とある斜陽王国における勘違い戦線   作:himeneko

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魔王モモンガLv95 は 最高のタイミングを見計らっている

悪魔デミウルゴスLv100 は 忖度している

竜人セバスLv100 は 静かに控えている

淫魔アルベドLv100 は 様子がおかしい


魔王、異世界に降臨する

アインズ・ウール・ゴウン

 

それはユグドラシルに咲く惡の華

 

さあ刮目して見るがいい

 

真のラスボスに相応しい最強の力を

 

 

 

Side モモンガ

 

ハァ、憂鬱で死んでしまいそうなモモンガこと鈴木悟です。

 

ユグドラシルサービス終了のお知らせ。

 

はぁ……何回見てもそう書いてある。

愛着あるこのゲームも時代の波には抗えないよなぁ。

サービス開始から12年だもんなぁ、仕方ないよ。

 

そう自分に言い聞かせながらナザリックを見て回る。

 

みんなで作ったこのナザリックも消えちゃうのか……。

はぁ、憂鬱だ。

こんな事ならもっと自分の強化にリソースを回しておくんだった。

結局シグルドさんとのPvPに一度も勝ててないんだもんなぁ。

まあロマンビルドの魔法詠唱者がガチビルドのワールドチャンピオンに勝てるわけがないんだけどさ。

そこを覆して勝ってこそのロマンだろう。

 

あ、シグルドさんから《メッセージ/伝言》だ

 

『モモンガさん、人数集まったので例のワールドエネミーと再戦しませんか?』

 

「ええ、ご一緒します」

 

『流石モモンガさん、聖騎士と魔王が揃えば敵なしだと思い知らせてやりましょう!』

 

「そうだとも。我が魔力と貴様の剣にかかれば倒せぬものなどない」

 

『ははは、やっぱりモモンガさんの魔王ムーブは最高ですね(笑)』

 

「そこは乗ってくださいよ!(泣)」

 

まったく、自分だって聖騎士ムーブに拘りまくってるくせに。

そう悪態をつくが本心じゃない。

 

彼、シグルドさんが居たから俺は楽しくユグドラシルで遊んでいられた。

お互いギルマスで最後まで残ってしまうほどの生粋のユグドラシルプレイヤーだ。

ギルメンが去ったことは悲しい。

また戻ってきて一緒に遊べたら最高だと思う。

でもリアルを優先するのは人として当然だとも思うんだ。

俺やシグルドさんの方が異端であるとも。

 

それでもこのナザリックで思い出に浸ったり。

シグルドさんと即席パーティーを組んで冒険したり。

今みたいにワールドエネミー討伐なんて爆死前提の無謀な挑戦に興じたり。

 

ああ、本当にユグドラシルは楽しいな。

 

そう思えることが幸せで

 

ああ、本当にユグドラシルは終わるんだな。

 

そう思えることが寂しかった。

 

 

感傷はさておき、ワールドエネミーの討伐だったな。

確かミズガルズにいる破滅の竜王だったっけ?

アレ反則なパッシブスキル持ってるから前回は結局押し負けたんだよなぁ。

シグルドさんのインチキ聖剣でバフってもらっても勝てないとかおかしいだろ。

こうなったらギルド武器を持ち出すか?

いやいやいや、万が一破壊されたら目も当てられない。

……でも一回くらいなら。

あの聖騎士厨に見せびらかして自慢したい衝動に駆られる……!

 

それでも持ち出せないのが俺なんだよなぁ。

貧乏性というか、まあ本当に貧乏なんだけど……。

ああ、くそっ!

どうせあと数か月もしたら全部消え失せてしまうってのに!

スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンだって一度くらい全力で振るわれたいだろうに!

 

うん、無理。

 

小市民と笑いたければ笑え。

俺、モモンガこと鈴木悟はラスボス戦でもエリクサーを使えない男なんだ。

 

 

 

まあ、そんなざまだから……

 

 

 

 

「ぎゃああああ!? 死ぬ死ぬもう回復手段が尽きたー!?」

 

「泣き言は聞きたくないぞモモンガ!」

 

「シグルドさんだって、あと一撃もらえばデスルーラでしょう!?」

 

「我が友にして宿敵、魔王モモンガよ」

 

「こんな状況でもブレないなぁ!?」

 

「聖騎士は死など恐れぬと、その目に焼き付けるがいい!」

 

「いや恐れろよ! デスペナ半端ないんですよ!?」

 

「後に続くものの為、騎士の生き様を示さなければならないのだ!」

 

「もうレギオン壊滅してるから!? 後に続くの俺だけな状況だから!?」

 

「後は任せたぞモモンガ! はあああっ!<次元断切>!!」

 

「おお、流石の破壊力! これはやったか!?」

 

「ば、馬鹿! それはやってないフラ……あ」

 

「あ、地に戻った」

 

ワールドエネミー・破滅の竜王の《ロプトウス/暗黒神の権能》が発動。

 

「「ぎゃあああーーーーー!?!?」」

 

 

ああ、デスペナでレベルダウン……まあ楽しかったからいいか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――ま」

 

なんだ……?

 

「――――様」

 

声が、聞こえる……?

 

「――ンガ様!」

 

俺は、一体どうなって……

 

「モモンガ様!」

 

うおおお!? びっくりした!

 

「モモンガ様、お気づきになられたのですね!」

 

あ、はい。

って、とてつもない美人が目の前にいる!?

あ、なんか急に萎えた……。

あれ? たしかワールドエネミーの討伐に失敗してナザリックでリスポーンしたんだよな?

なんで俺以外のヤツが居るんだ?

 

「あぁモモンガ様、至高の御身にもしもの事があれば、私たち僕共は生きていけません……」

 

こいつは……アルベドだっけ?

タブラさん謹製のNPCで守護者統括の。

だとしても何故喋ってるんだ?

表情まであるし。

 

 

多少の混乱があったけど持ち前の魔王ムーブで乗り切ることに成功。

だけど……

 

 

はあああああ!?

ログアウト出来なくなってゲームが現実になってる!?

しかもナザリックの外は平原でヘルヘイムはおろかユグドラシルですらない!?

NPCたちの忠誠心が怖すぎて気が休まる瞬間すらないんだけど!?

あ、また沈静化した……。

ふぅ、一緒に乙ったシグルドさんもこの世界に居るのだろうか?

あの人ならリアル聖騎士キタ! 世界が私の聖騎士ムーブを求めている!

とか言ってエンジョイしてるんだろうな。

 

……未知の世界を魔王と聖騎士で冒険か。

 

よし、情報収集しながらシグルドさんを探そう。

 

 

 

 

 

 

 

分かったことがいくつかある。

 

ナザリックが転移した場所は、リ・エスティーゼ王国の国土内ということ。

王国は周辺国家の盟主的存在で人間種と亜人種、異形種が共生している国ということ。

王国最大戦力の聖騎士シグルドは聖剣の一振りで山脈を割るということ。

 

は?

 

沈静化……

沈静化……

沈静化……

沈静化……

沈静化……

 

ふぅ、……ってシグルドさん何してんのーー!?

沈静化……

ふぅ、本当にエンジョイしてるよあの人。

未知の世界で大国の聖騎士とか危機感無さ過ぎてこっちが憤死しそうだ。

誰だよあのキチガイを野放しにしたのは!

手遅れになっても知らないぞ!

自分一人で楽しみやがって!

どうして俺を誘わないんだよ!

沈静化……

ふぅ、なんとかして合流しないと……

いっそモモン・ザ・ダークウォーリアー(仮)として紛れ込むか?

ダメだ、聖騎士ムーブには魔王ムーブでないとシナジーを望めない。

やはり聖騎士のピンチに魔王ムーブで助けに入るのが最高にかっこいいよなぁ。

 

「くっ、もはやここまでか……」

 

「なんと無様な姿だ、聖騎士よ」

 

「お、お前は魔王モモンガ!?」

 

「私以外の者に倒されるとは、聖騎士の称号が泣いているぞ」

 

「ふざけるな! 私は負けない。聖騎士の名に誓って!」

 

「だが敵は強大なようだ。勝てるのかね?」

 

「フッ、私一人では手が足りないが、幸いヤツはお前も敵だと認識しているようだ」

 

「ならばこの一時、仮初の共闘といこうか。我が宿敵」

 

「まさか魔王と肩を並べて戦うことになるなんてな……!」

 

よし、これだ!

このシチュエーションこそ俺の魔王ムーブが一番映える!

そうと決まれば適当な僕にシグルドさんを見張らせないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

シグルドさんが強すぎてピンチなんて存在しない件について。

 

あの異世界エンジョイ勢、現地人とばかり楽しそうに遊びやがって!

騎士団率いてたり!

婚約者とかいうお姫様とイチャついてたり!

聖騎士ムーブ全開で人助けに興じたり!

ここ絶対ユグドラシルより楽しいだろ!?

俺なんてナザリックのNPCの無茶振りに無い胃を痛める日々なんだぞ!

なんたって……

 

うちのNPC、人間を見下すクソ雑魚中ボスムーブが大好きなんだ(白目

 

これ絶対破滅フラグだよ!?

異世界勢+聖騎士 vs ナザリックの構図ができるのに時間は要らないな!

冗談じゃない!

あんな楽しそうに異世界を満喫してる友人がいるのに、なにが悲しくて世界の敵として討伐されなくちゃならないんだ!

俺だって遊びたいよ、満喫したいよ!

まるで新エリア実装されたのに指をくわえて見てるだけ!

そんな感じのもどかしさを味わってるんだぞ!

 

沈静化……

 

ふぅ、アルベド教えてほしい。

俺はあと何回沈静化すればシグルドさんと合流できるんだ?(疲労

やはりモモン・ザ・ダークウォーリアーを採用するしか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

デミウルゴスがやらかした。

 

ローブル聖王国が滅ぼされるタイミングで聖王国の人間を拉致ってきやがった。

ちょっ、なにしてんの!?

ダークヒーロー路線で合流しようと考えてた矢先にコレだよ!

完全に聖騎士の討伐対象じゃないか!

怖い!

シグルドさんのレベルを考えろよ!

低く見積もっても150近くはあるんだぞ!?

どうしてデスペナ喰らったのにレベルが上がってるんだよ!

俺今95だよ。

ふざけるな!

シグルドさんだけズルいじゃないか!

 

沈静化……

 

ふぅ、とにかく敵対だけは避けないと不味い。

聖剣以外の装備はゴミクズだけどあの人のPSなら何も問題ないからな。

デミウルゴス。

攫ってきた人間だが、しれっと王国に送ってあげなさい。

いかにも私たちが助けた風を装ってな(外道

 

 

 

 

 

 

 

 

なんかシグルドさんがヒロイックサーガごっこを始めた。

 

今日も今日とて引きこもりライフな俺に謝れ。

暴虐なる皇帝から帝国を解放とか絶対に楽しいやつだろ!

俺も混ぜてよ!

王国は異形種にも寛容だと調べがついてるんだ。

穏やかで理性的なオーバーロードなら受け入れてくれるよね?(切実

もう我慢の限界だ。

俺は行く……な、なにをするアルベド!はっ離せ!!

 

えっ、もう少し待って最高のタイミングで駆けつけるべき?

 

お、おお……!

アルベド、お前は私の我が儘を認めてくれるのか!

 

ナザリックの維持管理はお任せください?

 

う、うむ。

大変ありがたい申し出なのだが、私の留守中に他の守護者たちがだな……

 

モモンガ様の方針を遵守させます?

この世界の住人と事を構えないように慎重を期する?

 

素晴らしい……!

素晴らしいぞアルベド! 流石守護者統括だ。

お前になら私の代理を任せられると今確信した。

そうと決まればタイミングを見計らって……

 

 

えっ

 

 

帝国の皇子がワールドエネミーに進化してる(白目

 

 

 

ま、不味いぞ。

いかにあのキチガイ聖騎士でも相手が悪すぎる。

まさかワールドエネミーまで転移してるなんて思ってもみなかった。

クソッ、油断しすぎた!

こうなった以上、転移魔法で救出に向かうしか……は?

 

……アルベドよ、私の目がおかしくなったのだろうか?

 

破滅の竜王が一方的に切り刻まれてるように見えるのだが……

 

 

『武技<流水加速><疾風走破>、往くぞ、はああーーッ!!』

 

『ぐわああああーーーーっ!?』

 

『まだまだ!<即応反射>、切り伏せてみせる!』

 

『ま、まて!こんな一方的ぐおおおお!?』

 

『私のターンはまだ終わっていないぞ!<即応反射><月光><連続><月光><追撃><月光><連続><天空>!!』

 

『があああァァァーー!?!?』

 

『<能力向上><能力超向上><鬼神の一撃Ⅲ><死線Ⅲ><獅子奮迅Ⅲ>、聖剣よ、私に力を!<聖剣の加護>』

 

『ばか、な……<見切り>が……上手く作用、しな……これ、では……半減して、も……』

 

『この一撃は、憎しみを超えて祖国の安寧を願うアルシェの祈りだ』

 

『わ、我は……このような……結末は……認め』

 

『深き闇の底へ還るがいい、<ワールドブレイク/次元断切>!!!』

 

『!』

 

 

……黄金の斬撃で破滅の竜王が蒸発したんだけど(白目

 

ワールドエネミーを単独撃破とかシグルドさんは何処を目指してるんですか?

150と見積もっていたレベルはどこまで上方修正したらいいんですか?

俺の知ってる次元断切とは完全に別次元なんですがどうなってるんですか?

む、どうしたセバス?

 

ナザリックより数キロ地点で大規模な戦闘が発生している?

 

おそらく王国の騎士たちと帝国軍が戦っているんだろう。

ここは王国軍に協力して……なんだセバス、まだ何かあるのか?

 

ナザリック防衛のためシャルティアが出撃した?

 

嘘だろ(絶望

高すぎる忠誠心がこのタイミングで暴発するなんて!?

すぐに止めに向かわないと……!

アルベド、シャルティアが王国軍と接触する前に止めるぞ。

…………。

アルベド?

 

 

 

聖騎士攻め?モモンガ受け? 何を言ってるんだアルベドよ(困惑

 

 

 




タブラ「モモンガさんにギルド外の友人ができるなんてね。……そうだ!」

罪深き×算に嵌ってる(10文字

次回は王国勘違い勢視点によるシリアスです

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