演劇の舞台下、そこは普段はアリーナの地下通路として利用されてる場所だ。
そこに、先程の演劇の最中に消えた王子、一夏が立って居た。
「ふむ…あそこから下に落ちると、ここに出るのか…。」
走っている時に、急に下に落ちたのに冷静な一夏は自分に視線を向けている人影に目を向ける。
先程も声を掛けて来た、巻紙礼子と名乗った女性が何故かこの場に居た。
「織斑さん、大丈夫ですか?」
礼子は、気づかわし気に一夏に問う。
「心配ない、何時でも受け身は執れる様に訓練はしている。」
「そうですか。」
何の事も無く淡々と答えた一夏に、礼子も淡白に返す。
「それで、貴女が何故ここに?」
「いえ、織斑さんが此方に逃げて来るのが見えたので。」
一夏は、会話を交わしながら礼子の様子を注意深く監視する。
「実は、織斑さんにお願いしたい事があるのですが。」
「…何かな…?」
礼子の雰囲気が変わったのを肌で感じた一夏は、言葉を低くして答え臨戦態勢をとる。
「織斑さんの機体を頂けませんか?」
「それは、聞けぬ相談だな…。」
礼子の質問に、静かに否と答え何時でもボン太くんを起動できるように構える。
「そうですか…では、力尽くで奪う事にします。」
言葉遣いは丁寧だが、言ってる内容は物騒な言動の礼子。
その後、彼女の身長の二倍以上はあるISを装着した。
今の彼女の姿を一言で言うなら、ギリシャ神話に登場するアラクネに類似していた。
いや、正しく彼女の纏う機体の名はアラクネと言うアメリカで開発されていた軍事用ISであった。
「やっと、正体を現したか…アルビノ!」
一夏も、ボン太くんを纏って相対する。
「ふも!ふももっふふーふーもっふ!」『アルファ!白影烏形態発動!』
『了解。白影烏形態発動します。』
「やらせると思いますか?」
彼女は、ボン太くんにアラクネの歩脚を思わせる装甲脚を向ける。
装甲脚に内蔵されているマシンガンがボン太くんに放たれる。
「ふも…ふもっふ!」『そんなもの…俺には通じんぞ!』
「何ですって⁉」
飛び上がり空中回転の用量で彼女の頭上を通り過ぎる。
ボン太くんの身の熟しと素早い動きに驚くが、落ち着いて体を反転させる。
「くぁーー!」
「わっ!今度は、なんですか⁉」
反転しきったと同時に、彼女の顔めがけて何かが突撃してくる。
「ふも!ふも。ふーもっふ!」『アルファ!装着。白影烏!』
『ホワイトシャドークロウ。クロスオン!』
アラクネに突撃していたビーストアーマーがボン太くんの下に戻り、本体を分解してボン太くんに装着される。
翼は胴体前面を覆う形で装着され、鉤爪は展開して足に、尾羽は左右に別れ其々一本ずつ短刀が納まったサイドアーマーに胴体はビースト形態の時の腹部側が上下反転した状態で頭部に填りヘッドギアに、頭部は右肩に肩アーマーに成ると首の周りにビームで生成されたマフラーが巻かれた。
主装備の狩魔丈に電流を流し振りかぶる。
「くぁーもっふ!」『喰らっておけ!』
「それは流石に、ご遠慮します!」
しかし、大きさの割に動きが素早く後方に飛んで一撃を躱す。
それでも、狩魔丈を連続で振りかざしアラクネを追い立てる。
「くぅーくぁくーもっふ!」『まだまだ行くぞ!』
「くっ!避けるのに手一杯なんて⁉」
閉所での戦いに向いた白影烏形態と大きさで場所を取るアラクネでは戦闘の不利は明らかだった。
このままでは、此方がじり貧である状況を見た彼女は、自分に有利に戦える場所を求めて移動する事を決めた。
「くぁも!」『待て!』
しかし、ボン太くんも彼女の追撃しながら追う。
「くっ!何処か…何処か、戦いやすい場所は⁉」
激しい攻撃を如何にか躱しながら、彼女は血眼になって自分が有利なフィールドを探す。
「くぅーも!」『これで!』
「キャ―――!」
逃げ続けて疲れが出たのか、鋭い一撃を蜘蛛の腹部を彷彿とさせる背面ユニットに喰らい前方に大きく吹き飛ばされる。
「ここまで…ですか。うん?ここは…?」
吹き飛ばされて通路の壁を突き破ったのだろう、ロッカーが並んだ更衣室のような場所に出ていた。
「地獄に仏ですか…漸く、運が巡って来ましたね。」
戦況の不利が思ったよりも、彼女を追い詰めていたらしい。
取り敢えずの休息を取る、だが長く休んでも居られない。
『また何時、あのマスコット擬きがこの場所に来るか分かりません。』
今まで、一方的に追い詰められていた戦況をひっくり返すために行動を開始する。
ロッカーの上に登ると、腕から蜘蛛の巣状の捕縛ネットを辺りに撒いていく。
『仕掛けは張り終わりましたが、これで止める事が出来るか如何か…?』
前情報よりも、明らかに戦闘慣れした対象の動きとそれこそ情報にない自立稼働する感想武装に動揺して、今の戦法が有効なのか不安を誘う。
「くぁーっふ!」『此処か!』
「やはり、見つけられましたか!」
自分が突き破った穴から突撃してくるボン太くんに慄くアラクネ。
「くーもっふ~!」『そこか~!』
狩魔丈の先端をアラクネに向けて電撃波を放つ。
それを、ギリギリで躱すアラクネ。
「くっ!このままでは…!む?あれは…はっ!」
飛んで行った電撃波が蜘蛛の巣に当たり拡散していく、それを見たアラクネはある事を思いつく。
「もしや…いえ、これしかない!」
「くぁーっふ。くーくぁーくーふー!」『余裕だな。戦闘中に考え事か!』
再び狩魔丈を向け電撃波を撃つ。
「え~い、ままよです。」
電撃波に向けて腕から捕縛ネット撃ち放つ。
捕縛ネットと衝突した電撃波は、そのままネットに帯電してボン太くんに方に向かう。
「くぁーふ⁉」『何⁉』
帯電した捕縛ネットをギリギリで避けるボン太くん。
『一夏、狩魔丈ではこの場合の戦闘には適していません。』
戦況分析を終えたアルファが、一夏に提言する。
「くぅーくぁーもっふ。」『見ればわかる。』
『主力装備の変更を提案します。』
「くーくぁーくぅーもっふ。」『白牙狼の時と同じか。』
『はい。主力装備を狩魔丈から雲雷手裏剣に変更する事を推奨します。』
「くっふくーくぁもっふ…くぅーもっふくぁーくーふ!」『杖の次は手裏剣か…変更【雲雷手裏剣】!』
狩魔丈が粒子状になると、そのまま別の形状に変換する。
しかし、その隙を逃すアラクネではない。
「隙ありです!」
動きを止めたボン太くんに向けてネットを撃つ。
「くぁー!」『しまった!』
ネットが直撃して身動きが取れなくなった。
「ふぅ。さて、仕事を終わらせますか。」
捕縛され動かなくなったボン太くんを視認して、安堵の息を着いたアラクネはゆっくりと彼に近づいていく。
そして、長い緊張から解き放たれ安堵しきった彼女には此方に高速で近づいて来る物音に気付かなかった。
「きゃーもっふ!きゃきゃっふ!」『兄さん!やっと見つけました!』
蝙蝠の意匠があしらわれた装甲を着けた、黒いボン太くんが穴から侵入してきた。
アラクネ(仮)「今度は、何ですか⁉」
次は円夏ちゃん視点です。
感想などありましたらよろしくお願いします。