IS学園最強は誰か?
こう問い掛けると教職員・生徒共に織斑千冬と答える。
では、今度は最凶は誰かと尋ねると。
生徒は此方も織斑千冬と返すが、教師は震えながら最凶は別にいると答える。
それは誰かと尋ねても怯えきりった表情で何も言わなくなるのである。
話は代わるが此処、IS学園には二人の用務員が居る。
一人は轡木十三、実はこの人物はこの学園の学園長と云う肩書きを持っている。
そして、もう一人が大貫善治である。
彼は、教師からは大貫さんと呼ばれ何処か彼に怯えた様な態度で接されている。
そしてこの日ある二人の生徒が史上最凶の用務員の片鱗を知る事になる。
それはこの日の朝に遡る。
「君達が織斑君とボーデヴィッヒさんだね。」
「はい!」
「あぁ、そうだ。」
休日の早朝、一夏とラウラはこの間起こした私闘の件の罰として今日一日用務員の雑務の手伝いをする事になっていた。
「織斑先生から訳は聞いておる。仲が悪い事もね。」
「はい。」
「ふん!」
「だが今日は、心を入れ替えてお互い協力しあって仕事に当たって欲しい。」
「努力します。」
「教官の命令だ従っておいてやる。」
「はぁ。兎に角、頼むよ。」
大貫さんは二人の態度を見て不安そうに念を押した。
先ずは校内のゴミ拾いからだ。
本来ならよく目を配らせて置けば直ぐに終わりそうなこの作業だが、如何せんこの二人だ平和に終わるはずが無かった。
「貴様!どこを見ているそこにまだゴミが落ちているぞ!」
「お前の方こそどこを見ている!まだ、あそこに取りこぼしがあるぞ!」
「ぐぬぬ…!」
「うぐぐ…!」
一様、真面目にやってはいるがお互いがいがみ合うこの状況で真面な清掃活動が行えるかと言われれば否である。
「もう、我慢出来ん!ここで雌雄を決するぞ!」
「望むところだ!」
やはり喧嘩が始まってしまった。
「貴様なぞ、ISが無くとも十分だ!」
ラウラは、小柄な体のどこに隠したのか。
ショットガンを取り出した。
「お前!銃を使うなど何と卑怯な!」
「卑怯などでは無い!」
「なにを…!」
「より良い兵装で挑むのが戦いの常だ!」
「言わせておけば…許さん!」
二人が乱闘を始め辺りが清掃開始時よりも散らかり始めた。
響く騒音を聞きつけて大貫さんが二人の様子を見に来た。
「君達!何をやっとるんだ!」
「大動脈流究極奥義!臨死堆拳!」
「ふん!あまいわ!」
「むぁぁぁ!」
ラウラが躱した一夏の拳術は後ろに居た大貫さんを捉えてしまった。
「大貫さん!大貫さーん!」
「しまった!えぇい、退け!私が介抱する。」
「いや、大貫さんを気絶させたのは俺だ!俺が介抱する。」
「いや、元はと云えば私が避けたのが原因だ。ここは私が…。」
気絶した中年のおじさんを巡って言い争う美男美女。
傍から見たら凄いカオスだ。
そして、そんなやり取りを続けていると大貫さんが目を覚ます。
「だから、私がやると言っている!」
「いや、だからここは俺が!」
「君達!一体、何をしているのだね!」
体の節々が痛く、うまく動けない状況でも。
今、自分の衣服が脱がされている事は確認した大貫さんは慌てて二人に呼び掛ける。
「あぁ!良かった、気が付きましたか。」
「何処かおかしな所はあるか?」
「落ち着きなさい!まずこの状況を説明してくれ!」
平静を取り戻し、状況を詳しく話す二人。
そして、一夏の一撃で暫く安静にしていなけれならない大貫さんは一抹の不安を感じつつ用務員室に連れていかれた。
「じゃあ、暫く休むから今度こそ協力するんだよ!いいね!」
「はい!」
「任せておけ。」
力強く応えた二人に更に不安を感じながらそれでも信じて見送った。
少しの間休んでいると漸く動けるようになる。
如何やら時間的に夕方頃に差し掛かっていた。
「どれ、二人がうまくやっているか見に行っているか。」
そう呟くと用務員室を出て外の様子を見回った。
そして見えてきたのは悲惨な光景だった…。
本来ならタイルが一枚剥がれただけの筈の床が接着剤でガチガチに固められ。
塗装が少し剥がれた程度の壁が迷彩模様に塗り直され。
花壇だった場所は大量に水が注がれまるで底なし沼の様相であり。
約5cm程度の穴が空いただけだった金網が有刺鉄線で補強され、更に高圧電流が流されていた。
たった半日の間に変わり果てた校内の様相に青筋が浮かびかける大貫さん。
しかしギリギリの理性でそれを止まった。
「怒ってはいかん。怒ってはいかん。こんな事は前にもあった。それに忍び難きを偲んできた人生だ、こんな事で怒っていては年上として示しがつかん。」
そう言って哀愁の籠った背中を向けて用務員室に一路足を向けた。
「貴様!何故、邪魔をする!」
「邪魔をしているのはお前だろう!」
部屋の中では一夏とラウラが言い争いの最中である。
そして、部屋の中の物が散乱する中偶々近くにあった卓袱台が入り口の方に飛んでいく。
「ぶはぁぁぁ!」
「「大貫さん!」」
偶然、帰って来た大貫さんに卓袱台が当たった。
「二人ともそこに座りなさい!」
大貫さんも我慢の限界が来たようだ。
「君達の熱意には大変感心しとる。仕事の内容は如何あれその努力は認めているつもりだ。」
「「はぁ…。」」
「だが、しかーし!どうして捨て置けない事が一つあるそれは君達のその関係だ。」
「どうしてそこまで仲が悪いのだね?つまらん事でいがみ合って、全く嘆かわしい。」
「争っていては何も生まれんよ。仲良くしろとまでは言わないまでももう少し協力し合う事はできんのかね?」
「そう言う事でしたら。」
「ついさっきやっていたところだ。」
「ほう。」
「今日の夕食にと作った魚の味噌煮だ。」
「ラウラが食材を用意して俺が調理しました。」
皿に出された料理を食べ始まる大貫さん。
「おお、うまい!」
「「はぁぁ。」」
「うんうん。何だやればできるじゃないか。ところでこの魚、何の魚かな?随分、懐かしい味だが。」
「鯉です。」
その答えを聞いた瞬間大貫さんの手が止まる。
「校舎裏の池で取って来ました。」
「デカかったな。」
「それによく暴れた。」
「殺すのに手間取ったぞ。」
「どうしました?大貫さん」
立ち上がり押し入れの方に進む大貫さんに一夏は問い掛けた。
「フフフ。君達あの鯉はね…。」
「あの鯉は?」
「私が、この学校に勤める前の学校から育てていて孫も同然。そんな鯉だったんだよ…。」
「はぁ。」
「名前は、以前飼ってた鯉の名前を引き継いでフランスの有名な女優のカトリーヌと名付けていたんだ…。」
「それを取って来た?殺すのに手間取った?剰え、それを私に食べさせた訳だ君達は…。」
「そうなるな。」
「うんうん。オジサン漸く思い出したよ。君達の様な子には熱意や善意など微塵も無い。」
「大貫さん?」
「有るのは私を困らせてやろと云う悪意のみだという事をね…。」
「それは違い…。」
「愛しいカトリーヌの無念を晴らさなければならない。」
ブゥゥゥン
「残念だけど、死んでもらうよ。織斑君、ボーデヴィッヒさん」
「「待っ…。」」
「ダーイ(死ね)!」
翌朝、千冬が学園に着くと。
校舎は半壊していた。
一夏とラウラは更衣室で見つかったが。
「一晩中、狂戦士化した用務員と…実弾が…弾丸が効かんとは…。」
「戦いは嫌だ…もう戦いたくない…俺はもう戦うのは御免だ…。」
譫言の様に同じ言葉を繰り返すだけだった。
そして少し離れた場所で気絶していた大貫さんを見て、千冬は全てを悟った。
なお大貫さんは昨晩の事を一切覚えていなかったらしい。
この後一夏とラウラは乱闘を控える様になったのは言うまでもない。
千冬「目覚めたのか…最凶が。」
正直に言います。
この話、ラウラを登場させる前からやりたいと思ってました。
感想などありましたどうぞよろしくお願いします。