IS世界のボン太くん   作:マガガマオウ

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サイレント・ゼフィロス戦終盤です。


乙女の祈りは赤き勇者を呼ぶbraver

ラウラが襲撃者との戦いに敗れた、傷ついた彼女を医療施設に輸送しているセシリアの胸中はざわついていた。

『鈴さん、如何か無理はしないで下さいまし!』

幾ら鈴が二次移行を終えた機体に登場しているとは言え、相手の狂気は常軌を逸していた。

『ラウラさんを医療班に預けたら、直ぐ援護に向かいますわ。だから、如何かそれまでは持ち堪えて下さいな!』

今思うのは、戦地に残ったこの学園で出来た親しい友の顔であった。

そして、セシリアの思う当人は…。

 

「ふっ!」

「アハハハ!貴女も、楽しませてくれますね!」

「このっ!喰らえ!」

 

襲撃者と激しいチェイスバトルを繰り広げていた。

鈴音の甲龍天は、ラウラのシュヴァルツェア・レーゲンゲヴィッターヴォルケ程近接格闘に特化した進化では無く、何方かと言えば中遠距離に特化するように変化した。

その為、インファイトより一定の距離を空けて戦うヒット&アウェイを選択したのである。

鈴音にスターブレイカーの閃光を撃つ襲撃者、それを片方の竜操機構を操作し龍鱗壁で守りもう片方で龍咆を打ち出す鈴音。

 

「くふふふふふ!あの黒い方が倒れて退屈な戦いしか出来ないかと思っていましたが、貴女も相当な手練れでしたか!良かった、まだまだ楽しめそうです!」

「本っ当に、思考が狂ってるわねあんた!」

「あらあら!それは、私にとっては誉め言葉ですね!」

 

この状況でも発言を止めず寧ろ饒舌になるばかりの襲撃者に、思わず声を大にして反論してしまう鈴音。

彼女達の掛け合いと熾烈を極める射撃戦で、何度も雲が掻き消え空が震えた。

光の奇跡を描きながら、猛スピードで時に片方が接近してはすれ違う様に離れ、距離が空けばレーザーが奔りそれそれを空を切って躱せば不可視の弾道が目標に放たれるが着弾する前に離れる、ラウラの戦いがボクシングだと例えるなばこちらは騎馬戦の様なものだった。

一度でも気を抜けば若しくは立ち止まれば、次に待つのはハチの巣になる未来のみ。

それが直感で理解できる位には、両者の纏った気配が真に迫っているのである。

『流石に早いわね、如何にか足止めでき無いかしら。』

止める事さえ出来れば後は如何様にも出来ると言うのにと、歯痒く思っていた。

『ふむ、鈴音よ止められれば良いのだな?』

甲龍のコア人格が落ち着いた声で問いかけて来た。

『えぇそうよ、如何にか出来る?』

『任せろ。とは言え、お主にも手伝って貰うがな。』

『分かってるは、何をすればいいのかは。』

『流石鈴音だ、では良しなに。』

『了解!』

甲龍との相談を終えて、鈴音は何時もの様に地点を指定してその場所に意識を集中した。

 

「あら?追いかけっこは、もう終わりですか?」

 

急に立ち止まった鈴音を訝しみ、距離を離して観察した。

やがて、両者の中間に謎の引力場が発生した。

 

「なっ!これは、引っ張られる!」

 

突然生まれた引力に引き付けられる、急いでブースターを最大にして力場から逃れようとするが、現在の地点を維持しているのでやっとな状況である、当然ながら移動も制限される。

 

「くっ!落ちなさい!」

 

ついさっき迄の狂気は成りを潜め、必死に抵抗する姿を見せる。

現状で引力場を生成していると思われる鈴音にスターブレイカーのレーザーを照射するが、その光すら引力場に吸われ大気の渦の中に堆積した。

 

「こっこれが、貴女の単一能力だとでも言うのですか⁉」

「半分正解、半分ハズレね。」

「なっ!」

 

遂に堪え切れず、片手に持っていたレーザーナイフを手から放してしまう。

そのレーザーナイフが渦に吸い込めれそうになった時、ナイフが粒子化して吸収された。

 

「まさか…!貴女の単一能力は…!」

「何を考えたか知らないけど、恐らくその通りよ。喰らいなさい、天龍気功吼!」

 

堆積した大気や粒子が引力場から衝撃波となって放たれた。

 

「くぅぅぅ!」

 

大気と分解圧縮されていた粒子が渦となって、襲撃者を飲み込んだ。

これが、甲龍天に新たに会得した単一能力【龍的呼吸】である、詰まる所龍が呼吸する様をイメージした能力であり、操縦者が指定した地点に引力場を発生させ一定の大気や敵からの攻撃エネルギーなどを粒子化して堆積した後、衝撃波として打ち出すのである。

龍咆の欠点でもあった、距離が離れれば離れる程威力が落ちると言うものを克服する為に、甲龍が生み出した能力であり、この機体最大の攻撃力を誇る技でもある。

しかし、これを発動する為には竜操機構を最大出力で使用しなければならない為、一度発動すると長時間のクールタイムが必要なため暫くの間竜操機構が使用できなくなるのである。

 

「流石に、落ちたわよね…?」

 

あの一撃が自分達に取って必殺必中の一撃である、流石にあれ以上の攻撃はもう繰り出せない。

祈る思いで、襲撃者が飲み込まれた場所をじっくり見る。

 

「あ、危ない所でした。」

「う、うそ…。」

 

何と襲撃者は健在であった、半壊したシールドビットの後ろに隠れてやり過ごしていたらしい。

 

「ふぅ、やってくれましたね。フフフ流石に、もう駄目かと思いましたよ…。」

「タフ過ぎるでしょ、アンタ…。」

「お褒めに預かり光栄です…。」

 

あれだけやり合って、まだ落ちない襲撃者に頬を引き攣らせる。

 

「では、反撃させてもらいますね?」

「うっ、くぅぅぅ!」

 

竜操機構が使用できず、龍鱗壁が張れなくなった鈴音には相手の攻撃を止める術は無く避けて湾曲したレーザーに狙い打たれ、遂にダメージの限界を迎えた。

 

「鈴さん!」

「セシリア…。」

 

ここに来て漸く戻って来れたセシリアが鈴音を抱き留める。

 

「鈴さん…ごめんなさい。わたくし、結局間に合いませんでしたわ…。」

「気に…しないで、私がとちっただけよ…。」

「鈴さん…!」

 

攻撃を受け続け、ボロボロになった鈴音を強く抱きしめ自分の体で隠した。

 

「…貴女は、遊び相手にはならなさそうですね…。余計な時間を食いました、一瞬で終わりにしましょう。」

「逃げて…セシリア…。」

「嫌です!鈴さんを、置いていくなんて!」

 

冷徹に投げ掛けられる言葉に、唇を噛んで堪えこれから繰り出される攻撃から鈴音を庇おうと構える。

今の自分では如何に武器の数で勝ろうと追い詰められるが目に見えている、だからこそせめて傷ついた友の盾に成ろうと心に決めた。

 

「それでは、さようなら。」

 

冷淡に感情の篭らない声で、最後の一撃が放たれたその時。

 

「ふぇ?」

 

目を閉じて攻撃に備えていたセシリアは、いくら待っても訪れない衝撃に不審に思って目を開けるとそこには。

 

「ふもっふ?」『ケガは、ございませんか?』

 

巨大な戦斧を手にした赤いボン太くんが、此方を見てそう呟いた。

 

?「またですか…。」

 




最後チョロットだけ登場…。
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