我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者   作:亜亜亜 無常也 (d16)

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第八節:兄と妹

 ここは司波家。

 達也と深雪が暮らしている家。

 母はこの世におらず、父は愛人の元に入り浸りであるため、ほぼ2人暮らし。

 そんな状態であるが、この2人はこの2人暮らしを楽しんでいた。

 

 ところが、この日達也の顔は優れなかった。

 考え事をしているようだった。

 それに対して、心配しながらもお茶を入れたりしていた深雪だったが。

 

「……お兄様」

 

 暫くして耐え切れなくなったのか。

 

「考え事中申し訳ございませんが、お聞きしても宜しいでしょうか?」

「……ああ。何だい?」

「お兄様は一体何を考えていらしたのですか?」

「……」

 

 深雪の問いに、達也は黙り込んでしまった。

 が、暫く沈黙の後。

 

「あの2人の事だ」

「あの2人……?」

 

 深雪が首を捻る。

 どうやら思い至らないらしい。

 それに達也は答える。

 

「ああ。立華とレイナだ」

 

 深雪がクラスメイトであるあの2人を思い浮かべる。

 

 鷹山レイナ。

 

 真っ白な首元辺りまで伸びた髪の毛と、アルビノと見まがうような白い肌を持つ少女。

 ただ、それ以外は日本人的な少女。顔立ちも日本人である。

 今の時代クォーターやハーフの人は魔法師では珍しくないため、髪の毛が日本人的でない人は珍しくない。

 エリカも赤毛なうえ、新入生でもっと明るい赤毛の生徒(後に明智英美と言う名を知った)がいた。

 だからこそそこまで目立ってはいない。

 ……まあ口調は結構独特だが、そこはご愛敬だろう。

 

 藤丸立華。

 

 レイナの白とは違い、色褪せたような白い髪の毛に、浅黒い肌を持つ少年。

 そのせいか、少し目立っており、若干近寄りがたい感じだった。

 だが、一曲歌ったおかげか、いつの間にか皆と打ち解けていた。

 結構親しみやすい感じだった。

 ……ちょっと変わった感じはあるが。

 

「あの2人が何か?確かに少し変わった2人でしたが……」

「気になる事があってな……」

 

 そう言って達也は深雪に説明する。

 

「まずあの2人の成績だ」

「成績上位だったそうですよね」

「ああ。まさか深雪と同等とはな……」

 

 Aクラスにいるのだから、成績が低いわけではないのはわかっていた。

 だが、あそこまでとは思わなかった。

 そして。

 

「立華のあの体術」

「エリカを見ただけで使う武器とかがわかっていましたね」

「ああ。でもそれだけじゃない」

 

 あの一瞬で間合いを詰めた歩法を思い出す。

 

「あれは縮地だ」

「縮地と言いますと確か武術や武道の……」

「ああ。単純な速さだけではなく、歩法、体捌き、呼吸、死角等が合わさって完成する物なんだが……」

 

 それを彼は使いこなしていた。

 

「俺も似た事はできるが、アレはそう簡単に使いこなせる物じゃない」

「……つまり彼は警戒するべきだと?」

 

 深雪の深刻そうな顔に達也は苦笑する。

 

「いや。そこまでは言ってないよ」

 

「クラスメイトだ。仲良くするといい」

 

「でも、何かあったら……」

「はい。お兄様に報告します!」

 

 元気に言う深雪を微笑ましそうに見つめる達也だったが。

 

 実はもう1つ気になる事があった。

 それは。

 

「(俺はアイツに悪感情を抱けなかった)」

 

 今思い返して見る。

 彼は少し変わった所や若干発言がおかしかったりしたが、そんなに気になったり避けようとする気は起きなかった。

 他の面々もそうだった。

 

「(何かしらの精神干渉を使っていた?そんな兆候はなかったが……)」

 

 考えても思いつかない。

 なので。

 

(「明日にでも師匠頼んで調べて貰うか」)

 そんな事を思っていた。

 

 ◆◆◆

 

 次の日。

 達也はいつものように九重寺で稽古をする。

 深雪も一緒だ。

 そして、いつものようにこの寺の住職の九重八雲にボコボコにされ、その後朝食を取っていた。

 

「いやあ、本当に深雪くんの料理は美味しいね」

「ありがとうございます」

 

 八雲が深雪の作った料理を褒めている中。

 達也が切り出す。

 

「師匠。調べて欲しい事があるのですが?」

「うん?何をだい?」

「藤丸立華と鷹山レイナという深雪の同級生の事なのですが」

 

 その名前を出した瞬間。

 達也が注意深く八雲の様子を伺っていたからこそ分かった。

 深雪は気づかなかっただろう。

 ほんの一瞬だけ八雲の表情が凍り付いたのが。

 

「…ああ。わかった。調べておくよ」

「……いいのですか?」

「ああ。今回はサービスさ」

 

 そう言って笑う八雲だった。

 この時にはいつも通りだった。

 

(「気のせいか……?」)

 

 この時はそう思っていた達也だった。

 

 そして、学校へ行くために一旦家に戻った2人だった。

 

 そして登校していると。

 

「達也、深雪、おはよう」

「おはようさん」

 

 話に出した2人が現れる。

 2人一緒だった。

 ……しかも手をつないでいた。

 

「おはよう」

「おはようございます」

 

 それに気にせず挨拶を返す達也と深雪。

 そのまま4人で登校する。

 道中、エリカ、レオ、美月も合流して、合計7人の大所帯で学校に向かっていた。

 すると。

 

「リッカく~ん、達也く~ん」

 

 聞き覚えのある声がした。

 それはこの学校の生徒会長の七草だった。

 なぜ2人の名前を呼びながら、こっちに向かってくる。

 名前で呼ばれているため、周囲の視線が痛い。

 嫌な予感もする。

 なので。

 

「レイナ!」

「ん!」

 

 立華はレイナをお姫様抱っこする。

 そして、こちらにやってきた七草に。

 

「失礼します!」

「え!?」

 

 そう言って、彼は跳躍。

 そのまま逃走。

 あっという間に向こう側に行ってしまった。

 

 それを呆然と見つめる目撃者一同。

 そして。

 

「「「「「「早!?」」」」」

 

 この場の全員がツッコム。

 誉めたくなるくらいに見事な逃走だった。

 

 それに暫し呆然としていた七草だったが。

 

「もう。失礼しちゃうわね。声掛けただけで逃げるなんて」

 

 そう言って達也の方を向く。

 

「達也くんは逃げないわよね?」

 

 笑顔で言う。

 それに頷くしかない達也。

 

 彼女の要件は達也と深雪に生徒会室で昼食を一緒にしないかと言う事だった。

 何か話があるらしい。

 ひとまず伝え終わった七草は深雪の方を向き。

 

「深雪さん。あの逃げた2人に伝えてくれる?お昼に生徒会室に来るようにって」

「は、はい」

 

 これに頷くしかない深雪だった。

 ……七草の目は若干座っていた。




魅了(偽)(B)

保有スキル。魅了系スキルに近い物。例えどんな人間であろうとも、彼に嫌悪感や悪感情を抱けなくなる。敵対者とは思わせないことや、敵と仲良くなることも可能。抗うには強固な意志が必要。
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