我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者   作:亜亜亜 無常也 (d16)

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入学編
第一節:いつもの朝


 ふと意識が浮上する。

 そして……すぐにこれは夢だとわかる。

 

「(これ、現実、じゃない。前、経験ある。リッカ、夢)」

 

 そこにいたのは形容し難き物。

 

 彼から聞いた事がある。

 魔神柱と呼ばれる物。

 その内の1つ。

 

 その名は……確か【廃棄孔アンドロマリウス】。

 ソロモン王の72柱の序列第七十二位の悪魔と同様の名。

 

 だが、姿は悪魔とは似ても似つかぬ異形。

 ベージュ色の巨大な柱。

 丸い赤い目を幾つも持つ。

 

「起動せよ。起動せよ」

 

「廃棄孔を司る九柱。即ち、」

 

「ムルムル。グレモリー。オセ。アミー」

 

「ベリアル。デカラビア。セーレ。ダンタリオン」

 

 

 言葉を紡ぐ。

 呼ぶのはソロモン72柱の五十四位と五十六位から五十八位、六十八位から七十一位。

 

 

「我ら九柱、欠落を埋めるもの」

 

「我ら九柱、不和を起こすもの」

 

「無念なりや、無常なりや」

 

「我ら‟七十二柱の魔神”を以てして、」

 

「この構造を閉じる事叶わず……!」

 

 ここのいるのは想定外なのか、通信先の声……男性が慌てる。

 

『八つめの拠点だって!?なんて事だ、ここの存在は想定外だ!』

 

『我々だけで、制圧しなくてはならない……!』

 

 その言葉に彼の傍らにいる巨大な盾を持った少女の顔が歪む。

 

「そんな……、マスターにこれ以上の負担は……」

 

 絶望する男性と少女。

 

「そうだ。滅びるがいい最後のマスターよ」

 

「貴様が玉座に辿り着くことはない」

 

「あらゆるものがここでは無価値となった」

 

「あらゆるものが不要だと廃棄された」

 

「それがこの領域だ」

 

 それを嘲笑うかのように言葉を続けるアンドロマリウス。

 

「誰一人として人間(おまえたち)を助けない死の島だ」

 

「膝を折るがいい、顔を伏せるいい」

 

「絶望すら、する必要はない」

 

 だが1人だけ絶望していない者がいた。

 

 黒髪に、黄色人種系の肌。青い眼に、普通の顔立ちの少年。

 ……今とは外見はまるで違うアイツの姿。

 

 少年は膝を追っていない、顔を伏せてもいない。

 その顔は……笑っていた。

 

「大丈夫だよマシュ、大丈夫だドクター」

『「え……」』

「オレ達が……オレが繋いだ縁は”7つの特異点”だけじゃない」

 

 ”大切な後輩”と”もうどこにもいない彼”に声を掛ける。

 そして後ろを向く。

 

「そうだろう?なあ?」

 

 その声に。

 

「ハ。ハハハ。クハハハハハハハハハハ!」

 

 高笑いが答えた。

 

 何かが高速で迫る。

 あまりに動きが早く、はっきりとは見えないが人型をしている。

 その何者かは蒼黒い炎をビームのようにして放ち、アンドロマリウスに攻撃を加える。

 暫く攻撃を加えると、少年の傍らに降り立つ。

 動きが止まったおかげで初めてその姿がわかる。

 ポークパイハットを被った色白の肌をした青年だった。

 

「笑わせるな、廃棄の末に絶望すら忘れた魔神ども! 貴様らの同類になぞ、その男がなるとでも!」

 

 笑いながらその青年は続ける。

 

「そうだ!」

 

「この世の果てとも言うべき末世、祈るべき神さえいない事象の地平!」

 

「確かに此処は何人も希望を求めぬ流刑の地」

 

「人々より忘れ去られた人理の外だ」

 

 アンドロマリウスの意見を肯定する。

 

「だが―――」

 

「だが! 俺を呼んだな!」

 

「ならば俺は虎の如く時空を駆けるのみ! 」

 

「我が名は復讐者、巌窟王エドモン・ダンテス!」

 

「恩讐の彼方より、我が共犯者を笑いにきたぞ!」

 

「クハハハハハハハハハハ!」

 

 再びの高笑い。

 復讐者(アヴェンジャー)の英霊が……且つて共に七日間の悪夢を生き抜き、脱獄を果たした共犯者を救済する為に現れた!

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

「うにゅう……」

 

 大きなダブルベットから起き上がる。

 目覚めは悪くないのだが、はっきりとした夢を見ていたので、あまり休んだ気がしない。

 だが、悪い夢ではなかったので、まだいい。

 これが悪い夢だと最悪な気分になる。

 

「(ウルク、セイレム、ハロウィン、ぐだぐだ、比べる、まだマシ)」

 

 且つて見た記憶で酷い物や、カオスとしか言いようのない物と比べればまだマシな方だった。

 

 サーヴァントと霊的に繋がっているマスターは、時として契約したサーヴァントの記憶を夢の中で体験する。

 よくある事と、自分のサーヴァントである彼はそう言って良く笑っていた。

 

「ふあ……」

 

 欠伸を噛み殺しながら、隣を見る。

 そこには自分のサーヴァントである少年が眠っていた。

 

「……ここまで、変わるなんて」

 

 ”生前”の彼は日本人らしい姿だった。

 黒髪に白めの肌。眼は青い。

 それが今は真逆。

 白髪に褐色の肌。眼は変わらない。

 こうなったのは色々な原因がある。

 

「……今、何時?」

 

 時計を見る。

 起きなければいけない時間をとっくに過ぎていた。

 

 これは酷い!

 by天空の神ホルスの化身。

 

「リッカ!起きて!今日、学校!入学式!」

 

 そう言って少女は傍らで眠る少年を揺さぶった。

 

「むにゃむにゃ……」

 

 だが、起きない。

 

「遅れたら、マズイ!」

 

「リッカ!リッカ!」

 

「■■■■◆!!」

 

 クラス名で呼んでもダメ。

 一向に起きない。

 

「藤丸立華!!!起きて!!!」

 

 声を更に大きくして、本名で呼ぶと。

 

「んんん……」

 

 緩々と瞼が動き、眼が空く。

 青い空のような眼が見えた。

 

「おはよう、……マシュ」

「違う!わたし、マシュ、じゃない!ブリュンヒルデ、でもない!」

「……冗談だよ。おはよう。レイナ。我がマスター」

 

 そう言ってリッカ……藤丸立華が笑う。

 その笑みに少女……鷹山レイナもつられて笑う。

 

「じゃあ学校行くか!」

「うん!」

「でもその前に……」

「?」

「シャワー浴びて、朝食食べてから行こう」

 

 自分達の格好を見てみる。

 昨日は行為の後、そのまま寝たので何も着ていなかった。

 2人共生まれたままの姿であった。

 

「……うん」

 

 少し恥ずかしそうに頷く少女であった。

 羞恥心はこれでもあるのだ。

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