セシリア達に向けられたビットを抑える為に最高速度で追いかける鈴音、その様子を見ていたセシリアもまた応戦の構えを執る。
六基のビットが其々に意思が有るかの様に動き、三機がセシリアもう三機がヴィシュヌを狙い別れた。
鈴音はヴィシュヌの方に向かった三機を追い、残り三機はセシリアに迎え撃ってもらう事にした。
「ごめん!そっちは任せたわ!」
「お気になさらず、あれを抑え方ははわたくしの方が心得ておりますので!」
通信でセシリアに謝罪すると、彼女は気にするなと返してくる。
伊達にコンビを組んで戦って来た訳では無い、阿吽の呼吸とも呼べる信頼関係が二人の間には構築されていた。
そしてヴィシュヌは接近するビットにクラスター・ボウを向けて待ち構える、鈴音が竜操機構から龍咆を起動して前方と後方から挟撃を仕掛ける。
互いの射線に入らない様に位置を調整しつつ、ビットを射程圏内に誘導ゆる為に鈴音が龍咆を狙いを付けず適当に発射した。
鈴音の狙い通りビットは龍咆の砲撃範囲から逃れる、だが逃れた先はクラスター・ボウの射程範囲に入っていた。
「落ちなさい!」
ヴィシュヌの専用機ドゥルガー・シンの弓から放たれた矢が拡散してビットに降り注ぐ、ビットはレーザーを放ち迫る矢を打ち落として防御する。
本当に遠隔操作だけで此方に意思が無いのか甚だ疑問に思う程の対応力を見せるビットである。
そんな事を気にしてる余裕が無いのか二人は、ただ迫る脅威に応戦する事に集中している。
そして残った三機を相手にしているセシリアも、迫るアラストスを気にしながら戦っている為にやり辛そうにしていた。
ビットもアラストスも個々であれば大した相手では無い、だが二つ纏めてと為ると別の話である。
「くっ!鈴さんには大見栄張りましたが、すこしきついですわね。」
自身のビットも最大稼働で動かして漸く互角と言った戦況である、とは言え此処を通せば後方に控えてる生徒や一般客に被害が及ぶ、如何にか踏ん張り退かねばならない。
「…やらねばならぬですか…良いでしょう!このセシリア・オルコット、敵に背中は見せませんわ!」
逆境の中で決意を固め迫り来る敵軍に銃口を向けた、その姿は彼女の容姿も相まってワルキューレを彷彿とさせた。
この防衛戦で戦う、うら若き乙女たち全員がこの場の死守を絶対の目的に据えていた、だからこそ内二人が二次移行を果たす奇跡を起こし今も変化を続けている。
ラウラが鈴音がセシリアがヴィシュヌが全員が一丸となって、学園を侵そうとする脅威と戦っていたのである。
だからだろうサイレント・ゼフィロスのビットの動きが単調になったのは、気付けばラウラが襲撃者とドッグファイトを始めていた。
力と力、技と技がぶつかり合い互いの力量が競り合う激戦を繰り広げ、何人も介入する事を許さない。
その様子を少しだけ見たヴィシュヌは引き込まれ一瞬だけ神話の一場面を見ていると錯覚するほどだった。
「ヴィシュヌ!気を抜かないで!」
「はっ!すいません鈴さん!」
まだ気を抜けない状況で、意識を手放し掛けたヴィシュヌを鈴音が引き戻す。
鈴音もここで余り時間を使いたくないのだ、一刻も早くビットを落としてセシリアの下に救援に向かいたかった。
「鈴さん、このままセシリアさんと合流しましょう。」
「ヴィシュヌ!あんた何言って……そう言う事?」
「はい…今は、それしかありません。」
「……はぁ、仕方ないわね。但しやるからには派手にやるわよ!」
「はい!」
ヴィシュヌの提案を聞いて声を荒げそうに為るが少し考えて、相手の発言の意図を汲み取ったそして、ビットを引き付けながらセシリアの下に向かう。
「?如何しましたの鈴さん?ヴィシュヌさん?」
此方に向かって来る二人を確認して疑問を口にした、何か考えが有って行動している事は判るがその意図が読めなかった。
「セシリア、ちょっとそいつらの注意をこっちに向けて来るかしら?」
鈴音から通信でそう伝えられて、漸くその意図を汲んだ。
「そう言う事ですの…了解しましたわ!」
セシリアは自身の操作するビットを戻し高度を下げる、そしてそれを追った敵のビットをヴィシュヌが攻撃して注意を逸らした、後から来た三機と合わせて合計六基全てがヴィシュヌに集中するがそこに鈴音の龍鱗壁が行く手を阻み周囲を囲って封殺した。
「そのまま爆ぜなさい!龍爆玉!」
鈴音の命令で竜操機構が封じた空間ごと破裂させる、龍爆玉の中に閉じ込められたビットが爆発に耐えらる筈も無く原型はギリギリ留めたが飛行するのがやっとな程のダメージを負った。
「取り敢えず、面倒なのは片付いたわね。」
「はい。」
「えぇ、そうですわね。」
ビットが機能不能になった事は操縦者である襲撃者にも伝わった。
「落されてはいないようですね…。」
ラウラとのドッグファイトに集中していた襲撃者の動きが一瞬だけ止まった、その隙を突いてラウラは大技を仕掛ける。
「今度こそ喰らってもらう…!」
右拳に装着したガントレットアーマーから放電を起こし腰を引いて体を捻る、一撃必殺の気迫を籠め乾坤一擲の想いで拳を衝きだした。
「大導脈流活殺術奥義!血栓掌!」
師である一夏より受け継いだ一子相伝の暗殺拳、その全てを受け継いだ訳では無い事実あの短い時間の中で身に付けられたのはこの一撃のみ、否だからこそこの一撃に全てを籠められる。
「ぐっふ!」
胸部にクリーンヒットした拳が更にめり込み、拳圧が身を突き抜け背面から抜けた。
「はぁはぁはぁ…どうだ⁉」
単一能力の影響で精神力を大きく消耗して息を荒く吐くラウラは最後の一撃を放った後、消え入りそうな意識を再び搔き集め襲撃者を見る。
「がはっごふっごふっ…はぁはぁはぁ…くく…くふっ、くふふふふふ。ア~ハハハハハ!」
口から血を吐き呼吸が乱れた状態にも係わらず、尚もその口元は悦楽に染まり狂気に満ちた高笑いを上げた。
「良いんですね~!一瞬、意識が飛びかけましたよ~!もっと遊びましょうよ、ねぇ!」
大ダメージを追った筈の相手はさっきよりも饒舌に喋り、狂ったかの様に武器を振るう。
「くぅ…、化け物め…。」
意識を保ってるもやっとな状況で、心底愉快そうに武器を振るい子供の様に無邪気にそして、残忍にラウラを攻撃した。
「あれ?あれあれ⁉もう終わりですか⁉つまんないですねぇ!」
最早被ダメージの限界を超えてISの絶対防御が発動したラウラを見下ろし、おもちゃを取り上げられた子供の様に駄々を捏ねる。
「ラウラ!」
「ラウラさん!」
ビットを片付けラウラの救援に駆け付けた鈴音とセシリアは、絶対防御に守られたラウラに駆け寄った。
「鈴…セシリア…気を付けろ、奴は普通じゃない…。」
「ラウラ!」
「確りして下さいましラウラさん!」
そう言い残し、気を失ったラウラを抱え立ち竦む鈴音とセシリア、そして二人を見てスターブレイカーを向けた襲撃者。
「セシリア、ラウラを早く救護室へ連れて行って…。」
「鈴さんは、如何しますの⁉」
「決まってる、こいつを叩く!」
「鈴さん!」
「理解してる!こいつが異常だって事位、でもね誰かが此処でこいつを引き留めないと被害が広がるの。そして、そんな状態のラウラをこのまま放置も出来ない。」
「鈴さん…分かりましたわ。だけど誓って下さい、絶対無事に戻るって。」
「…了解したわ。」
傷ついたラウラを抱え医療施設の整った場所へ向かうセシリアを見送り、襲撃者と向き合う鈴音。
その瞳には、覚悟の火が宿っていた。
?「今度は、貴女が遊んでくれますか?」
そろそろブレイブボン太くんが登場しそう…。