我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者   作:亜亜亜 無常也 (d16)

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第五節:足りない物は……

 そして日と場所が変わって。

 ある日の休日。

 場所は藤丸邸(鷹山邸とも言う)。

 

「ふあ……」

 

 珍しく遅くまで寝ていたレイナが起きて、リビングへ向かう。

 そこには立華ともう1人。

 青いマントとボディスーツ、無貌の仮面で身を隠した男がいた。

 立華と一緒にお茶を飲んでいた。

 レイナに気づくと挨拶をする。

 

「やあ久しいね」

「アヴさん!」

「……その言い方では別の人にならないかね?」

 

 彼は魔術師(キャスター)。通称「黒のキャスター」。

 真名アヴィケブロン。正式な名前はソロモン・ベン・ユダ・イブン・ガビーロール。

 ……ソロモンでは「彼」と混ざる。

 立華と契約していた自他ともに認めるゴーレムマスターである。

 この家のゴーレムは彼の作品であった。

 防衛用から、警備用、掃除用、家事用まで存在する。

 レイナとの仲も良好であった。

 

「今日、どうしたの?」

「実は先頃ほぼ完成したのだよ」

「もしかして……」

「ああ。アダムがね」

 

 アダム。

 それはアヴィケブロンの宝具の略称だった。

 正式名称は【王冠:叡智の光(ゴーレム・ケテルマルクト)】。

 

 宝具には色々な種類がある。

 「アイテム系」、「特殊能力系」、「自分の結末系」。

 「真名解放」、「常時発動」、「仮想宝具」。

 それとは別に、現世で実際に制作する必要のある宝具が存在する。

 そういった宝具は「単体の英霊が所有するには、余りに巨大な物」、「未完成であるが故に、伝説に刻まれた代物」のどちらかに属する。

 アヴィケブロンのは後者である。

 

 立華は召喚されて以来、そういう宝具をいくつもコツコツ作って来た。

 時に国外に渡り、時に貴重な素材を買い、時に宝具を解放し、時に烈の力を借りた。

 それでほとんど完成したのである。

 だが……。

 

「肝心な”炉心”がね……」

「ああ……」

 

 だが足りない物があった。

 それが「炉心」だった。

 

 一度宝具として召喚してしまうと、無尽蔵に魔力を求め続ける生粋の大喰らいであるため、「一級品の魔術回路を持つ人体」が必要となる。

 つまり「この世界」では「優秀な魔法師」の生贄がいるのである。

 

「”前”と”前々”の手段は論外だし」

 

 「前」は異聞帯で使った荒技。アヴィケブロン自身を炉心にする。

 これのおかげで立華達は「雷帝」を倒せたのだが、アレは論外。

 「前々」は聖杯大戦でアヴィケブロンが使った方法。マスターを炉心にする。

 だが、この行いは未だにアヴィケブロンを苛んでいる。

 どちらも使えない。

 

「適当な犯罪者……まあ凄く外道魔法師がいれば使うんだけど」

「手頃なのがいなくてね」

「「はあ……」」

「……納得」

 

 2人揃って溜息を吐く。

 

 ここが「藤丸立華」と「藤丸立香」の相違点。

 その1つ。

 

 彼は人の命を大事に思っているが、鬼畜外道には容赦はしない。

 一般人を犠牲にはしないが、かつて「新宿」で生きたまま人形に改造された「コロラトゥーラ」を使ってバーサーカーをおびき寄せるのにはためらわなかった。

 

「まあとりあえず保留か……」

「それしかないだろうね」

 

 そういう訳で2人は席を立つ。

 

「レイナ何か食べる?確かベーグルが残っていたと思うけど」

「食べる!」

「アヴィケブロンは?」

「僕は遠慮しよう」

 

 一度はそう言うが。

 

「……いや、置いておいてくれ。ゴーレムの整備が終わったら食べる」

 

 人間嫌いな彼だが、立華に召喚されてからは「周囲と会話し続け、理解し合わなければならない」と決意させるほどの成長をしている。

 それに軽く笑う立華だった。

 

 ◆◆◆

 

 その日の夜。

 立華はとある人物と話をしていた。

 秘匿回線の映像電話であり、それを知っているのは3人だけ。

 そのうちの1人である……。

 

「久しぶりね、立華君」

「響子さん!」

 

 藤林響子。

 烈の孫娘であり、国防陸軍第101旅団所属、独立魔装大隊の幹部。

 立華とレイナの秘密を知っている3人の内の1人。

 

 元々彼らが生活するために接触した人でもあり、2人の偽のPD、戸籍を作ったのは彼女である。

 電子・電波魔法による高度なハッキングスキルを得意とし、「電子の魔女(エレクトロン・ソーサリス)」という二つ名で呼ばれている。

 ……とあるサーヴァントにプライドをズタボロにされたこともあるが。

 

 因みに達也(大黒竜也と偽名を名乗る)とは同僚であり、風間玄信の副官(秘書)をしている。

 が、立華とレイナの事は彼らに伝えていない。

 ……だからこそ達也は立華を知らなかった。

 

 その理由はいくつかある。

 1つ目。伝えた際に何がどうなるか予測不能であること。

 2つ目。彼らのおかげでいとこである光宣が元気になった事への恩。

 3つ目。彼が放っておけなかったから。

 

 

 そのことを立華とレイナも感謝している。

 そのためか、彼女は結構立華から「道具」を融通して貰ってもいた。

 

「ええ、久しぶりですね。何かありました?」

「富士の辺りで、香港系の犯罪集団、無頭竜(ノー・ヘッド・ドラゴン)の構成員が発見されたのよ。……残念なことに目的は分かっていないわ」

「何時から日本はテロが日常茶飯事になったんです?」

「まだテロと決まったわけじゃないわ」

 

 溜息を吐く立華にフォローする響子。

 

「まあ軍も動いているから大丈夫よ」

「そうですか……」

「そういえば祖父が来るのは知ってる?」

「はい。懇親会の後、食事をする事になってます」

「それに私も参加するし、光宣君も来るわ」

「なるほど。久しぶりに揃うのですねえ」

 

 フフフと笑い合う両者。

 

 そういう感じで軽い雑談をして。

 

「じゃあそろそろ切るわね」

「はい。また」

「ええ、またね」

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