我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者   作:亜亜亜 無常也 (d16)

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第三節:閣下

 話をしながら、家に帰る。

 2人暮らしには広すぎる家。

 だが、色々な”物品”があるので、7、8割の部屋は埋まっていた。

 

 物品は色々だった。

 鍛冶師と文豪、神代魔術師が協力して作り上げた立華専用の宝具と言っても過言ではない剣や刀、槍等の武具。

 紳士と獅子、マハトマらが今の時代の技術を学んで、力を合わせて作ったCAD―――術式補助演算機(Casting Assistant Device)―――のような何か。

 〈道具作成〉のスキルを持ったサーヴァントが作り上げた色々なアイテムや薬。

 

 誰でも知っている文豪の新作や、作曲家の新曲といった、使い道があまりないのもあれば。

 あらゆる病気を治す薬や、不老不死になる薬、部位欠損すら治す薬まである。

 物によっては一部の人間が全財産を投げ捨てでも、犯罪行為に走ってでも欲しがる物が多々あった。

 

 そのため、この家には色々細工がしてある。

 

 彼が宝具を使い、一時的に召喚した様々な〈陣地作成〉のスキルを持つ魔術師(キャスター)のサーヴァント達が協力して、現代最高峰の魔法師の侵入すら阻む強固な陣を作り上げた。

 

 見た目は「家」であるが、実質「神殿」兼「要塞」になっている。

 対軍、対城、対国、対都市クラスの宝具の一撃すら耐える外側。

 庭には侵入者撃退用のゴーレムが、庭の石に紛れて設置されている。

 

 空間が拡張され、中はまさに「異界」となっている内側。

 数百の結界と数えきれないほどの大量の呪詛の罠。

 悪霊や魔獣が昼夜問わず屋内にいる。

 更に立華の睡眠時限定だが、今の時代に似つかわしくない親衛隊(オプリチニキ)まで出現する。

 

 もちろん立華が召喚したサーヴァントも見張りに出ている。

 まずは「暗殺者(アサシン)」の英霊。

 主に、忍者や歴代山の翁の誰か。

 日によって誰がいるかは立華にもわからない。

 ……それのおかげである侵入者の命が救われたのだが、それは今は語らない。

 そして、庭には立華にしか従わぬ、全ての人間を憎む「復讐者(アヴェンジャー)」がいる。

 彼は常時召喚されている数少ない英霊の1人(?)だった。

 とは言っても外に出ないように言われているので、専ら庭か広間にいる。

 更に、それ以外のサーヴァントも偶に出る。

 ただし誰が出るかは本当にバラバラである。

 

 閑話休題。

 

「ただいま~」

 

 家に帰り、今日は庭にいる「彼」に挨拶。

 今は透明であるため、姿を確認する事はできないが、唸り声が聞こえた。

 そして屋内に入る。

 

「これから、どうする?」

「夕飯食べて、明日に備える」

 

 そんな訳で夕食を立華が作ろうとした時だった。

 

「電話?」

「誰?」

 

 秘匿回線に連絡がある。

 これを知っている人は自分達以外には3人だけ。合計5人。

 今回現れたのは……。

 

『二度目の学生生活と初めての学生生活はどうかね?』

「烈さん!お久しぶりです!」

「おじいちゃん!」

 

 画面にいたのは1人の老人だった。

 総白髪をきれいに撫でつけ、スリーピース・スーツを隙無く着こなしている。

 

 彼の名は九島烈。

 日本の魔法師の間で敬意を以て「老師」と呼ばれる老人。

 約20年前までは世界最強の魔法師の一人と目されていた人物。

 当時は「最高にして最巧」と謳われ「トリック・スター」の異名を持っていた人である。

 

 立華とレイナにとっては保護者代わり兼、年の離れた友人のような関係であった。

 また彼らの秘密を知っている数少ない人でもあった。

 そして、烈にとってもこの2人は大切な人だった。

 彼らのおかげで孫は病弱ではなくなり、普通の生活を出来るようになったのだから。

 

「まだ始まったばかりだからね。わからない」

「同じく」

 

 2人の答えに苦笑する烈だった。

 久しぶりなのでお互い近況を報告しあっていたのだが。

 ふと烈が真面目な表情になる。

 

『……そういえば司波兄妹には会ったかね?』

「妹には会いましたけど……、兄がいるのですか?」

『ああ。司波達也と言う。……そうか会ったのか』

「あの食虫植物、厄介?」

『食中植物!?』

 

 レイナのあまりの言いように絶句する烈だったが。

 暫くして大笑いし始めた。

 

『ハハハハハハ!食虫植物とは。言い得て妙だな!』

「え?まさか合ってる?」

『ああ。彼らは四葉だ』

 

 四葉。日本魔法師最強の家系の1つ。

 その中でも最も恐れられており、「アンタッチャブル」とも呼ばれている。

 ……のだが。

 

「へえ」

「そう」

 

 2人の反応は薄い。

 それをわかっているかのように烈は笑うと。

 

『気を付けろと言いたかったのだが……、君達の恐ろしさは四葉以上だからね』

「アハハハ」

 

 烈の言葉に立華は笑う。

 

 何せ烈は知っている。

 この2人……否、藤丸立華の恐ろしさを。

 何せ、彼は。

 

『君はその気になれば、世界を相手取って戦えるだろう?』

「大丈夫です。そんな気はありませんよ」

『本当にそうかね?』

「はい。焼却も漂白もする気ありませんし」

 

 「焼却」と「漂白」。

 例え誰かがこの会話を傍受していたとしても、この世界のほとんどには意味不明の言葉。

 だが、烈と彼の孫の1人には意味が分かる。

 

『そうかね?……まあそれはともかく』

 

『学校生活を楽しむといい』

 

『また日を改めて連絡しよう』

 

 そう言って通信は切れた。

 

 立華とレイナは顔を見合わせる。

 

「何だったんだろう?」

「話、したかった?」

 

 2人して首を捻った。

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