我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者 作:亜亜亜 無常也 (d16)
全員唖然呆然。
当たり前だ。
なにせ実戦でプロレスの決まり手使うとは。
しかも魔法を併用してまで使ったのだ。
沈黙が場を支配する。
そんな中。
立華が立会人を見る。
「先輩。結果は?」
「あ、ああ。勝者藤m」
そう言いかけた渡辺だったが。
ふと我に返り。
「ちょっと待て!生きているのか?」
どう見てもアレはヤバイ一撃。
というかさっきからレイナが動いていない。
そんな中。
「生きてる。殺さないで」
声が響く。
頭から落下して、そのままの態勢であったレイナが起き上がる。
頭をさすりながら、軽く鼻を押さえる。
どうやら血が出ているらしい。
「痛い。わたし、傷物」
「お前だって遠慮なしに殴って来ただろうが」
「わたし、女の子」
「言っておくが、総合ダメージオレの方が大きいからな?」
そう言って立華は服をまくる。
生身の肌が現れる。
どこぞの「スパルタ」のトレーニングで適度に引き締まっている。
……それを見ていた数人が顔を赤らめる。
そこには痣が結構あった。
「浸透勁で殴りやがって。……お前は空気でダメージ減らしていたけどさ」
「わたし、か弱い、女の子」
「……まあそう言う事にしておこう」
星座になったあの人や、その弟子とも手加減ありで殴り合えている時点で、か弱いのか微妙である。
そんな2人に七草が声を掛ける。
「色んな意味で凄かったわ。でも……立華くん」
「……はい?」
「女の子の顔面殴るのは良くないと思うんだけど」
「オレは老若男女差別しないので」
「「「「「「そう言う問題!?」」」」」」
一同のツッコミが重なった。
その後、解散となった。
◆◆◆
その日の夜。
達也と深雪の姿は九重寺にあった。
「こんばんわ。2人共」
出迎える八雲。
そんな彼に達也は尋ねる。
「それで師匠。彼と彼女について何かわかりましたか?」
「
曰く。
あの2人は両親同士が知り合いであったらしく、親が両方共に亡くなった後に、2人で知り合いの所を転々としていたそうだ。
その後、2年前位から一高傍にある家に2人暮らしているそうだ。
「僕は言えるのはこれくらいかな?」
そう言って締めくくる八雲。
なのだが。
達也は続ける。
「今日、俺は模擬戦をしましてね」
「ああ。知っているよ?数秒で勝ったんだろう?おめでとう」
「……なぜ詳細に知っているかは知りませんけど、その後、あの2人も模擬戦をしたんです」
「……」
「あれはどう見ても素人じゃない」
「そして、今”言える”と言いましたね?」
「”知っている”ではなく”言える”」
そう言って八雲を見る。
「何か知っているんじゃないですか?」
達也の視線に対して目を逸らさない八雲。
だったが。
「はあ」
溜息をつき、視線を外す。
「まったく。敵わないね達也くんには」
「では知っているのですか?」
「完全にじゃないよ?ある程度の事は知っている。でも話せない」
「……口止めでもされているのですか?」
その言葉に苦笑いをする八雲。
「似たような物だけどね」
「そうだね。少し長くなるけど、話せる範囲で話そうか」
「奥に上がるといい」
そういう訳で庫裏の中に座る3人。
「彼らが住んでいる家」
「元々あった豪邸を改装した物」
「見た目は普通だったんだけどね」
「上手く隠蔽されていたんだ。……多分ほとんどは気づかない」
「そして、結界が張られてたりしてね、奇妙に思ったんだ」
「だから侵入しようとしたんだけど……」
「できなかった」
「「!?」」
驚く2人。
この2人は八雲の忍術の腕前を良く知っている。
「今果心」とも呼ばれるその腕前を。
だが、その彼が侵入できない?
そんな馬鹿な。
「だから日を改め、装備を整えて、侵入したんだ」
「何とか侵入は出来たんだけど、侵入者迎撃用の諸々が発動してね」
「それは掻い潜れたんだけど……」
八雲は言わなかったが、その時襲い掛かって来た物は色々だった。
ゴーレムや魔獣、機械人形、エトセトラエトセトラが襲い掛かって来た。
それはどうにかなったのだが。
最大の鬼門があった。
「姿の見えない”獣”に襲われてね、死にかけた」
「!?」
「……獣ですか?」
「うん。唸り声からイヌ科の動物。……後で調べて分かったんだけど、鳴き声は”ハイイロオオカミ”に似ていた」
「でも、まるで”透明人間”のように姿が見えないし、大きさ的にもおかしかった」
「僕も戦ったんだけど、防戦一方でね、もう死ぬんだなって思ったんだ」
「……人間五十年。って織田信長は言ったらしいけどね」
「でも。死ななかった」
「助けてくれたんだ」
「……誰がでしょうか?」
「あの家にいる別の存在かな?とは言ってもあの時は死にかけてたし、はっきりとは覚えていないんだけど」
何でも2人の人物が助けてくれたらしい。
『この御方は「今果心」と呼ばれるお方。死ぬには惜しいと思われまする』
露出の多い忍び装束を纏った少女。
『この者、未だ死すべき時に在らず』
1人は髑髏の仮面と胸部に髑髏をあしらった装飾のある甲冑を身に纏った大男。
「この2人が助けてくれたんだ」
この事を八雲は覚えている。
意識が薄れていたが、しっかりと覚えている。