そして一夏の最初の恋の記憶のお話です
セシリア・オルコットとの決闘が決定した日の放課後一夏は箒と教室に残っていた。
「驚いた!一夏お前があれ程の啖呵を切るとは。」
「そうか?武芸の道を志すものなら当然だと思うが。」
話の内容的にクラスの女子に言ったあのセリフの事の様だ。
「それにしてもよくあの状況で決闘の誘いを断らなかったな。」
「師匠の教えだ。」
「武闘家として最も犯してはいけない決まりが二つある、一つは試合や決闘を申し込まれたら決して断ったり逃げてはいけない事だ。何故なら試合や決闘は相手が己と同格で認めた証でありそれから逃げることは負けを意味する事以上に同格と認めてくれた相手に失礼であるからだ。」
「成る程、その話から察するにオルコットの決闘を受けたのはセシリアの信頼に応えるためか。」
「あぁ。」
「それで二つ目はなんだ?」
「それは。」
「あぁ!良かったまだ残ってたんですね。」
一夏が二つ目を語ろとした時、教室に真耶が入って来る。
どうやら一夏を探していたようだ。
「どうしたんですか?」
「はい。織斑君の学生寮の部屋番号を伝えるを忘れてました。」
「うん?確か俺の部屋はまだ決まってないから暫く自宅通学のはずでは?」
そう全寮制であるIS学園ではあるが異例の男子生徒を受け入れるに当たって学生寮の部屋組が決まってなかったのである。
その為か暫く自宅からの通学が言い渡されていた。
「えっとそれは…。」
「上からの要望だ。」
そう答えたのは千冬である。
「上と言うと…政府からの依頼ですか。」
「そう言う事だ。理解が早くて助かる。」
「いえ。発覚したばかりの頃に色々ありましたから。」
「そうだったな。」
二人の間に沈黙が流れた。
宗介が手を回してくれなかったら今頃どうなっていたか考えるとあの人には頭が上がらないと二人は考えた。
「まぁ、そう言う訳だ。山田先生説明を。」
「あぁ!はい。えっと織斑君には暫くルームシェアをしてもらいます。」
「という事は、誰かとの相部屋ですね。何か、同居人について情報は教えて貰えませんか?」
「へぇ!いや、それは流石に何か問題が起きたら困りますし。」
「そうですか。いえ、相手に不都合な事や気に障る事などないかなど事前に知っておきたかったのですが。」
「あぁ!そう言う。」
「まぁ、無理ならそれでも構いません。」
「すいません。協力できず。」
「山田先生。お早く。」
「はい。それと大浴場が解放されていますが今の段階では織斑君は利用できません。」
「まぁ、当然でしょうね。しかし残念だ…。」
「えぇ!それはいくら何でも!」
「あぁ、すいません。誤解させたようで俺はただ湯に浸かる風呂が好きなんです。」
「一日の鍛錬の疲れが湯に溶けていくのが心地よくて。」
「分かります!私も特に肩が凝ってる時とか~って!何言わせてるんですか!」
「はて?俺が何か?」
「山田先生。今のは完全に自爆です。」
「一夏…。お前気付いて無いのか?」
「だから、何がだ?」
「いや、気付いて無いならいい…。」
一夏はやっぱり一夏である。
「部屋にはシャワーがある普段はそれで済ませろ。」
「分かりました。お手数をお掛けしました。」
「後、荷物の事だが。こっちで纏めて置いた。お前の私物が以外と少なくて助かった。」
「トレーニング道具は?」
「入ってるはずだ。」
「そうですか。」
「じゃあこれから会議があるので失礼する。」
それから箒と別れた一夏は一路学生寮へ向かった。
「ここか、まるでホテルだな。」
そこはホテルの様な外見の建物だった。
中に入れば益々国際ホテルと云った内装である。
自分の部屋の前まで来て扉をノックする。
「はい。」
「失礼本日から暫くの間部屋を共にする織斑一夏と言う者だ。今は中に入っていいだろうか。」
「へぇ!いっ一夏!」
「その声、箒か?」
「あぁ。どうやら同室の人間はお前だったらしいな。」
「その様だ、それで今は入っていいか?」
「す、少し待ってくれ!」
「どの位だ。それまで外を寮の中を見て回る。」
「十分いや二十分だけ待っていてくれ。」
「分かった。二十分だな。」
そう返ってきた返事を後に一夏は、部屋の前から離れた。
少し歩いたがやはりホテルにしか見えない内装はあの島での日常を思い出させてくれた。
「あれ?おりむ~だ~!お~い!おりむ~!」
恐らく自分の事を指しているであろうあだ名と少し間の抜けた声が聞こえる。
声の方に顔を向ければ癒しの言葉が服を着て歩いて様な雰囲気の少女と目が合った。
「君は確か布仏さん。」
「えへへ。自己紹介聞いてたんだ~。」
「あぁ。一様聴覚だけは外に向けていたのでな。」
「じゃ~あ、なんでやまちゃん先生に声を掛けられた時に直ぐ答えられなかったの。」
「うん。遠くの音を拾おうして近くの音が聞き取れていなかった。」
一夏が瞑想すると色々出来るように成るらしい。
「そっか~。ん~?お~い!二人とも~どうしてそんな遠くにいるの~。」
そう言う布仏の視線を追っていくとあちらも少し怯えた表情でこちらを見た。
『やはり、怖がらせてしまったか。』
そう己のさっきの言動に軽く後悔すると。
そちらに歩いて行った。
「あっ!あの織斑君さっきはその…ごめんなさい!」
「私達その全然そう言うの分からなくて。」
慌てて謝ってくる二人に。
「別にいいよ。俺こそ、怖がらせてしまったみたいだね。すまない。」
「そんな!悪いのは私達だし。」
「じゃ~あ、この話はここでお仕舞いでいいよね~。」
どうやら後から来た布仏さんが丸く収めてしまった様だ。
それから話題は変わりセシリアへの一夏の対応の話になった。
「それにしてもすごいよね!織斑君あのオルコットさんを丸め込んじゃうんだもん!」
「それ程じゃない。冷静に判断できれば誰でもできる。」
「そんな事ないよ!少なくとも私は無理かな~。」
「それにして最後でまさか決闘なんて言い出すんだもん!ビックリしちゃったよ!」
「ねぇ?織斑君なんであそこで断らなかったの?」
「武闘家の性だ。受けた決闘は受けないと武闘家は名乗れない。」
「へぇ~!おりむ~武闘家なんだ~。じゃあ試合とかするの~。」
「あぁ!自分の義を曲げない為に挑戦されたら受けるようにしている。」
「そっか~。ねぇその信念てどこから来るの~。」
「信念か。そうだなあの時あの人から貰ったんだよな。」
一夏は思い出していた自分が信念を持つきっかけをそして自分が生まれて初めて知った恋を。
そうあれは一夏が小学4年生の事だった。
その日一夏は校長室呼ばれていた、愛子との事を揶揄われつい同級生の男の子に習い始めたばかりの拳法の技を使ってしまったのだ。
当然千冬が呼ばれ愛子も同席していた。
相手の親は立腹していたが喧嘩の原因が相手の執拗な揶揄いだったこともあり厳重注意で返された。
その帰り何故こんな事をしたのか問いただしていた千冬に愛子が二人にして欲しいと頼まれ渋々了承してその場を離れた。
「一夏君ちょっとお話しよっか。」
黙ったまま俯く一夏にそれでも愛子は話しかける。
「相手の子の技掛けちゃっただってね。どうだったスッキリした?それともモヤッとした?」
「もやっとした。いつもみたいに全然楽しくなかった。」
「そっか。それはね一夏君の心がやりたくないって泣いてるんだよ。」
「でもあいつやめろって言っても止めなくそれで…。」
「一夏君。正義に見方はいつものどうして悪者向かって行くのかな?」
「悪者が皆をいじめるから…。」
「そうだよね。今日の相手の子は悪者だよねじゃあ退治したらスっきりした?」
「うんん。」
そう言って答えた一夏の横で近くにあった木の枝で地面に字を書く愛子。
「正義って文字はね、義を正すって書くの。義は信念を現している。」
「信念?」
「そう!信念、心の中心で決してぶれず曲がらない思い一夏君や私それに千冬ちゃんだって持ってる心も柱。」
「心の柱?」
「うん。それを心の柱を正し自分の心を曲げない思いそれが信念。」
「じゃあ。その信念を曲げないことが正義なんだね。」
「ピンポン!一夏君正解!」
「自分の心に真っ直ぐでいる事自分の思いを曲げない事とっても難しい事だけどそれができる人が正義の味方。」
「俺、愛子姉さんの事好きなんだろって揶揄われて恥ずかしくて!」
一夏は、涙が溢れ出して止められなかった。
「うんうん。恥ずかしかったよね。私だって好きだけど秘密にしてる物誰かに大きな声で言われたら恥ずかしいもん。」
「でもちゃんと言えたね偉いぞ~!」
「愛子姉さん。」(ぐず)
「じゃあ今度相手の子に謝ってこよう~。」
「うん!」
「ちゃんと一人で謝るんだよ。」
「分かってる。」
「良し!じゃあ指切りしよっか。」
「「指切りげんまん 嘘ついたら ハリセンボンの~ます 指切った!」」
その後見せた愛子の笑顔で全て悟った一夏はこれが恋だと知った。
次の日同級生に皆の前で謝ると向こうも謝ってくれたのでこの問題は円満に終わった。
『そうあの日からだ。俺の初恋が始まったのは。』
あの日の愛子の笑顔が今の自分に信念をくれた。
決して揺らがぬ心の柱を。
その後予定の時間になっても帰ってこない一夏を心配して、箒が迎えに来た。
一緒に居た3人と一夏を見て何があったか聞いた箒は寂しそうな顔を一瞬見せたがすぐに戻り。
一夏を現実に戻して。
そのまま夕食にいい時間なので五人で食堂へ向かう。
「それにしてもあのオルコットとか言うの本当に信用できるのだろうか?」
「問題ない。あの者からは強い信念を感じた、恐らく今は歪んだ思想を押し付けられ悪い夢を見ているのだろう。」
「決闘。頑張って!織斑君!」
「私達応援してるから!」
「あぁ。期待に添えるよう頑張ろう。それにあの真っ直ぐな瞳の持ち主を放ってはおけん。」
そうして一日は過ぎていった。
翌朝の早朝ミスリルの専有するドッグの中で一夏は自信の専用機の最終調整を行っていた。
アルビノボン太くんを装着し拳法の形を通して行う作業は最後の補助AIに一夏自身の身体能力値と親和性を持たせる工程である。
そして全て作業が終了した。
「ユーザー一夏の全データを収集しました。これより補助プログラムの立ち上げを開始します。………補助プログラムぐの立ち上げを完了。ユーザー織斑一夏 初めまして各種補助を担当するアルビノです よろしくお願いします」
遂に完成したアルビノボン太くん。クラス代表戦の準備は着々進みつつある。
箒「一夏…お前は。」
次回VSセシリア戦です!
何事もなくおわればいいな!
しつこい言われそうですが。
感想などありましたどうぞよろしくお願いします。