将来、IS学園七不思議の一つになりそう。
トゥアハー・デ・ダナン、そう呼ばれた強襲揚陸潜水艦が存在した。
その船は、嘗て対テロ傭兵組織だった頃のミスリルが保有・運用していた拠点の一つであった。
しかし、アマルガムとの戦闘の中でメリダ島の航海を最後に一部の船の修復用の予備パーツを残して大破した。
残った予備パーツは、全て一般企業として再編されたミスリルによって回収され保管されていた。
それから、時は過ぎた。
今、嘗て女神の名を与えられた船の血筋を継いだ潜水艦が、ある一人の天災によって建造され、IS学園の地下に着港した。
女神ダヌの息子にして最高神のダグザの別称から、ルアド・ロエサと名付けられこの学園を守る役目を背負った者たちの拠点と成るべく造られた。
そして、この場所に織斑一夏と相良愛子が来たのは運命と言わざる負えないだろう。
「相良先生…やっぱり、これって…。」
「うん、潜水艦だね…。」
「ここが、部室か~…楯無さんは、何を考えてこんな物を用意したんでしょうね?」
「束ちゃんも、如何して造ったんだろね?」
「「…。」」
一夏は自分の上司となる少女の顔を、愛子は傍迷惑な友人の顔を思い浮かべる。
『そう言えば…。』
『二人とも、似てるな~。』
『『人間性が…。』』
何となく、部室を此処に指定した理由を理解した二人だった。
「取り敢えず、音声の設定だけでも変えておきましょう。」
「そうだね。」
二人は、意識を切り替えてやるべき作業を開始した。
部員の認証登録から識別音声の変更までを行い、最後に部員の更衣室と自分が使う事務室などを確認して、この日は寮に戻った。
次の日、防衛部のメンバーを連れ拠点となるルアド・ロエサに来ていた。
「ここが、部室?」
「潜水艦じゃない!」
箒と鈴音は、ツッコミを入れ。
「驚きましたわ!」
「これはこれで…ありだね!」
「フフフ…血が騒ぐぞ!」
セシリア・シャルロット・ラウラの三人は意外に好感触だ。
「秘密基地…良い!」
「何だか、ワクワクするね~!」
簪と本音はいつも通りで。
「…IS学園って、一体?」
「気にしたら、負けですよ…。」
「うん。流石に、予想外だわ…。」
「予想外と言うより、規格外じゃないか?」
乱音とヴィシュヌ、そしてベルベットとロランは規模の大きさに愕然とした。
「オニール!こっちにも部屋が在るよ!」
「あっ!待ちなさいよファニール!」
「待って…!ファンウル!」
コメット姉妹は年相応に燥ぎ、クーリェはファンウルを追いかけている。
「隊長、本当に此処で良いなだよな?」
「はい…指令にも、確認は取りました。」
「そうか…。」
「まさか、こんな物を用意していたなんて思ってなかったす。」
一夏と共に楯無と同じチームに配属されたダリルとフォルテは少し遠くに見ていた。
各々が其々の反応を示す中、閉まっていたエレベーターの入り口が開き楯無と虚が入って来る。
「あら?皆、もう集まってるわね。」
「お嬢様、これは?」
「勿論、活動拠点の部室だけど。」
「…こんな物を、一体何処から持ち出したんですか?」
虚の静かだが迫力のある問いかけに、たじろぎながら真相を語りだす。
「うっ!最近ね、防衛部を作るって話になった時に電話があって。」
「それで?」
「電話の相手が、束博士でね。その…どうせなら、秘密基地ぽっくしないかって話になって。」
「それで、潜水艦ですか?」
「だって、向こうが良い物用意してくれるって言ってたから…。」
「…理由は、分かりました。」
「虚ちゃん…?」
「織斑君は、ここでいいですか?」
質問する対象を代え、一夏に聞く。
「俺は別に…ここには、訓練用の施設もありますし。」
「そうだな、ここでなら気兼ねなく訓練が出来るな。」
「私も、異存ないっす。訓練してる事を、隠せるなら隠しておいた方が良いですし。」
隊の中枢である三人からは反対意見は出なかった。
当然ながら、三人が了承した事で他のメンバーからも反対意見は無く、防衛部の拠点はルアド・ロエサに無事に決定した。
それから、楯無は大きめのダンボールを持って来ていた。
「指令、そのダンボールは?」
一夏が、それとなしに聞く。
「あぁ、これはね…。」
「昨日の夕方頃に、ミスリルから送られて来たんです。」
「うん。虚ちゃん、今それを私が言おうとしたんだけど?」
「ミスリルから…ですか?」
「はい…。まだ地上にもあるので、運ぶのを手伝って貰えますか?」
「了解しました。」
「ねぇ一夏君。ちょっと待って欲しいな。」
「お嬢様、私達も行きますよ。」
「最近、私の扱いがひどい…。」
拗ねる楯無を引きずって、地上からルアド・ロエサにダンボールを降ろす。
ダンボールの中身は、服だった。
それも、軍服の様なかっちりした物からラフな整備士用の作業着風の物などの、ある種のコスプレ衣装の様にも見える衣服ばかりである。
しかも、ご丁寧に人数分揃っていた。
「えらくしっかりした生地だな、いくら位するんだ?」
その中の一着を、ダリルが手に取り手触りを確かめる。
「多分、一着で25万弱はするわね…。」
「…へ?」
「全部、オーダーメイドですね。」
「えぇ、よく見ると名前が刺繍で縫われてるわ。」
「こっちは、靴と帽子ですか。」
「これも、見れば見る程高価な品ね。」
ダリルは、一夏と楯無の会話を聞いて愕然とする。
他にも、トレーニングウェアなどの衣類も中々値の張るものである事が判り、一部のメンバーが卒倒した。
最後に、この荷物の送り主が書いたと思われる手紙が出て来た。
一夏は、その手紙を読み始める。
「拝啓
IS学園防衛部の皆さん
私を、覚えていますでしょうか。
以前、臨海学校の際にお会いしたテッサです。
あぁ、まだお会いしていない方もいましたか。
では、今度の文化祭でお邪魔する際に挨拶させていただきますね。
いけないけない、本題に入らないといけませんね。
皆さんが、IS学園の治安維持の為の防衛部隊を設立した聞きました。
その話を、聞いて過去を思い出し懐かしく感じています。
その事で、皆さんの先輩として助言をさせて下さい。
組織が一つに纏まる為には、共通の服装を着る事が重要な要素となります。
制服は、その個人が何処に所属しているかを明確に外部に示しまた、個人も制服を着る事で自分が
組織の一部であると自覚するのです。
そこで、老婆心ながら以前のミスリルが使っていた物と似たデザインの制服を仕立てさせて頂きました。
皆さんが、その制服を着て一丸と成れる事を願っております。
最後に一つ、文化祭を楽しみにしています。
敬具」
手紙を読み上げた後、暫く固まる一夏と楯無。
テッサと交流のあるクイーン小隊の面々は茫然とし、テッサの正体を知らない他のメンバーはその様を不思議そうに眺めるのであった。
一夏「なん…だと…!」
送られた制服の採寸は愛子が提供したらしいです。
ついでに、ルアド・ロエサの事を知ってるのは学園長と織斑千冬を含む上層部の人間だけです。
感想などありましたらよろしくお願いします。