我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者 作:亜亜亜 無常也 (d16)
その話を聞いて唖然とする2人。
「……先生。それは本当の話なのでしょうか?」
深雪が疑問を呈するのも無理なかった。
今の時代の話にしては現実感がない。
それに八雲は軽く笑い。
「ああ。本当さ。……別に信じてくれなくてもいいよ?」
「すいません。そういう訳では……」
「師匠」
2人の会話に達也が割り込む。
そして、尋ねる。
「それで、貴方を殺しかけた”獣”と助けてくれた”2人の人物”は何者なのですか?」
「化成体の一種って立華くんは言っていたよ?」
「……会った事があるのですか!」
「そうじゃなきゃ、僕は今頃この世にいないよ」
その後、他にも何人か来て(これも化成体の一種との事)、八雲の処遇を話し合ったらしい。
因みにほとんどが殺すか、記憶を消すべきという意見だったそうだ。
そんな感じで話し合っていたそうだ。
そんな中ある人が言ったそうだ。
『マスターの意見を聞くべきじゃねえの?』
そう言ったのは上半身裸に牡丹と龍の刺青を身体に彫った男だった。
そういう訳で、八雲は簡単な応急処置がされ、奥に通されたそうだ。
そこで彼に会った。
『えっと初めまして。九重八雲さんでいいんだよね』
そう言って彼を迎えたのは浅黒い肌に、白い髪の毛の少年だった。
……さっきまで眠っていたのか、パジャマ姿にナイトキャップを付けている。
因みにレイナはこの時まだ夢の中。
彼は。
『まず傷を治さないと』
そう言って出したのは杖だった。
三日月を模したよう長い杖。
それを振るうと一瞬で八雲の傷が治る。
『じゃあ話合おう。でも』
『そのまんま放免は無理だよ?』
『貴方はパンドラの箱を開けたんだから』
「そう言う訳で彼との話し合いの結果、僕はいくつかの約束を結んで放免となった」
「記憶消去や殺されることはなかった」
そう言う八雲。
「つまりその約束に彼の情報を言わないと言うのも含まれているのですか?」
「……まあ似たような物かな」
そう言う八雲。
……正確に言えば
そう言って改めて2人に告げる
「とりあえず僕から言える事は2つ」
「1つめ。彼の魔法は僕らが使う魔法とは一線を画している」
「”君の目”にはどう見えるかはわからないけど、深くは詮索しない方がいい」
「2つめ。彼は自分達からは何もしない。平和に生きたいそうだからね」
「でも、手を出されたら容赦はない。だから手を出すべきじゃない」
そう言って八雲は話を締めくくる。
「わかりました。ありがとうございます」
何も言えなくなってしまった深雪を軽く抱き寄せ、達也が八雲に礼を言う。
「別にいいよ。なにせ君達2人が戦ったら一体どうなるか想像が付かないからね」
そう言って笑う八雲。
だが、眼は笑ってなかった。
◆◆◆
そんな話があって次の日。
「おはようさん」
「おはよ」
兄妹は今日も立華とレイナに遭遇。
流石に昨日の八雲の話の後に会うと若干気まずい。
が、この2人は年齢に見合わぬ濃い人生を送って来た。
だからこそ、表面上は普通に挨拶を返す。
「おはよう」
「おはようございます」
だが、それに立華は何か気づいた顔になる。
軽くレイナに目配せすると頷く。
流石ツーカーの仲。
「なあ、達也、深雪。少し時間貰えるか?」
「「……え」」
そんな訳で彼ら4人が訪れたのは空き教室。
レイナが遮音を施し、立華は人払いを施す。
そして、改めて2人を見る。
「「……」」
警戒する2人。
それに立華は笑いかける。
「八雲さんから聞いてるだろう?」
「「!?」」
「オレは……オレ
「ハゲ、昨日、連絡くれた。だから、知ってる」
「「は、ハゲ!?」」
あまりの呼び名に絶句する兄妹。
「レイナ、凄く失礼」
「うん」
「……それはともかく」
そう言って立華は達也と深雪を見る。
「人はさ、誰だって言えない事がある」
「お前ら兄妹にだってあるだろう?」
そう言うと悲しそうに笑う。
「そして」
「こちらが何もしていないのに殴って来る奴は必ずいる」
「殴って来るだけなら、まだ……まあ半殺しか、四分の三殺しで済ませる」
「リッカ、リッカ。死んでる。もうそれほとんど死んでる」
レイナの茶々を無視して続ける。
「でも」
その時達也は気づく。
「こっちからは何もしない事いい事に」
彼の言葉に怒りと悲しみが混ざっている事を。
「全部燃やし尽くす奴がいる。全てを台無しにする奴がいる」
立華は覚えている。
全てを燃やし尽くした「獣」を。
「彼の行い」の全てを台無しにした「馬鹿野郎」を。
「だから、色々準備したり、戦力を整えたりはしてる」
「そして、それがお前達に向く事はない。敵対しない限りね」
そう言うと穏やかな表情に戻る。
「だからさ、達也、深雪」
「これからどうする?」
「……どうするとは?」
「うん?選択肢は3つ」
「どちらかが死ぬまで殺し合う」
「お互い不干渉」
「友達や仲間になる」
「さあ、どうする?」
不敵な笑みを浮かべる立華にレイナがしがみついた。
その言葉に達也は。
「……1つ聞かせてくれ?」
「何だ」
「お前は俺達の事情も知っているのか?」
「少しは。もっと知る事はできるけど、しない。礼儀に反するし」
彼女の所持している【O&C】を使えば、弱みも握れるがそれは流石にしない。
その答えに達也は。
やっと笑みを見せ。
「そうか。じゃあ友人関係継続で頼む。深雪もそれでいいな?」
「はい!お兄様」
「了解した。レイナ。それでいいか?」
「うん」
「じゃあ改めて」
手を差し出す立華。
レイナは達也と深雪の手を掴みその手に重ねる。
4人の握手だった。
「よろしく」
「ああ」
「こちらこそよろしくお願いします!」
この日この4人は友人となった。
これがこの兄妹の運命を色々左右する事はこの時点で2人は気づかなかった。
O&C
アサシン「■■■・■■■■・■■■■■」の宝具。
敵の秘密や弱みを暴いて脅迫する能力。
O所長曰く「陰険な宝具」。
立華は滅多に使わない。ただし使う時は容赦せず使う。