ボン太くんの最後の形態変化は何でしょうか?
その場には、緊張した空気が張り詰めていた。
旅館の一室を借り、即席のミーティングルームになったその部屋には千冬をはじめ同伴の教職員と各専用機持ちが顔を揃えていた。
重々しい空気が立ち込める中、千冬が口を開く。
「先ずは、状況から説明する。IS学園上層部から連絡があった。内容は、ハワイ沖で試験中だったアメリカとイスラエルが共同開発した第三世代型軍用IS、機体名はシルバリオゴスペル。それが、制御範囲を離脱し暴走状態になったらしい。」
「それを、伝えられたという事は詰まる所、俺達に対処を依頼してきたと云う訳ですか。」
「あぁ。現在、対象機は監視空域を離脱後に衛星で追尾した結果、今から約五十分後にここから二十キロ程離れた空域を通過すると予測された。」
「その地点に、先回りして対象を抑えることが今回の作戦だよ。」
「現在の周辺海域及び空域の状況は如何なっていますか?」
「学園の教職員が、訓練機を使用して封鎖しています。」
「それでだ、今作戦の要はお前達専用機持ちになる。誰か、意見のある者は居るか?」
「はい。」
「織斑か、何か考えがあるのか?」
「いえ。まだ、現状では判断が出来ません。その為にも、対象の詳細なデータの開示を求めます。」
「ふむ。尤もな意見だな、相良先生。」
「はい。シルバリオゴスペルは、広域殲滅を目的に開発された特殊射撃型の機体だよ。その特色からオールレンジ攻撃も可能で、機動力も高いみたいだね。」
「どれ程ですか?」
「最高時速は2450kmを超えてる、マッハ2以上は出せるみたい。」
「アルファ。対抗できる形態は?」
『高速総合戦闘形態が存在します。此方のスペックを表示します。』
「白隼形態か、最高時速は2400kmは出せると。武装はエネルギー吸収盾と転用可能な実体剣それとサブブースター兼遠隔攻撃ユニットか。」
「ビットが搭載されていますの⁉」
「ボン太くんてなんでもありね…。」
「だが、納得も出来る。」
「ボン太くんだしね~。」
「…流石、ボン太くん…。」
「だが、確実に仕留めるにはまだ足りない。」
「そんな時こそ、紅椿の出番だよ~!」
戸が開けられ、束が入って来る。
「紅椿なら、高速戦闘パッケージを必要とせずに展開装甲の操作だけで超音速戦闘に対応出来るよ!」
「部外者は、出ていけと言いたいが。その話に嘘は無いな。」
「うん。そもそもの話、この事態を予測して準備したって所もあるからね。」
「如何ゆう意味だ。」
「実はさ、昔宗さん達が相手にしていたテロ組織の残党が別の組織と共謀して動き始めたらしいんだよ。」
「…今回の一件は、そいつらの仕業と。」
「うん。その可能性が高いよ。」
「篠ノ之、お前には悪いが出撃して貰えるか?」
「この状況です。私に、務まるかどうか判りませんが精一杯やらせて貰います。」
「箒ちゃん…。」
「作戦は決まったな。織斑と篠ノ之は準備をオルコットは念の為に待機していろ。」
「「「「「「「はい!」」」」」」」
作戦開始前、箒は今日の事を思い返していた。
『まさか、私が一夏と飛ぶ事になるとは…。』
最初は、己の未熟さ故に受け取りを拒んだ紅椿の待機形態を眺める。
『今の私では一夏の足を引っ張るだけかも知れない。』
正直、不安が無いと言えば嘘になる。
『それでも、皆が任せてくれたこの大役、しっかり果たして期待に応えて見せよう!』
しかし、それ以上に信じて任せてくれた仲間たちの想いに応えたいと決意した。
「篠ノ之さん、作戦時間です。」
「承知しました。直ぐ向かいます。」
一人の少女が、決意を胸に戦場へと足を踏み出した。
「ふもーふふっふもふー!」『白隼形態発動!』
『モードホワイトファルコン。発動!』
輝くボン太くんのボディー。
そして、光が収まり変化した。
頭部に隼の頭にゴーグルを付けたギア、背面から前後左右に大きく突き出したジェットウィング、腰の両側にサブブースター兼大型遠隔攻撃ユニット。
そして、手にエネルギー吸収盾ファルコウィングシールド&転換実体剣ファルコカリバーを装備した。
パッと見ても、大翼を持つ天空の騎士の姿である。
『ホワイトファルコン。アクティブ。』
「ふぁーもっふ!」『音速を超えるぞ!』
「行くか。ボン太くん!」
「ふぁーっふ!」『おう!』
ボン太くんと箒の二人は、目標空域を目指し加速を開始した。
暫く、飛行していると対象が確認できた。
「ふぁーるっふ!」『対象確認!』
「了解!指示は、其方に任せる。」
「ふぁーもふぁーふもふぁーるるっふ!」『左右から距離を詰めて逃走経路を塞ぐぞ!』
「了解。」
ボン太くんの指示で、箒は右下方に回り込み、ボン太くんは左前方から接近する。
二人に、気付き攻撃を仕掛けるシルバリオゴスペル。
ボン太くんは、ファルコウィングシールドを前に出してエネルギー弾を吸収する。
箒も、二本のエネルギー放射型ブレードを薙いで光弾を弾く。
勝負は一瞬、だからこそ焦ってはいけない。
全方位にばら撒かれる破壊の光の嵐に盾と剣をもって挑む姿は、差し詰め開放を訴え天使に挑む騎士の様である。
そして、十分にエネルギーが溜まり接近する。
「ふぁーふー!」『先ずは一太刀!』
吸収したエネルギーをファルコカリバーに転換して抜き放つ。
一閃、抜きざまに斬った一太刀を寸前で躱す。
「ふぁーも!」『続けて一太刀!』
今度は、完全に捉えた。
直撃を避けようとして、シルバーベルの一翼を切り落とされる。
これにより、シルバリオゴスペルの機動力は大幅に削がれる。
更に、箒が放った斬撃がもう一翼に当たり損傷して使用が出来なくなる。
「ふぁーふ!ふぁーふぁーもふっふ!」『アルファ!ここで決めるぞ!』
『了解!エクストラアタックコード[ファルコンブレイズブレイカー]発動!』
頭部ギアが顔の半分を覆い、ファルコカリバーをシールドに戻す。
そのまま、残りのエネルギーをカリバーに移しゆっくり抜いていく。
全てを、抜き終わると刀身が赤く発行して炎の様な余剰エネルギーを放出していた。
カリバーを頭上に構え、一気に振り下ろす。
「ふぁーる!ふぁーる!ふぁーもっふ!」『ファルコン!ブレイズ!ブレイカー!』
カリバーから放出されたエネルギーが火柱の様に噴き上がりシルバリオゴスペルを薙ぎ払う。
そして、機動力を失い回避も出来ずに直撃を受け海に落ちて行く。
「やったな!ボン太くん!」
「ふぁーふ。ふぁ?ふぁるもーふ!」『あぁ。ん?いや、まだだ!』
「えっ⁉」
ボン太くんが箒を突き飛ばした。
そして、そのすぐ後に巨大な光の翼がボン太くんを穿った。
「ぼ、ボン太くん…!」
「…。」
急いで駆け寄って、支え声を掛けるが応答がない。
「…そんな…!」
さっきまで、自分が居た場所に目を向けると。
そこには、さっきボン太くんが倒したはずの機影が形を変えて存在していた。
「ふ…もっふ…。」『撤…退を…。』
「っ!此方、篠ノ之!」
「篠ノ之か!如何した⁉」
「敵が!対象が二次移行した模様!撤退の許可を!ボン太くんが…一夏が!」
「落ち着け、撤退を許可する!教師部隊を援護に向かわせる合流して後退しろ!」
「了解!」
箒たちの作戦は失敗した。
ボン太くんは、どうなるのだろうか。
何一つ、分からない状況でこの事実だけが少女の心に暗い影を落とした。
?「来るべき時が、来ましたか…。」
傷ついたボン太くんは、深い眠りの中で不思議な夢を見る。
白隼形態はどうでした?
感想などありましたどうぞよろしくお願いします。