今回でようやっと10話目になります。
待った方々、申し訳ありません。
後書きにて今回から登場する新キャラクターの紹介をしています。
では最新話、どうぞ。
有咲side
「か、香澄?……な、なんでお前が?」
蔵の扉を開けるとそこに居たのは汗だくになり息を切らした香澄だった。
「あ…ありしゃ」
「お、おい!しっかりしろ!」
私の声を聞いたのかりみも駆け付けてきた。
「か、香澄ちゃんっ!?どうしたの?」
「はぁはぁ…あ、有咲に話があって…走ってきたの…」
とりあえず私らは香澄を蔵の中に入れることにした。給水させて一旦落ち着かせてから話を聞いた方がいいだろ。
(あんなに険しい表情の香澄はびっくりしたぞ…一体何を話しに来たんだか…)
まさかお菊のことで話がある、みたいな事は…いや、それは私が考えすぎてるだけか…。お菊と私が幼馴染だってことも知らないんだし。
有咲とりみが香澄を介抱している頃、菊乃の通っている聖木松高校に再び調査でやってきた陸奥とタツヤは登校日数の少ない生徒、南雲アツヤについて聴いてまわっていた。
「南雲ですか?アイツは俗に言う不良ですよ」
「また最近学校に来なくなってきてるし…いつ辞めてもおかしくないと思うっすよ?どーでもいいけど今日も来てないし」
「南雲って結構キレやすいよねー?」
「あー、それは分かりみあるわ〜ww」
陸奥とタツヤは、中々有力な情報が集まらず苦難していた。何度か自宅まで行ってはみてるのだが、家には誰も居なくても本人にも会えずじまいなのだ。
「はぁ…南雲アツヤくんはなんで学校に来てないんでしょうかね…?陸奥さん、どう思います?」
「俺が知るか。学校に来てない、不良だって聞いてる限りじゃ悪ガキにしか見えないがな」
陸奥の南雲アツヤに対しての言い草にタツヤはため息をつく。
「なんでも悪い子供って決めつけたら可哀想ですよ。まだ1度も会ってないのに…」
「タツヤ、お前は人が良すぎる。いつかイカれた奴らに篭絡させられかねんぞ?」
「学校にいる時に警察がそういうこと言っちゃダメでしょう…」
「とりあえず次は…閃宮崎に会ったっていう市ヶ谷と牛込って女子高生について聞き込みか?」
「重要参考人にもなりますし…そうですよね」
陸奥とタツヤは、有咲とりみを探すべく学校をあとにした。そんなことも梅雨知らず警察が探している本人、南雲アツヤは学校に行かずアルバイトをしていた。
〜某所 配達業者〜
アツヤside
「南雲くん、はいコレ今月の分だよ」
「ありがとうございます」
俺は上司から今月分の給料が入った給与袋を渡される。
「しっかし君の働きっぷりは凄いねぇ。他の部署の人達にも教えてあげたいくらいだよ」
「いや、俺はまだまだですよ…」
「そんなに謙遜しなくても仕事ぶりを見ればすごいのに」
「あはは…それじゃあお疲れ様でした」
踵を返し、俺はバイト先から出て自転車を漕ぎ、ある場所に向かった。その場所は、双生児の妹が通っている花咲川幼稚園だ。自転車を停めて園内に入ると俺の迎えを待ってたと言わんばかりに妹が元気に駆け寄ってきた。
「アツヤ兄ぃ!」
「おにいちゃーん!」
「いい子で待ってたか春陽、夏萌?」
「春華ねー!いい子で待ってたのー!」
「おにいちゃん頭なでなでしてー!」
「ったく…しょうがねぇな。よしよし」
妹2人の頭を優しく撫でるとえへへと笑う。
「ほら、そろそろ帰るぞ?」
『はーい!』
自転車を押してながら春陽と夏萌を引き連れ、今度は花咲川病院まで向かった。理由としては、母親が入院しているからその御見舞に行く為。途中の花屋で花束を購入して母親が入院している病室へ行くと、身体を起こして病院食をゆっくり食べてる母親の姿があった。
「母さん、身体は大丈夫?」
花瓶に入れてある花を買ってきた花束を入れ替える。春陽と夏萌は心配そうに母さんを見つめる。
「私は大丈夫…よ。ゴホゴホっ」
「ママ大丈夫なのー?」
「なのー?」
「んっ…だ、大丈夫よ…」
「………」
そう言いながらも妹達に心配かけまいと母さんは頭を撫でるが、顔は普通の人より少し青白く、咳込みも多い。
母さんは3年前に持病が悪化してからずっと病院で闘病生活を余儀なくされていた。入院する前までは働いてた時のお金で何とかなったが、別の治療費として100万円が追加で必要だと病院の院長から言われた。俺はその時から母さんや妹達に、秘密にアルバイトを始めた。コツコツ貯めて今何万くらいだったかわかんないけど…とにかくもっともっと貯めねぇとな。
「春陽、夏萌。そろそろ帰ってご飯食うぞ?」
「はーい。ママ、また来るね!」
「ねー!」
「3人とも、ありがとう…お母さんも頑張るわ」
俺達は病院を出て真っ直ぐ家に帰る。貰った給料は殆どが母さんの治療費の為に残し、少ない金額でやりくりして行かなければならない。途中コンビニで買った種もやしとバターを買ってあるから夕飯のおかずはもやし炒めで大丈夫、ご飯も3人分炊ける分残ってるし…あ、他の野菜もちょっとある。
「よし、すぐに作っちゃうからな」
「はーい!」
俺はフライパンとまな板を取り出し調理に取り掛かった。
有咲side
「ごくごくごく…ぷはぁっ、生き返ったぁー!ありがとりみりん!」
「よかったぁ…勢いよく来たからびっくりしちゃったよ」
「えへへ、ごめんごめん」
先程まで息切れしていた香澄は何やら話したいことがあるって言ってたな…水を飲んで落ち着きを取り戻したであろう香澄に私は問いかける。
「ところで香澄、私に話したいことがあるって言ってたよな?なんだ?」
「うん!それだよ!あのね有咲…」
香澄はいつもよりも真剣な眼差しで私の目を見る。思わずたじろぎかけるがなんとか堪えた。
「前に有咲が言ってた無理してでもやらなきゃいけないことって…なに?」
「え?」
「だ、だってあの時の有咲…すごく変だったから。風邪ひいてたとは言っても普通はあんな感じにならないよ?」
香澄の言葉はしっかり的を射抜いていた。しかし、私の幼馴染の事を、お菊の事を香澄へ話す事は私とりみの中ではダメだと考えている。無論、それは沙綾とおたえも同じだ、話す訳にも巻き込む訳にはいかない。どうにかして誤魔化すことばかり考えてると香澄が再び踏み込んできた。
「りみりんは有咲から何か聞いてたりしない?」
「へっ?」
香澄は私の横にいたりみに声をかける。香澄の事だから一緒にいるってことは何か話を聞いてたりしてないかって思ったんだろう。しかもりみに至っては、ついこの前までお菊を匿っていたからな…
「え、えっと…私は…」
「りみ」
私はりみの前に手を出して静止する。その後すぐに香澄の肩に手を置いた。
「あ、有咲…?」
「香澄。お前はこの件から手をひけ」
「え?有咲…?何言ってるの?」
「有咲ちゃん?」
私の言葉に香澄だけでなくりみも驚く。そんな中、私は口を開き話を続ける。
「これは私の問題なんだ。私の事情は私が解決しないといけない。無関係な香澄を巻き込む訳には行かないだろ?それにこの前言ったじゃねぇか。『私の私情は私の問題、いくら香澄達でもこればっかりは関係ねぇんだから!!』てな。……もういいだろ?分かったら帰ってくれ。学校にはちゃんと行くしポピパの活動もちゃんと復帰するからさ」
「………」
話し終わった私は香澄の肩から手を離す。最後の方ははちょっと冷たかったかもしれないが、こうでもしないと香澄は諦めて帰ってくれないと思った。これで帰るかと思ったがそうもいかず、香澄は私の肩を掴んだ。
「香澄?」
「有咲…なんで…そんなこと言うの?」
香澄の目には涙が溜まっていた。いや、むしろもう泣く手前まで来ていた。私とりみは驚き目を見開く。
「私は有咲が心配なのっ!最近の有咲すっごい無茶苦茶な事ばっかりしてる!私分かんないよ!有咲が何をしようとしてるか分からなくて頭がごちゃごちゃなの!理解したくても出来ないのっ!」
「理解しなくていいっつーの。お前には関係…」
関係無い、そう言おうとするが香澄に止められる。
「関係あるよっ!友達だもんっ!有咲は私の事友達って思ってないのっ!?」
「そ、そう言うことを言ってるんじゃ…」
「だったら教えてよ!!私にだって有咲のことを知る必要はある!!力になれることだってあるはずだよ!?」
「香澄…」
りみは黙って私と有咲のやり取りを見るしか出来てなかった。その証拠に、りみの口は1回もあかず、ぐっと涙を堪えてるのが分かる。
「私だって…私だって有咲の力になりたいから!もしかして頼りないかもだけど…どんな事でも私は有咲の為に協力したいっ!協力させて欲しいの!!だからお願い有咲…1人で無茶な事じないでよ…うぅ…いつもの有咲じゃなぎゃやだぁぁん!!」
この香澄の話を、思いを聞いて私は思った。香澄達にはお菊のことは一切関わらせない方がいいと思ってやってきたことが香澄をここまで泣かせて、心配させてしまったことを。風邪でどうにかなっていたとはいえまずは香澄に謝らねえとな。
「あ、あのさ香澄…」
「うわあああんっ!ありしゃあ〜っ!!」
香澄は言葉を遮り、仕舞いには私に抱き着いてきた。突然の事で戸惑いながら退けようとするが全然退く気配がない。
「ちょ、おいっ!?だ、抱きつくなぁぁ!?」
「有咲ぁ…ありしゃぁ…ひっぐ、ぐずっ」
「うわあああっ!!香澄お前鼻水垂れてる垂れてるっ!?汚ねえっ!?早く拭けよっ!!そして1回退け!起き上がれないだろー!りみ、手伝ってくれ!」
「ひっぐ、ぐずっ…うぅ、香澄ちゃぁぁんっ…」
りみは涙を堪えられず涙を流していた。
「頼むから泣きやめりみ!?」
私は、なんとか香澄を何とか起き上がらせ鼻水を拭かせる。二人とも泣き止んだ頃合いを見て話し出す。
「はぁ…ったく香澄、泣きすぎだろうが」
「ご、ごめん…」
香澄が再び落ち着きを取り戻したところで私はりみに耳打ちする。
「りみ…いいよな?」
「うん。ここまでなっちゃったら…話そう、有咲ちゃん」
「…わかった、おい香澄」
「?どうしたの有咲?」
香澄は顔をキョトンとさせて私の顔を見る。
「沙綾とおたえを呼んでくれるか?みんなに話がしたい」
「うん!分かった!」
本当はここにいる香澄だけにしようかと思ったけどポピパ全員に話すべきかも、私はそう思ったのかもしれない。香澄は早々とスマホを取り出すと沙綾とおたえに電話をかけた。
「これでいいんだよね…有咲ちゃん?」
「ん、そうだな」
りみの言葉に私はちょっと笑いながら応えた。数分後、沙綾とおたえが蔵にやってきた。私とりみは香澄達に自分達がこれまで何をしていたのか、お菊の事件、記憶喪失だって事とか、私たちの知る範囲のこと全てを話した。沙綾もおたえも香澄もただ黙って私の話を聞いてくれていた。
「……ってことなんだよ」
「成程…つまり有咲の幼馴染のその…菊乃くん?って人がいて彼は今病院で昏睡状態尚且つ記憶喪失なんだよね?それでりみりんと有咲が彼の記憶を戻そうとしてるのかな?」
沙綾は直ぐに話の内容を理解してくれた。おたえと香澄もちんぷんかんぷんになりながらも沙綾の説明でなんとか理解していた。
「スケールが凄すぎるから全部理解するにはもう少し時間が掛かりそうだけど、有咲とりみりんがやってる事がわかって良かったって私は思うよ。最近話すこと少なくなってたから…ね?」
「沙綾ちゃん…」
「そこまで聞くと私も2人に協力したいな。おたえと香澄は?」
「わたしも協力する〜」
「うん!勿論!あ、そうだ有咲…」
香澄は私に顔をむける。
「ん?どうした?」
「この前は大っ嫌いって言っちゃって…ゴメンなさいっ!」
ペコりと頭を下げる香澄に戸惑いを隠せない。私はすぐに頭を上げさせた。
「あ、謝んなくていいよ…寧ろ私の方が謝んなきゃいけねーし。その…私もごめん!香澄だけじゃなくて皆の事、全然考えてなかった!!」
「ありしゃあ〜」
香澄が何度目か分からないハグをしてくると同時に蔵の外から婆ちゃんの声が聞こえてきた。
「有咲ー?有咲いるかーい?」
私は蔵から出て婆ちゃんの元に駆け寄る。
「どうしたんだ婆ちゃん?」
「さっき病院の人から連絡が来て…菊乃くん、意識取り戻したみたいなんだよ」
「えっ!?」
菊乃side
〜花咲川総合病院3F 菊乃の病室〜
「…………………」
ゆっくりと身体を起こすと知らない場所だった。倒れたあの後からずっと気絶してたのか頭がくらくらする。
「痛っ、ここは…どこだ?」
今回登場した新キャラ紹介
南雲アツヤ(なぐも あつや)イメージCV:金子誠
・菊乃と同じクラスの問題児。気が短く威圧的な態度をとることが多い性かあまり仲の良い友人が居ない。学校に来ること自体が珍しく、実は親の治療費を稼ぐ為に学校に無断でバイト漬の生活を送っている。
南雲春陽(なぐも はるひ)イメージCV:早見沙織
・アツヤの妹。幼稚園に通っている。桜色の髪が特徴。天真爛漫で色んなものに興味を持ちやすい。
南雲夏萌(なぐも なつめ)イメージCV:伊藤あかり
・アツヤの妹。双子の春陽と同じ幼稚園に通っている。アツヤの事が大好きなお兄ちゃんっ娘。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
もうすぐ僕のひまり小説「夕焼けに誓う幼馴染達」が完結します。最終話更新した際に、もしお時間宜しければ読んで貰えると嬉しいです。
次回 第11話 正義と秩序の女神