文化祭の準備で賑わう、IS学園の地下。
防衛部の拠点、ルアド・ロエサの内部にある訓練施設に鈴音は居た。
防衛部の方針で、一日交替で見回りメンバーを決めて、当番の隊員は拠点に待機する事になっている。
だが鈴音は、今日は当番ではない。
では、何故彼女はルアド・ロエサで訓練を行っているのか。
それは、自身のスランプを克服する為である。
その為に、ほぼ毎日この訓練施設に入り浸り自主訓練を続けていた。
「今日も、ここに居たのね…。」
「…何しに来たの乱…。」
トレーニングルームの入り口に、乱が立って居た。
訓練の疲れと、内心の焦りから来るイラつきが言葉の端に棘を持たせる。
剣呑な雰囲気の、従姉に少し怯えた乱。
「この間の試合、本気じゃなかったでしょ…。」
「…あんた、何言ってるの…?」
「クラス代表対抗戦の記録映像を見たの…。」
「それで…?」
乱音の言葉に、怒気を滲ませながら先を促す。
「私の時と、全然戦い方が違った…。」
「…そうね…あの時は、勢いに任せた戦法だったわね…。」
「何で…⁉何でよ!私じゃ、相手にならないって言うの!」
「違うわよ…。」
乱音の発言を、静かに否定する。
「じゃあ、何で!」
「諸突猛進なだけじゃ、勝てないって理解しただけよ…。」
「鈴お姉ちゃん…。」
「乱、あんたはいいわね。ただ、誰かの背を追いかけるだけで良いんだから…。」
「えっ?」
いきなりの鈴音の発言に、動揺する乱音。
その乱音を、尻目に更に言い募る。
「私は、そうもいかないのよ…私は、国家を背負ってるの勢いだけで戦って、負けちゃいましたじゃ済ませれないのよ!」
「それは…。」
「あんたは、私への憧れだけで此処に来た…!」
「違っ…!」
「違うって言うの、飛び級までして追いかけて来たのが!」
「…うぅ…。」
鈴音の怒声に、怯えぐずりだす。
可愛がっている、従妹が泣き出したのを見て怒りが静まっていく鈴音。
「!乱、ごめんなさい…こんな事、言うつもりは…。」
「鈴お姉ちゃんの馬鹿!」
「乱!」
泣きながら部屋を飛び出した乱音を、ただ見送る事しかできなかった鈴音。
「何やってるのよ、私…乱に当たるなんて…。」
自分の不甲斐無さに独り言ちる鈴音の声はトレーニングルームに小さく響くのみだった。
そして、鈴音の下か逃げて来た乱音も深い影を作っていた。
【あんたは、私への憧れだけで此処に来た…!】
『図星だ、私はただ単に鈴お姉ちゃんみたいに成りたくて此処に来た…。』
鈴音に、言われた事が心の中で再生される。
【違うって言うの、飛び級までして追いかけて来たのが!】
『その通りだ…鈴お姉ちゃんに早く追いつきたくて飛び級して来たんだから…。』
己の覚悟の無さを、痛感させられた。
『私だって、台湾を背負って此処に来たのに…!』
国家を背負う事の重みを理解してなかった己に、只々呆れるばかりである。
「あら?貴女は、乱さんではなくて?」
「どうした、そんな所で?」
自己嫌悪で隅に縮まっていた乱音に、誰かが声を掛ける。
顔を上げると、そこには一夏とセシリアが居た。
「隊長、セシリアさん…うぅ…。」
「!如何したんですの!」
「…私…全然、理解できてなかった!何も、分かってなかった!」
「落ち着いて下さいまし!乱さん!」
「こんなんじゃ!こんな私じゃ、鈴お姉ちゃんに追いつけない!」
「落ち着け、先ずは何があったか話してくれ。」
「…(ぐずっ)…はぃ…。」
一夏に促され、小さく消え入りそうな声で答えた。
そこから、さっきあった事のあらましを包み隠さずすべて話した。
聞き終わり、難しい顔をするセシリア。
「随分…デリケートな部分を突きましたわね…。」
「うぅ…。」
「!攻めるつもりは、ありませんわよ。ただ、わたくしも大分気にしている部分の話ですねで…。」
セシリアの言葉に、更に顔を俯かせる。
「覚悟か…。代表候補生ともなれば、ある程度は出来ていないといけないものだったな。」
「えぇ。以前わたくしが、一夏さんに言われ事を借りるなら、わたくし達の発言や身振り手振り迄気にしないといけませんからね…。」
「…自覚は、出来てるよだな。」
「…はい。」
乱音の顔色を見て、反省は十分出来ていると認識した。
そして、一夏は静かに語りだす。
「乱、憧れを持つ事は悪い事じゃない。」
「…はい。」
「だが、その憧れを他者に押し付ける事はいけない。」
「…。」
「場合によっては、それでその人物を追い詰めてしまう事もある。」
「…はぃ…。」
諭されるように語られる一夏の言葉に、乱音は声を小さくしていく。
「…時には、現実を見る事も大事な事だ。」
「…。」
「それで自分を見失ったら、立ち止まって周りを見たり過去を振り返るのも悪くない。周囲に落ちている物や過去の記憶が、以外に今の自分に足りない物だったりするからな。」
「え?」
「過去の失敗から目を背ける者に未来は無い、過去の失敗を今に活かして活路を拓く人間こそが真に強き者と呼ばれるのだよ鈴。」
「えっ!鈴お姉ちゃん⁉」
「…やっぱり、気付いていたのね…。」
角の影から、鈴音が出て来る。
「乱。さっきは、ごめんね。」
鈴音が、先程の事を謝罪する。
「んん、私も無責任な事を言ったから。」
「私ね、焦ってたのよ…乱に憧れて貰って嬉しかった、でもそれが重圧に感じても居た…。」
静かに、胸の内を話す鈴音。
「鈴お姉ちゃん…。」
「この後、暇?」
「え?うん、今日は当番じゃないから…。」
「試合の記録映像を見返すから、付き合って。」
「!うん!」
「わたくしも、ご一緒してもよろしくて?」
「良いの?あんた、今日当番じゃ?」
「先程、終わりましたわ。それよりも、今は鈴さんのお力になりたいのですわ!良いでわよね?」
「勿論!忌憚の無い意見を聞かせてよ。」
「えぇ、遠慮なく言わせて貰います。」
セシリアも、加わり三人で過去の試合映像を視聴しに行く。
三人の背を見送りながら、一夏は静かに呟く。
「鈴、もう気づいてるはずだ。一人では、出来る事にも限界がある事をそして、仲間が居るから出来る事もある事に。」
その後、書類整理をしていた一夏の下に鈴音が駆け込んで来た。
「隊長!私に、トラップの仕掛け方を教えて下さい。」
「ふっ。成る程な…方向性は定まった様だな。」
「えぇ!もう、大丈夫よ!」
「良いだろう着替えたら、トレーニングルームに行こうか!」
ISスーツに着替えてトレーニングルームに歩を進める一夏と鈴音。
その歩みは、とても力強いものと成っていた。
眠れる龍の目覚めは近い。
鈴音「乗り越えてみせる!この逆境を!」
ラウラに続けるか鈴⁉
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