Bitter Sweet 〜消えた記憶の行方〜   作:椿姫

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今回は菊乃と涼平の過去話から入ります。
お仕事辛いお…お久しぶりです。



第8話 駒なんかじゃねぇ!!

涼平side

 

 

〜3ヶ月前 軽音楽部 部室〜

 

 

『悪いな菊乃。譜面と歌詞作りにまた協力させちゃってよ、裁判官になるからって言って図書室にこもって勉強ばかりのお前引っ張り出しちまってさ』

『俺は別に大丈夫、楽器の譜面作りはした事あるし勉強の息抜きにもなるよ』

 

髪を撫でながら菊乃は譜面製作を手伝ってくれていた。

 

『……よし、とりあえずこんなもんかな?みんな見て欲しいんだけど』

 

菊乃が立ちあがり俺を含めた数人に譜面を見せる。

 

『へぇ…』

『意外性があるのもいいかも♪』

『菊乃すげーな…』

 

全員が納得するほどの出来に思わず唾を飲む。やっぱり菊乃の才能は埋もれさせる訳には行かない、そう思っていた。前にも俺のギターソロの所を譜面製作で手伝って貰ったことがあってそれから菊乃を軽音部員に勧誘をしてるが頑なに菊乃は入らないの一点張りだった。

 

『もし試し引きしてみて変だって思ったら自由に改変してくれていいから。じゃ、俺そろそろ図書館に戻るね』

 

部室から出ていくのを俺は追いかけて菊乃を止める。

 

『ま、待ってくれ菊乃!』

『はぁ…涼平、何度も言うけど俺は軽音部には入部しないよ?』

『そ、そこをなんとか…こういう事出来るのにやらないなんて損してるって!なっ!?』

『前にも言ってるでしょ…俺は父さんの跡を継いで裁判官になるために勉強しなきゃいけないのにの』

『………ッ!』

 

菊乃は話が済んだかと言わんばかりに俺を置いて戻ろうとした。俺はやっぱり菊乃を諦めきれずに菊乃の肩を掴もうとする。

 

『菊乃!!』

『何度もいわせるなっt………え?』

 

その時、掴もうとしていた俺の手は菊乃を押していた。菊乃はそのまま階段を転げ落ちて行く。どがんどがんと頭や体を何度も打ち付ける。壁に当たりようやく菊乃が止まり俺は身体を振るわけながら菊乃の元へ駆け付ける。

 

『菊乃!菊乃!』

『………うぅ、うっ…なん、で…』

『違うんだよ!!押すつもりじゃなかったんだ!!俺は…俺は…』

 

必死に弁明するが菊乃はガクッとする。部室は防音だから他の奴らには聞こえてないし見られてないはずだから心配ないけどもし万が一菊乃がこの事を先生に言えば…

 

『………』

 

俺は菊乃の脱げた靴を穿かせ直し、背中におぶる。そしてそのまま保健室まで運び入れると先生が目を見張る。

 

『ど、どうしたんですか!?』

『菊乃が…"足滑らせて階段から落ちた"んです!!ベッド貸してください!!』

 

嘘だ。本当は図書館に戻ろうとした菊乃を俺が誤って階段から押して怪我させてしまったのだ。俺は事情を話してから軽音部に戻ってさっきの事を説明した。勿論、菊乃が"足滑らせて階段から落ちた"と言ってある。俺が突き落としてしまったという事実は言ってない。

 

部活が終わってからは真っ直ぐ家に帰り、一目散に部屋へ駆け込んだ。

 

『はぁ…はぁ…』

 

明日もし菊乃が来たら謝ろう…俺はそう思っていた。けど翌日学校にいったら菊乃は欠席になっていた、原因は怪我らしい。それを聞いた俺は思ってしまった。

 

(もし戻ってきてこれを暴露されたら俺は…いや、それ以前に菊乃が俺の事根に持ってたらその時は最悪…)

 

菊乃が学校に戻ってくることに恐れを感じた俺は次の日から学校に行くのが怖くなってしまった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「………っていうわけで俺は不登校になったんだよ」

 

涼平は自分自身と菊乃にあった事を陸奥とタツヤに話していた。

 

「あいつが根に持ってるって考えたら怖くて仕方なかったんだ…」

 

涼平は立ち上がり警察の2人に弁明する。

 

「俺はあいつの事が憎かったとかそういう類のことはこれっぽっちも無かったんだ!あいつには…菊乃に軽音部に入ってもらって一緒に部活したかっただけなんだ!信じてくれよ!!」

 

陸奥とタツヤは2人とも黙ったまま何も話さない。涼平は信じてもらえなかったのかと思い落胆するが、タツヤが口を開く。

 

「君の気持ちと考えは分かりました。強引に捕まえてしまったとは言え話をしてくれてありがとうございます」

「……え?」

 

まさかの返答に涼平は耳を疑う。

 

「う、疑ったりしねぇのか?」

「疑うわけありませんよ、ねぇ陸奥さん」

「まぁ…な」

 

陸奥は自分の髪をくしゃくしゃ弄りながら立ち上がる。

 

「とりあえずお前は、事件が解決して閃宮崎菊乃が行方不明から戻って来たら謝罪する事を第1に考えるんだな」

 

陸奥はそう言い残しタツヤを引き連れ、部屋から出ていった。

 

「……」

 

涼平は部屋から出るとそのまま職員室まで歩きを進めて行き、担任の先生の座っている机に行く。

 

「先生、話があります…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

菊乃side

 

 

〜市ヶ谷家 蔵・有咲の部屋〜

 

 

「お、お菊…?なんでりみと一緒…なんだ?」

 

有咲さんは目を見開き俺とりみさんを凝視していた。まぁこうなる事は何となく予想していたが…そう思ってるとりみさんが口を開く。

 

「え、えっとね有咲ちゃん…これにはわけがあって…」

 

りみさんの言葉を遮るように押しのけて俺の事を揺さぶり始めた。

 

「なんでだよっ!?なぁなんでっ!?なんで!?なんで!?」

「ち、ちょっと…有咲さん…落ち着いて…」

 

揺すられながらも落ち着きがない有咲さんの肩をつかむ。

 

「俺がなんでりみさんと居るのかは…本人からちゃんと聞いて、…ね?」

「ゲホッゲホッ!!ううっ…」

 

有咲さんは咳き込みながらベットに座る。

 

「ど、どにかくっ!最初っから説明しろ…りみ」

「う、うん…」

 

りみさんは俺を見つけた時の事、どうして一緒に居るのかや居候してる事、記憶のない俺の事についてもしっかりと話してくれた。

 

「…って言うわけなの」

「な、なるほどな…それでお菊はりみの家に記憶が戻るまでは居候することになったのか」

 

氷水でキンキンに冷えたタオルを交換しながらりみさんは、有咲さんが納得してくれて良かったとほっと一安心していた。ふと、りみさんがあることに気づく。

 

「有咲ちゃん、そう言えば香澄ちゃん達はまだ来てないの?」

「か、香澄達か?えっと…その、りみとお菊が来る前に香澄とちょっと色々あって…"有咲なんか大っ嫌い"って言われたんだよ」

「そんなことが…」

 

有咲さんは苦虫を噛み潰したような表情になった。

 

「お菊の事で頭いっぱいになって訳わかんなくなるだけじゃなく風邪まで引くわ自暴自棄になるわでもうごちゃごちゃだ…はは、嗤っちまうよな?お菊、りみ、嗤いたきゃ嗤えよ」

 

有咲さんのどんよりとした空気が蔵の中を包み込む。そんな中りみさんが口を開く。

 

「有咲ちゃんの事、嗤わないよ」

「え……なんで?」

 

りみさんの言葉に有咲さんは目を見開く。

 

「だって…有咲ちゃんを嗤うなんてそんな事…私には出来ないよ。私が来る前に香澄ちゃん達と何があったのかは分からないけど…」

「りみ…」

 

りみさんは中腰になりベッドで毛布にくるまっていた有咲さんを起こしてゆっくりと抱き締める。

 

「りみっ!?」

「有咲ちゃん、菊乃くんの事で切羽詰まってるのはわかったからさ。まずは風邪治して香澄ちゃん達に謝ろ?ね?それから私達で菊乃くんの記憶が戻るように頑張ろ?」

 

りみさんは有咲さんの頭を優しく撫でる。

 

「……あ、ありがとう。りみ」

 

有咲さんは熱があるのにも関わらず、さらに顔を赤くしていた。掴みかかってきた時はどうなるかと思っていたけど誤解も解けたし良かったのかな?そう思ってると俺の目にあるものが映った。有咲さんの机に置いてあったノートと1枚の楽譜、俺は楽譜をふと手に取って見る。

 

「あれ?この楽譜…どこかで見たことが…っ!?」

 

その刹那。俺の頭に激痛がはしり、その場に膝から崩れ落ちる。

 

「お菊っ!?」

「菊乃くんっ!?」

「うぅ…」

 

(なんだこりゃ…あ、頭が痛いっ……い、息が苦しい…)

 

「ア゙ア゙…ア゙ア゙ア゙…はぁ、はぁ…」

「おいしっかりしろお菊!!どうしたんだよ!?」

「菊乃くん!?菊乃くん!?」

 

有咲さんとりみさんが俺に何か話しかけてきてるが今はそれどころじゃない…なんだよこれ。頭の中に流れてきてるのは…俺の…記憶なのか?

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

『菊乃、作譜もピアノも金輪際やめて勉強に、裁判官になる為だけに時間をつぎ込みなさい。コンクールも発表会も全て取消だ』

 

発表会……?さ、裁判官…?

 

『またあの幼馴染とか言う女と曲作りしてたのか!?ふざけるな菊乃ぉ!!』

『豪傑さん!もうやめてください!これ以上は菊乃がっ!!』

『黙れっ!!私に命令するなっ!!』

 

幼馴染……有咲さんのことか?

 

『家から落ちこぼれを出すわけにはいかない。私の経歴にも関わるんだ。私が邪魔だと思う全てのものはどんな手を使っても排除する』

 

男はそう言って部屋を漁り楽譜やら譜面、作曲用ノートを根こそぎ持っていこうとしてる。

 

『菊乃、これだけは覚えておけ。私の様に地位も名誉も信頼も勝ち取ってる人間のする行為はやることなすこと全て正しいからな?』

 

……この自分勝手な自己中が俺の父親?今まで俺を育ててきた人間だというのか?信じられない…信じたくない。

 

『私のあとを継ぎ裁判官になるのがお前の人生だ。異論は認めない』

 

ふざけるな…

 

『今後はお前が音楽関係のことをしないか部屋に監視カメラを付けて監視させてもらう』

 

待てよ…

 

『…二度とあの幼馴染とも会えないようにしないとな!!』

 

『…お前は私と言う人間を引き立てる駒だ。せいぜいアイツみたいに壊れないでくれよ!?』

 

待てって…言ってんだろうがクソ野郎っ!!アイツみたいにってなんだよ!?誰の事言ってんだ!?俺は駒なんかじゃねぇ!!人間だ!!

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「っは!?はぁ…はぁ…な、なんだったんだ今の…」

「お菊っ!!」

「菊乃くん、大丈夫?」

 

りみさんと有咲さんが心配そうに俺の顔をのぞき込む。

 

「だ、大丈夫かお菊?なんかすっげー汗かいてるぞ?」

「…え?」

 

首や服を触ってみるとぐっしょりと濡れていた。

 

「楽譜を持った瞬間いきなり崩れ落ちて魘されてたんだぞ?声掛けても全然反応無いから…そ、それよりもよ」

「?」

「こんなこと聞くのはなんだが…なにか思い出せたことがあるか?」

「わ、私も気になったんだ…」

「そ、そうだった…実はーーーごふぁっ!?」

 

頭の中に入ってきたさっきの事を話そうと立ち上がったその時、俺は自分の口から血を吐き出していた。俺は何があったのか自分の口を拭う。りみさんと有咲さんはその光景に震えている。

 

「ひっ…ち、血が…」

「……お、お菊?」

「……え?なんd」

 

ドクンドクン

 

「ううっ!?が…がはっ!!がふ…」

 

再び血を吐き出し床に倒れ込み俺は意識を失った。




菊乃の身に一体何が起こったのか…次回更新未定期ですが頑張ってきますとも。

更新が遅れてしまって申し訳ございません。すっかりハメ作家界から忘れ去られてるだろうなと思いながらも合間見つけてはちょこちょこ書いてますが…腰めっちゃ痛い…です。
それと次回の9話目、僕の書いてる同作「夕焼けに誓う幼馴染達」の滝河雄天と上原ひまりが登場します。
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