Bitter Sweet 〜消えた記憶の行方〜   作:椿姫

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ポピパ小説を書き始めました。初めましての方は初めまして。そうでない方はお久しぶりかと思われます。りみ小説は以前から考えてましたので投稿しました、不定期更新ですがよろしくお願いします。


第1話 喪失

 

「…………」

 

 

土砂降りの雨の中、俺は1人、ずぶ濡れになりながら足をふらつかせ歩いている。道行く視線や他者の表情、泥水が跳ねて顔にかかろうと気に止めず、目的も行き先も分からぬままただ歩き続けるだけだった。

 

「…………」

 

なんであんなことが起きたのか自分でも分からなかった。現実を受け止められなくなり、発狂して、家を飛び出した。あれはそう…普通に家に帰ってきた時に起きた最悪な悲劇だった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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〜数時間前〜

 

 

「あん?何で玄関の鍵が空いてんだ…?」

 

ちゃんと鍵をかけて学校に向かったはずなのに…そんな不信感を抱きながらも傘を閉じて家に入り、リビングに向かう。

 

「ただいm……?」

 

そこには目を疑う惨憺たる状態だった。窓ガラスが割られて散乱としただけでなく、食器やステンドグラスが床に落ち、植木鉢が倒されカーテンも破かれ、部屋のあちこちには血痕があった。

 

「…なんだよこれ…」

 

自分の部屋は荒らされてないか確認する為、自分の部屋に行くが荒らされた形跡は全くと言っていいほどなかった。ひと安心するわけもなく俺は父さん達の寝室に向かう。

 

「父さんっ!母さんっ!」

 

部屋をノックすると鍵が掛かってなく、すんなりと入れた。

 

「父さんっ!母さーっ!?」

 

部屋の中では父さんと母さんが血だらけで倒れていた。父さんの胸部にナイフが刺さり出血した跡がみえる。母さんは床に横たわっていて、背中には切られた跡があった。

 

「……父さん!?母さんっ!?」

 

俺は急いで2人の元に駆け寄り安否を確認するが既に息がなく死んでいた。

 

「そんな…なんで…」

 

その時、階段の方から物音がした。俺は急いで階段の方に向かう。

 

 

 

 

「…………あぁ…ああぁぁぁ…」

 

 

 

 

そこには目を閉じて首を吊っている妹がいた。

 

 

 

 

 

 

 

「…………あぁ、あ、あっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………うあぁああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

状況を、現実を受け止めきれなかった俺は家を飛び出した。どこかに向かうわけでもなく、ただひたすらに、目の前からの恐怖と地獄から抜け出したいその一心だった。

 

 

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そして…今に至り、ずっと歩き続けている。あれからどれくらい家から離れたとか、心配だとかは心底どうでもよかった。家族を何者かに皆殺しにされたショックと孤独感、俺を嘲笑うかのごとく降り注ぐ絶望という名の雨。

 

「…………なんでなんだよ…なんで…どうして…」

 

そんなことを呟きながら歩いていく。ふと上を見上げると『花咲川』と表記されていた。家から随分と離れたところに来てしまっていたんだなとこの時悟った。だがもう…どうでもいい。全てがどうでもいい。このまま雨曝しにされるのも悪くない。

 

「…死にたいなぁ…」

 

誰の視界にも映らない、1人で死ねる場所を探して死んでしまおう。そして天国に、家族に会いに行こう。そんなことを考えながら俺は歩きを進めようとするが、水たまりに足を取られ足を滑らせ

る。

 

「あぐっ…」

 

そしてそのままビニール袋が積まれた山に突っ込んだ衝撃でアスファルトへ頭をぶつけ、更には誰もいない路地裏近くでドサドサと音が鳴る。

 

「…………痛ぇ…」

 

打ち所が悪かったのか頭から血が流れていた。しかし流れる血を拭う気にも、ゴミをどかす気力も力も残っていなかった。このままゴミに埋もれて、雨に打たれて、野垂れ死ぬならそれでいい。誰にも気付かれずに早く死にたい。

 

力尽きた俺は…そのまま気を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 

あれからどれくらい気を失ったのか分からなかった。光に当てられ俺は意識を取り戻し、目を覚ました。

 

「ここは……どこだ……?」

 

布団から起き上がる。枕元には冷水で冷やしたと思われるタオル、乾いた服があった。

 

「………眩し…」

 

襖が開けられ、中に誰かが入ってきた。

 

「…あ、気がついたんだね?」

 

入ってきたのはふわっとしたショートカットの女の子だった。

 

「ずぶ濡れで家の近くで倒れてたんだよ……見つけてからお姉ちゃん達に手伝ってもらって家に運んだけど…大丈夫?」

 

その子は心配な目で俺を見ている。きっと本心から心配しているのだろうが今の俺には『感謝』だの『嬉しい』とかそう言う感情が無かった。寧ろ『畏怖』とか『怖い』とか言った方がいいだろう。

 

「なんで…俺を助けた?」

「え?」

 

思わず声に出してしまった。向こうはかなりあたふたしてる。俺が再び問い詰めようとするが、また扉が開けられ誰かが中に入ってきた。

 

「りみー?運んできた人起きたー?」

「あ、お姉ちゃん!うん!起きたよ」

 

お姉ちゃんと呼ばれたその人は俺の顔をみる。

 

「大丈夫?応急処置はやったし、頭からの流血は私とりみで止めたから。お母さんには事情を話してあるから安心して」

「…………」

「あ、ごめんね勝手に話進めて。私は牛込ゆり、こっちは妹のりみ」

 

簡潔に自己紹介された。妹の方も「ど、どうも」と言って少し後ずさる。

 

「ねぇ、君はなんて言うの?」

「俺?……俺は……?」

 

名前を言おうとする。が、自分の名前が出てこない。

 

「?ど、どうしたの?」

 

妹の方が俺の顔をまた心配そうな顔で見る。そして2人は俺の放った予想外の言葉に目を疑うことになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………俺は…………誰だ?」

 

 

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。
記憶喪失の主人公はこれからどうなるのか?記憶を取り戻すことが出来るのか?そして家族を殺した犯人は?

忙しい中でのWeb作家業ですが、暖かく見守ってくれれば幸いです。
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