我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者 作:亜亜亜 無常也 (d16)
その後、3人で七草と渡辺、そして、部活連の会頭である十文字克人に事情を説明。
そして、渡辺が彼らに言う。
「ご苦労だった。もう帰っていいぞ」
そんな訳でこの日は帰宅。
エリカやレオ達と合流する。
待たせたお詫びに達也が何かご馳走すると言ったのだが。
「それならウチ来る?この近くだし、丁度いい物があるし」
「「「「「「?」」」」」」
レイナ以外の全員の頭上に疑問符が浮かぶ。
一方レイナだけは微笑んでいた。
そんな訳でやってきのは立華とレイナの2人暮らし……と言う事になっている家。
豪華な屋敷で、庭も広い。
「すげえな」
「広いですね……」
「まあね」
レオと美月がコメントするのも無理はない。
だがエリカは庭にある道場のような建物に目を止める。
「ねえ、あの建物って?」
「鍛錬用、剣や槍、素手、鍛錬」
エリカの疑問にレイナが答える。
それを見て彼女がニヤリと笑ったのにはレイナは気づいたが、特に何も言わなかった。
そんな訳で客間に通された彼ら。
立華は何か食べ物を取りに行ったので、その間彼らは話をしていた。
魔法を無効化した達也の技術、そしてレイナが使った魔法について。
「レイナのアレは偏倚解放(へんいかいほう)か?」
「流石、お兄様」
「……」
「お兄様?どういう事でしょうか?」
「誤解だ!?レイナが勝手に呼んでいるだけだからな」
そんな会話をしていると。
「レイナは気流の操作が得意分野だからな」
そう言って立華が戻って来た。
手にはアップルパイの載ったトレーを持っている。
テーブルに置き、切り分ける。
「もしかして……これ手作り?」
「ああ。あくまでも真似事だけどね」
深雪の疑問に答える立華。
試しに一口食べてみると、とても美味しい。
「へえ。料理もするんだ?」
「気が向いた時だけね?」
そう言って自分の分を食べ始める立華。
その後、アップルパイの感想や学校行事についての話をした。
◆◆◆
それで今日は解散となるはずだったのだが。
「準備はいい?」
「……ああ」
立華とエリカは竹刀を持って向かい合っていた。
きっかけは客間を出た時にエリカが提案してきたのだ。
『試合をしてみない?』
と。
そういう訳で彼ら立ち合いの元、簡単な試合をする事になったのだ。
「じゃあ魔法抜きで」
「うん。それでいいよ」
向かい合う両者。
そして。
「オホン」
レイナが立会人となる。
「勝負、始め!」
その言葉と同時に飛び出すエリカ。
それに対し立華は何と剣を投擲。
一瞬それに動揺するもそれをねじ伏せ、剣を払うエリカ。
が、それは隙となる。
そして。
「勝者、リッカ」
エリカの首には竹刀が付きつけられていた。
しかもエリカの持っていた竹刀。
観戦者がその結果に唖然とする中。
達也が口を開く。
「立華」
「うん?」
「今のは無刀取りか?」
「流石、お兄様」
「それはやめろ……」
げんなりとする達也。
そんな彼に疑問を投げかけたのは深雪だった。
「お兄様。無刀取りと言うのは……」
「ああ」
「上泉信綱が考案し、柳生石舟斎が解明した奥義」
「柳生宗矩や十兵衛も使えたと言われてる奥義だ」
そう説明する達也。
その場の全員が納得する。
「でもまさか立華が使えるとはな……」
「いやいや、まだ使えるうちに入らないよ」
「……どういう事?」
黙り込んでいたエリカの問いに立華が答える。
「いやあ、剣教えてくれた人が使っていたんだけど」
「あの人は相手が余程の達人じゃなきゃ、確実に成功させる」
「でも俺は成功率低くてね……」
「今回は動揺させて、何とか上手くいかせたけど」
「ぶっちゃけ7割位は失敗する」
「いやあ、危なかった」
そう言ってケラケラ笑う立華。
それに唖然とする一同。
そこへ。
「リッカ」
「うん?」
レイナが声を掛ける。
「エリカは?」
「……あ」
レイナの言葉にエリカの様子を伺う立華。
彼女は悔しさのせいか、顔が歪んでいた。
「ご、ごめんね」
「……許さない」
「……じゃあ今度何か奢るから」
「……1回じゃ嫌」
「じゃあ3回」
「そ。じゃあ交渉成立!」
そう言うとエリカの表情が戻る。
「エ、エリカちゃん……」
それに呆れる美月。
「そりゃあまあ、悔しいけどね。次は負けないわよ」
そういうエリカに立華は笑う。
「うん。それでいい」
「これはまだ本当の敗北ではないからな」
「本当の敗北?」
立華の言葉にレオが聞く。
それに答える立華。
「本当の敗北は……全てを失くす事だ」
「死ぬと言う事か?」
達也の言葉に立華は苦笑する。
「自分1人だけ死ぬなら、まだいい」
「最悪なのは全て奪われることだ」
「仲間も、尊厳も」
そう言って思い出すのは契約サーヴァント達。
夫の死で、壮絶な仕打ちを受けた「勝利の女王」。
革命で一家、召使い、ペット諸共虐殺された「絶対零度の皇女」。
生きるために一揆を起こし、敗北し、全員処刑された「強欲なる奇跡の人」。
「だから強くなったら、挑んで来い」
そう言って笑う立華だった。
この日は解散となった。