我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者   作:亜亜亜 無常也 (d16)

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第十節:新人戦 イメージするのは最強の自分

 九校戦4日目。

 遂に新人戦が幕開ける。

 

 今回の九校戦ではある2校が注目を集めている。

 

 1つが連覇を狙う「第一高校」。

 「三巨頭」を始め、優秀な選手が揃い踏み。

 もう1つが優勝をもぎ取らんとする「第三高校」。

 こちらは戦闘系の魔法実技を重視しているうえ、今年入学してきた生徒が粒ぞろいなのだ。

 

「クリムゾン・プリンス」一条将輝。レイナ曰く「栗きんとん」。

 

「カーディナル・ジョージ」吉祥寺真紅郎。レイナ曰く「中○譲治」。

 

「エクレール・アイリ」一色愛梨。レイナ曰く「エクレア」。

 

 この3人が有名だが、それ以外も優秀な人ばかり揃っている。

 新人戦優勝も届く範囲なのだ。

 

 ……まあ全員レイナに変な呼び名で呼ばれ、それが一校の一部に移ってしまったが、些細な事だろう。

 

 この日は「スピード・シューティング」が行われる。

 因みに出場するのは……。

 

「雫、モブ、出る」

「だなあ。……いい加減名前覚えてやれ」

「優勝したら、考える」

「考えるだけか?」

 

 立華の問いにフフフと笑うレイナ。

 

 それにしても。

 

(「森崎……大丈夫か?」)

 

 彼は「カーディナル・ジョージ」とぶつかるのだ。

 

 吉祥寺は「基本コード」を発見しただけあり、学者としても優秀。

 だが、魔法師としても優秀なのだ。

 「スピード・シューティング」の優勝候補と言われている。

 

 対する森崎。

 実技の成績は良い。

 そして、彼の武器は魔法式の構築速度。

 

 だが、魔法式の規模、事象干渉力は平凡である。

 自分と他人を比べて、実力の低い物は見下す。

 そうして自身のプライドを支えていた。。

 レイナに言わせれば「金ワカメ寸前」だそうだ。

 

 だが、その性格を立華に矯正され、多少精神的に余裕が出てきた。

 立華も人生で得た薫陶を彼に教えているおかげで、性格もマシになってきた。

 

 ならば。

 

「発破かけてやるか……」

「その前に」

「?」

「雫の試合、見よ?」

「ああ」

 

 そんな訳で雫の試合を見に行く彼ら。

 

 いつもと変わらぬ2人。

 なのだが、実は昨日こんな事があった。

 

 ◇◇◇

 

「失礼します」

 

 前日の夜。

 一校の幹部から呼ばれた立華とレイナ。

 その部屋に入室すると、そこには。

 

「タッツン?ミユキチ?」

 

 七草と渡辺、市原といった幹部だけでなく、司波兄妹がいた。

 

「ああ来たか」

「ナベ先輩?大丈夫?」

「ああ。そこまでの怪我じゃないのに皆心配しすぎなんだ」

 

 結構元気そうな渡辺。

 それに一安心するレイナ。

 そして、立華が話題を出す。

 

「ところで、一体何用です」

「摩利が「ミラージ・バット」に出場予定だったのは知っているわね?」

「はい」

「それで、今回の怪我で出れなくなったから、代わりに深雪さんに本戦に出て貰う事になったんだけど……」

「妥当、判断」

 

 そう言って七草がレイナを見る。

 

「レイナさん。貴方には深雪さんの代わりに新人戦の「ミラージ・バット」に出て欲しいの」

「……」

 

 そう言われたレイナは戸惑った顔をする。

 

「なぜ、わたし?」

「貴方がふさわしいと思ったの。それに「クラウド・ボール」の翌々日だから体力的にも問題ないと思うのだけど」

 

 そう言われたレイナは考え込む。

 それなら平気かもしれない。

 そして、立華を見る。

 

「リッカ、わたし、出たい」

「そうか。なら頑張れ」

「うん。アレ、使える」

「!」

 

 レイナの言葉に立華は驚くが。

 すぐに笑みを浮かべ。

 

「わかった。何かあったらフォローしてやる。好きにやれ」

「うん!」

 

 そんな2人に渡辺が尋ねる。

 

「何をする気だ?」

「「内緒」」

 

 立華とレイナのセリフが重なった。

 

 ◆◆◆

 

 雫のスピード・シューティングの結果は優勝。

 達也の開発した新魔法〈能動空中機雷(アクティブ・エアー・マイン)〉や汎用型に特化型専用の照準補助装置を搭載したCAD、そして自身の実力が活かし、勝利を掴み取った。

 因みに2位、3位も一校が独占。

 エイミィと滝川和美が取った。

 流石選手、流石お兄様である。

 

 そして男子は。

 

「はあ……」

 

 選手控室。

 森崎は頑張っていた。

 おかげで決勝進出を果たした。

 「クイック・ドロウ」を見せた。

 だが最後の相手は……。

 

「吉祥寺真紅郎……!」

 

 研究者としても魔法師としても優秀な選手。

 これまでの試合の結果は全てフルスコア。

 

「僕は勝てるのか……」

 

 少し弱気な森崎。

 緊張もしている。

 

「入るぞ」

 

 そこへノックもせずに現れたのは……。

 

「藤丸!」

「弱気になってんなあ」

「そ、そんな事」

「いいか、森崎」

 

 立華が森崎を正面から見つめる。

 

「ゆっくり深呼吸しろ」

「え」

「いいから」

 

 言われた通りする森崎。

 落ち着いた彼に立華は続ける。

 

「なあお前の敵は誰だ?」

「え?カーディn」

「違う」

 

 否定する立華。

 

「いいか?本当の敵は相手じゃない。自分自身だ」

「自分自身……」

「そうだ。そして、イメージするのは常に最強の自分だ。そこに外敵などは要らない。お前にとって戦う相手は自身のイメージに他ならない。その先にどんな結果が待っていようとも」

 

 そう続ける。

 そして。

 

「まあ肩の力抜いて、笑って、楽しめ」

「笑って……、楽しむ……」

「ああ。じゃあそう言う事で」

 

 帰っていく立華。

 それを呆然と見送った森崎だったが。

 

「……」

 

 その口元の笑みが浮かび。

 

「楽しむか!」

 

 そう言って彼は控室を出た。

 

 そして、暫く後に決勝戦が終了。

 結果は……。

 

『WINNER 森崎駿 PERFECT』


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