当然のラウラの変化、その事象に驚き固まっていた。
シュヴァルツェア・レーゲンのシルエットは、以前よりも小さく纏まっていた。
左右に浮遊していた大型の複合ユニットは小型され肩部に直付け装甲が追加された、腰部の大型スラスターは脚部アーマーと一体化しより小回りが利く形になった、プラズマ手刀発生器になっていた手首アーマーは前より小型になったが攻撃力は向上している。
何処を見ても、二次移行したにしてはコンパクトになったラウラの専用機には誰しもが懐疑的になる事だろう。
しかし、小型化したシュヴァルツェア・レーゲンにはこの半年間にラウラが経験した全てが反映されていた、その最たる物が背面に有っるヴォルケユニットだろう。
第三世代型ISの特徴とも言える展開装甲、その実戦を観察し続けたラウラとシュヴァルツェア・レーゲンはその有用性を確認していた、ヴォルケユニットはその観察から得られたデータをフィードバックして生まれた機構である。
背部からエネルギーラインが全身の装甲に繋がれており、戦況に応じて各部を変化させるギミックが詰め込まれている。
登場早々に砲撃の歓迎を受けてから回避以外の動きを見せなかったサイレント・ゼフィロスが、二次移行直後のラウラを取り囲むようにビットを展開した。
「漸く本腰を入れたか…。」
静止していたラウラが小さく呟く。
二人の間に流れる緊張感、何方が先に攻撃の口火を切るかは明白であった、無言の下に打ち出されたレーザー光を難なく見切り避ける。
「ふっ、そう簡単にはいかんか…。」
しかし、避けたはずのレーザーが屈折してラウラを狙う。
その光景を見ていたセシリアは驚愕した、何故ならその技法フレキシブルは彼女の機体ブルー・ティアーズにも想定されその為の機能も搭載されていたが、今だ彼女は成功していなかった。
そんなセシリアの様子を知らないラウラは、曲がった閃光も悠々と回避しているが敵対機に接近にすることが出来ずにやきもきしていた。
『隙が無いな、このままではジリ貧か…ならば、早速だが進化した力と云うものを試してみるか。』
繰り返されるレーザーの雨の中でラウラは現状の突破口を開く為、進化した愛機の力をぶつけ本番で試す事にした。
「ヴァルケユニット、迅雷フェイズ!」
ラウラの声に答え、ヴォルケユニットからエネルギーラインを伝い下半身に変化を促す、両脚部のパネルラインが開きブースターが光を放つと次には、視認する事が困難な程の加速して見せた。
「!…。」
行き成り高速機動を始めたラウラに驚きながらも、彼女を打ち落とそうと先程よりも激しい弾幕を張る。
「遅い!」
ラウラの動きを止めようとレザーを多方向から空間を狭める様に展開しても、それより先に彼女が抜け出して距離を詰める、スターブレイカーで牽制してもギリギリで見極め躱される。
幾らか動きは限定できてもじりじりと接近されるが、サイレント・ゼフィロスも場所を移動しながら攻撃を行っている為、ラウラも相手を捉える事ができない。
互いが一歩も引かない高次元の戦いを繰り広げる、傍観者と化した周りの人物は如何なる決着が着くか想像も出来ないだろう。
しかし胡蝶は、雌雄を決する算段があった。
「?攻撃の勢いが弱まった…釣りか?」
弾幕の勢いが落ち本体の動きも緩慢になる、それは明らかに誘いだった。
それでも、ここで攻めなければ次は無いかもしれないと思うとラウラは誘いに乗る事にした。
『ただし、此方も容易くやれる気は無いがな…。』
心の中の呟きが面の表情に現れる。
「轟雷フェイズ…。」
身近く下された命令に従い上半身のアーマーが稼働する、ショルダーアーマーが外れて手首から先に装着されて覆うと肩が露出した、ヴォルケユニットからエネルギーが供給されて全身が輝くと急加速をかける。
ガントレットとなったショルダーアーマーから放電が起こり電光が漏れる、この一撃で決めると言う意思が拳に雷を宿した。
あと少しの距離まで肉薄した時、ラウラと敵との間にシールドビットが割って入る。
「はぁぁぁぁ!」
裂帛の叫びと共に振り出した拳でシールドビットを殴る着け、払い落として尚も勢いをつけて接敵するラウラに相手がスターブレイカー向けた。
一撃の勝負、相手がラウラを打ち抜けばラウラが負け相手が勝利する、ラウラが撥ね退け相手を殴り貫けばラウラが勝ち相手が敗北する、互いに勝利条件は同じ相手を伏せさせるただそれだけだから尚、この場の空気が張り詰めるのである。
放たれたレーザーをガントレットで受け止める、躱しはしない躱せば逸れた弾道が曲がり己の背を突き刺すだろうから、だからここで打ち砕く。
電撃と閃光がぶつかり合い火花を辺りに撒き散らす、一歩も引かない攻防の中で少しずつラウラが前に出始める。
「うぬぅぅぅ!」
気合を入れ力を振り絞ったラウラの拳がスターブレイカーから放たれたレーザーを突き抜けた。
「大導脈流活殺術奥義…血栓しょっがぁぁぁぁ!」
誰しもが勝負が決したと、そう確信した時ラウラの叫びが木霊した。
「…漸く狙いが付けられました。」
「な…に…!」
ここまで、一言も喋らなかった相手から零れた言葉の内容に驚きの声が出る。
「二次移行をした時は、面食らいましたがそこ迄でしたね。」
淡々と語る声音からは感情を感じる事が出来ない。
「確かに、あの機動力には目を見張るものがありましたが…これで終わりです。」
後方からビットが自分に狙いを定めた気配を感じた。
『人間、早々変われないらしいな…最後の最後で油断するとは…。』
ビットの存在を忘れていた訳では無い、だが何処かで本体にばかり目を向けていた己が居るとラウラは自嘲した。
後方から撃たれブースターが機能不全に陥ている、これでは満足に回避も出来ない。
最早これまでと、一抹の悔しさを抱えながら最後の瞬間が来るのを待ったその時である。
「ラウラ~!しっかりしなさ~い!」
そう叫びながら、鈴音がラウラを救出する為に接近する。
「邪魔ですね…先ずは、貴女から落としましょうか?」
ラウラを狙っていたビットが鈴音に狙いを変えた。
「!逃げろ…鈴!」
「もう遅いですよ。」
鈴音に向けて放たれたレーザーが直撃する時、鈴音にも変化が起きた。
甲龍の眠れる力が今まさに目覚めの時を迎えた。
?「来ると言うのだな、我が操者よ…。」
今度は鈴ちゃんフェイズ!