転勤先への引越しで身体への負担が尋常じゃあないです…
今回は幼馴染でありもう1人のヒロイン市ヶ谷有咲回です。
有咲side
私はニュースを見終わるなりお菊の携帯に電話を掛ける。が、何度やってもお菊は電話に出ない。
「……お菊…頼むから電話に出てくれ…」
「有咲、そろそろ学校の時間…」
ばあちゃんに言われて時計を見ると遅刻するかしないか、そんくらいの時間帯だった。
「えっ!?うわ!?やべ遅刻するっ!ばあちゃん、いってきまーす!!」
私は朝食を急いで食べて弁当をバッグに入れて家を出ていった。
(放課後とか時間見つけて電話しねーとな…何処にいるんだよお菊っ!?)
菊乃side
「じ、じゃあ菊乃くん…私とお姉ちゃん、学校に行ってくるからね…?」
「外に出るときは気を付けてね?朝のニュースもあるんだし」
牛込姉妹にあれこれ言われて俺は無言で頷く。そう言えばニュースで俺の事を見つけたら保護するだの何だの言ってたから軽く指名手配犯になった気分だな。
「2人とも、早く行かないと遅刻するわよ〜?」
「え?うわほんとだ!?」
「はうっ!?行ってきまーす!」
2人は慌てて家を出て行くのを俺は見送り玄関のドアを閉めて寝ていた部屋に戻る。布団を畳んでその場で胡座をかく。
「…ニュースの事が気になって仕方がねぇ」
朝食を食べている際に観たニュース、それは俺の家族と思わしき人物の惨殺事件だった。内容を見る限り住居侵入だけでなく家族の殺害、更には厳重管理していたあるものが無くなっていたらしい。それと記憶が無いからどうとも言えないが現役裁判官として報道されていた"閃宮崎 豪傑"という人間は多分俺の父親なのだろう。
「取り敢えず調べてみるか…若しかしたら記憶を取り戻せるかもしれないし」
俺は部屋を出て階段を降りていきリビングで食器を洗っている牛込姉妹の母親に向かって行く。
「あの…ちょっといいですか?」
「あら?どうしたの菊乃くん」
「調べたいことがって…パソコン借りる事出来ますか?」
「勿論大丈夫よ。あ、パスワードは…」
りみside
〜花咲川学園 1年A組〜
学校に着いてからは教室中がざわめいていた。理由は十中八九菊乃くんの事件の事だと私はすぐにわかった。
「ねぇ朝の事件観た?」
「観た観た、惨殺事件だっけ?怖いよね…」
「閃宮崎家って裁判官の家系だったよな?父親が現役裁判官で母親が元ピアニストだって聞いたことあるぞ?」
「あ、その噂聞いたことある…」
みんなが口々に事件のことについて話している。あれだけ大々的に取り上げられたら気にならない方がすごいと思うな…
(菊乃くん…大丈夫かな…)
菊乃くんを心配してると香澄ちゃんが私の席に走って来る。後ろから沙綾ちゃんとおたえちゃんもはぁはぁ息を切らしながら教室に入って、それと同時にチャイムが鳴った。担任の先生が入ってきて朝のHRの中では勿論、菊乃くんの家の事件の事が議題に上がった。
「……と言う事件だったんだが、1人でもいい。誰か何か知っている情報とかはないか?」
先生がそう言っても、誰も菊乃くんのことを詳しく知らないと言うのが多かった。無理ないよ、だって隣町の高校の人なんだから…更に言えば記憶喪失、私の家で今居候してるなんて言ったら大騒ぎになっちゃうし。
出来ることなら菊乃くんが今どんな事になっているかを教えてあげたい。でも、もし言ったとしたら菊乃くんにどんな風に影響しちゃうんだろう…それを考えたら言わない方が賢明なんだろうなと私は思ってしまう。
(先生、ごめんなさい…教えてあげたいけど今の菊乃くんは…)
そのまま朝のHRが終わって1時間目の授業が始まるけど私は菊乃くんの事が心配過ぎて先生の話が頭に入らなかった。
菊乃side
〜牛込家〜
パソコンのパスワードを教えてもらい、自分の父親かも知れない"閃宮崎 豪傑"のことを調べていた。住所、家族構成、履歴、俺が記憶を取り戻す為に必要かもしれない情報も含めて他片っ端から探して行く。
「……住所はと、花咲川からだと1時間ちょっとなのか?だいぶ距離もあるな…」
プリンターを使って住所やら色々記載されている資料を作る。そして俺は玄関に向かって行こうとすると牛込母に制止された。
「菊乃くん?どこいくの?」
「……」
俺は「大丈夫です、すぐに戻ります」と一言だけ言って玄関を勢いよく飛び出して走りだす。向かう先は勿論、閃宮崎家だ。
「まずは現場に向かって調べてみるか…」
俺は誰にも聞こえないような声でそう呟いて全力疾走して行った。財布と携帯とかがないからついでにそれも確保できればいいなと思いながら。
りみside
放課後になってノートや教科書をバッグにしまって教室を出ようとすると香澄ちゃんが私の前に出てくる。
「りみりーん!そんなに急いでどうしたのー?」
「か、香澄ちゃん…バンドの練習なんだけどごめん、今日は参加出来ないの…ちょっと用事があって…」
話しているとおたえちゃんと沙綾ちゃんも教室を出てくる。
「りみりんが休むなんて珍しいね?」
「っは!もしかしてりみ…」
おたえちゃんが何かを閃いたかのように目を見開いて私を見る。まさか…菊乃くんの事かな?
「ついにウサギを飼うんだね!ペットショップに行こうとしてた!?」
「えっ!?そうなのりみりんっ!?」
予想を斜め行く回答に思わず私と沙綾ちゃんは転びそうになる。
「ち、違うよ…」
「あらら、違うのか〜」
「と、とにかく今日は本当にごめんね….」
「そっか…」
「見つけたぞ戸山ぁ〜!!」
怒号を発しながらいきなり先生がこちらに向かってきた。
「わぁっ!?どうしたんですか先生!?」
「どうしたんですか!?じゃない!お前この間の授業で使用したレポート提出してないぞ!」
「あ…すっかり忘れてました!!」
「なんてドヤ顔してんだふざけんな!今日中までが提出期限だぞ!職員室に連行だ!」
「おたえ〜、さーやぁ〜助けてぇ〜!?先生ぇ、お願い明日まで待ってくださ〜い!」
「これ、今日中に出さないとお前の単位が落ちるぞ?それでもいいのか?」
「えっ…そ、それは嫌だ〜!!」
そのまま香澄ちゃんは先生に引き摺られるように連れていかれた。
「今日はなんか…バンドの練習出来そうにないね…有咲にも伝えとく?」
「そうするー」
そう言っておたえちゃんがスマホを取り出して有咲ちゃんに連絡を入れようとする。
「あ…」
「どうしたのおたえ?」
「おたえちゃん?」
「有咲から届いてる…えっと『おたえ!私今日練習参加出来ねぇ!香澄のやつに伝えといてくれ』だってさ?」
有咲side
「ただいま!」
学校が終わるなり家に帰ってきた私は蔵に行って荷物を下ろす。そして出かける準備を手早く進めていく。行く場所はもちろん、お菊の家だ。
「えっと…財布と携帯持ったし後は…よし!大丈夫!!」
「有咲」
蔵から出て行こうとすると庭にいたばあちゃんに声を掛けられる。
「閃宮崎さんの家に行くんだね?何かあったら連絡はするんだよ?」
「分かってる。じゃあ行ってくる!」
私はそう言ってお菊の家へ向かっていった。
(ここから走ってくとお菊の家まで1時間以上はある…だったらバス使って行った方が早いな)
バス停についた私は丁度よく止まったバスに乗る。お菊が住んでる八津崎まではバスを使えば道を短縮できるので普段歩きで1時間の所、20分くらいで到着する。
(お菊……お前に会って話がしたい!お前に何があったのか全部聞かなきゃ気がすまねぇ!!)
八津崎に着いてからはお菊の安否を確認したいがために私は全力疾走でお菊の家に向かった。
菊乃side
「地図と情報頼りに来たけど…」
牛込家でプリントした地図と住所を確認する。目の前の表札には【閃宮崎】と表示されていたのでここが俺の家なのだろう。
「……」
家を見てみると窓ガラスが割られていたりして如何にも誰かが侵入した跡がみられた。俺は進んでいき玄関の取手に手を掛ける。
「空いてる…いや、壊されてるって言った方がいいのか?」
靴を脱いで1階に何か手掛かりになるものは無いか探していく。リビングやキッチン、小部屋など手当り次第に回っていくもこれらしき情報は掴めなかった。
「無いな。じゃあ次は…」
俺は階段に目をやり、2階に駆け上がって行くと2つ部屋があった。俺は先に見つけた手前のもう1つの部屋に入ってみる。
「ここは……」
そこは、何らかのコンクールで最優秀賞を取ったのか賞状が幾つも飾られている。それだけでなくバッグと机、ベッド等もあって暫くしてから俺の部屋なのだと思った。
「ここが…俺の部屋なのか?」
ふと横を見ると、バッグが無造作にベッドに置かれていたので俺はそこに向かいバッグの中を漁ってみると中には俺のモノらしき携帯と財布やらが出てきた。
「これ…俺のか?」
スマホを見てみると大量の着信履歴、メールが200件以上もきている。これは後で見ることにして、と…
「あとは何か無いのか…?」
そう言って机の引き出しを開けると入っていたのはぼろぼろの楽譜だった、それもたった1枚。
「…楽譜?なんでこんなところに…」
何か記憶の手がかりになるかもしれない。そう思った俺はその楽譜を持って部屋を出ていき玄関に向かう。
「これといった収穫かどうかは分からないが…そろそろ帰ろう。牛込さん達が心配するかも知れないし」
楽譜を見ながら玄関に向かうと勢いよく玄関のドアが開けられた。ドアを開けたのは柔い黄色の髪をしたツインテールの女子ですごく息切れをしている。
「はぁ…はぁ…」
「?」
「良かった……お菊、心配…した…ぞ?連絡がつかないからどうしちまったのかと思ったんだぞ?」
その女の子は俺の顔を見て安堵の息を漏らすと嬉しかったのかどうかは分からないが涙目になりながら俺に飛びついてきた。俺はいきなりの事で訳が分からなくなる。
「お菊…よがっだ…ぼんどによがっだぁ…」
「あ、あの…」
「どうした、お菊?」
「も、申し訳ないことを聞くかもだけど『お菊』って……俺のこと、なの?」
「………は?」
俺の言葉が予想外すぎたのか、飛びついてきた女の子は言葉を失った。
久しぶりの更新です…身体めっちゃくちゃ痛いです、取り敢えず身体を休めて明日の仕事に臨みます。