなた年齢は軽く使徒を凌駕する。つまりはそういうことだ。そもそも見た目などイルヴァでは*いいこと*をする時のファクターの一つにしかならず、真剣に相手を見定めるならしっかりと*視る*ことが重要だ。
このことから差出人はあなたをよく知らない、或いはたまたま目に付いた者たちに無差別に差し出しているという可能性が出てきた。
無論これだけならこの内容が例えあなた宛ではなくとも、その未知への探究心からあなたは未開の地へと喜び勇んで足を運んだだろう。
けれど最後の1文があなたの心を縛り付ける。
その時、空間が揺らめいだ。この場所は空間が不安定だ。どうやら発生源はこの手紙らしい。
しかしこの程度なら日常的に起こりうる事態であってさして問題じゃない。あなたは軽くレジストしてから再び思考の渦に浸かる。
【己の家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨て】
あり得ない。あなたは断言した。
このイルヴァに生きる生物にとって財産とは命そのものである。人によっては自分の命よりも尊いとさえ断じるそれを剰え捨ててとは。あなたは悲嘆に暮れた。
箱庭と書かれたソコは面白そうだ。しかし、自らの命を置いていくのは御免被る。
そこであなたは思いついた。なにも、この手紙に従わなくたっていいではないかと。
思えば毎月毎月、懲りずに送られてくる納税の請求書だって破り捨てていたのだ。あの請求書に裏道があるように、正道だけが方法ではない。必ずしも道は一本ではない。なにを迷う必要があったのか、あなたの迷いは完全に晴れた。
あなたはまずかけられるだけの荷物に*フェザー*を唱えた。
あなたはそれを4次元ポケットに詰め込むと、次に給料箱を自宅の中へと移した後、部屋の真ん中にムーンゲートを設置した。これは保険である。
さて、これで準備は整った。あなたは今度こそ次元の奔流に身を任せた。
✳︎
あなたは空に浮かんでいる。そして急速に落下しはじめた。
成る程、あなたは空中で胡座を組む。
流石は異世界だと感心する。手始めに空中落下でのおもてなしとはなかなか心得ているとあなたは朗らかに笑った。
それに同意するかのごとく、周りからも楽しげな声が聞こえてくる。どうやら招待されたのはあなた1人というわけではないらしい。
落下しながらもあなたは過去に想いを馳せる。長いこと生きてきたがこれほど高いところから落ちて死ぬ経験はこれが初めてかもしれない。これまでも山の頂に登った途端にドラゴンに咥えられて捨てられることは幾度かあったがそれでも地上1000メートル程度のこと。おおよそその4倍近いこの経験と、異世界という未知の景色を絶好の眺めから観れるこの光景は後にも先にも今しかないだろう。あなたはこれを企画した人間に感謝の祈りを捧げた。
そうしていると、どうなら終着点が見えてくる。落ちる先は湖らしい、あなたは着水の衝撃を楽しもうと全身を広げた。
しかし予想に反して僅かな抵抗の後、その身体は驚くほど優しく水の中へと投げ込まれる結果となった。
いけない、これはマイナス点だ。
あなたは残念に思った。
ここまでの演出が完璧だったばかりに殊更のように感じてしまう。終わり良ければすべて良し、と言うように最後というのはそれだけで大きな意味を持つ。余韻を楽しむという意味でも最後は派手に散りたかったと思うのがあなたの本心だ。
しかしそれを言っても意味ない。どうやら他の三名は湖から上がっているらしい、あなたもそろそろあがろうと大して深くもない湖から腰を上げた。
気温は丁度いいと感じる。あなたは濡れた体を気にも溜めずに大きく体を伸ばした。ここには敵意あるモンスターの気配もない、多少濡れていても問題はないだろう。
視野を広げてみれば、他の参加者はこの歓迎の方法に感想を述べているらしかった。成る程、確かに感動したものは他者と意見を交えたくなるものだ。あなたは深く頷いた。
しかしどうやらこの歓迎は意にそぐわなかったらしい。三者三様ではあるがそれぞれ苦言を申していることから、どうやら及第点を考えているのはあなた1人だけのようだ。
「し、信じられないわ! まさか問答無用で引きずり込んだ挙句、空に放り出すなんて!」
赤いドレスを身に纏っている。それはとても美しい。
年齢は15-16といったところか、未だ幼さが残る顔立ちではあるが十二分に見栄えすることから、きっとイルヴァでは*人気*が出ること請け合いだろう。
「右に同じだクソッタレ。場合によっちゃその場でゲームオーバーだぜコレ。石の中に呼び出された方がまだ親切だ」
見慣れない異国の服を着ている。髪色は黄金。それは輝いている。
この少年もおそらく先程の少女と違わない年齢に見える。無論、外見上はの話だが。それにしても独特の雰囲気を持っているとあなたは懐かしい気持ちになった。今はもう会うことはできないがかつての知人に似たような男がいたことを思い出した。
「……………気持ち悪い」
動きやすそうな服を着ている。体の水滴を払っている。それは無表情だ。
やはり3人目も年齢は同一だろう。これであの手紙の少年少女という文面が確かであったことが理解できた。それにしても、この少女の腕の中にいるモノに目を向ける。
それは猫だ。
なんとも言えない感情が体を駆け回る。見た目は確かに癒される。その存在自体に害はない。しかしどんな人間にもトラウマというものはあるように、あなたにも猫にまつわるトラウマがあった。その体験が猫を見るたびに頭をよぎる。あなたは少女からそっと視線を逸らした。
「最悪だわ。この服お気に入りだったのに!」
憤慨する赤いドレスの少女の声であなたはトラウマから意識を戻した。
「まず間違いないだろうけど、一応確認しとくぞ。もしかしてお前達にも変な手紙が?」
「そうだけど、まずは『オマエ』って呼び方を訂正して。私は久遠飛鳥よ。以後は気を付けて」
その注意はあなたへのものではなかったが、あなたはそれを進撃に受け止めた。
名前は大切なものである。器は大海より広く、その慈悲は荒廃した大地さえ潤す神々であるが、ひとたびその名を間違えるとその力を罰へと変えて*お仕置き*してくる。これで
土に還る冒険者も多い。あなたは名前の大切さを知っている。彼女の言葉はそれを再確認するいい機会になった。
「それで、そこの猫を抱きかかえている貴方は?」
「……春日部耀。以下同文」
突然話の矛先を向けられた少女は少しばかりギュッと腕に力を込めた。反応して腕の中の猫がもがく。あなたはそっと意識を少女から外した。
「そう、よろしくね春日部さん。それで、見るからに野蛮で凶暴そうなあなたは?」
「高圧的な自己紹介をありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴な逆廻十六夜です。粗野で凶悪で快楽主義と三拍子そろった駄目人間なので、用法と用量を守った上で適切な態度で接してくれお嬢様」
「……説明書を用意してくれたら考えるわ」
「マジかよ、なら今度作っとくから覚悟しとけ」
どうやら早速目の前の2人は仲を深めたらしい、軽い罵り合いをするなんて結構相性がいいのかもしれない。そう考えていると、三者三様の視線があなたに向いた。
「さっきからじっと私達を観察していたあなたはいったい何者なのかしら」
飛鳥嬢があなたにしてした質問はあなたにとって一考を要するにものだった。
もっとも簡単かつ簡潔に答えたとしたら【イルヴァの民】又は【ノースティリスの冒険者】と答えるのがいいだろう。
しかしその問いがあなたの*異名*を指しているとすればそちらで答えるのがいいだろう。異名とはその人物を簡潔かつ適切に表す別称。イルヴァでは名前ではなく異名で名乗り合うことも珍しくない。
ここで質問を省みてみよう。この問いは”誰”ではなく”何”なのかを聞いている。
あなたはそれに該当する答え、すなわちノースティリスの冒険者であると答えた。
「ノースティリス? どっかの地名か?」
十六夜少年は聞き覚えがないらしい。やはり異世界だということがわかると同時に、この少年とも世界が異なっていることを悟る。
「聞いたことがないわね」
「……知らない」
どうやら他の2人とも同郷ではなさそうだ。
「それにしても冒険者ってことは、遺跡なんかに潜ってお宝でも探してだってことかよ、ヤハハ! 楽しそうだなおい!」
一攫千金は男の浪漫。遺跡潜りも数多くこなしてきたと十六夜少年に語る。しかしリスクも高く、容易に他に還ることも珍しくない。
「いいなぁオイ! ノーリスクローリターンなんて糞食らえだぜ! やっぱハイリスクハイリターンじゃなきゃ盛り上がらねぇだろうが!」
どうやら十六夜少年はお気に召したらしい。その強い意志を感じさせる瞳を輝かせて、自分もやりたいという強い欲求を抱いているのがありありとわかる。あなたの駆け出しの頃を思い出し、自分と重なって見えた。
「まったく、男の子というのら野蛮ね。もう少し優雅に生きれないのかしら」
「……少し興味はある」
「春日部さん!?」
どうやらあなたを含め招待された4人の相性は致命的に悪くはないらしい。あなたはこれからの冒険と目の前の少年少女に想いを馳せ自然と笑みを浮かべた。
ウサギは涙して叫んだ
「送還!」
しかしなにも起こらなかった。