一夏が目を覚ましたのは、あの夢の世界から出てほんの少し後の事だった。
目を覚ますと、手元にアルビノボン太くんがない事に気が付いた。
「どこだ⁉これから、やらなければならない事があるのに!」
「探してるのはこれか?」
「!宗介小父さん…。」
声の方に、顔を向けると宗介がアルビノボン太くんの待機形態を持って戸の前に立って居た。
「何処に行く気だ、そんな体で?」
「…。」
「お前が考えてる事を当ててやろうか?奴と、もう一度戦いこいつの進化に必要なデータを収集しようと考えてる。違うか?」
「はい。」
「っふ。まだまだ、詰めが甘いなお前は…一つ教えてやる、箒たちがシルバリオゴスペルの下に向かったぞ。」
「何だって!何でそんな危険な事を…。」
「分からないか?そうだろうな…確かにお前は、この二年の間に強くなった。お前自身の才能もあるだろうが、それでも強くなる事に貪欲になってどんなキツイ鍛錬にも耐えただが、お前にまだ足りない物がある。」
「それは一体。」
「分からないか?ならば、お前を行かせる訳にはいかない。」
「!何故ですか⁉」
「今のお前達なら、確かにラムダドライバを発現させる事は出来るだろう。」
「でしたら…!」
「だが、使いこなす事は出来ない!」
「な!」
「お前は、何故力を求める。」
「それは、弱い自分を変える為に…。」
「そうか。なら、その先は如何だ。」
「その先…?」
「そうだ、そな先で手に入れた力をどう使う。どういう目的で活かす。お前は、自分が如何ありたい。」
「それは…。」
「お前が幼い頃、俺はお前になら俺や後を継いだあいつの想いを理解し、正しく受け継いでくれると思った。しかし、今のお前はそれを感じる事は出来ない。」
「幼い頃の、俺は…!」
思い出す、小さい頃ヒーローに憧れ自分もなりたいと願っていた事に、ボン太くんを憧れと重ね見続けた夢を、失っていないつもりだった、でも失っていた弱きを守り強きを挫く正義の意味を。
二年前の、あの日が訪れる前の自分では無い誰かを守りたいと願ったあの頃を…。
「気付いたか。」
「はい…。」
「俺は現役の頃、今のお前の様に力の在り方に迷った事がある。その時、俺を支えてくれたのが仲間だった。」
「仲間ですか…。」
「そんな、仲間たちを守りたいと思い戦う内に、俺はあの力を制御していた。お前には居ないのか?守りたいと思える仲間が。」
「います。俺にも、守りたいと思える奴らが…!」
「それは、そいつらも同じなんじゃないか?」
「!まさか、あいつ等は俺の為に…!」
「飽く迄も、俺個人の予想に過ぎないがな。しかし、そうだとしてお前は如何する?」
「確かに、今の俺では足手纏いかもしれない。だけど、ここで大人しく待つよりも一緒に戦いたい!それで、皆を守りたい!」
「…覚悟は決まったな。」
「はい。」
「なら、行ってこい。」
アルビノボン太くんを一夏に投げ渡す。
「あぁ、少し待て。ウルズ7にはもう一つ受け継ぐ物がある。こいつは、俺が現役時代から使ってきた御守りだ。今度こそ、お前の役に立つかもしれない持っていけ。」
宗介は、受験日のあの日に持たせようとしたアサルトナイフを取り出した。
「…はい!」
「本当は、今のウルズ7が渡すべきなんだろうがな。」
「行ってきます!」
「おう、頑張ってこい!」
少し時間を遡り一夏が目覚める前の近隣空域。
静止したシルバリオゴスペルが駐留した区域の岸壁に箒たちの姿が在った。
「最後の確認だ、今ならまだ引き返せるぞ。下りたい奴は、下りても構わんぞ。」
「何、言ってんのよ。」
「そうですわ。ここまで来て、引き返すなんてありえませんわ。」
「あはは。まぁ、戻ったら先生達のお説教は確定かな…。」
「…それは、言わない方が…。」
「「「…。」」」
「何方にしても、覚悟の上だろ…。」
「も、勿論…。」
「お、お説教が怖くて敵討ちなんて出来ませんわ!」
「…声が震えてるよ、二人とも…。」
「そう言う、シャルロットもやけに静かだな。」
「ラウラは、平気そうだね…。」
「…ちょっと、目が潤んでる…。」
「な、何を言う!怖くなんかないぞ!先生達の説教など…!」
「声が、小さくなってるぞ!確りしろ、ラウラ!」
「ふ、ふふ…。何を言う、私は正気だぞ…。」
「あ~ぁ、もう!先に行くぞ。」
「あっ!待て箒!くぅ、お前達行くぞ!」
「…なんか、グダグダだね…。」
「否定…出来ないかな~。」
「でも、緊張は取れたわね。」
「ふふ、そうですわね。待って下さいまし~!」
「二人だけで、先に行くんじゃないわよ~!」
「僕達も行こっか!」
「うん…!」
其々の専用機を纏い、少女たちは目標まで距離を詰める。
近付く複数のISの反応に一時的に機能を休止していたシルバリオゴスペルが迎撃の為に動き出す。
最も早く接近できる箒とその後に続いたセシリアが戦闘を開始する。
シルバリオゴスペルが二次移行で得た光の翼から光弾の豪雨が二人を狙う。
紅椿とブルー・ティアーズの強襲用高速機動パッケージ[ストライク・ガンナー]の機動力で回避して、遠距離からの攻撃で揺動して海岸までおびき寄せる。
「おいでませ!」
「喰らいなさい!」
左右から、鈴音とシャルロットの挟撃で足止めをする。
ラファール・リヴァイブ・カスタムⅡの防御パッケージ[ガーデン・カーテン]で光弾を防ぎ、重火器で牽制をするシャルロット。
甲龍の機能増幅パッケージ[崩山]龍砲を二門から四門に増設され、さらに不可視な砲弾から赤炎を纏う砲弾の拡散衝撃砲に変更されて威力が増した龍砲での広域爆撃で逃げ道を塞ぐ鈴音。
「行けるな、簪!」
「うん…何時でもいいよ…!」
「なら、タイミングを合わせるぞ!」
「うん…三つ数えたらで良い?」
「あぁ、それでいい!」
「それじゃあ…!」
「「1.2.3!」」
「発射!」
「いっけー!」
シュヴァルツェア・レーゲンの砲戦パッケージ[パンツァー・カノニーア]両肩に二門装備したレールカノン[プリッツ]がシルバリオゴスペルに狙いを定め放たれる。
打鉄二式の背部に二門搭載されてる荷電粒子砲[春雷]、マルチ・ロックオンシステムを搭載した六基に八門合計四十八発の独立稼働型誘導ミサイル[山嵐]を一斉に発射する。
「やったか!」
「ラウラさん、それフラグ…。」
攻撃による硝煙で視界が塞がり標的の状態が確認できない。
漸く、煙が晴れてシルバリオゴスペルの姿が見えてくる。
「な…んだと…!」
「そんな…!」
光に翼に包まり攻撃を耐えた、シルバリオゴスペルの姿が現れて茫然とする少女達。
しかし、ここからは自分達が攻撃される番だった。
意識を奮い立たせて防御態勢を取ろうとした時、何処かから飛んできた光の矢がシルバリオゴスペルに当たり海に墜落させた。
其方を見て、全員息を吞む。
そこに居たのは。白隼形態のアルビノボン太くんだった。
一夏「付き合って貰おうか、実験に…!」
遂に、アルビノボン太くんが復活しました。
遅くなって、すいません。
感想などありましたらよろしくお願いします。