我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者 作:亜亜亜 無常也 (d16)
大型の車が道路を走っていた。
メンバーは十文字、司波兄妹、エリカ、レオ、そして桐原だった。
彼らが向かっているのはブランシュの本拠地だった。
普通なら敵地に乗り込むと言う事で張りつめているはずなのだが。
「いいな~!桐原先輩」
「しつけえな。そんなに羨ましいならアイツから借りれば良かっただろ!?」
エリカが桐原の刀を羨ましがっていた。
彼女も剣士である。
だからこそだった。
「確かに持ってたけどさ~」
「そういえばCADじゃない刀も使ってたな」
達也が思い出す。
彼は右手に日本刀を持っていた。
「ああ。アイツCADと一緒に武器も幾つか持ってきてたらしくてな。そのうちの一本を貸してくれたんだ」
「あ~!それなら借りれば良かったあ!」
「落ち着いてエリカ」
地団太を踏む勢いのエリカ。
それを嗜める深雪。
そんな中。
「それにしても本当に剣も使えたんだな」
レオが呟いた。
結構前の皆で帰っている時に言っていたうえ、エリカとの模擬試合では無刀取りを披露していた。
だからこそ使えるとは思っていたが。
「……ああ。閲覧室の扉を一刀両断していたぞ?」
「「「「「「!?」」」」」」
全員絶句する。
あそこの扉は侵入者防止のために凄まじい硬度がある。
それを一刀両断するなど……。
「アイツ曰く、ちょっとインチキしているとか言ってたけど……」
「インチキ……」
桐原の言葉に達也は思考する。
一体何をやったのだろうかと。
そんな中。
「司波。もうすぐ着くぞ。作戦は?」
十文字が尋ねてくる。
なので達也は役割分担をする。
そして。
「レオ。頼む」
「おう!」
車に硬化魔法を駆けて中央突破した。
その後数手に分かれ、ブランシュのアジトに突入した。
◆◆◆
達也と深雪はアジトを進む。
道中襲い掛かって来た者はいたのだが。
キャスト・ジャミングは達也には効かない。
攻撃手段の銃火器はバラバラになり。
達也の魔法で身体に穴が空き、深雪の魔法で氷漬けになっていった。
奥まで進むとそこには……。
「はじめまして、司波達也くん!」
白い服に眼鏡の男がいた。
「僕がブランシュ日本支部代表の司一だ」
名乗りからするとどうやら彼がリーダーらしい。
「そうか」
どうでもよさそうに言葉を返す達也。
「……一応、投降勧告をしておこう」
そう言っているが彼はわかっていた。
「全員武器を捨て、両手を頭の後ろで組んでから跪け」
相手が応じるはずないと。
「魔法の力が全てだと思っているのかい?」
その言葉に対して、余裕の笑みを浮かべる司。
「やはり所詮学生だ」
薄笑いを浮かべた司は伊達眼鏡を空中に投げ捨て、こう言い放った。
「司波達也、我々の同士になれ!」
だが達也に変わった様子はない。
司の顔から笑みが消える。
「意識干渉型系統外魔法、
魔法が効かなかったせいなのか、司は冷静さを失っており、部下達に達也達を射殺するよう指示を出す。
だが男達が引き金を引こうとすると、手元にあった銃は部品に分解され、甲高い音をたてて床に落ちていく。
それを見た司は。
「ひぃっ!?」
叫び声を上げて逃げ出していく。
「お兄様方はあれを追ってください」
凛とした声でそう告げる。
達也は司が出て行った方へ歩き出す。
彼の背後では氷の彫像になったものが幾つも倒れていた。
司は達也を返り討ちにしようと身を潜めていた。
魔法師でもキャスト・ジャミングさえ使えば大したことはない。
そう高を括っていたのだが。
「な、何故!?」
達也には通じなかった。
あっという間に配下の武器はバラバラにされ、穴が空く。
追い詰められた司。
そこへ追い討ちをかけるように……。
「よお、司波」
壁を切り裂き桐原が現れる。
その後ろには十文字がいた。
桐原の右手には日本刀があった。
立華が貸した刀である。
刀の事が分からない人でも何か感じさせる刀だった。
(「まるで妖刀だな」)
そんな事を思う達也。
「ところでよお、こいつが?」
「ええ、主犯です」
その言葉に凄絶な笑みを浮かべる桐原。
「てめえが……」
刀を振りかぶる。
「壬生をたぶらかしやがったのか!」
そう言って刀を振りかぶる。
その刀は司の右手を切断した。
「ぎゃああああああ!!!」
叫び声を上げる司。
それを見た十文字がため息をつき。
「やり過ぎだ……」
溜息を吐いた。
暫くすると深雪とエリカ、レオもやって来た。
「深雪」
「はい」
達也の呼びかけに深雪が答える。
そして、魔法を発動させ、司の切断面を凍らせ血を止めた。
「これで一件落着かしら?」
「……そうだな」
エリカの言葉に達也が答える。
だが、彼の心中は穏やかではなかった。
(「なんだ?この胸騒ぎは……」)
その様子に深雪は気づいたのか。
「お兄様?」
「ああ、すまない。どうにも嫌なy」
最後まで続けられなかった。
「聖杯の……寄るべに……従い、この意、この理に……従…うなら……ば応えよ。誓いを……此処に」
片腕だけの司が何かを言っていた。
最初は独り言だと誰も気に留めなかったのだが。
「我は……常世…総て……の善と成る者、我……は常世……総ての悪を…敷く……者」
独り言には聞こえない。
「汝三大の……言霊を纏う七天」
これはまさか詠唱!
「不味い!止めr」
「抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」
司の懐が光った。