IS世界のボン太くん   作:マガガマオウ

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戦いの前は、何時だって穏やかなものです。


賑やかしい試合前enlivening

件の全校集会より時は過ぎた放課後。

 

「一夏の奴……!」

 

ピットの中で観覧席に居るであろう、この事態を引き起こしてくれた元凶である自身の友人の顔を思い浮かべ憤っている数馬。

数馬も生粋の武人である試合をすること自体に異論はない、しかし試合をやるに至った経緯は彼に取って不本意な部分が多くその心中は中々割り切れたものではない。

試合前だというのに、壇上での友人の振る舞いが思い起こされ如何にも集中しきれない事も苛立ちを加速させていた。

 

「あの……お邪魔してもよろしいでしょうか?」

「?はい、どうぞ!」

 

そんな数馬の下にとある人物が訪れた、まさか自分を訪ねて来る人が居ると思わず素っ頓狂な声で返してしまう。

 

「あらあら、失礼しますわね数馬さん。」

「せ、セシリアさん!」

 

尋ね人がセシリアであると知ると、先程迄の苛立ちが霧散して別の気恥ずかしさが心を満たした。

御手洗数馬と言う男は、一夏曰く激情に呑まれやすいタイプの人間であるという、情に厚い熱血漢と表現すれば解り易いかもしれない。

そんな彼でも、セシリアと共に居る時は精神の昂ぶりが収まり代わりに多幸感とも呼べる感情が沸き上がって来るのであった。

それは、セシリアも同じであるが動揺している数馬はそれどころではない。

 

「な、何故こちらに?」

「え?ご迷惑でしたかしら?」

 

怪訝そうな顔で質問した数馬に、セシリアは若干落ち込んだような声音で聞き返した。

その様子を見ていた数馬は慌てて弁明の言葉を紡ぎだす。

 

「いえ!そんな、迷惑だなんて!寧ろ、会いに来てくれて嬉しい言いますか?

「まぁ!そうなのですか?」

「はっ!俺は何を⁉いや、今のは口が滑ったと言いますか、でもその……嘘でも無いと言いますか。」

「ふふふ、落ち着いて下さい数馬さん。」

「あぁ……はい。」

 

顔色をころころと変える数馬を落ち着かせる為セシリアはゆっくりとした口調で宥める、そんな彼女に促され数馬は段々と冷静さを取り戻していた。

 

「「………。」」

 

完全に平静を取り戻したは良いが、今度はお互いに会話が無く何とも歯痒い空気が流れだす。

 

「……あ~ぁ、もう!じれったい!」

「のぁ!鈴?」

「居たんですの?」

 

そんな二人の様子をピットの外で見ていた鈴音が、沈黙と気恥ずかしさに耐えきれず乱入した。

 

「あんた等ねぇ……じれったいのよ!何この、甘酸っぱい空気!青春か⁉ロマンスか⁉部屋の外で見てたら、口の中がじゃりじゃりして敵わんわ!」

「鈴音お姉ちゃん!気持ちは解るけど落ち着いて!」

 

顔を赤くして吠える鈴音を宥める為に、廊下側に隠れていた乱音もピットの中に入る。

 

「鈴が二人⁉若しかして双子か⁉」

「いえ数馬さん、サイドテールの方は従妹の乱音さんですわよ。」

「……そうなんですか?」

「そうなんですの。」

「あんた達……はぁ、もういいわ。」

「アハハ……。」

 

荒ぶる鈴音を置き去りにしてまたも二人の世界を構築する数馬とセシリア、そんな二人を当てられてか呆れてか怒りが覚めてしまった、そして乱音も乾いた笑いを漏らしていた。

そんなこんなして居たら、張り詰めていた空気もすっかり解けて和気藹々とした雰囲気になるのは必然であった。

 

「そんな事よりセシリア、隊長から伝言頼まれてなかったかしら?」

「あら?そうでしたわ。」

 

少し落ち着いてきた鈴音から本来の要件を伝えられて思い出したらしい。

 

「一夏から?」

「はい。とは言っても、これは今回試合をされるお二人に対しての言葉らしいのですわ。」

「もう一人にも、同じ内容の言葉が伝えられているという事ですか?」

「えぇ、それでは……数馬ならびに円夏両名には、急な試合を此方の勝手で組んでしまい申し訳なく思う。しかし、君達二人にはどうしても今日中に全校生徒の前でその実力を示してもらいたかった。何故ならばこのIS学園は良くも悪くも実力主義だからだ、それ相応の実力を示した者には誠意を見せるが実力の伴わない者には何処までも冷ややかだ、従ってこの試合は両名の学園生活が実り有るものかどうかを決める試合でもある。以上ですわ。」

「……成程、一夏らしいな気遣いが判りにくい。」

「数馬さん、これはわたくしの想いでもありますの。あの時、わたくし達の間に立った姿を知られずに下に見られるのは我慢できませんわ。勝ってほしいとは言いません……ですが、隊長のように尊敬されるだけの人物であると認識されるだけの実力は学園の皆様に示して欲しいと思っていますの。」

「セシリアさん……わかりました、貴女の向けてくれた信頼に必ず応えてみせます!」

セシリアの期待の籠った視線と言葉に心を掴まれた数馬の目には闘志が宿った。

「まぁ、頼もしいですわ。」

 

またしても二人だけの世界に浸り始めた数馬たちを見て、鈴音は一夏がセシリアに伝言を頼んだ真意に気が付いた。

 

「……もしかして、逃げ道を塞いだのかしら?」

「どういう事、鈴音お姉ちゃん?」

 

脈絡もなく不意を突いて出て来た従姉のセリフに乱音は疑問を投げかけた。

 

「いや、特に深い意味はないんだけど……数馬ってさ女の子相手だと無意識に手を抜いちゃうんだよね。」

「え、そうなの?」

「うん。本人も自覚はないみたいだけどね。」

「ふ~ん……あれ?でも、この間の襲撃の時は本気だったみたいに聞いてるけど?」

「そこが、隊長の狙いね。愛の力は偉大って事よ。」

「あぁ、成程……。」

 

多くを語らないが大体は察せた乱音が、二人だけの世界に居る数馬たちを生暖かい目で見守る。

そうこうしているうちに、試合の時間が迫った来た。

 

「セシリア、そろそろ。」

「あら、もうそんな時間ですの?」

 

鈴音がセシリアに時間が差し迫ってるのを告げると、セシリアは名残惜しそうに返す。

 

 

「それでは、お暇させていただきますわね数馬さん。ご武運をお祈り申し上げますわ。」

「はい!見ていてください。見応えのある試合にして見せます。」

期待の籠った視線を送りながらピットを出ていくセシリアを見送り、張り切った声音でカタパルトに移動していく。

 

『数馬、準備はよろしいですか?』

 

カタパルトに現れた数馬に、ガンマがそう聞いてきた。

 

「勿論だ、あそこまで期待されて腑抜けてはいられんよ。」

 

相方の質問に、しっかりと答えまだ相対していない相手を見据える。

 

『それを聞いて安心しました。相手は、私と同型機ですから。』

 

ガンマは数馬の返答に、AIであるにも関わらず安堵した様に返した。

しかし、用心深くなるのも致し方ない彼らアルビノ型は同型機同士での戦闘は初の事でデータがないのだから。

 

「御手洗君、出撃準備ができました。自分のタイミングで出てください。」

 

数馬がガンマとの打ち合わせをしていると、担当教諭からそう伝えられる。

 

「了解しました。行くぞブレイブ!」

 

グローブ形状の待機状態から、Bボン太くんを展開し纏う。

 

「ふもふもっふ!」『ブレイブボン太くん出るぞ!』

 

「張り切って行こう!」




遅くなりました。
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