我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者   作:亜亜亜 無常也 (d16)

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第十九節:勝負 前編

 関本が拘束されている部屋の隣の部屋に立華と達也、七草が、関本が拘束されている部屋に渡辺がそれぞれ足を踏み入れる。

 

「……渡辺、何をしに来た?」

 

 ベッドに座ったまま関本が尋ねる。

 

「もちろん事情を聞かせてもらいに来た」

「い……いくらお前でもここでは魔法は使えないぞ!」

 

 関本の指摘は正しい。

 法を犯した未成年の魔法師を拘留する施設なのだから、魔法を検出する装置が至る所に設置され、魔法が発動されれば無力化ガスが噴射されたり、ゴム弾の銃座が起動したり、アンティナイトを身に着けた警備員が駆けつけたりする。

 

 だが、その言葉に構うことなく渡辺は聴取を開始する。 

 

「あまり時間が無いからな。要点だけ聞かせてもらおう」

 

 その時、彼は渡辺の得意分野を思い出す。

 だからこそ息を止めた。

 が、時すでに遅し。

 自白剤を使われたような状態になった関本は淡々と質問に答えていった。 

 それを別室で見ている3人。

 

「匂いを使った意識操作ですか?」

「ええそうよ。摩利の得意技。達也君、立華君見るのは初めて?」

「初めてです」

「俺は聞いてた」

「「マジで!?」」

 

 魔法の使用は法令で厳重に制限されている。

 特に危ない物や、ヤバイ物は特にそうである。

 

 会話をしながら、彼らは関本の自白を聞き逃してはいない。

 達也の意識を刺激したのは、「デモ機のデータを吸い上げた後、自分の私物を調べる予定だった」という告白で、摩利が目的を問うと、関本は「聖遺物」だと答えた。

 

「……達也君、そんなもの持ってるの?」

「いえ、持っていません」

「でも……」

「少し前から”賢者の石”絡みでレリックの事を調べてましたから、それを勘違いしてたんじゃないでしょうか?」

「……」

 

 納得していない七草。

 何も言わない立華。

 

 そんな中。

 

 ジリリリリリリ!!!!!!

 

 非常警報が鳴り響く。

 

 警報を聞いた三人の反応は素早かった。

 渡辺はすぐさま廊下に出て鍵を掛けた。

 達也と立華、七草は別室を出る。

 

「侵入者ですね」

「何処の命知らずだ……」

 

 冷静な達也の声に、呆れ交じりの呆れ声で渡辺がつぶやく。

 この間の魔法大学付属病院襲撃事件で、東京一帯は警視庁により特別警戒態勢が敷かれている。

 

 今日は五割増で警察官が巡回警備を行っており、この八王子特殊鑑別所は警戒態勢である。

 ……実は立華のサーヴァントも紛れている。

 

「そんな中でやって来るという事は、余程の馬鹿か……」

「腕に覚えがあるか……ですね」

「ああ」

 

 渡辺と立華の会話。

 

「達也君、何処から来てるか分かる?」

「屋上からですね。飛行機か、ヘリか、カタパルトか、そんなところでしょう。現在位置は東階段三階付近だと思います」

 

 七草の問いに達也が答える。

 達也の回答を聞いて七草が目を向けた。

 彼女の先天性のスキル、知覚系魔法〈マルチスコープ〉をフル稼働させて達也の指し示した場所を見ているのだ。

 

「……大当たり。さすがね達也君。侵入者は4人、ハイパワーライフルで武装しているわ」

「……その時点でただのチンピラではないな」

「チンピラだとしても、バックに大物がいるでしょうね……」

 

 ハイパワーライフルは、対魔法師用に生み出された武器である。

 障壁魔法などの対物防御魔法を撃ち抜くため、アサルトライフルの3倍~4倍の爆発力を発揮する発射薬を使用するのだ。

 威力が大きい分、高度な製造技術を必要とする武器で、そこらのチンピラが手に出来る代物ではない。

 

「警備員が階段の踊り場で楯のバリケードを作って応戦してる」

「廊下の出入口は隔壁で閉鎖されているようですね」

 

 七草と達也が続ける。

 4人の現在位置は中央階段寄りの2階。

 それほど慌てなくても良い状況であるのだが。

 

「出るぞ!」

「こちらが本命ですか」 

 

 中央階段を立華が睨む。

 達也が鋭く見据える。

 一拍送れて摩利が階段の出入口を睨み付けた。

 

「えっ、なに?なに?」

 

 七草は何に警戒してるのか良く分かってない様子だったが、それもほんの短い間だった。

 

 彼らの前に大柄な若い男が姿を見せる。

 見覚えがあるのがいた。 

 

「呂剛虎」

 

 渡辺が言った名前を聞いても七草には心当たりが無いという顔だった。

 達也は知っているため、厳しい表情を変えていない

 だが、立華は誰も気づいてないが……笑っていた。

 

「この場は逃げるべきなのですが、少し遅かったようですね」

 

 達也が淡々とした口調でそういって3人の前に出た。

 

(「俺では少し相性が悪いな……」)

 

 そんな事を思いながら、彼に向かい歩き出す達也を渡辺が掴んで止めた。

 

「あたしが前に出る。達也君は真由美のガードを頼む」

 

 そう言って渡辺が得物を出そうとしたのだが。

 

「オレがやります」

 

 いつの間にか立華が結構前に出ていた。

 

「「「!?」」」

 

 それに驚く3人。

 

「お三方はオレが1回死んだら、お願いします」

 

 その言葉に絶句している3人を無視する。

 そして、呂剛虎の前に出る。

 

「なあ、あの時の言葉覚えているか?」

 

 立華の問いに凄みのある笑みで返す呂剛虎。

 

「じゃあ……戦ろうか!」

 

 同時に飛び出した。

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