アナザーのキャラを待っていた方、お待たせしました。
円夏は、正面ゲートの前で感慨に更けていた。
自らの生みの親に仕組まれた、彼女にとって忌むべき定めに抗う為に組織を抜けた過去を思い返して。
『ここが、姉さんと兄さんが居る場所…IS学園!』
ボン太くんに触れ、自らの存在理由の確定方法が意味のない事と知った円夏が、今まで会いたくても会えない自分の姉と兄のすぐ近くまで来る事が出来た幸福を噛み締める。
「円夏?如何したんだ、こんな場所で?」
同行人である女性から声が掛けられる。
「はっ!な、何でもありませんよ!アデリーナさん!」
「そうか?そうわ思えなかったが?」
同行者、アデリーナ・アレクサンドロヴナ・ケレンスカヤが心配そうに見て来る。
「察してあげなさいな、アデリーナ。」
もう一人の同行者、クララ・マオがアデリーナを制する。
「察しろとは?」
「ここは、円夏に取っては生まれてから一度も会えてない、姉兄が居る場所なのよ。」
「はぁ…。」
「事情が有るとは云え、この子からして見れば漸く面と向かって合う事が出来る機会なのよ。」
「そうだな…済まん円夏、不躾な事を聞いて。」
クララの説明を聞いて、自分の情緒の無さを詫びるアデリーナ。
「いえ、気にしないで下さい。」
円夏は困った様に、謝罪を受け入れる。
少し、しんみりした空気を変える為にクララは話題を変える。
「それにしても、よく私達の分まで招待状を用意できたわね。」
「あぁ。元々は、スコールさんとオータムさんに届いた招待状だったんですけど、二人とも今日は仕事が有ったみたいで…。」
「それで、折角だからと言う訳か。」
「はい!」
三人の和気藹々とした遣り取りは周囲の人間を和ませる。
その時、円夏は視界の端に兄と同じ位の年頃の三人の男女を確認した。
三人とも、顔立ちが良く遠くからでも目立つ。
その中の一人の、赤い髪にバンダナが特徴的な男性が何やら燥いでいる。
隣の黒髪に遠目からでも分かる、良く鍛えられ程よく筋肉が付いた体格の男性が赤髪の男性の様子を不思議そう見ている。
少し、観察していると赤髪の男性が黒髪の男性に掴み掛ろうとして、同じ赤い髪の女性に腰の辺りを蹴られた。
如何やら、あの二人は兄妹らしい。
女性に蹴られ、盛大に転んだ男性を助けようとしたのか、もう一人の男性が駆け寄る。
そこを女性に呼び止められ、困惑気味に振り向いた男性に転んだ方の男性が言い募っていた。
その様子に、呆れたように踵を返し女性の方むいてあの頭を下げる。
そして、気になる事でも有ったのか男性に詰め寄り何かを聞いている。
そうして居ると、赤髪の男性がまたも掴み掛ろうとして今度は腹に一撃を貰っていた。
仲の良さそうな二人を置いて、先に入場口に向かおうとする男性に慌てた様に着いていく女性と喰らった一撃が思いの外、結構なダメージになったらしい男性が追い縋り黒髪の方に肩を借りて入場口に向かって行った。
そんな、寸劇を一通り観察しているとクララから声を掛けられる。
「こんな事って在るのね~。」
「いえ…早々、お目に係れないと思いますよ…。」
「そう?」
「はい…私達も、行きましょうか。」
「そうね。」
「あぁ。」
円夏達三人も入場口に向かった。
「それで、ですね…あっ!招待状の呈示をお願いします。」
入場口の前には、先程の寸劇を見せていた赤髪の男性が休んでいて、入場整理の女生徒とにこやかに会話を弾ませていた。
「はい、確認できました。どうぞ、楽しんで来て下さい。」
招待状の確認を終えて、学園の中に入る。
学園に入った直後だろうか、クララの携帯にメールが送られてきた。
素早く携帯を操作してメールを確かめる。
「誰からだ?」
「愛子だったわ、円夏に用があるみたい。」
「私に?先に、済ませますか?」
「ん~ん…いや、用があると言っても準備に時間が係るみたいだから、少し学園祭を回って時間を潰してきてだって…。」
アデリーナが、着信元の主を聞くとクララから自分達とよく知るの名前が聞かれた。
クララの両親、メリッサ・マオ及びクルツ・ウェーバーは愛子の父と旧知の中に在る、その為か娘である二人も幼い頃から面識があり、メリッサがミスリルから独立して開業した民間軍事会社D.O.M.S.時は、クララを通して仕事の依頼の遣り取りをしていた程である。
円夏達も、愛子を通して知り合った口で、スコールとオータムは仕事を何度か共にしている。
そして、クララが続きを読み上げると、それ程急ぎの要件ではない事が判った。
「じゃあ、折角だしちょっと覗いていきますか!」
「はい!」
「そうだな…。何処から回る?」
「えぇっと、一年一組って所で遣ってるボン太くんカフェに行きたいです!」
「ふふ、了解!」
「あぁ、早速向かおう。」
愛子の用も気になるが、文化祭も楽しみたい三人は気持ちを切り替えて遊ぶことにした。
最初に向かった一年一組の教室の前には行列が出来ていた。
「凄い行列ね、まだ少し係りそうだわ…。」
「あれ?あの人、さっきの…?」
行列の長さに、クララが辟易していると円夏は再び入場口の前で見た人物を見つけた。
ウェイブの架かった長い金髪の女生徒と楽し気に話していた男性は、会話を終えると廊下の突き当りを曲がっていった。
円夏達も、その後に続くと行列の最後尾が見えて来る、彼女たちはアデリーナに列に並んで貰い校内を見て回る事にした。
色々見ていると、遠くにまたよく目立つ一団が見えた。
「!兄さん…!」
遠くからでも分かる、嘗ては憎しみを今は親愛の情を向ける兄の姿が見えた時、抑えていた感情が溢れるのを感じる。
「円夏…。」
クララも、そんな様子の円夏にハンカチを渡して背中から肩に手を置いた。
その後、アデリーナの連絡でもう少しで自分達の番になると伝えられ、彼女の下に戻る。
順番待ちをしていたアデリーナと合流する頃には、前には一組を残すのみであった。
その一組が案内されると、直ぐに円夏達の番になる。
「いらっしゃいませ!ボン太くんカフェへようこそ!」
ボン太くんのファンキャップを付けたスタッフに出迎えられる。
「三名様ですね?」
「はい!」
「元気のいい返事ですね~。そんな、貴女にはサービスです。」
スタッフは、手作りのボン太くんラバーストラップを円夏に手渡す。
店内に案内された三人は、それぞれ気になる物を注文して商品が来るのを待っていた。
その時、ロングストレートの黒髪のスタッフが入り口に向かう。
その直後、テッサと二人の護衛がスタッフに連れられ入って来る。
二人の護衛が店内を見回し、円夏達を見つけると驚いた顔をする。
間仕切りで隠された奥の席に向かった三人を見送った後、円夏の携帯にラインが来た。
相手は、スコールだった。
〈来ていたのね円夏。〉
〈はい…それより、スコールさん達は如何して?今日は、お仕事では?〉
〈えぇ、今そのお仕事の最中よ。〉
〈良いんですか?仕事の最中にメールなんて?〉
〈護衛対象から許しは貰ったわ。〉
〈あっ!注文した料理が来たので、切りますね。〉
〈了解したわ。〉
スコールとのラインを一旦止めて、注文した料理に注意を向けた。
「美味しそう…!」
「学園祭とは思えないクオリティーね…。」
「当然ですよ。」
料理の完成度に驚いていると、誰かに声を掛けられる。
「あっ!あの時の…!」
「うん、サマーフェスではお世話になりました。」
コック服を着たシャルロットが立って居た。
「このボン太くんカフェで提供する料理のアイディアは、サマーフェスで出店を出店して居た人たちから貰ったものですからね。」
「成る程…。」
あのサマーフェスに出店していた出店の主の殆どが、普段は有名店のシェフやパティシエなのはボン太くんファン公然の秘密である。
そんな、プロの意見を基にした料理ならば納得できる話である。
料理に舌鼓を打ちつつ、室内の内装も観察しながら時間は過ぎていた。
そして、粗方の料理を食べ終わった頃に愛子から連絡があり、代金を支払った後指定された場所まで移動する。
愛子が指定したのは校舎内に在る整備室だった。
「来たね、いらっしゃい円夏ちゃん…。」
ある一画に居た愛子は、円夏に気が付くと声を掛ける。
「あの…愛子さん。要件とは…?」
「うん。円夏ちゃんに、この子を合わせたくて。」
愛子が、視線で示した先には一機のボン太くんが居た。
黒い、それがこのボン太くんに抱く最初の感想だった。
「このボン太くんは、一体…?」
「この子は、アルビノ型二号機その名もリベリオンボン太くん…。」
「リベリオンボン太くん…。」
「自分の運命に抗おうとする、貴女の為に作ったボン太くんだよ…。」
「…これが、この子が…私のボン太くん…!」
感慨深く、その黒いボン太くんを眺める円夏。
リベリオン。それは反抗や反逆と言う意味の言葉、彼女は今まさに自分の仕組まれた運命に反抗しようとしていた。
同じ血を分けた姉兄と殺し合い、憎しみ合うそんな嘆きたくなる運命に反逆しようとしていた。
円夏「私は変えたい、この運命を…!」
取り敢えず、外伝の二人は出しました。
感想などありましたらよろしくお願いします。