日本ミスリルの社員寮の一室。
そこに、三人の女性が暮らしている。
年長のスコール・ミューゼルとオータムそして円夏呼ばれている少女は嘗て亡国企業と称したテロ組織に所属していた。
「円夏。今日は、楽しかったわね。」
「はい!アルビノボン太くんのアクションフィギアも買えました!」
「おぉ!良かったじゃねぇか!」
「はい!」
「そいつは、何より。」
「円夏、先にお風呂入って来てくれるかしら?」
「え!あぁ、もうそんな時間でしたか。」
荷物を床に置き、寝間着を取りに自室へ向かう円夏の後姿を見送る。
「ふっ…。あいつも、よく笑うようになったな…。」
「えぇ、あの子が笑顔を見せてくれるようになるまで色々あったわね…。」
「つい最近の、出来事の筈なのにもう昔の事に思えるぜ…。」
「あの子に、笑顔が今の私達の始まりだったものね…。」
二人は、思い出していた。
この、三人がミスリルに所属する切っ掛けとなった出来事を、自分達が亡国企業を抜け足を洗う決意を決めた時の事を。
「あれは確か、二年前の夏だったか?」
「えぇ、あの時もボン太くんフェスの時だったわね…。」
その日、彼女たちはある女性権利主義団体からの依頼でボン太くんフェスの会場に爆弾を仕掛けて中止かまたはテロを起こそうと潜入していた。
「あの時は、そこまでするかって思てたんだけどよ。」
「それでも、依頼だから行くしかなかったのよね…。」
それでも、作戦前に折角だからとフェスに参加した。
嘗ての二人は、実際に参加していても余り楽しめていなかった。
だが、同行していた円夏は違った。
「円夏のやつ、最初はいつもと変わらない面だったのにさ…。」
「ボン太くんファンと交流していく中に段々笑うようになっていたのよね…。」
普段、二人の前ですら見せなかった少女の顔。
年相応とも呼べる、子供らしい表情。
そんな、自分達がよく知っているはずの少女の、一度も見たことが無い屈託ない笑顔は二人の心の中で作られた円夏のイメージを壊すには十分すぎるものだった。
「そのすぐ後だったな…あいつが、円夏が組織を抜けようと考えてるのを知ったのは…。」
「最初は、貴女は止めるつもりだったのよね…。」
「あぁ、あの頃は組織を抜けても行く場所なんて無いだろって考えてた…。」
「私もよ。だけど、あの子の目が訴えて来たのよ。」
「あいつは、知ったんだよ…誰かを否定しても虚しいだけだってさ…。」
「そしてそれは、私達もそうだった…。」
「いつの間にか、爆弾を仕掛けるのが嫌になってたな…。」
「今にして、思えば私達もあの場の雰囲気が心地よかったのかもしれないわね。」
「男とか女とか、とてもちっぽけに思えてさ。正直、如何でもよくなってた…。」
「同時に、私はあの場所を壊すのが怖くなったのよ…掛替えの無い物を失うような気がして。」
「そこに、あいつが抜けるって話が出て来たんだよ。」
「あの時、あの子を一人で行かせたくなかった。」
「あぁ、だから一緒に抜けたんだよな…。」
その後、彼女たちはミスリルに保護を求めたのである。
当時、ミスリルでは三人の処遇を如何するか話し合いが行われた。
スコールの持つ、亡国企業の情報の真偽も定かではなかったためである。
そんな中、日本ミスリルの相良愛子が三人の監視役を名乗り出たのでた。
この意見に、各方面から愛子にやめるように声が掛けられたが。
結局最後は、テッサの一言と宗介の説得そして愛子自身の熱の篭った懇願で各関係人が折れた。
スコールとオータムは、愛子が部長を務める諜報部に配属され、円夏はミスリルの教育機関で教育を受ける事になったのである。
「それからは、ボスの命令でいろんな国を渡り歩いたっけ?」
「諜報部の仕事は、私達にはやりなれた事だったわね。」
「ただ、決定的に違うのは。」
「それを、決して悪事に使わない事ね。」
今の、二人のあの頃とは違う。
微笑みを奪って来たこれまでを悔い、贖罪の為にあらゆる悪意の証拠を集めて悪人を裁く為の力に換える。
そんな、今の在り方を二人は気に入っている。
そして、二度とあの頃に戻りたいとは思わない。
二人にとってボン太くんは自分達の再生の象徴だった。
ボン太くんが居たから円夏は笑顔になり、その笑顔が二人の心を変えたのである。
故にだろう、ボン太くんファンの集まりを妨げる者の存在が許せない。
例え、ボン太くんファンにとって絶対のルールを犯していたとしても、共感できる人々が一方的に迫害されている事実は耐え難い事であった。
実は、今日のイベントに爆破テロを起こそうとしたグループが居たのである。
それを阻止する為に、二人は活動していた。
結果として、テロは起こらなかった。
犯人グループが犯行を中止したのである。
「あいつ等も、もしかしたらボン太くんの幸せに気付いたのかもな。」
「えぇ、この世界で失われた真の自由と平等があの場所にはあるもの、きっと気が付いた筈よ。」
「まさに、『世にボン太くんの幸せがあらん事を』だな。」
「少しづつだけど、ボン太くんは世界を良い方に変えているわね。」
その時、スコールの電話に連絡が入る。
「私です。夜分遅くにすいません。」
「ハ~イボス。今度は、どんなお仕事かしら?」
「まだ先ですが。IS学園の文化祭をご存知ですか?」
「えぇ、それが?」
「…もしかしたら、厄介な事になるかも知れません。」
「どういう事かしら?」
「噂でしかありませが、亡国とアマルガムの残党が手を組んでるそうです。」
「事実よ、私達が抜けるちょっと前だったかしら、別のグループが接触をした話を聞いた事があるわ。」
「やはりですか…実は、その何方かがIS学園に乗り込もうとしてるらしいんです。」
「タイミング的な話で言えば、文化祭が狙われている可能性が高いってわけね…。」
「はい。けど今回頼みたいのはそれとは別件なんです。」
「別件?どういう事かしら?」
「その…文化祭当日、本部からある方が来日されるそうで…。」
「…その方の、護衛をして欲しいと…。」
「はい…。」
「分かったわ。それで、どんな人物なの?」
「…あの、名前を聞いても決して動揺しないでくださいね…。」
「随分、勿体つけるわね。」
「テレサ・テスタロッサ氏です…。」
「…ごめんなさいねボス、今なんて?」
「テッサ氏の護衛をお願いします。」
上司から、命令を聞いたスコールは固まった。
当然と言えば当然なのだが、これより先の詳細な説明をされたがききとれていなかった。
ただ、一つ言えるとすればこれより先の未来、彼女たちが胃痛に悩まされるのが確約された事である。
オータム「スコール?如何したんだ?」
亡国組は、こうして人の道に返るのであった。
着実に、ボン太くんは世界を変えてます。
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