我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者 作:亜亜亜 無常也 (d16)
「すごいですねえ」
「ああ、そうだな」
貴賓室。
そこには九島烈、光宣、響子の面々がいた。
感心している2人を後目に響子はため息をつく。
(「まだアレなら誤魔化しは効くけど」)
そう思っていた。
彼女は立華の手札をあの2人程は知らない。
ただ、今使ったのがCADで宝具を再現した物というのは知っていた。
「この調子なら1位にもになれそうね」
そんな呟きに列が意味深な笑みを浮かべる。
「いやいや、そう簡単には行かないだろう」
「……一条家の長男ですね」
列の言葉に光宣が告げる。
「ああ。彼には秘術〈爆裂〉がある。”アイス・ピラーズ・ブレイク”でアレは使えるからな」
「レギュレーションがこの競技にはないですからね」
魔法競技は殺傷ランクの高い物は使用禁止なのが当たり前。
競技で人死にはシャレにならない。
だが、その枷が外れるのが「アイス・ピラーズ・ブレイク」である。
殺傷ランクAでも使ってよし。
だからこそ、対象内部の液体を瞬時に気化させる魔法〈爆烈〉が使える。
かつて佐渡侵攻事件において数多の敵兵を屠った魔法。
血液の液体成分である血漿は気化し、その圧力で筋肉と皮膚が弾け飛ぶ。
そして血液の固形成分である赤血球をまき散らして殺した。
一条将輝はこの魔法が有効過ぎるおかげで、今までの試合は数秒で相手陣地全ての氷柱を破壊していた。
「流石の彼もあの速さには手札を切らないとなるまいよ」
「ですけど立華さんの宝具は……」
「ああ。派手なのが多い。それに破壊力もすさまじい」
この3人は知っていた。
立華の手札は戦略級だけでなく、比喩抜きに世界が壊れる物もあると。
「だからこそ下手をすると……」
言葉を切る烈。
「……下手をすると?」
「会場が消し飛ぶ」
「会場だけならまだマシでしょう」
光宣が笑いながら言う。
「それもそうだな」
「でも、そうなったら今年の九校戦は無くなってしまいますね」
「来年も下手をすると出来ないな」
「「アッハッハッハ」」
笑い合う2人に響子はため息を吐く。
「笑いごとではありませんよ……」
そう言う。
「第一そうなったら2人共死ぬのですよ?」
「私は十分生きたからな。後悔はない」
「僕は生き延びれる気がするので」
その言葉を聞いて溜息を吐く響子。
元気になってから光宣は若干可笑しくなった気がする。
(「それとも、元から根はこうだったのかしら?」)
そんな事を思う響子だった。
◆◆◆
新人戦6日目。遂に折り返しに突入。
今日行われるのは「バトルボード」と「アイス・ピラーズ・ブレイク」。
どちらも共に優勝者が決まる。
「バトル・ボード」はほのかが頑張った。
強敵である三校の「四十九院沓子」を破って勝利。
本当に嬉しそうで、達也に抱き着いていた。
……そのせいで一部ブリザードが吹き荒れた。
一方「アイス・ピラーズ・ブレイク」。
女子は3人共決勝入りした。
一方男子……立華は使い捨てCADの大盤振る舞いをした。
昨日の西洋鎧を着て、熱線を放つ剣に始まり。
なぜか女番長の恰好をして独鈷杵をぶん投げ雷を放出。
鎧武者の恰好をして弓から凄まじい威力の矢を放ち、氷柱を砕く。
相手の氷柱を自身の氷柱ごと砕き、CADを使い捨てると言う斬新過ぎる戦法により、決勝まで残った。
観客の印象にも残った。
だが。
『ねえ立華くん』
『何でしょう。会長』
『その戦法しなきゃ駄目?』
『と言いますと?』
『もうあーちゃんのライフは0よ……。できれば他の戦法で行って欲しいのだけど』
何でも吐血までしたらしい。
目と口から血を流し、やめてくれと叫んだらしい。
CAD大好きな彼女には堪える光景だったようだ。
『はあ。わかりました。違う戦法で行きます』
そういう訳で決勝リーグ。
これに勝てば1位か2位に決定。
それに出てきた立華は制服姿。
『マイク?』
マイク型のCADを持っていた。
音で壊すつもりなのだろうか。
観客には疑問符と期待が浮かんでいた。
だが、この光景を見た3人の顔は青ざめた。
レイナと烈と光宣だった。
この3人は知っていた。
あの「悪夢のリサイタル」を。
……因みに響子はまだ知らない。
あの「自称アイドル」と「ワガママ皇帝」のジャイアンリサイタルを。
「黄金劇場」と「鮮血魔嬢」のコラボを。
あの3人は知っていた。
響子は近い内体験する事になる(笑)。
烈と光宣は試合開始の合図直前に耳を塞ぎ、地面に伏せた。
レイナは。
『皆!耳塞いで!!』
呼びかけてから伏せて、耳を塞いだ。
まるで災害か何かに備えるように。
それに疑問に思う周りだった。
反応できなかったのだ。
そしてブザーが鳴る。
『ボエエエエエエ~』
意味がよくわかった。
阿鼻叫喚となった。
相手の氷柱は砕けた。……自陣の氷柱も幾つか砕けたが。
だが、あまりの歌声に失神者が多数出たらしい。
貴賓室の窓ガラス(強化ガラス)にも罅がいったそうだ。
そのため失格にしろと言う意見も出たそうだが。
『疲れた……。何とか決勝進出よ』
『苦労しますね』
『誰のせい!?』
だが、歌声による破壊は禁止になってしまった。
NPシリーズ
ある程度の再現は可能になったが、致命的な欠陥がある。
それが1回使うと壊れてしまう点である。
コレを使うという事は札束をばらまいているような物である。
そのため、倉庫で眠っていた。