我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者 作:亜亜亜 無常也 (d16)
九校戦4日目。
遂に新人戦が幕開ける。
今回の九校戦ではある2校が注目を集めている。
1つが連覇を狙う「第一高校」。
「三巨頭」を始め、優秀な選手が揃い踏み。
もう1つが優勝をもぎ取らんとする「第三高校」。
こちらは戦闘系の魔法実技を重視しているうえ、今年入学してきた生徒が粒ぞろいなのだ。
「クリムゾン・プリンス」一条将輝。レイナ曰く「栗きんとん」。
「カーディナル・ジョージ」吉祥寺真紅郎。レイナ曰く「中○譲治」。
「エクレール・アイリ」一色愛梨。レイナ曰く「エクレア」。
この3人が有名だが、それ以外も優秀な人ばかり揃っている。
新人戦優勝も届く範囲なのだ。
……まあ全員レイナに変な呼び名で呼ばれ、それが一校の一部に移ってしまったが、些細な事だろう。
この日は「スピード・シューティング」が行われる。
因みに出場するのは……。
「雫、モブ、出る」
「だなあ。……いい加減名前覚えてやれ」
「優勝したら、考える」
「考えるだけか?」
立華の問いにフフフと笑うレイナ。
それにしても。
(「森崎……大丈夫か?」)
彼は「カーディナル・ジョージ」とぶつかるのだ。
吉祥寺は「基本コード」を発見しただけあり、学者としても優秀。
だが、魔法師としても優秀なのだ。
「スピード・シューティング」の優勝候補と言われている。
対する森崎。
実技の成績は良い。
そして、彼の武器は魔法式の構築速度。
だが、魔法式の規模、事象干渉力は平凡である。
自分と他人を比べて、実力の低い物は見下す。
そうして自身のプライドを支えていた。。
レイナに言わせれば「金ワカメ寸前」だそうだ。
だが、その性格を立華に矯正され、多少精神的に余裕が出てきた。
立華も人生で得た薫陶を彼に教えているおかげで、性格もマシになってきた。
ならば。
「発破かけてやるか……」
「その前に」
「?」
「雫の試合、見よ?」
「ああ」
そんな訳で雫の試合を見に行く彼ら。
いつもと変わらぬ2人。
なのだが、実は昨日こんな事があった。
◇◇◇
「失礼します」
前日の夜。
一校の幹部から呼ばれた立華とレイナ。
その部屋に入室すると、そこには。
「タッツン?ミユキチ?」
七草と渡辺、市原といった幹部だけでなく、司波兄妹がいた。
「ああ来たか」
「ナベ先輩?大丈夫?」
「ああ。そこまでの怪我じゃないのに皆心配しすぎなんだ」
結構元気そうな渡辺。
それに一安心するレイナ。
そして、立華が話題を出す。
「ところで、一体何用です」
「摩利が「ミラージ・バット」に出場予定だったのは知っているわね?」
「はい」
「それで、今回の怪我で出れなくなったから、代わりに深雪さんに本戦に出て貰う事になったんだけど……」
「妥当、判断」
そう言って七草がレイナを見る。
「レイナさん。貴方には深雪さんの代わりに新人戦の「ミラージ・バット」に出て欲しいの」
「……」
そう言われたレイナは戸惑った顔をする。
「なぜ、わたし?」
「貴方がふさわしいと思ったの。それに「クラウド・ボール」の翌々日だから体力的にも問題ないと思うのだけど」
そう言われたレイナは考え込む。
それなら平気かもしれない。
そして、立華を見る。
「リッカ、わたし、出たい」
「そうか。なら頑張れ」
「うん。アレ、使える」
「!」
レイナの言葉に立華は驚くが。
すぐに笑みを浮かべ。
「わかった。何かあったらフォローしてやる。好きにやれ」
「うん!」
そんな2人に渡辺が尋ねる。
「何をする気だ?」
「「内緒」」
立華とレイナのセリフが重なった。
◆◆◆
雫のスピード・シューティングの結果は優勝。
達也の開発した新魔法〈能動空中機雷(アクティブ・エアー・マイン)〉や汎用型に特化型専用の照準補助装置を搭載したCAD、そして自身の実力が活かし、勝利を掴み取った。
因みに2位、3位も一校が独占。
エイミィと滝川和美が取った。
流石選手、流石お兄様である。
そして男子は。
「はあ……」
選手控室。
森崎は頑張っていた。
おかげで決勝進出を果たした。
「クイック・ドロウ」を見せた。
だが最後の相手は……。
「吉祥寺真紅郎……!」
研究者としても魔法師としても優秀な選手。
これまでの試合の結果は全てフルスコア。
「僕は勝てるのか……」
少し弱気な森崎。
緊張もしている。
「入るぞ」
そこへノックもせずに現れたのは……。
「藤丸!」
「弱気になってんなあ」
「そ、そんな事」
「いいか、森崎」
立華が森崎を正面から見つめる。
「ゆっくり深呼吸しろ」
「え」
「いいから」
言われた通りする森崎。
落ち着いた彼に立華は続ける。
「なあお前の敵は誰だ?」
「え?カーディn」
「違う」
否定する立華。
「いいか?本当の敵は相手じゃない。自分自身だ」
「自分自身……」
「そうだ。そして、イメージするのは常に最強の自分だ。そこに外敵などは要らない。お前にとって戦う相手は自身のイメージに他ならない。その先にどんな結果が待っていようとも」
そう続ける。
そして。
「まあ肩の力抜いて、笑って、楽しめ」
「笑って……、楽しむ……」
「ああ。じゃあそう言う事で」
帰っていく立華。
それを呆然と見送った森崎だったが。
「……」
その口元の笑みが浮かび。
「楽しむか!」
そう言って彼は控室を出た。
そして、暫く後に決勝戦が終了。
結果は……。
『WINNER 森崎駿 PERFECT』