我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者   作:亜亜亜 無常也 (d16)

17 / 85
第十七節:剣

 その後、3人で七草と渡辺、そして、部活連の会頭である十文字克人に事情を説明。

 そして、渡辺が彼らに言う。

 

「ご苦労だった。もう帰っていいぞ」

 

 そんな訳でこの日は帰宅。

 エリカやレオ達と合流する。

 待たせたお詫びに達也が何かご馳走すると言ったのだが。

 

「それならウチ来る?この近くだし、丁度いい物があるし」

「「「「「「?」」」」」」

 

 レイナ以外の全員の頭上に疑問符が浮かぶ。

 一方レイナだけは微笑んでいた。

 

 そんな訳でやってきのは立華とレイナの2人暮らし……と言う事になっている家。

 豪華な屋敷で、庭も広い。

 

「すげえな」

「広いですね……」

「まあね」

 

 レオと美月がコメントするのも無理はない。

 だがエリカは庭にある道場のような建物に目を止める。

 

「ねえ、あの建物って?」

「鍛錬用、剣や槍、素手、鍛錬」

 

 エリカの疑問にレイナが答える。

 それを見て彼女がニヤリと笑ったのにはレイナは気づいたが、特に何も言わなかった。

 そんな訳で客間に通された彼ら。

 

 立華は何か食べ物を取りに行ったので、その間彼らは話をしていた。

 魔法を無効化した達也の技術、そしてレイナが使った魔法について。

 

「レイナのアレは偏倚解放(へんいかいほう)か?」

「流石、お兄様」

「……」

「お兄様?どういう事でしょうか?」

「誤解だ!?レイナが勝手に呼んでいるだけだからな」

 

 そんな会話をしていると。

 

「レイナは気流の操作が得意分野だからな」

 

 そう言って立華が戻って来た。

 手にはアップルパイの載ったトレーを持っている。

 テーブルに置き、切り分ける。

 

「もしかして……これ手作り?」

「ああ。あくまでも真似事だけどね」

 

 深雪の疑問に答える立華。

 試しに一口食べてみると、とても美味しい。

 

「へえ。料理もするんだ?」

「気が向いた時だけね?」

 

 そう言って自分の分を食べ始める立華。

 その後、アップルパイの感想や学校行事についての話をした。

 

 ◆◆◆

 

 それで今日は解散となるはずだったのだが。

 

「準備はいい?」

「……ああ」

 

 立華とエリカは竹刀を持って向かい合っていた。

 

 きっかけは客間を出た時にエリカが提案してきたのだ。

 

『試合をしてみない?』

 

 と。

 そういう訳で彼ら立ち合いの元、簡単な試合をする事になったのだ。

 

「じゃあ魔法抜きで」

「うん。それでいいよ」

 

 向かい合う両者。

 そして。

 

「オホン」

 

 レイナが立会人となる。

 

「勝負、始め!」

 

 その言葉と同時に飛び出すエリカ。

 それに対し立華は何と剣を投擲。

 一瞬それに動揺するもそれをねじ伏せ、剣を払うエリカ。

 が、それは隙となる。

 

 そして。

 

「勝者、リッカ」

 

 エリカの首には竹刀が付きつけられていた。

 しかもエリカの持っていた竹刀。

 

 観戦者がその結果に唖然とする中。

 達也が口を開く。

 

「立華」

「うん?」

「今のは無刀取りか?」

「流石、お兄様」

「それはやめろ……」

 

 げんなりとする達也。

 そんな彼に疑問を投げかけたのは深雪だった。

 

「お兄様。無刀取りと言うのは……」

「ああ」

 

「上泉信綱が考案し、柳生石舟斎が解明した奥義」

 

「柳生宗矩や十兵衛も使えたと言われてる奥義だ」

 

 そう説明する達也。

 その場の全員が納得する。

 

「でもまさか立華が使えるとはな……」

「いやいや、まだ使えるうちに入らないよ」

「……どういう事?」

 

 黙り込んでいたエリカの問いに立華が答える。

 

「いやあ、剣教えてくれた人が使っていたんだけど」

 

「あの人は相手が余程の達人じゃなきゃ、確実に成功させる」

 

「でも俺は成功率低くてね……」

 

「今回は動揺させて、何とか上手くいかせたけど」

 

「ぶっちゃけ7割位は失敗する」

 

「いやあ、危なかった」

 

 そう言ってケラケラ笑う立華。

 それに唖然とする一同。

 そこへ。

 

「リッカ」

「うん?」

 

 レイナが声を掛ける。

 

「エリカは?」

「……あ」

 

 レイナの言葉にエリカの様子を伺う立華。

 彼女は悔しさのせいか、顔が歪んでいた。

 

「ご、ごめんね」

「……許さない」

「……じゃあ今度何か奢るから」

「……1回じゃ嫌」

「じゃあ3回」

「そ。じゃあ交渉成立!」

 

 そう言うとエリカの表情が戻る。

 

「エ、エリカちゃん……」

 

 それに呆れる美月。

 

「そりゃあまあ、悔しいけどね。次は負けないわよ」

 

 そういうエリカに立華は笑う。

 

「うん。それでいい」

 

「これはまだ本当の敗北ではないからな」

「本当の敗北?」

 

 立華の言葉にレオが聞く。

 それに答える立華。

 

「本当の敗北は……全てを失くす事だ」

「死ぬと言う事か?」

 

 達也の言葉に立華は苦笑する。

 

「自分1人だけ死ぬなら、まだいい」

 

「最悪なのは全て奪われることだ」

 

「仲間も、尊厳も」

 

 そう言って思い出すのは契約サーヴァント達。

 

 夫の死で、壮絶な仕打ちを受けた「勝利の女王」。

 革命で一家、召使い、ペット諸共虐殺された「絶対零度の皇女」。

 生きるために一揆を起こし、敗北し、全員処刑された「強欲なる奇跡の人」。

 

「だから強くなったら、挑んで来い」

 

 そう言って笑う立華だった。

 

 この日は解散となった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。