IS世界のボン太くん   作:マガガマオウ

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世界初のアルビノ型同士の試合は成功した、だが安寧を気を休めすぎてはいけない……事態は次なるステージへ移ろうとしている。


試合の終わりは新たな騒乱deisturbance

記録上初となったアルビノ型ボン太くん同士の試合の熱気冷めぬIS学園、同じ敷地の中に会って外の喧騒が嘘のように静まり返り呼吸の音すらはっきり聞こえてきそうな程の静寂に包まれた、ここルアド・ロエサの一室に四人の人影が居た。

 

「それで……話したい事とは?」

 

昼間の放送室の中で見せた顔とは違う緊張をはらんだ表情で、一夏が己の目前に座る二人の女生徒に質問した。

 

「あぁ……これはIS学園に籍を置き続ける為には、ずっと黙ってる訳にもいかなくてな……。」

「ダリル⁉話しておきたい事ってやっぱり……。」

 

一夏と楯無に向かい合うように座るダリルとフォルテ、彼女達は相当の覚悟をもってこの場所に居るそれが一目で分かる程表情が硬い。

 

「……人目があっては、話し難い事なんですね。」

「うん、実はアタシは……。」

 

彼女たちがこの時、何を語り何を打ち明けたのかは分からない……だがすべてを聞き終えた時、一夏は今後の防衛部が採るべき選択を決めた。

それから時間が過ぎ、またIS学園が学園祭に続く恒例行事を近くに控え慌ただしくなってきていた。

この学園の行事は、一学期は新入生は学園に慣れてもらう事を目的にしたリクリエーションの側面が強く二学期からが本格的な行事になる、キャノンボール・ファストと呼ばれるISを用いたバトルレースもそう言った意味合いを持った催しである。

例年通りであるならば、一般生徒とメインとなる訓練機部門と専用機持ち限定の専用機部門に別れるものの会場自体は同じ場所で開催されていた、だが今年は一年生に専用機を持った生徒が16人も居て専用機の総数は15機の大台に乗ってしまっている、幾らなんでも多すぎるしこれらを一度にレースさせるとなれば如何に総席数二万人収容可能な市のISアリーナであっても手狭になるのでないかと議題に上った。

 

「だからって、一年生の専用機レースをチーム制のリレー形式にするなんてね。」

「名案だと思ったんですけどね。」

 

そう今年のキャノンボール・ファスト一年生専用機レースは、我らが一夏の提案でチームで挑むリレー形式に変更されたのだ、流石に最初の内は反対意見もあったが防衛部の結成理由と活動方針も持ち出し市とIS学園それからの国際IS委員会の関係者などを説き伏せた。

 

「チーム対抗にして常に防衛戦力を一定数確保するか……確かにチームでなら競技に出てない人員が出てくるもんね。」

「宗助叔父さんに協力を仰げたのも、この案を決行に踏み切った理由ですけどね。」

 

15機も集まれば3機1チームに分ければ5つのチームに分ける事が出来る、それに合わせてレースのルートも大きく変更された、スタート地点に日本ミスリルが占有している島をゴールに市のアリーナを設定しその中間の海域をレースのコースに沿えた。

その結果、当日の警備に日本ミスリルの警備部隊が加わり、更に防衛部も三分の一程とは言え確保も出来た訳である。

 

「しっかし、よく考えるわね~今年の一年生の異例な専用機保有者数を逆手に取るなんて。」

「いやいや、実際に今の立場になれば誰でも思いつきますよ……ただ実践はしないでしょうけどね。」

 

生徒会室で書類に視線を送りながら声だけで会話をする一夏と楯無、それはここ数日で日常風景となり始めていた。

 

「確かに、思い至っても行動に起こそうという方はいらっしゃらいでしょうね、国際的な問題も関わってきますし。」

「えぇ、実際かなり力技で押し通した感はあります、宗助叔父さんが各国の関係者への説得を手伝ってくれなければ実現は出来なかったかと。」

 

二人の会話に虚が加わる、書類を持つ手を休めずにテキパキと仕事をこなす防衛部上層部員兼IS学園生徒会役員の三人、一夏が加入するまで生徒会長の仕事には殆ど手を付けて来なかった楯無も一夏が加わってからは監視の目を掻い潜る事も出来ずにこの部屋に缶詰め状態である。

 

「さて、これで最後か……虚さんここに置いておきますから後で確認お願いします。」

「はい、お疲れさまでした織斑君。」

「お疲れ様~。」

 

自分の仕事を終えた一夏は、席を立ち帰り支度を始める。

 

「そうだ、一夏君は出場チームって組んでるの?」

 

一夏が自分の荷物を鞄に仕舞い終えた時、楯無が唐突に思い浮かんだ疑問を聞いてきた。

 

「いえまだです、ですが既に決まってしまった様ではあるんですけどね。」

 

楯無の質問に対し一夏はまだだと答えた、だが本人の意思の所在は抜きにして彼等の周りではある動きを見せていた。

 

「決まってしまった?妙な言い回しね、また何か企んでるのかしら?」

 

楯無も一夏の返答の在り方を訝しみ、続けて質問を投げかける。

 

「企てたと云うよりは、企てられたと捉えた方がいいですね。」

「企てられたねぇ……って事は、やっぱりそう言う事?」

 

続けてとんできた質問にも曖昧にだが要点は抑えて返すと、言いたい事を大体理解できた楯無はしたり顔で一夏を見た。

 

「察して頂けたようで、では失礼します。」

「気を付けてお帰り下さいね。」

「また明日ね一夏君。」

 

一夏が生徒会室を退出すると楯無と虚の二人だけになった、そうなると一夏が加入する前の生徒会の日常風景に戻ったように見えるのは、彼を役員に加えてからここに流れる空気が少なからず変化していたからだと二人は気付いていた。

 

「さてと織斑君も帰ったことだし、ちょっと休憩しない虚ちゃん。」

「そうですね……キリもいいですし、そうしましょう。」

 

一年生の一夏に比べて二人の仕事量は多い、その為一夏が帰宅した後も二人は暫く残って書類を片づける、だがその前に挟む小休止は二人の日課に為りつつあった。

 

「それにしても、今年の一年生は賑やかねぇ。」

 

楯無は愛用の湯飲みを両手で包み、虚の淹れた湯気の出る緑茶を啜りながら一夏との会話を思い出してそう呟いた。

 

「えぇ、一学期の時点でも十分多い位でしたからね、二学期からの編入生も合わせると過去最多人数だそうです。」

 

話題は今年集まった一年生の専用機持ちの生徒たちの事だ、本来なら一学年に一人か二人位が通例だった専用機持ちが今年に限っては16名それも所属国家もバラバラだと言う、これだけ集まった要因は若しかしなくとも一夏であった。

 

「一夏君かぁ~…彼も不思議な子よね、彼に係わった生徒でもっと限定すると代表候補生レベルの子は通常では信じられない位に早く成長してる、先の文化祭で二次移行した鈴ちゃん然りラウラちゃん然り在学中それもたった数か月でここまでの力をつけた、これって一夏君の影響なのかしらね?」

 

本来なら二次移行に至るのは卒業後がざらなのだが、一夏本人を始め彼と日常的に親しくしていた生徒の内二人もその段階に至っているのは自然ではなかった、勿論編入生たちがIS学園の門戸を叩いたのはラウラと鈴音が二次移行する前の話ではあるが、それ以前から異常な速さで成長し続けている彼女たちの話は各国のIS開発に携わっていた関係者の間では話題になっていた。

 

「彼の元に居れば普通で起こり得ない事が起きる、学年別トーナメントやタッグ戦それから臨海学校と最近だと文化祭、今年は大きなイベントが起きる度に何かしらアクシデントがあったけど結果それが一年生の成長に繋がった……。」

 

一学期の間に起きた事件だけでも十分大事だったが、警備を強化していた筈の文化祭でも襲撃はあった。

 

「四度ある事は五度……あ~ぁ、後処理面倒くさそうだな~。」

 

本来なら楽しみに待って居られるイベントも、騒乱の種を孕んでいると思うと如何にも乗り気になれない。

 

「気にしても仕方ありませんよお嬢様、それより今は目の前の仕事に集中しましょう。」

 

先の事を案じる楯無を宥めつつ、今片付けなけらばならない書類に目を向けさせる虚。

 

「そうよね……はぁ、仕方ない今はこの書類と格闘することで気を紛らわせますか虚ちゃん。」

「はい、じゃあ私は織斑君の書類の確認をしてますね。」

 

こうしてIS学園生徒会の日常は過ぎていく、例えこれからどんな騒乱が待ち構えていようとこの風景だけは変わる事は無い。

 




遅くなりました。
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