我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者   作:亜亜亜 無常也 (d16)

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第四節:道成寺鐘百八式火竜薙

 入学式の翌日。

 今度は余裕を持って登校できた。

 昨日は一緒に寝ただけ。

 だからこそである。

 

「2日連続で同じ轍は踏まん!」

「フラグ、なるよ」

「なって堪るか!」

 

 余裕があり過ぎたらしく、まだまばらにしか人がいない1ーAに入り席に付く。

 因みに席は2人共幾らか離れている。

 鷹山の「た」と藤丸の「ふ」なので是非もない。

 とりあえずインフォメーションのチェックと受講登録を始める。

 すると。

 

「藤丸さん」

 

 振り返るとそこには昨日会話した北山雫と光井ほのか、それに加えて司波深雪までいた。

 

「……おはよう。初めましてかな?司波さん。藤丸立華だ」

「初めまして藤丸さん。司波深雪です」

 

 昨日は遠くで見るだけだったが、近くで見ると改めて思う。

 

「(人間離れした美貌って奴かな?魅了スキル持っていそう)」

 

 すると雪女のように真っ白な肌が少し赤らむ。

 

「……あの。そんなに見つめられると恥ずかしいのですけど」

「ああ、悪い」

 

 無意識にじっと見ていたらしい。

 恥ずかしかったようだ。

 謝罪して、視線を外す。

 するとそこへ。

 

「何、してるの?」

 

 レイナが近づいて来た。

 

「ああ、自己紹介。司波さん。こっちが俺の相棒の……」

「鷹山レイナ。口調、気にしないで」

「はい。私は司波深雪です。宜しくお願いします。鷹山さん」

「レイナでいい。呼び捨て、さん付け、様呼び。好きにして」

 

 よく分からない事を言い出すレイナ。

 それに呆れる立華。

 

「初対面の人に何言ってるの?」

「ジョーク?」

「そういうジョークはやめなさい」

「わかった」

 

 そんな2人の様子を見た深雪が雫とほのかに尋ねる。

 どうやら事前に彼らの事を聞いていたらしい。

 

「……この2人は本当に付き合ってないのですか?」

「相棒同士らしいよ?」

「どうみても恋人同士ですよね」

 

 苦笑する3人だった。

 

 そんな中。

 

「リッカ」

「何?」

「自己紹介代わり。何か歌って」

「急に何!?」

 

 そんな3人の様子にはお構いなしに会話する2人。

 その会話を聞きつけたのか、雫が尋ねる。

 

「藤丸さん歌上手いの?」

「まあある程度は……」

 

 海賊達すら聞き惚れた男性特攻持ちの弓使いに比べれば劣るが。

 因みにその気になれば下手に歌う事もでき、どこぞの自称アイドルとワガママ皇帝みたいに、ジ○イアンリサイタルも可能である。

 

「何か、歌って?」

「レイナ……。いきなり言われても」

「自己紹介代わりにいいと思います!」

「光井さん……」

「皆話したがっているし」

「北山さん……」

「私も聞いてみたいです」

「司波さん……」

 

 女子4人の言葉にため息を付き。

 

「わかった。何歌う?」

「じゃあ「道成寺」の歌」

「「「「……何その歌?」」」」

 

 レイナが提案した歌に深雪、ほのか、雫が頭上に疑問符を浮かべる。

 結構古い歌なので、どうやら知らないらしい。

 なので。

 

「わかった」

「「「え!?」」」

 

 立華が頷く。

 かつて契約していた「彼女」を知ってもらうのには良い機会。

 乗り気となる。

 

 まず懐から出したのは眼鏡。

 伊達眼鏡だが、実はある「魔術師(キャスター)」のサーヴァントが作った”相手の持つ魔眼”殺しの能力を持つアイテム。

 それを掛ける。

 そして、鞄から笛を出し。

 

「お集まりの紳士諸賢、淑女の皆様」

 

「これより藤丸立華が語りますは一人の男女の童歌」

 

「清聴して頂くと幸いです」

 

 深雪の事が気になるのか、チラチラこちらを伺っていた教室にいる生徒達がこちらを向く。 

 雰囲気が変わって来た。

 

「では歌います。お聞きください」

 

「和歌山県に伝わる手毬歌。童歌【道成寺】」

 

「♪~」

 

 笛を吹く。

 とても綺麗な音色。

 皆が聞きほれる。

 前奏が終わると、笛から口を放す。

 そして歌う。

 

「トントン、お寺の、道成寺」

 

「釣鐘(つりがね)下ろいて、身を隠し」

 

「安珍清姫、蛇(じゃ)に化けて」

 

「七重(ななよ)に巻かれて」

 

「ひとまわり。ひとまわり」

 

「♪~」

 

 再び笛を吹く。

 そして

 

「トントン、お寺の、道成寺」

 

「六十二段の階(きざはし)を」

 

「上り詰めたら仁王(におう)さん」

 

「左は唐銅(からかね)」

 

「手水鉢(ちょうずばち) 手水鉢」

 

「♪~」

 

 そして、笛から口を放す。

 優雅に礼をする。

 

 生徒達の反応を伺うと皆呆然としている。

 

「……下手だった?」

 

 近くにいる4人に確認を取ると。

 

「ううん。上手」

「はい。とてもお上手でした」

「上手かった」

「また聞きたいです」

 

 好評な評価だった。

 ではなぜ?

 首を捻っていると。

 

「なあ、ちょっといいか?」

「?」

 

 そこに近づいて来たのは1人の少年。

 

「ああ。申し遅れた。僕は森崎駿だ。歌と笛はとっても上手かった」

「おう。ありがとう」

「でも……」

 

 一拍置くと続ける。

 

「どうしてその選曲に?もっと良い曲あっただろう?」

 

 森崎の言葉にレイナ以外全員が頷いた。

 それに立華は答える。

 

「相棒のリクエストだし」

 

「それに」

 

「皆に知って欲しかったから」

「「「「「「?」」」」」」

「嘘を付いたら、鐘に詰められて焼かれるよって」

 

「それと」

 

「ゲームのネタバレをしたら、樽に詰められてインフェルノっていう事もありえる」

 

「何が相手の逆鱗に触れるかわからない」

 

「だから皆も注意してね」

「「「「「「「……」」」」」」

 

 全員が何も言えなくなってしまった。

 そんな中雫がポツリと呟く。

 

「とりあえず……」

「「?」」

「安珍の安否が否よりなのはよくわかった」

「「確かに!」」

 

 ほのかと深雪が同意した。

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