我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者   作:亜亜亜 無常也 (d16)

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第十三節:嵐の前の静けさ 後編

 論文コンペの準備は順調だった。

 その模型を組み立てるために、多くの生徒が行き来していた。

 

 論文コンペというのは「表向き」の代表の人数では九校戦と比べるべくもない。

 だが、魔法装置の設計、術式補助システムの製作、それを制御するためのソフト等々と、上げればキリがないほどにやることがある。

 たくさんあるのだ。

 そのため、技術系クラブや美術系クラブなど多くの人材が関わるのだ。

 その準備期間には午後には授業がなくなり、その時間は準備に充てられていた。

 

 今日はプレゼン用の常温プラズマ発生装置の組み立てが行われていた。

 市原や五十里が動いており、その傍らでは達也がプログラムの制御のためかコンピュータの前に鎮座していた。

 立華とレイナはそのそばで付近を警戒しながら、模型を見ていた。

 市原がCADにサイオンを流し込み、複雑な工程の魔法式を発動させる。

 模型の中のプラズマが光を放つ。

 その光景を見て。

 

「やった!」

「第一段階クリアだ!」

「良かった~」

「やり直しは目が当てられないからな」

「苦労したものね」

「おいおい気を抜くなよ?まだ始まったばかりだぞ?」

 

 他の面々は声を上げ、成功を喜ぶ。

 

 光が模型内から消え去り、興奮の波も一区切りというように引いていく。

 立華とレイナもその光景を見ていた。

 

「何事もなくて、何より」

「うん」

 

 ホッとした立華の言葉に頷くレイナだった。

 

 本来なら色々起こったのだが今回は何も起こらなかった。

 

 そんなレイナはある事に参加した。

 それは……。

 

 ある日の野外演習場。

 警護を行う生徒がここでトラブルに備えた訓練をしていた。

 全員男子でやるはずだったが。

 

『わたし、やりたい』

『『『『『『!?』』』』』』

 

 レイナが立候補したのだ。

 何人かは止めた方がいいと言ったが。

 

『俺は構わんぞ』

 

 十文字は乗り気であり。

 

『死にはしないし頑張れ』

 

 立華も止めなかった。

 そういう訳で幹比古と共に参加した。

 

 彼女は隠れながら、吹き飛ばされていく上級生を見ていた。

 吹き飛ばしている十文字は開けた空き地にその姿をさらしている。

 その雰囲気はとても高校生を思えず、おっさんにしか見えない。

 彼は得意魔法である〈ファランクス〉を駆使し、レイナと幹比古以外の全員をリタイアさせていた。

 奇襲に対応できるように警戒しながら、悠然と歩いている。

 

(「ファランクス、厄介」)

 

 レイナは最初のうちは攻撃をした。

 得意の空気弾や〈偏倚解放〉を使ったが届かない。

 「切り札」を使っても、あの防御力では届くかもわからない。

 そして今は実践ではなく訓練であり、破壊力の高い魔法を使うわけにはいかない。

 もってのほかである。

 

(「どうしよう」)

 

 単独で攻略する方法が思いつかない。

 

 すると、状況が動く。

 十文字の足元が突然陥没するとともに砂煙が克人を覆った。

 〈土遁陥穽(どとんかんせい)〉。

 敵に土砂を浴びせ、穴に落とし、目くらましと足止めで逃走の時間を確保する術式が発動。

 これがリタイアしていない幹比古の起こしたものだと理解するレイナ。

 

(「これなら!」)

 

 レイナは行動を開始。

 CADを操作し、空気弾を発動。

 回りを囲むように設置する。

 

「ヒコ!足止め!」

 

 叫ぶ。

 そして、もう1つのCAD……汎用型を出して、ある魔法を発動。

 集中に入る。

 

 十文字は空気弾の雨霰を防いでしまう。

 そのまま攻撃に転じようとした時。

 

「!?」

 

 殺気を感じ、ファランクスを展開。

 そこへ雷童子が襲い掛かる。

 防ぎきり、魔法の発動されたであろう方向に十文字が振り向くと、そこには幹比古がいた。

 十文字は即座に反撃の判断をし、〈ファランクス〉を展開。

 そのまま押し切ろうとすると再び〈土遁陥穽〉と〈雷童子〉。

 それを苦も無く防ぐ十文字。

 

「同じ攻撃では芸がないぞ?」

 

 そう言って突き進もうとした時だった。

 

「何だ……?」

 

 息苦しさと吐き気、頭痛を感じる。

 集中力が持続しない。

 

「……まさか」

 

 脳裏にまだ倒されていない女生徒の事が思い浮かぶ。

 

 その隙に幹比古は魔法を発動。

 〈陸津波(くがつなみ)〉。

 土を掘り起こし、土砂の塊が迫る。

 何とか防ぐ十文字だったが。

 

「!?」

 

 足元が陥没。

 〈蟻地獄〉が発動。

 更に。

 

 バチイ!

 

 電撃が走る。

 今度は防げずに、まともに喰らった十文字。

 

「ぐ……」

 

 電撃のダメージと体調悪化でついに倒れた十文字。

 それを確認するとレイナが幹比古の近くに寄って来た。

 

「ヒコ!ナイス!」

「……ああ」

 

 ハイタッチする2人。

 

「僕の名前は幹比古だ……。鷹山さん、君は一体何を?」

「酸素濃度、下げた」

「そうか!」

 

 十文字の症状で納得する。

 レイナは空気中の酸素濃度を操り、十文字を酸素欠乏症にしたのだ。

 

(「それにしても……凄い操作性だな」)

 

 幹比古は内心感心する。

 

 そして、幹比古以外にも関心している者達が居た。

 

「まさか十文字を倒すとは……」

「驚きね……」

 

 渡辺と七草の2人も感心していた。

 

「しかし……あの気流操作は私も見習わなければなあ」

 

 そんな事を言う渡辺。

 

 そんな中、七草が口を開く。

 

「鷹山さんって……数字付きじゃないかしら?」

「別に数字付じゃなくても優秀なのはいるぞ?司波兄妹や立華君もそうだろ?」

「そうだけど……ね」

 

 七草が一応納得した。




(・▽・)<レイナさんは数字付きではありません。
(・▽・)<■■■■■■と■■■■■■の
(・▽・)<ハイブリッドやハーフとでも言うべき存在です。
(ノッブ)<……最近明かされる情報多くないかのう?

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