syaru wi battle?
織斑一夏は、今日の為に楯無や愛子、他に千冬と防衛部のメンバーを含めた学園警備に関わる関係者と綿密な打ち合わせを何度となく行ってきた。
そして、着替えを終えた一夏はこの時の為に作られたステージの裏手に入る。
「楯無さん、入りました。」
インカムを押さえ通信状態にして、楯無に準備が出来た事を伝える。
「了解。こっちも、確認したわ。」
「それでは…。」
「えぇ、始めましょうか…。」
「「作戦開始…!」」
「「「了解!」」」
楯無と一夏が同時に宣言すると、インカムから複数人の声が聞こえた。
裏手からステージの上部に移動する。
それから、楯無のナレーションが始まる。
「昔、遠く離れたとある国に、シンデレラと呼ばれた少女が居りました。」
如何やら、演劇のシンデレラが始まるらしい。
「シンデレラは義母と二人の義姉に毎日、過酷な仕打ちを受けていました。」
至って普通のシンデレラの内容に、肩透かしをくらった観客も居る。
「しかし、彼女は耐えました…来る日も来る日も続けられる肉体的にも精神的にも堪える所業に彼女は耐え忍びました、やがて彼女が待ち望んだ日がやって来ました。」
ステージ全体がライトアップされ明るくなる。
「舞踏会、それは一年に一度だけ行われる女たちの戦。その戦いに勝利し見事、王子から王冠を奪った者には王が何でも一つ願いを叶えてくれるというその祭りに少女は…魔女より送られた、美しいドレスと魔法のガラスで作られた武器を持って挑むのです。」
コテージに見立てて作られたセットの上に現れた一夏は、両腕を広げて大仰に語りだす。
「民たちよ、今年もこの日が来た!各々が願いを持ってこの場所に来たと思う…良かろう!我から、この王冠を見事奪い取って見せた者には、我ら王家に名を連ねる者が全力を叶えよう…ただし!我も、容易くこの王冠を奪われてやるつもりは無い!己が願いを叶えたいならば…躊躇うな!喩え卑怯と揶揄されようと!喩え国賊と罵られようと!我を、殺すつもりかかって参れ!」
饒舌に語られる一夏の長台詞は、会場に居た全ての観客の度肝を抜いた。
「王子!覚悟ぉぉぉ!」
台詞が終わった直後、白亜のドレスを纏った小柄な少女が九節棍を一夏めがけて投げる。
「勢いや良し…しかし、あまいわ!」
バックステップで、九節棍の少女鈴音の一撃を躱す。
「くっ!そう、容易くは行かないか…!」
悔しそうに王子を睨む鈴音。
「ふっ…それも読めておるわ!」
王子の方は、コテージを駆けだす。
その直後、王子が居た場所が突然弾けた。
「ここまで、距離が在るのに避けられるなんて!」
今度は、ライフルを構えた少女セシリアが吠える。
王子は、そのままテラスの柱の一つに手を掛け伝って下に降りる。
「貰った!」
下に降りた王子を狙って、黒髪の美しい少女箒から太刀が振り下ろされる。
「むっ!中々いい太刀筋だ、打ち込みも早い…だが、狙いが判りやすい!」
しかし、王子も腰に差していたサーベルを鞘ごと抜いて受け止めた。
「貴方が強者なのは、魔女から聞いているだから…ブロンド!今だ!」
「了解だよ!艶髪!」
箒の合図で、王子の背後の物陰からトライデントを持ったブロンドヘアーの少女シャルロットが飛び出す。
「成る程…だが、足りぬな!それだけではな!」
王子は体を捻り、トライデントの一撃を躱し後ろ蹴りを繰り出したそして、鞘を片手で押さえもう片方でサーベルを抜き刃を箒の腹に当てて斬る。
「ぐぅぅ!」
「ぐっは!」
箒は腹を押さえ後退り、シャルロットは蹴りをガードして吹き飛ばされる。
「ブロンド!艶髪!おのれ!」
「直情的だな…読み易い。」
乾坤圏を装備した眼帯の少女ラウラが突撃する。
王子は、彼女の動きを見切り躱す。
「私達は、貴方からその王冠を貰い受ける!」
「必至だな、何がお前達をそれ程までに駆り立てる。」
「貴方には分からない、自らが生まれた証を…親から貰った名前を奪われた者の気持ちなど!」
「銀髪…下がって!」
「水色⁉判った!」
「ほう…次は、お前が相手か…!」
「くっ!行きます!」
「来い!」
ショートバレルの銃剣を構え、狙いを付けながら発砲する水色の髪色が特徴的な少女簪が王子を打ち取らんとばかりに攻撃を続ける。
王子は、サーベルを振るい弾丸を落としながら駆けて柱の陰に隠れる。
「名を奪われた…そうか、貴様らはシンデレラか…!」
王子は、一通り相手をした少女たちの話から正体を見破る。
「そう、私達はシンデレラ…名を奪われ、隷属させられた者…。」
「この国は、周囲を列強諸国に挟まれた場所にある、だから…昔から、力の強さが絶対とされてきた。」
「単純な力の強さは勿論、頭脳の面でも賢い人間が優先される…それは、婦女子とて例外ではなかった!」
「国を守る為に優秀な人材が必要なのは判ります…ですが!」
「その為に、多くの者たちが蔑ろされて来た…!僕達も、奪われた…力在る者に、家族も…名前も!」
「だから取り戻す…貴方から、王冠を奪って…!自分達の、名前を…!」
鬼気迫る思いが少女達から流れて来る。
「…我の流した魔女達は、良き働きをした様だ…良いだろう!貴様らの願いの強さ…我から王冠を奪って示して見せよ!」
王子は、手を広げて少女たちを駆り立てる。
構えるシンデレラ達との間に緊張が走る。
「王子が国の各地に送った魔女は、その行きついた土地で芽のある者たちを育てた。それが、彼女達である。そして、魔女は一人だけではない勿論その教え子も…。」
緊張した空気を裂くように語られる楯無のナレーション。
その言葉が指し示す意味は一つだった。
「「「「王子~!その王冠、頂戴致す~!」」」」
無数の女性たちが、波と成り王子の下に押し寄せる。
「ふっ…いい気迫だ、漸く舞踏会も本調子になって来た…!」
王子が纏う気迫は、その場に居る者全てに恐怖を与えるに十分なものだった。
しかし、舞台の熱気と六人が演じた迫真のシンデレラが彼女たちの精神すら麻痺させた。
今の彼女たちは、
「ふむ…ここでは、些か手狭だな。」
王子は周りを見回し、そう呟いた。
「我を追えるならば、追って見せよ!」
「なっ!追うぞ皆!」
「「「「「おう!」」」」」
「「「「「「待て~!王子~!」」」」」」
そのまま、広い場所を目指して駆けだす王子を元々舞台上に居た六人と後から来た大群が追いかける。
そして、戦場が広い王宮の中庭に移ろうとした時…。
「何事ですの!」
「これは…⁉」
「くぅ!暗くて何も見えん!」
「証明が落ちた…?」
「これからだと言うのに!」
「でも…作戦的には成功…。」
突如、会場全体の証明が消えて辺りが暗闇に包まれた。
証明が復旧する頃には、王子の姿は何処にもなかった。
件の王子いや、一夏は…。
舞台下に、一人の女性と対峙していた。
一夏「始まったな、第二部だ…。」
武士っ子フィーバー!
そして、一夏と対峙した女性とは?
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