我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者   作:亜亜亜 無常也 (d16)

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第二十四節:試合、その裏で 前編

 達也とレイナの件はあったものの、第二試合は普通に始まる。

 深雪の圧勝かと一校誰もが思った。

 だが。

 

「まさか深雪さんに勝つなんて……」

「ああ。流石優勝候補だな」

 

 七草と渡辺の言葉通りだった。

 優勝候補の選手が深雪と渡り合い、第一ピリオドは深雪が僅差で勝ったものの、第二ピリオドは僅差で負けてしまった。

 そして、第三ピリオドが始まる。

 

「む?」

「どうしたの沓子?」

 

 立華とレイナと一緒に(なぜか)観戦していた十七夜と四十九院。

 ここのところ一色含めた三校の3人とよくつるむ立華とレイナである。

 妙に馬が合うのだ。

 

「CADが変わっておる……」

「確かに……」

「へえ。使うのか」

「まあ、妥当」

 

 因みに立華とレイナは知っていた。

 深雪の切り札を。

 正確に言えば達也が用意した深雪の切り札を。

 

「何をするのか知っておるのか!?」

「見れば、わかる」

 

 四十九院の問いにそう答えるレイナ。

 試合に目を向ける。

 深雪以外の選手はホログラムを幾つかスティックで打ち、地面に降りていく。

 だが、深雪は下りなかった。

 空中を移動してホログラムを打つ。

 

「飛行魔法?」

「トーラス・シルバーの……?」

「そんなバカな!?」

「先月発表されたばかりだぞ!?」

「だがあれは……」

「まぎれもなく、飛行魔法」

 

 会場の騒めきが広がっていく。

 知っていた面々は驚いていないが、知らない面々……十七夜と四十九院は驚いている。

 

 そして、試合終了。

 深雪の圧勝となる。

 深雪が優雅にお辞儀をすると、拍手が会場を包み込んだ。

 

 ◆◆◆

 

「ターゲットは予選を通過した」

「……妥当だな」

「しかも飛行魔法を使用したそうだ」

「何だと!?」

 

 横浜にあるとあるホテル。

 その一室で『無頭竜』の幹部数人が一つのテーブルを囲んで座っていた。

 

「一体どうする!?最終日である明日のモノリス・コードの結果が出る前から第一高校の総合優勝が確定しそうではないか!?」

 

 幹部の一人が声を張り上げて、テーブルをたたいた。

 

 彼らが今回の九校戦の異常事態の黒幕だった。

 九校戦の勝敗で賭けを行っていて、大本命の一高に高いオッズを示して掛け金を集中させ、三高に優勝させることによって利益を得ると共に、イカサマを疑われないよう勝ち過ぎを回避する。

 これを狙っていたのだが……。

 

 結果は御覧の有様。

 大ピンチである。

 因みにこの計画元々反対意見も多く、このままでは彼らはただではすまない。

 死すら生ぬるい事になる。

 

「だから言っただろう!!もっと早く……初日からも一高への妨害工作をすべきだと!」

「妨害工作は有力選手を潰すために活用した!”バトル・ボード”でも選手を棄権へ追いやったではないか!」

「しかし他の一高への妨害はどうだった?確かに有力選手は潰せたが、結局代理選手が出場して駄目だったではないか!」

「今日の本戦”ミラージ・バット”は第一高校の選手のCADに細工を指示したが、無効化されるどころか工作員が取り押さえられる結果になった!アレのせいで足がついたらどうする!貴様らの責任だぞ!!」

 

 責任のなすりつけ合いと言い争い。

 それに1人が止めに入る。

 

「落ち着け」

 

 その言葉に言い争いが一旦止む。

 

「今この場ですべきことは、責任を押し付け合うことでは無い。いかにしてこの現状を打開するか話し合うことではないか?」

 

 そう言われた立ち上がっていた幹部は、息を吐いた後、改めてイスに座った。

 

「……さて、話を進める。”三高に勝ってもらう”などという考えが出来なくなったわけだが、こうなっては我々がとれる手段は限られてくる」

「もはや手段は選んでられんな……。九校戦を中止させ賭けそのものを無かったことにする……それしかあるまい」

 

 もちろん、そんなことをすれば警察等も大きく動く。

 賭博に参加していた客からは胴元である「無頭竜」へ苦情が多く寄せられるだろう。

 しかし、証拠がないならしらを切れる。

 少なくともこのまま「九校戦」が終わってしまうよりは全然マシである。

 

「だが、そのための人員はどうする…?」

 

 その一言で、幹部たちの眉間にシワが寄った。

 

「……今、動かせるジェネレーターはどれだけいる?」

「……この部屋を護っている3体と会場を監視している1体だけだ。連れて来れる奴は他所にももう1体もいない」

 

 静まり返る室内。

 そしてその静寂を破ったのは、本日何度目かになるテーブルが叩かれた音だった。

 

「どうなっているんだ!?「九校戦」の会場に送った奴らは……」

「知るか!?」

 

 表情を歪めながら言う幹部と同様に、他の幹部達も各々頭を抱える。

 

 初日から、監視もかねて会場へ行かせていた「ジェネレーター」。

 それが次々と消えてしまっていた。

 何者かが自分たちの動きに気づき、消しにかかってきたのだろうか?

 だとしても、戦闘態勢に入れば即座にこちらへ情報が来るようにしているが、それは無い。

 そのうえ、会場にいるジェネレーターを襲おうものなら、それこそ騒ぎになる。

 結構強いのである。

 そういった様子も全く無い。

 その後も、監視のためにと新たなジェネレーターを会場へと派遣していたのだが、そのジェネレーターも不意に何の痕跡も残さずに消えてしまう事態が続いていた。

 

 再び訪れた静寂。

 その中で、一人の幹部が口を開いた。

 

「会場にいるジェネレーターに観客を襲わせる。なに、100人位死ねば中止になるだろう」

 

 そう言って彼らは落ち着こうとしたのだった。

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