一夏が言っていたウルズ7の継承の証の正体も判明します。
IS学園の一年生を乗せたバスが海に向かっている。
臨海学校の名を借りた校外実習の予定地へ進んでいた。
このバスの中で一夏は。
「なぁ、一夏…。」
「何かな?」
「ここでもなのか…?」
隣の座席に座っていた箒が呆れを通り越して敬服したと言わんばかりに聞いてくる。
「ねぇ、ラウラ…。」
「何だ?」
「君も、なのかな?」
後ろの座席から困惑したシャルロットの声が聞こえる。
「愚問だな。箒よ、常に精進を心掛けるのは何も体だけの話ではないのだ。」
「はぁ…。」
「精神もまた常日頃の精進が在ってこそ強き者と成れるのだよ。」
「分からない話でもないが…。」
「ラウラも、しっかり励みなさい。」
「はい、師匠。」
この師弟、こんなバスの中でも瞑想による精神修行を行っていた。
周りが浮かれて宴会ムードなのに、この二人の周りだけ禅寺の様な空気が流れていた。
「…集中している所、悪いのだがもう直ぐ到着だぞ。」
「ふむ、そうかでは此処までとしようかラウラ?」
「はい、師匠。」
瞑想の構えを解き、空気が緩和される。
「それで、今日の目的地は何処だったかな?」
「あ、あぁ。確か月花荘と言う旅館だったはずだが。」
まだ、精神集中の余韻が残ってるのか、随分まったりした口調で話し掛けられる。
急な事に驚きつつ質問に答えた箒であった。
その少し後、IS学園一年生一行を連れたバスは目的地の旅館に着いた。
女将を始めとした全従業員だろうか?
大勢の関係者に出迎えられる。
IS学園の代表として千冬が女将に挨拶する。
「今年も、お世話になります。」
「いえ、此方こそよろしくお願いします。」
「…織斑は…まあ、一応挨拶はだけはしておけ。」
「はい。暫くの間、世話になります。」
「まぁ!ご丁寧に如何も。中々、凛々しい男の子ですね。」
「えぇ、まぁ。」
基本的には、信用できても。
別の意味で、不安な千冬は曖昧に答える。
挨拶も終わり、各自部屋に別れるが一夏だけ自分の部屋を明かされていなかった。
取り敢えず、部屋の番号だけ教えられその場所へ向かう。
「おう、一夏!久しぶりだな!」
「少し見ない内に、また大きくなったかしら?」
部屋の中には、ここ数か月会っていなかった二人が居た。
「宗介小父さん!かなめ小母さん!如何して、ここに?」
「あぁ、本社のとある方からの注文でな。」
「一応、私達の部屋もここだ。」
「織斑先生、相良先生も…。」
「家族全員集合だね。」
千冬にしても、久しぶりにちゃんと二人と会えるのは嬉しいらしい。
いつもより表情が柔らかい。
「久しぶりだな!千冬!」
「中々、顔が見れないから。でも、元気そうね。」
「お久しぶりです。宗介さん、かなめさん。」
「お父さん、私は~。」
「ハハ。勿論、久しぶりだな愛子。」
「大丈夫よ。忘れてないから。」
中々、見れない安心しきった千冬の表情は育ててくれた相良夫妻の前でしか見せない顔である。
「一夏、今日はお昼までは自由時間だ暫く海で遊んでくると良い。」
「はい、織斑先生。では、行ってきます。」
積もる話があるのか千冬を部屋に残して一夏は更衣室へ向かう。
水着に着替え、砂浜に着いた一夏は軽く準備運動をする。
「早いな一夏。」
箒が、ゆっくり歩いて来る。
「あぁ、少し早く着すぎた様だ。」
「…その、今の私はどうだ?似合っているだろうか?」
「うん。よく似合っているぞ。」
「そうか!良かった…!」
「一夏~!」
水着姿を褒められて、上機嫌な箒。
そして、そんな二人の下に猛ダッシュで近づく小さい影。
「とぅ!」
「…中々良い、飛び蹴りだ。しかし、あまいぞ!鈴!」
「な、何ですって!」
鈴の蹴りを体を逸らして躱す。
その際、鈴が地面に激突しないように海の方へ投げ飛ばす一連の動作を無駄なく行う一夏のが一夏である。
「ぶっは!海まで投げるってどんな肩してるのよ!」
「百キロ越えの球を必ず投げられる肩だが。」
「うん。聞いた私が馬鹿だった…。」
「それより、鈴。急に、蹴りを入れるなんて危ないじゃないか。」
「だって....なんだもん。」
「何だって?」
「だって皆、胸が大きいんだもん!」
「…。」
「鈴さ~ん!待って下さ~い!」
鈴音に走り寄るセシリアの一点を恨めしそうに見る。
「着替えたら、先に行ってしまうんですもの。」
「…。」
「?如何しました、鈴さん?」
「何でもないわ。ただ、世の中の不平等さを呪ってただけだから。」
「はぁ?あぁ、一夏さんさっきぶりですわね。」
「うん。セシリア…鈴の事は任せた。」
「はい。鈴さん、向こうで日焼け止めを塗ってくれませんか?」
「はいはい。分かったわよ、行きましょセシリア。」
セシリアに連れられその場を後にする鈴音。
その光景を見送る箒と一夏にまた誰かが声を掛ける。
「やっほ~。一夏、箒。」
「あぁ、シャルか。」
「なぁ、シャルロット?」
「何かな、箒?」
「その後ろのミイラみたいな物は何だ?」
「あぁ、これ…もう、恥ずかしがってないで出てきなよラウラ。」
「ラウラなのかそれ!」
箒が驚きの声を上げる。
「やはり、こう言うのは私には似合わないと思うんだ。」
「大丈夫だよ。可愛いから出ておいでよ。」
「しかし…。」
「一夏も見たいよね。」
「うん?あぁ、勿論だ。」
「!分かりました。師匠がそう言われるのであれば…。」
意を決して、ぐるぐる巻きにしたタオルを解く。
「おぉ!」
「うんうん。」
「うむ。よく似合っているぞラウラ。」
「師匠!」
「一夏、僕は如何かな?」
「うん。前に、買いに行った時も思ったがよく似ている。」
「そっか、ありがとう。」
それから、鈴音たちと合流してビーチバレーや水泳競争などで時間を潰す。
浜に上がる途中でラウラは以前気になった事を切り出した。
「師匠。」
「如何したラウラ?」
「師匠は、以前に私がウルズ7を継ぐ者と言った時の事を覚えてますか?」
「あぁ、覚えているが。」
「その時、継承の証が無いとおしゃっていました。」
「うん。確かに言ったな。」
「師匠の言われる、継承の証とはいったい。」
「ラウラ、ラムダドライバと言う装置を知っているか。」
「ラムダドライバ?何ですかそれは?」
「虚現斥力場生成装置、不可視な斥力場を発生させる事が出来る装置だ。」
「そんな物が!」
「それを発現させ尚且つ使いこなす者、それがウルズ7だ。」
「…。」
「だが、アルビノボン太くんには積まれていなかった。」
「それが、証が無いの意味…。」
「如何ゆう過程で獲られる物なのかも分からない。ただ、今の俺では扱えない代物という事なのは解る。」
それ以上、ラウラは何も言わなかった。
いや、言えなかった。
自分では、師と仰いだ人の役に立つことは出来ないと、そう感じたからである。
その頃、とある輸送機の助手席に銀髪が特徴的な女性が乗っていた。
ラウラ「私では、師匠の役には…。」
次話でテッサの登場です。
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