千冬が復活出来たのは授業開始から十分が経過した後だった。
「え~ぇ、うん!授業を再開する。」
さっきまで落ち込んでいたのを見ていた生徒達の目が妙に生暖かい。
まぁ、あんな姿を目撃した手前威厳もへったくれもないが。
そして、そんな視線を鋼の精神で乗り切り如何にか授業を再開した。
「凰とオルコット。二人だけ出て来い。」
指名され前に出る二人。
「お前達には山田先生と模擬戦をして貰う。」
「はぁ。」
「あの、お言葉が過ぎるとは思いますが一ついいでしょうか?」
明らかに真耶の実力を下に見た態度で語る二人に千冬は意地の悪い笑みで返す。
「お前達、山田先生を嘗めてるな?」
「確かに普段の姿を見ていれば、そう思うのも分かるが。」
「こう見えて山田先生は日本の国家代表候補に上り詰めた実力者だ。」
「結局、候補止まりでしたけどね。」
千冬と真耶の掛け合いに生徒たちはどよめく。
無論それは鈴音とセシリアも同じ。
そして、二人の眼つきが変わった。
二人のやる気を感じ取り対峙する真耶。
「では、はじめ!」
千冬の号令で模擬戦が始まる。
「模擬戦なので何処からでも良いですよ。二人同時でも構いません。」
普段とは違い強気な姿勢を見せる真耶にセシリアは鈴音に提案を持ち掛ける。
「鈴さん。ここは、山田先生のお言葉を受けましょう。」
「セシリア?」
「さっき、織斑先生がおっしゃた様に山田先生は元国家代表候補だそうですし。」
「今のわたくし達では、一人ずつ戦った所で結果は目に見えていますわ。」
「成る程ね。どうせ戦うなら少しでも勝つ確率が高い方をって訳ね。」
「そう言う事ですわ。」
「いいわ!その提案、乗りましょう!」
会話は終わり、セシリアがスターライトで援護しながら鈴音が真耶に接近する。
しかし、真耶はセシリアの援護を躱し鈴音の攻撃を往なして押し込める。
攻めているのは二人の筈なのに終始押しているのは真耶だった。
「それまで!」
千冬の静止の声で二人は動きを止める。
「山田先生、ありがとうございました。」
「いえ、私もやっと教師らしい働きが出来ました。」
「お前達も、分かったか今の自分の実力が。」
「はい…。」
「一度も攻撃を当てる事が出来ませんでしたわ。」
専用機を与えられ少し調子に乗っていた自分を戒めた二人。
「後は、それぞれISの基礎操縦訓練を行う。」
「専用機持ちをグループリーダーに其々分れて訓練を行うよに。」
千冬の指示で、各専用機持ちの下に生徒が集まって来る。
やはり共呼ぶべきか、男子二人の下には大勢集まった。
「よろしくお願いします!ボン太くん!」
「一度近くであってみたい思ってました!」
「あの!握手して貰っていいですか!」
ボン太くんの方だけ違う目的だったらしい。
その光景を見ていたセシリアとシャルルは。
「くぅ!こんな立場でなければ!」
「羨ましいよ、皆…!」
ボン太くんファンに男女の感覚は無いらしい。
千冬はと言うと。
「何も聞こえん!何も見えん!ボン太くんの姿など!」
現実逃避していた。
何はともあれ無事授業も終わった。
そして昼休み、この日は転校したてのシャルルにささやかな昼食会が屋上で開かれていた。
しかし、箒は不満そうである。
「どうしてこうなった…。」
どうもこうも全ては一夏への説明不足が原因である。
前の時間、一夏に二人きりの昼食の誘ったと思っていた箒だったがその会話を鈴音に聞かれていた。
そして、自分も付いて行っていいかと一夏に聞き同意を得たのである。
ところが話はここで終わらなかった。
どうせならとセシリアやシャルルにも声を掛けた一夏。
セシリアは少し悩んだが状況を知らないシャルルに促され参加したらしい。
「ごめんなさい箒さん。事情を知ってはいるのですが、同じボン太くんファンに誘われては断り辛く。」
悪いと思ったのかセシリアが箒に謝罪してくる。
「僕も、ごめんね。事情も知らずに。」
シャルルも状況を察したのか謝って来る。
「いや、良いんだ。一夏の性格を知っていながらこうなる事を予測できなかった私が悪い。」
「そうよ。抜け駆けしようだなんて考える方が悪いのよ。」
「ぐぬぬ…!」
箒の自重に鈴音が被せる言葉は辛辣である。
その二人の様子を離れた場所で不思議そうに眺める一夏は四人を呼ぶ。
「お~い!どうした?そんな所で固まって。」
呑気に自分達を呼ぶ、事の元凶に不毛と分かりつつ怒り覚える箒であった。
そんな事もありながら昼食会は賑やかに始まった。
「一夏。お前の好きだった若鶏の唐揚げだ。」
「ん?おぉ!覚えていたのか、随分前の事なのに。」
「当たり前だ。お前の事は忘れはずが…。」
「ねぇ一夏!」
「鈴?何だ。」
「あんたこの間、偶になら私の酢豚食べたいって言ったわよね。」
「あぁ。確かに言ったが。」
「作ってきたから食べなさい。」
「うん。いただこうか。」
一夏を挟んで行われる箒と鈴音との睨み合いを蚊帳の外で見守るセシリアとシャルル。
二人は一夏の度を過ぎた鈍感さに疑問を持ちながら、事の成り行きを見守った。
ふと、一夏がシャルル達に気が付いた。
「どうしたんだ、そんな所でこっちで一緒に食べよう。」
一夏の声にハッ!と意識を外に戻した箒と鈴音も呼び掛ける。
「すまない。少し集中しすぎて気が回らなかった。」
「あんた達の分もあるから一緒に食べましょ!」
二人にも呼ばれては断り難いのか二人は近くに向かう。
「本当に美味しいね、箒の料理。」
「鈴さんの酢豚も中々ですわよ。」
「そんな事は無い。別に普通だ…。」
「そうよ、私も親が料理人ってだけだし…。」
一夏以外の誰かに料理を褒められるのが嬉しいのか二人とも照れながらも謙遜する。
「シャルル。これも美味いから食べてみろ。」
そう言って料理を皿に載せてシャルルに差し出した。
「あ!ありがとう一夏。」
礼を言って皿を取ろうとして二人の手が重なる。
「どうした?シャルル。」
「い、いや。何でもないよ。」
手が重なった時、箒と鈴音から凄まじい殺気を感じたシャルルは少し怯えた様に答えた。
この二人もしかして気付いているのか?
こうして昼食会は昼休みの終わりまで続いた。
シャルル「ばれてる?」
箒と鈴音はただの直感なのでこの時点では気付いてません。
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