我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者   作:亜亜亜 無常也 (d16)

48 / 85
第十六節:新人戦 レイナの奥の手、立華の言葉

 新人戦7日目。もう新人戦は残り僅か。

 今日行われるのは「ミラージ・バット」と「モノリス・コード」。

 前者が本戦、後者が予選。

 そしてレイナと、ほのか、里美、森崎も出場する。

 ……一応言っておくと、森崎はモノリス・コードである。

 

「誰も男があんなフリフリ着て踊るの見たくないよな」

「「「「「「ぶ!?」」」」」」

 

 立華の呟きにいつもの面々が噴き出した。

 ただし、選手とエンジニアはいない。

 

「確かにそうだよね。ところで立華さん」

 

 雫が立華に尋ねる。

 

「レイナさんはどういう風に行くの?」

「え、普通に跳躍じゃないの?」

 

 エリカの疑問に立華は笑う。

 

「見てのお楽しみ。アイツしか出来ない戦法で行く」

「「「「「「?」」」」」」

「まあ予選で使うかわからんけど」

 

 皆の頭上に疑問符が浮かぶ中。

 

「深雪さん」

「はい?」

「あいつの戦法、真似はしないでね。貴方には奥の手があるのだから」

「???」

 

 奇妙な事を言う立華に、深雪の頭上の疑問符が増えた。

 

 暫くして「ミラージ・バット」の試合が始まる。

 里美、ほのか、レイナは余裕で予選通過。

 跳躍を駆使して勝利した。

 達也が調整しているCADを使っている上、選手としての技量も一流。

 負けるわけがない。

 

 ただ立華は。

 

「使わなかったか……。温存したか……」

 

 そんな事を言っていた。

 レイナは他の選手と同じような戦法を取っていた。

 

 そして「モノリス・コード」の時間になる。

 立華は雫と深雪と共に一校のテントで観戦しようとやってきた。

 今から始まるのは第二戦目。

 そこまで強くないので、楽勝だろうという空気間だった。

 

「森崎君は大丈夫でしょうか?」

「油断しなきゃ大丈夫さ」

「あれだけボコボコにしてたしね」

 

 雫の言葉に苦笑いする深雪。

 

(「アレは見てて悲しくなりましたね」)

 

 自身の兄を不当に見下しているため、そこまで好いている訳ではないが、アレは酷かった。

 

「それに色々言葉を送ったからな。大丈夫」

 

 そう言った立華だったが、どうも嫌な予感がしてならなかった。

 

(「嫌な感じ……」)

 

 一方試合場ではビル内で森崎たちが試合開始の合図を待っていた。

 森崎は油断なく構えていた。

 

(「アイツ……言ってたな……。始まる直前と終わる直前は絶対に油断するなって」)

 

 彼が思い出したのは彼に性格矯正の名の元にボコボコにされた日々。

 

 その時彼から薫陶を貰っていた。

 

『いいか。森崎』

 

 倒れ伏した森崎を見下ろしながら言う。

 

『ルールが決まっていても、相手がそのルールを守るとは思うな』

『な、守らなかったら、反則になるんだぞ!?』

『例えば、相手選手が審判を買収していたら?観客全てさくらにしていたら?そうした場合此方の反論は潰されるだろう?そして、こちらが失格だ』

『そ、そんな事……』

『あるさ。あり得ない事なんてあり得ない。考えられる可能性は全て考慮しろ』

 

 そう言ってしゃがみ込んで笑う。

 

『それに……そういう不利な状況でひっくり返すのは最高に気持ちいいぞ?俺も”凍結野郎Aチーム”の全員を叩きのめした時はスカってした』

『凍結野郎?』

『あ……。今のは聞かなかった事にしてくれ。頼む』

 

 そんな事を言っていた。

 

(「アイツも色々あったのかもな」)

 

 そして、競技開始が迫る中。

 森崎の耳は嫌な音を捉えた。

 まるで何かが崩れる音。

 

「チイ!」

 

 すぐさま森崎はCADの引き金を引いた。

 

 ◆◆◆

 

 楽勝であるはずの試合は予想外の結末を迎えた。

 相手チームがフライングで屋内では人がいる場合使ってはならない加重魔法〈破城槌〉を使用し、ビルが倒壊。

 一校選手は重軽傷を負った。

 3人中2人はそこまで大怪我ではなかったが……。

 

「……森崎君は重傷よ。しばらくは絶対安静。今も治癒魔法がかけられているわ」

「「「「「「……」」」」」」

 

 七草の言葉に一同黙り込んでしまった。

 

 立華の言葉のおかげで相手が反則してくる可能性も考慮していた森崎。

 味方二人の瓦礫を吹き飛ばして、軽傷にしたのは良かったが、自分は重傷となってしまった。

 だが、助けられた2人によると……。

 

『アイツ溶鉱炉に沈んでいくT○800みたいでした』

『『『『『『タ○ミネーター!?』』』』』』

 

 何でも瓦礫に埋もれる寸前親指を立ててたらしい。

 しかもニヤリと笑っていたそうだ。

 

『俺の教えが効いたな』

『『『『『『お前が教えたんかい!?』』』』』』

 

 立華の言葉に全員咆えた。

 

 因みに「モノリス・コード」は十文字が代役を認めてくれるように説得しに行ったらしい。

 

「説得物理にならなきゃいいな。ファランクスで押しつぶす説得とか嫌だな」

「「「「「「誰だって嫌だわ!そんなもん!?」」」」」」

 

 そして、彼らが見に来たのは「ミラージ・バット」決勝。

 選手は緊張していたが(レイナ除く)、いつもと変わらぬ達也のおかげで平常心を取り戻した。

 

 そして、試合開始。

 里美とほのかは跳躍を使った戦法。

 それに対し、レイナはついに剣を抜いた。

 

 レイナは跳ぶ。更に空中を蹴って跳ぶ。

 それを繰り返す。

 地面に落ちなかった。

 それに騒然となる会場。

 

「ひ、飛行魔法!?」

「アレはまだ発表されたばかりだろう!?」

「いや、あれは違う!?空気を蹴って跳んでいるんだ」

 

 一方、一校面々も絶句していた。

 

「……リンちゃんは知っていたの?」

「直前に聞かされまして」

 

 市原と達也、立華だけは知っていた。

 

「気流操作の一環で、空気を凝縮させて、それを蹴って移動しているんです。収束魔法での密度操作の1つでもあります。クラウド・ボールでも同じような戦法取っていたでしょう?」

 

 あの時は空気を壁にしていたが、今回は足場にしたのだ。

 

「でも、でも、待って!?バランス崩れたら真っ逆さまよ!?」

「だから彼女しか取れない手段と藤丸君は言ってました」

 

『アイツの切り札の1つ、”天国への階段(ステイウェイ・トゥ・ヘブン)”です』

 

 立華はそう言って笑っていた。

 

 「ミラージ・バット」は1位レイナ、2位ほのか、3位里美となった。

 




天国への階段(ステイウェイ・トゥ・ヘブン)

鷹山レイナの魔法。
空気を凝集させて足場を作り、それを蹴って移動する疑似空中飛行。
勿論ある程度の人ならできるが、少しでもミスすると地面に真っ逆さまなため、実質彼女の固有魔法。
レイナは凄まじいバランス感覚と気流密度操作で使用する。

名前の元ネタはある人物のスタンド名。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。