Bitter Sweet 〜消えた記憶の行方〜   作:椿姫

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お久しぶりです、ゆうに2ヶ月ぶりです。
僕の書いてる他作品に評価やお気に入りが少しずつまた増えてきていて嬉しいです。

今回の話は過去話から入ります。



第4話 ばかやろう

有咲side

 

 

〜中学時代〜

 

 

『そっか…お菊隣町の高校か』

『ごめんね。本当は有咲と一緒に共学の花咲川に行きたかったんだけど…』

 

お菊は俯きながら悔しそうにしてる。

 

『親父さんには…その、伝えたのか?花咲川に行きたいって』

『言ったけど…』

『…その様子じゃ取り合ってもらえなかったのか。お菊の親父さん頑固だなぁ、私からもなんかいってやりたいなぁ』

『あ、有咲は何も言わなくていいよ…反論できなかった俺が悪いんだし…』

 

お菊の言葉に私はため息をつく。

 

『あ、有咲?』

『お菊、何でもかんでもそうやって自分だけで溜め込むなって言ってるだろ?そういう時は私に相談しろって言ってんじゃん幼馴染なんだからよ』

 

昔からお菊は何かあると、他人を巻き込まないようにって全部抱え込んじゃうんだよな…だからお菊には支えが必要だと私は感じちまう。私はお菊の背中にそっと手を回す。

 

『…ゑ?』

『大丈夫だ。お菊がどんだけ何言われても私は味方だからそんな顔するなって…な?』

『あ…ありがど…』

『ほんと昔から泣き虫だよな〜お菊は?そんな調子で隣町の高校でやってけるのか?』

『な、泣いてないよ…』

 

そう言ってお菊は涙を拭う。

 

『有咲と離れても大丈夫って証明する。父さんとちゃんと面と向かって話せるようにするし、それに…ピアニストの夢だってあるからね』

『そうか…それが聞けたなら心配なさそうだな!』

 

私は安心した、もうただ泣いてばっかりで私の後ろに隠れていた昔のお菊じゃないなって。

 

『じゃあ…約束だぞ?』

 

私は小指を立ててお菊と指切りげんまんする。

 

『勿論だよ有咲っ!』

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

〜現在〜

 

「あ、あの…」

「どうした、お菊?」

「も、申し訳ないことを聞くかもだけど『お菊』って……俺のこと、なの?」

「………は?」

 

お菊が放った言葉に私は驚きを隠せなかった。

 

「…な、何言ってんだよお菊!冗談キツイぞ〜?幼馴染の顔と名前を忘れたなんて言うのか〜?あ、わかったぞドッキリなんだろ?私を驚かせる為にそういうこと言ってるんだr」

「…ちょっと、いい?」

 

私の言葉はあっさりとお菊によって遮られる。そしてお菊の口から私が聞きたくなかった言葉を聞くことになる。

 

「いきなりこんなこと言っても信じて貰えるかどうかわからないけど……俺、記憶が無いんだ」

「…………は?」

 

しばらく頭が考えることをやめてしまうほど衝撃が走る。は?き、記憶が無い?つまりお菊は記憶喪失って事なのか…?

 

「…俺は自分が何者なのかも、なんで記憶を失ったのかも分からないんだ」

「……」

 

私はお菊の言葉を黙って聞いているしかなかった。それ以前にいきなり記憶喪失ですって言われて受け取れるわけねぇよ…

 

「ごめん、初対面の人に話すような事じゃ無かったよね?ましてやこんな事信じてくれって言う方が可笑しいよね。じゃあ俺はこれで…」

 

私は横を通り過ぎようとするお菊の腕を掴む。

 

「ま、待ってくれ……」

「え、えぇと…まだ俺になにか用…?ってか、ちょっと痛いんだけど?」

「ほ、ほんとに何も覚えてないのか…?」

 

お菊の顔を見ながら念を押して問いかける。

 

「私だぞ?幼馴染の市ヶ谷有咲だぞ…?ほ、ほら…よく私の家の蔵とかでかくれんぼしたり公園で遊んだりもしたろ?ほ、他には…」

「……ごめん」

 

記憶喪失じゃないと必死に自分に言い聞かせながらお菊に向かって話していたが『ごめん』、その一言で私は確信してしまった、受け入れたくない現実を受け入れる事になってしまう。いや、そうならざるを得なくなった。

 

「ほんとに何も覚えてないんだ…」

 

お菊は申し訳なさそうに私を見ながら横を通って行く。私は思わずその場に、へなへなと力無く座り込む。

 

「……嘘だって、言ってくれよ」

 

私の声は、虚しくもお菊には届かなかく暫くの間ショックでその場から立ち上がることは出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜聖木松高校〜

 

 

菊乃と有咲が再開したその同時刻、菊乃の通っている聖木松高校では警察がやって来てクラスメイト一人一人に事情聴取をしていた。

 

「えっと…辻村 恋太郎(つじむら れんたろう)くんだね?」

「は、はい…」

 

名前を呼ばれた恋太郎は小さく返事する。

 

「菊乃くんのことについて何か知っている事はないかい?どんな些細なことでもいいんだ。僕達に協力してくれないか?」

「さ、些細なことですか…」

 

恋太郎は首を捻る。菊乃と同じクラスの辻村恋太郎は菊乃が転校してきて1番最初に仲良くなった男子で誰に対しても敬語で接し、気配りも出来て尚、相当のお人好し。誰かが困ってたりしているのを見過ごせない性格だ。

 

「…些細ってわけじゃないんですけど、前に菊乃がアザだらけで学校に来たことがあったんです…」

「アザ?」

 

恋太郎は頷き話を続ける。

 

「はい、俺が聞いた時は

 

『ちょっと家具にぶつけただけだから』

 

って言ってたんですよ。でもぶつかったにしては酷くて…あんまりにも痛そうだったので心配になって聞こうとしたら

 

『いくら恋太郎でも…踏み込んでいい事と悪い事あるの知ってるよね?…これ以上は詮索するな』

 

……それで結局俺は詮索するのはやめたんです。これくらいしか知りませんけど…菊乃、どこいったか分からないんですか?」

「それについては我々警察も全力で捜索にあたってます。発見次第保護致しますので」

「そうですか。ありがとうございます」

 

恋太郎は椅子から立って深々と頭を下げる。警察の2人もそれに伴い頭を下げた。

 

「いえ、こちらこそご協力ありがとうございました」

 

恋太郎が部屋から出ていくのを見送った警察官は再び椅子に座る。

 

「ふぅ…あーいうガキがいて助かったよ。他の奴らは誰と誰が仲いいとか付き合ってるだのくっだらねぇ話ばっかりだったからな」

「陸奥さん、いなくなったからって口が悪いですよ?」

 

もう1人の警察官が上司である陸奥に指摘するが陸奥は態度を変えず質問を投げ返す。

 

「ホントのことでしょう?タツヤだってそう思うだろ?」

「…僕らは正式な捜査でやっているのでどんな事でも情報が貰えるならいいでしょう?」

「分かってねぇなタツヤ。ガキは大人を困らせて楽しむような人種だぜ?辻村って言ったか?あのガキは人間デキてるからいいとして問題は他の奴らだよ。ったく、思い出しただけでもイラつくぜ…!」

「落ち着いてくださいってば…はぁ、とにかく菊乃くんのことについて得た情報を戻って纏めましょうよ?」

「そうだな…」

 

面倒くさがりながらも陸奥は立ち上がり借りていた資料室の部屋を教師へ返し、学校をあとにした。

 

 

菊乃side

 

 

携帯などを取りに行き、牛込家に戻ってきた俺は「戻りました」と一言だけ言って玄関を開ける。すると、学校帰りなのか制服姿の牛込りみが俺を見るなりドタドタと駆け寄ってくる。

 

「菊乃くんっ!?どこ行ってたのぉ!」

 

すごく心配していたのか涙目になっている。いや、既に泣いたあとがあるのか目元が僅かに赤い。

 

「お姉ちゃんもお母さんもめぇっちゃ心配したんだよお!!菊乃くんに何かあったかと思って…うぅ…」

「ご、ごめん、ちょっとコレを取りに…」

 

俺はそう言ってズボンのポケットから携帯電話と財布、そして地図やらなんやらを入れたファイルの中からぼろぼろの楽譜を取り出す。

 

「……俺の記憶が戻る何かを、取りに行ってたんだよ…」

「だ、だからって…何も言わないで飛び出さないでよぉ…」

 

りみさんは上着に縋り付き、涙を流しはじめた。

 

「……ごめん、りみさん」

「ううぅ…菊乃くんが無事で…よ、よがっだぁぁ…ひっく、ううっ、ううぅ…」

 

俺はこの時、さっき会った市ヶ谷有咲の事を思い出す。自分の事を幼馴染だと言っていた彼女の事がどうも頭に引っかかる、俺はりみさんに聞いてみる事にした。

 

「ねぇ、りみさん」

「どうしたの、菊乃くん?」

 

りみさんは俺から離れて顔を眺める。

 

「携帯とかを取りに行った時に人に会ったんだ…市ヶ谷有咲って人なんだけど…知ってる?」

「………え?」

 

りみさんは名前を聞くとしばらく放心状態だったけど、すぐに正気を取り戻す。

 

「有咲ちゃんに………会ったの……?」

「?、知ってるの?」

 

りみさんは震えながらも口にする。

 

「し、知ってるも何も…友達で、同じ学校で、同じバンド仲間……だよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲side

 

 

「有咲、晩御飯は…」

「ばあちゃんごめん、今は食べられる気分じゃないんだ。後で夜に食べるからテーブル置いといてくれ」

「……ちゃんと、食べるんだよ?」

 

そう言ってばあちゃんは蔵から立ち去る。

 

お菊との一件があってから私は家に帰るなり部屋もとい蔵に閉じこもり、部屋も暗くしてベッドの上でずっと体育座りをしている。

 

「………」

 

お菊が記憶喪失…それを聞いた瞬間から私の心の中がぐちゃぐちゃになった。現実離れした状況、虚ろな目をしていたお菊、幼馴染として一緒に遊んだり、いじめっ子から守ったり、見守っていたが今はそれら全てを覚えていない。私との思い出が、記憶が、約束さえも覚えていない。

 

「………」

 

無意識に頬から涙が伝う。何度も拭うがその度に悲しみが溢れ、止まらなくなる。

 

「おぎぐぅ…いやだよぉ…あうぅ、う、うぅ…」

 

思い出したくもないのに思い出してしまう。忘れようとすればするほど絶望と悲しみで変になってしまう。

 

『も、申し訳ないことを聞くかもだけど『お菊』って……俺のこと、なの?』

 

『ごめん』

 

とうとう我慢が限界を迎えたその時、私は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ぅわああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰にも届かぬ暗い蔵の中で私は声をあげて泣いた。

 

「嫌だぁ!嫌だ!!うっ…うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!」

「お菊ぅ!!どうじで…どうじでなんだよぉぉぉぉ!!」

「いつでも味方だって…言ったじゃねぇがぁぁぁぁぁぁああああああああああああ!!なんでっ!どうじでぇ相談じでぐれながったんだよぉぉぉ!!」

 

その夜、私は涙が枯れるまで泣き喚いた。泣き終わる頃にはベッドの周りにぬいぐるみやら物が散乱していた。その中で私は写真立てを手に取る。そこにはお菊と一緒に映っている1枚の写真。それを見るとまたもや涙が頬に伝う。

 

 

「1人で悩まないでくれよ……………ばかやろう」

 




11日〜13日の東京観光が凄く楽しみです。
希望休がとれたのでたっぷりと楽しんで来ようかなと思います

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