我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者   作:亜亜亜 無常也 (d16)

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第十五節:人食い虎VS白衣の天使 後編

 そして、青年と女性の戦いが始まる。

 体格や性別では青年が有利。

 そして、呂剛虎は近接戦闘なら世界でも10本指に入る。

 ……今日丁度病院に来ている「とある魔法師」と共に双璧と称される。

 彼も最初は思っていた。

 すぐに片付くと。

 

 だが……。

 

「清潔!」

 

 戦況は互角だった。

 

 サーヴァントは生前よりも強化する者と弱体化する者に分けられる。

 前者は戦う力を持たない者に多く、後者は神話や叙事詩の英雄に多い。

 

 例えばクー・フーリン。

 彼は結構弱体化を喰らっている。

 

 色々な武装や逸話のおかげで、基本7クラス全てに適性を持っている。

 その為か強さがかなり分散されており、師匠からも怒られたほどである。

 そして、持っている武装や能力も結構制限を喰らっている。

 知名度が低めなので、〈不眠の加護〉のスキルはなく、城塞はほとんどの場合持って来れない。

 

 一方、ナイチンゲール。

 

 彼女は強化されている。

 更にバーサーカーで召喚された際に規格外の狂化を付与されている。

 そのため、ステータスは優秀な三騎士と殴り合いが出来る程。

 更に知名度は屈指であり、スキルも色々存在。

 

 戦況は互角だった。

 

 呂剛虎は拳や蹴りを繰り出す。

 拳法を……自らの鍛え上げた技術を注ぎ込む。

 

 ナイチンゲールは手刀、サマーソルト、銃撃とアグレッシブに戦う。

 知識を……自らの医療知識を総動員する。

 

 だからこそのこの状況。

 本来ならサーヴァントに物理攻撃は効かない。

 だが、呂剛虎が〈鋼気功〉で全身を覆っている。

 そのため、ナイチンゲールに触れる事ができる。

 だからこそのこの状況。

 

 だが……。

 

「診断!」

 

 彼女の手が男の身体に触れる。

 

「(古傷多数確認)」

 

 彼女は触れただけで相手の状態がわかる。

 スキル〈人体理解〉。

 精密機械として人体を性格に把握していることを示し、治療系のスキルや魔術の行使にプラス補正がかかる。

 更に、相手の急所をきわめて正確に狙うことが可能となり、攻撃時のダメージにプラス補正が加えられ、被攻撃時には被ダメージを減少させる。

 そして。

 

「切除!」

 

 もう一度触れる。

 すると呂剛虎の身体中から血が噴き出す。

 かつてとある監獄島で復讐者相手に使った手段。

 

「!?」

 

 驚く。

 斬られていないのになぜ?

 そう思う呂剛虎。

 

 理由は簡単。

 彼女は〈人体理解〉を使う事で、相手の古傷を一気にこじ開けたのだ。

 そのまま畳みかけるナイチンゲール。

 何とか迎撃する呂剛虎。

 

 このままでは彼は押し負ける。

 だが、まだ任務を果たしていない。

 だから引けなかった。

 

 時間は巻き戻る。

 

 周公瑾が病院にやってきた時、時を同じく病院を一組の男女が訪れていた。

 

 男は「千葉の麒麟児(ちばのきりんじ)」や「幻影刀(イリュージョン・ブレード)」の異名で知られるエリカの二番目の兄である「千葉修次」。

 そして、女は一高の三巨頭の1人である渡辺摩利。

 この2人、見て分かる通り恋人同士である。

 

「シュウ、その……すまない。忙しいのにこんな事に付き合せてしまって」

 

 普段は千代田花音らと言った女子生徒の憧れ的な存在の彼女。

 だが今はとってもしおらしい。

 恋人の前という事で雰囲気が違った。

 普段は「姐さん」と呼ばれ、若干男らしい所もあるが、今はただ恋人と一緒にいる女性と言った感じであった。

 嬉しそうでもあったが、申し訳なさそうな顔もしていた。

 

 その理由は、この病院に入院している千秋の事情聴取に修次を付き合せてしまっているからである。

 

 しかし彼は。

 

「水臭いなぁ。そんな事を気にする必要は無いんだよ」

 

 心外だという顔で摩利の顔を見下ろした。

 

「だが、明日は早朝の出航なんだろ? 準備とかあるのに……」

「今回はこの前のタイと違って総日程十日の短期研修だ。荷物も大したことないし、摩利が気を遣う事は無いよ」

 

 彼は防衛大特殊戦技研究科所属の学生の身であるが、既に予備役少尉でもある、

 この間はタイ王室魔法師団の剣術指南協力で、出張していたのだ。

 

 そういって渡辺に笑いかける。

 そして、修次は再び尋ねる。 

 

「まだ何か気になる事が?」

「……エリカに」

「エリカ?」

「……シュウが長期間家を空ける前の日はいつもエリカに稽古をつけてやってたじゃないか。今日は良いのか?」

 

 渡辺の問いかけに修次が答える。

 

「エリカだったらクラスメイトと稽古してるよ。なかなか見所のありそうなヤツだったから、エリカも楽しんでるんじゃないかな」

「クラスメイト? 男子か?」

「単なるお友達だ。間違いない。だからエリカのことは気にしなくて良い。それに僕が摩利と一緒に居たかったんだ」

「そんな恥ずかしいことは口にしなくて良い!」

 

 七草曰く「恋愛雑魚」である渡辺が恋人の言葉に撃沈。

 そんな穏やかな雰囲気の中。

 

 突如非常ベルが鳴り響いた。

 

「シュウ!?」

「火事じゃない。これは暴対警報だ」

「まさか!?」

 

 彼女の脳裏によぎったのはそこに入院していて、今日用事があった後輩だった。

 

「急ごう!」

 

 渡辺の見せた険しい表情に、修次は他人事では済まされない事態だと理解する。

 彼女を引っ張っていくように修次は階段を駆け上がっていった。

 

 そして、場面は戻る。

 

 千葉家のお家芸である自己加速術式で階段を一気に駆け上がった修次が見たのは、男と女の激闘。

 拳法と手刀、銃撃、サマーソルトがぶつかりあっていた。

 若干理解できない状況に戸惑うも、戦っている男に見覚えがあった。

 

「人喰い虎……呂剛虎! 何故ここに!?」

「幻刀鬼(ファダオクアイ)……千葉修次」

 

 修次の方を向いた呂剛虎の口からも、微かな声が漏れる。

 

(「このままでは不味い!?」)

 

 自分は怪我をしている。

 万全ではない。

 その状況で2vs1などできるものではない。

 このままでは捕まる可能性も高い。

 だからこそ彼が選んだのは退却だった。

 階段を飛び降りる。

 

「逃がしません!」

 

 容赦なく発砲するナイチンゲール。

 だが。

 

「逃げられましたか……」




(・▽・)<この2人ほぼ互角でしたね
(・▽・)<虎さんも結構強いうえ、鋼気功がありましたか。
(・▽・)<そして、婦長は戦闘より看護向けなので。
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