テッサは一旦、本編から離れます。
早朝、月花荘に近い海岸に例の戦いを終えたばかり七人は仁王立ちの千冬の前に整列していた。
「…お前達、言いたい事は判るな…?」
「「「「「「「…。」」」」」」」
夏も近い、この頃だというのにその場の言葉だけで全身が凍り付きそうな程冷える。
後ろに控えていた真耶は顔を青くして、その隣に居る愛子はいつもの様に微笑んでるように見えて薄目を開けその眼光で心臓の弱い人物なら気絶できる威圧感を放っていた。
「まぁ、対象を抑えた事は評価してもいい…。」
「「「「「「「!それじゃあ…!」」」」」」」
「ただ、其れと是とは話が違う…。」
「そうだね~。無事だったから良かったものの、一つ間違えば如何なっていたかな~。」
「おっ織斑先生、相良先生…!」
「「何ですか⁉山田先生…。」」
「ヒェッ!いえ、あの…織斑君たちも疲れてるでしょうし、今は取り敢えず…。」
「そうですねぇ~。じゃあ、ハーフコースで勘弁してあげますか~。」
「!は、ハーフコース…!」
「一夏!」
「師匠!」
「相良先生、流石にそれは甘すぎます。せめて、それにA+位なければ…。」
「!ハーフコースに、A+…!」
「本当に如何した!」
「あの…一夏、そのハーフコースとかA+とか何のこと?」
「相良ブートキャンプの訓練メニューで三番目位にキツイメニューだA+はそれの追加項目で26通りある中の一番ヤバイ奴なんだ…。」
「相良ブートキャンプ…!彼の陣代高校ラグビー部が新入部員に対して行っていると云われたあれか!」
「?知っていますの、箒さん。」
「あぁ…しかし、あれはもう都市伝説だとばかり…。」
「箒…それは、飽く迄も入門編だ…トライアルコースの初歩中の初歩…相良先生が言っているのは本格的な奴だ…。」
「なん…だと…!」
「序に言えば、ハーフコースは通常一日全部を使って行う訓練を半日に凝縮して行う超ハードな過密日程…しかも、+メニューは達成ノルマが全体と個人で別れてる為に個人でクリアしても、全体がクリアしてなきゃ追加でやらされる、それもAはどちらもかなりエグイ達成ノルマだ…!」
「じゃあ、一旦解散してご飯食べたらすぐ集合ね。返事は!」
「「「「「「「はい!先生!」」」」」」」
「違う!ma'amと呼べ!」
「「「「「「「Yes,ma'am!」」」」」」」
それからの事は語らないで於こう…。
ただ最後の方は全員、人を殺せる人間の目をしていた…。
其れはさて置き、今回の事件が要因になったのか、臨海学校で予定されていた日程が中止され明日学園に帰る事が決まった。
その為、臨海学校最後の夜を箒は一人で月を眺めていた。
「箒、ここに居たのか?」
「?一夏、如何してここに?」
「色々あって、遅れたが誕生日だっただろ昨日?」
「…忘れてた…!」
「そうだろうな。遅れたが、誕生日おめでとう。」
「あぁ、ありがとう。」
「これは、ささやかだが祝いの品だ受け取ってくれ。」
小さな紙袋を、箒に差し出す。
「ありがとう。ここで開けても?」
「構わんぞ。」
一夏に了承を貰い、紙袋を開ける。
中身は、ボン太くんキーホルダーだった。
「これは…うん、分かってた。」
「中々手に入らない、レア物だぞ。」
「そうなのか…ありがとう。」
「箒~、一夏~そこで何して?そ、それは!」
「シャルロット?」
「今年の、ボン太くんスプリンターフェスで七十個限定で生産された春色ボン太くんキーホルダー!」
「そ、そうなのか~。」
「何よ、騒がしいじゃない。」
「シャルロットさん、如何されましたか?」
「シャルロット?如何した、そんなに騒いで?」
「皆…どうかした?」
シャルロットの声に、聴きつけていつものメンバー+簪がやって来る。
そして、箒の持つキーホルダーに気が付きひと騒ぎ起きたのであった。
その様子を、遠くから眺める人影が二つ。
「あいつ等…昼間にあれだけ扱いたのにまだあれだけの元気が有るとは…。」
「ホントだね~。あれは、束さんも引いたよ~。それにしても、ラムダドライバの発現か~。」
「そろそろ、代替わりか?」
「まだまだ、この座を譲るつもりは無いよ。千冬ちゃん。」
声と共に、愛子が二人に近づく。
「束ちゃん。それより、例の組織の事だけど…。」
「動いてるのは確実だね。ちーちゃんの両親が中心に近い位置に居るみたいだね。」
「あの人たちが!という事は共謀している相手は…。」
「束さんが人であれる理由をくれた。宗さん達がこの世界を守るなら、束さんもこの世界を守る為に力を使う、その為にもちーちゃんやあーちゃんの力を必要になると思うんだよ。」
「うん。その時は、力を貸すよ束ちゃん。」
「私も、宗介さん達には恩がある。何より、あの人たちが動いているなら無視は出来まい。」
「そっか、ありがとう。もう、行くね。」
「うん、じゃあね。」
「あぁ、またな。」
「うん!ばいば~い!」
崖から、飛び降りて姿が見えなくなる。
夜は、騒がしくだが穏やかに過ぎていく。
翌朝、帰りのバスが出発する前。
「失礼いたします。」
「!テッサさん!」
「そんなに、畏まらないで下さい。」
「しかし…。」
「あの…?」
「はい、何でしょうか?」
「わたくしは、セシリア・オルコットと申します。」
「セシリアさん?という事は貴女はオルコット財閥の代表の方ですか?あっ!私はテッサと呼んで下さい。」
「はぁ。では…テッサさん、何故あなたの様な立場の方が此方に?」
「ふふ、秘密です。」
「あの…そろそろ、宜しいでしょうか?」
「あぁ、失礼しました!一夏さん、こちらはナターシャ・ファイルスさん、シルバリオゴスペルの操縦者の方です。」
「貴方が、織斑一夏君ね。」
「はい、そうですが。如何してここに?」
「あの子を、止めてくれた事にお礼を言いたくて。ありがとう、貴方達のお陰であの子はあれ以上暴走しなくて済んだわ。」
「いえ、自分達は任務を果たしたまでです。」
「ふふ。初代ウルズ7も、そんな人だったわね。」
「それで、これから如何されるおつもりですか?このまま、軍に戻っても…。」
「彼女は、ミスリルが保護することになりました。」
「そう言う事よ、心配してくれてありがとう。」
「あ~ぁ、その…そろそろよろしいでしょうか?」
「はい。お時間を作っていただきありがとうございました。」
「じゃあね千冬。」
色々あった、臨海学校は思わぬ形で終了した。
しかし、これはまだ前哨戦に過ぎない。
ラムダドライバを手にした一夏には、これより先使いこなせる様に成らなければウルズ7は継ぐことは出来ない。
それは、新たなる試練の幕開けでもあった。
そして、何処かの研究施設では…。
「そうですか。ラムダドライバを発現させましたか…。」
「狙い通りですか?」
「えぇ、これで漸く叩き潰せますね。」
「千冬お姉さま、一夏お兄様そして、裏切り者の円夏お姉さまも皆纏めて…ふふ!フフフフフフ!」
狂った様に笑う、黒い髪の少女がそこに居た。
?「姉さん、兄さん待っていて下さい。もうじき、一緒に戦えます。」
次話から、夏休み編に突入します。
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